山田久美夫のエレクトロニクスショー '98レポート 液晶編

会場風景 会期:10月6日~10月10日

会場:インテックス大阪

出展社数:462社(1,807小間)


 今回のエレクトロニクスショー(以下エレショー)の大きな目玉となったのが、カラー液晶。この分野は今後のモバイル系機器の展開を大きく左右するキーデバイスだけに、各社ともかなり力の入った製品開発を行なっている。また、実際に液晶を組み込んだ製品例なども数多く展示されている点も注目に値する。そこで、液晶を中心とした出展製品についてレポートしよう。



 


【MPEG画像】
 
反射液晶搭載Mebius PJ

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●シャープ:新型の反射型液晶を積極アピール

 昨年のエレショーでは、高品位な反射型カラー液晶で話題をさらったシャープ。今年になって、ザウルスやゲームボーイに採用され、いよいよ本格的な実用化が始まった感じだ。そして今回は、そのクォリティをさらにワンランクアップした「HR-TFT スーパーモバイルカラー液晶」を出品していた。

 昨年は比較的小型のタイプが主流だったが、今回のモバイル液晶はデジタルカメラなどの2インチタイプから、ノートPCを強く意識したSVGA対応の11.4インチクラスまでラインナップされているのも大きな特徴といえる。

 会場でデモを見る限り表示品質は昨年発表の反射型タイプよりも一段と向上している。実際に展示用としてメビウスノートに組み込まれたものを見ていると、解像度、彩度、表示レスポンス、視野角ともに良好。しかも、従来タイプはバックグラウンドがかなり黄色い感じだったが、今回のものは十分に白く、コントラストも高いため、デモを見る限りは、ちょっと前のバックライト式カラー液晶に近い印象を受けるほど。もちろん、会場では、暗い場所での視認性が確認できなかったが、屋外をはじめとした明るい場所での利用をメインに考えるなら、いつ製品化されてもおかしくないレベルの仕上がりを見せていた。

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●三洋電機:視認性のいい広視野角液晶を出展

 三洋電機は6日掲載の「CCD編」でレポートしたように、反射型の低温ポリシリコンTFTを出品する一方、斜め方向からの視認性を大幅に向上させた広視野角タイプの低温ポリシリコンTFT液晶をアピールしていた。

 実際、これまでの液晶パネルは真正面からの視認性は高いが、角度を変えると急に見にくくなるケースが多かったが、この広視野角タイプはどの角度から見ても、画像がきちんと見える点が最大の特徴。ブースでは、いろいろな角度に配置された高視野角液晶パネルのデモはもちろん、実際に同社のデジタルカメラDSC-X100に組み込んだものも出展されていた。とくに、デジタルカメラの場合、ハイアングルやローアングルでの撮影や、多人数で液晶表示を見るケースが多いわけだが、このようなシーンでも翳りなしに液晶が見えるため、液晶を回転式などにしなくても実用になるレベルの視認性が得られるという。


 この液晶は、従来の低温ポリシリコンTFTに比べ、表示品質はほぼ同等。価格的にもさほど変わらないレベル。しかも、発売もごく間近ということなので、来年前半に登場する機器に採用されることも十分予想される。



 

しおり型PC
【しおり型PC】

●エプソン:新型液晶での試作機を展示

 毎回、ユニークな試作機を出展し、楽しませてくれるエプソン。今回もモバイル機器中心に4種類の試作機を出品していた。

 なかでも、ユニークだったのが「しおり型PC」と紹介されているモバイル機器で、これは液晶表示をハードなものではなく、巻き付けることも可能なフレキシブルな素材で作成したもの。これなら、使うときは大画面液晶モニターになり、携帯時にはPC本体に巻き付けられる。

 また、メーカー自ら「とってもステキなモバイルツール」と題した機器は、音声認識での指示により、データの送受信が可能で、しかも液晶プロジェクタ機能により外出先でのプレゼンテーションにも使える。つまり、これ一台でNAVIにも、PCにも、携帯電話にも、テレビにもなるということらしい。スタイリングはともかく、近い将来はこのような機能がすべて組み込まれたモバイル機器が登場するのは明らかだが、液晶プロジェクタ機能までついている点は、液晶プロジェクタに熱心なエプソンらしいところといえる。

会場風景 モバイルツール

 


 

会場風景

●NTT関西:タッチパネル式のインターネット内蔵電話をデモ

 会場入り口のオープンスペースを使っての出展を行なっていたNTT関西。その中でも、人気が高かったのが、「Telesse(テレッセ)」と呼ばれるインターネット端末組込型の電話機。

 これは大型のタッチ式液晶パネルを使ったもので、これ一台で、インターネットのホームページ閲覧はもちろん、電子メールの送受信、FAX、住所録、スケジューラー、留守番電話などがすべてできるというもの。11月発売で、価格的には実販で7~8万円程度という。

 回線はもちろんISDNだが、別途DSUが必要。これは価格を下げるためという。また、本機にはコードレスの子機もないが、本機背面のアナログポートに従来から使っているコードレスホンをつなぐことで利用できるという。

 電子メールは4アドレスまで登録でき、それぞれに簡単なプロテクトがかけられるので、家族みんなで使っても、プライバシーは守られるという。また、メールの作成は簡易キーボードが使えるので、簡単な返信くらいなら対応できそう。

Telesse(テレッセ) Telesse(テレッセ) 液晶部 Telesse(テレッセ) 背面

 
 残念ながら、フロッピーやメモリーカードなど外部記録媒体が利用できないので、電子メールの保存は内蔵メモリに頼るか、背面にあるパラレルポートにプリンタを接続したり、アナログポート経由でFAXに送信してプリントするしか、保存方法がないという。FAXも機能としては持っているが、スキャナ部やプリント部がないため、ディスプレイ上に手書きで書いたものを送ったり、送られてきたものをディスプレイ上で見る程度にしか使えない。また、インターネットブラウザのバージョンアップなどもできないなど、仕様としては、やや中途半端な感じがあるが、電子メールでの家族との連絡用端末や、気軽にインターネットしたいという目的には十分使えそうな機器だった。



 

データスリム
【データスリム】
 

TrueSync
【TrueSync】
 

●CBM(シチズン):話題のPCカード型情報機器・日本語版“REX”を出品

 先だって発表されたばかりの日本語版“REX”こと「データスリム」も会場で見ることができた。これは以前から米国で発売されていたPCカード型モバイル機器で、サイズや仕様はPCMCIA Type2準拠。PCカードスロットに本体をさすことで、簡単にPCとのデータ互換がとれる、世界最小のPDAだ。

 今回、日本語化されて「データスリム」の名称で登場したわけだが、日本語対応と同時に液晶の表示解像度を向上させたという。

 機能的には「カレンダー」「アドレス帳」「To Doリスト」「メモ帳」「世界時計」などがあり、辞書や通信機能はないが、日常的に持ち歩くには十分なもの。しかも、細かな入力はPC側で行なえる上、専用のPIMソフトはもちろん、付属のシンクロ用ソフトである「TrueSync」を使えば、Outlook 97/98やOrganizer97、Notes Personal R4.6とのシンクロも可能なので、これらの管理ソフトを使っている人でも気軽に使える点が大きなメリット。

 アメリカでは頻繁に見かける製品だが、会場で日本語版の現物を手にすると、そのコンパクトさと実用性の高さはなかなか魅力的。とくに、PCカードを日常的に使っている人なら、データ互換も簡単。Type2のPCカードと同じ大きさなので、名刺入れにそのまま収納できる点も便利そう。発売は10月29日で、標準価格24,800円。興味のある人はぜひ現物を手にしてみるといいだろう。

□「データスリム」のホームページ
http://dataslim.angel.co.jp/
□「データスリム」のニュースリリース
http://www.citizen.co.jp/release/98/980917ds.htm

□エレクトロニクスショー'98のホームページ
http://www.jesa.or.jp/jes98/top/top_j.html
□関連記事
エレクトロニクスショー '98 レポート インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/981008/ele_i.htm

('98年10月6日)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp