プロカメラマン山田久美夫の

リコー「DC-4U」ファーストインプレッション


DC-4U  リコーから今春発売された132万画素3倍ズーム機「DC-4」の廉価版モデル「DC-4U」が発表された。このモデルは、海外で「RDC-4200」として先行発表されたモデルの日本向け仕様といえる。ポジション的には「DC-4」と「DC-4T」の中間的な存在でメーカーではDC-4Tの後継としているが、実質的には3倍ズーム搭載機である「DC-4」の改良型廉価版モデルといえる。

 なお、仕様などについては関連記事を参照されたい。

注:10月26日に、定点撮影の実写データをDC-4と同時に新たに撮りおろしたものへアップデートしました。同一条件での撮影ですので、DC-4との具体的な比較が可能です。


●ポイントは画質

 本機のポイントは、やはり大幅な画質の向上だ。もともと、「DC-4」も1/2.7インチ・132万画素の原色系CCDを搭載した機種であり、解像度の高さではクラストップレベルの実力を備えたモデルだった。だが、CCDのポテンシャルの関係か、明暗の再現域(ダイナミックレンジ)が狭く、コントラストが高めのシーンでは簡単にハイライトがすっ飛んでしまうケースが多かった。また、画像自体のコントラストも高めで、シーンによっては色再現性が異様なほど派手に仕上がるという、クセのある再現性を備えていた。

一般撮影 一般撮影 一般撮影
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 しかし、今回の「DC-4U」では、画質と実効感度向上のために、よりポテンシャルの高いCCDにユニットを変更しているという。その結果、画質が大幅に向上。なかでも、DC-4の欠点だった、明暗の再現域と色再現性については、明らかにワンランクアップしている。

 実際に撮影してみると、その違いをすぐに感じることができる。とくに、コントラストの高いシーンでの再現性が大きく向上しており、DC-4が苦手だったシーンを中心に撮影してみても、大きな欠点を見いだすことはできなかった。とはいっても、まったくハイライトが飛ばないわけではなく、ハイライトが適度に飛び気味になることで、銀塩プリント的なメリハリのよさを演出している感じだ。

 色調は、DC-4ほど派手ではなく、より自然な再現をしながらも、原色系CCDならではのピュアな色調はきちんと踏襲されている。最近は130万画素クラスでも補色系CCD搭載機が多いわけだが、この手のモデルが苦手とする青空や緑、黄色などの再現性に関しては、やはり原色系モデルのほうが勝る部分がある。とくに、モニタ上では補色系との色再現の違いが明確に感じられる。ピュアで明るい雰囲気の色調が好きな人は一見の価値がある再現性といえる。

ミックス光・人物
【ミックス光/312KB】
ホワイトバランス・オート
【ホワイトバランス・オート/312KB】
ホワイトバランス・太陽光固定
【ホワイトバランス・太陽光固定/312KB】

 また、実効感度も、カタログスペック上では「DC-4」がISO40~80なのに対して、本機ではISO80~100と最大で2倍もアップしている。これは実写してみても十分に体感できるレベルだ。もともと、原色系CCDは補色系に比べて感度面で不利な点があり、DC-4ではそれが原因と思われるカメラブレなどによる失敗も多かった。だが、今回のDC-4Uでは、体感上は補色系の1/3インチ130万画素クラスと比較しても、感度不足がさほど気にならないレベルとなっている。

●ようやく実現した16MBメディア対応

 機能面では、リコーのモデルで初めて16MBタイプのスマートメディアに対応した。もっとも、DC-4の発売と同時期に登場したライバル機は、すでに対応済みだった。同機は開発時期が早かっただけに未対応になっていたもので、“ようやく対応した”という表現の方が正しいだろう。

接写
【接写1/312KB】
接写
【接写2/312KB】
ストロボ・接写
【ストロボ・接写/312KB】

 それ以外では、モノクロやセピアモード、インターバル撮影機能の追加などがあげられる。また、DC-4で対応していた音声記録関係の機能は、コストとラインナップ上の棲み分けの関係で、すべて省かれている。

 なお、レンズはDC-4と同じ光学式3倍ズームを搭載しているが、今回はさらに、2倍のデジタルズーム機能も追加されている。

 液晶モニタは、DC-4ではなく、DC-4Tと同じ1.8インチのTFTタイプを採用。このあたりはコストダウンのための選択と思われるが、液晶ファインダ専用機であるDC-4シリーズだけに、液晶モニタはより見やすい2インチタイプを採用して欲しかった。

 また、液晶上に表示される各種モード設定用の文字は、以前よりも大きく見やすいものに変更された。ただし、一度に表示される情報量は減っており、必要な機能を呼び出すのに何度かスクロールする必要があるので、一概にどちらがいいとは言い切れない。

●高速化を望みたい各種動作

定点撮影
ワイド端 テレ端
DC-4U
ワイド端 テレ端
DC-4
ワイド端 テレ端

 本機は、基本的にDC-4(DC-4T)がベースになっているわけだが、前記の改良点以外の部分は、ほぼそのまま踏襲されている。つまり、従来のDC-4シリーズのメリットも、デメリットも持ち合わせているわけだ。

 最大のメリットは、130万画素3倍ズーム機で最小といえるコンパクトさだ。これは発売以来半年近くが過ぎようとしている現在でも同様であり、本機の大きな魅力といえる。とくに、携帯性を重視するユーザーにとって、この点は選択時の大きなポイントとなる。

 また、接写に強いという特徴もそのまま受け継がれている。マクロ時にストロボ撮影をしてもほぼ適正な露出になる点も、マクロを多用するユーザーには魅力だ。

 一方、以前のDC-4シリーズに見られた動作の遅さも、残念ながら、そのまま引き継がれている。まず、起動時間は約6秒。記録時間は標準的なSNモードで約8秒もかかる。これらは現行のライバル機に比べて、明らかに劣る点といえる。また、ズーム動作の遅さも改良されていない。これは、回転式のズームレンズをモーター駆動する一方で、これだけのコンパクトさを実現するためには、ある程度は致し方ない部分もあるのだが、それでも本機の軽快感を大きくスポイルする要素となっている。

 また、液晶モニタの表示品質もライバル機に比べると、一歩譲る。表示のレスポンスはいいのだが、表示画像にクリアさがない点がとくに気になる。これは液晶モニタ専用機としては、早急に改良して欲しい点といえる。


●画質が向上したコンパクトな常用向きモデル

 今年のデジカメ市場の年末の主役となる130万画素・3倍ズームクラス。そのなかでも本機は、ひときわコンパクトで携帯性のいいモデルである。しかも、今回の改良で画質面でもライバル機と十分肩を並べるレベルであり、原色系モデルならではのピュアな色調は大きな魅力だ。

 
一般撮影 一般撮影 一般撮影
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 また、今回は接続キットやソフトが同梱されており、しかもNi-Cd電池と充電器まで付属していながらも、価格は84,800円とリーズナブルだ。発売前なので実販価格はわからないが、それでも同クラスのライバル機よりも値頃感のあるものになりそうだ。

 正直なところ、画質が向上したとはいえ、基本設計の古さを感じさせる部分はある。とくに動作の遅さや液晶の表示品質は気になるところだ。

 しかし、カメラの場合、持ち歩かなければ用をなさないこともあって、本機の携帯性のよさは、それを補って余りあるものといえる。しかも、この秋に登場した130万画素3倍ズームクラスはいずれも大柄なモデルばかりだっただけに、本機のコンパクトさは明確なアドバンテージであり、ライバル機とはひと味違った魅力を備えたモデルだ。気軽に携帯できる130万画素ズーム機が欲しい人は、十分検討に値するお手頃なモデルといえる。

□リコーのホームページ
http://www.ricoh.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.ricoh.co.jp/release/digicame/dc4u/index.html
□製品情報
http://www.ricoh.co.jp/dc/product/dc4u/
□関連記事
【10月9日】リコー、光学3倍、デジタル2倍ズーム搭載のデジタルカメラ「DC-4U」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981021/ricoh.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm

■注意■

('98年10月23日)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp