【イベント】


iMacに賭けるSteve Jobs氏、突然の登場で会場に驚きの声
MACWORLD Expo/New York基調講演レポート


ジョブズ氏
開催地:米国 New York
会場:Jacob K. Javits Convention Center
会期:7月7日~10日(現地時間)


■Appleの四半期決算は3期連続で黒字に

 ニューヨークで8日から開幕した「MACWORLD Expo/New York」初日の基調講演では、米Appleのスティーブ・ジョブズ暫定CEOが基調講演を行なった。当初の主催者発表では同氏は衛星中継での講演を行なう予定になっており、氏の登場は観客を驚かせた。

 ジョブズ氏は、Appleの第3四半期(4~6月期)決算が第1、第2四半期に続いて黒字を確保したことを明らかにした。また、ホーム市場を狙った「iMac」を8月15日に発売すると発表。低価格で高性能なiMac発売によって、Appleが再び市場を拡大することになると語り、大きな歓声を受けた。また、RhapsodyやOS Xを含めたOS戦略を発表し、Mac OS 8.5(コードネーム「Allegro」)の初公開デモを行なった。


■ホーム市場でのシェア拡大の決め手、『iMac』

 8月15日に発売されるiMacはライトグリーンの斬新な半透明ボディを採用。インターネット時代のホームユースパソコンというコンセプトで、低価格ながら10/100Mbitイーサネット、IrDA、USBポートを装備するなどの仕様も話題を呼んだ。
 内蔵モデムはユーザーの要望を取り入れ、当初発表の33.6kbpsモデムから56kbpsモデムへ仕様変更したことも明らかにした。そのほかの基本仕様は当初の発表通りで、PowerPC G3 233MHz、メモリ32MB、15インチディスプレイ、4GB HDD、20倍速 CD-ROMドライブを搭載する。価格も米国市場価格は1,299ドルと、当初の発表通り低価格に抑えられている。


■周辺機器メーカー、ソフトベンダー各社との協力関係を強調

 Jobs氏は、iMacの売れ行きの決め手となるUSB対応の周辺機器、Mac用ソフトウエアの開発についても自信のほどを見せ「5月6日にiMacを発表して以来、175種類以上のMac向け新または改良アプリケーションが発表されている。デベロッパーとの協力関係が回復し、多数のデベロッパーがMac用ソフトの開発に力を入れるようになってきた」と語った。

 さらに同氏は「これらのデベロッパーとの提携のなかで、最初のパートナーとなったのがMicrosoftだった」と語り、米Microsoftとの関係を強調。AppleとMicrosoftの電撃的な提携が昨年8月のMACWORLD Expoで発表されてから約1年。現在も、両社の協力体制を堅持していることを印象づけ、MicrosoftがMac用のOutlook Express 98、Office 98、Internet Explorerなどの開発に力を入れていると述べた。

 Jobs氏はまた、低価格にもかかわらずiMacは高性能であるとし、「BYTEmarks」のベンチマークテストではIntelのPentium II 400MHzを搭載したマシンですらiMacの3分の2程度の速度しか実現できなかったと語った。「BYTEでは最初、この結果は何かの間違いだと考え何回もテストをやり直した。しかし、何度やっても同じ結果が出た」と同氏が語ると、会場から大きな拍手がわき起こった。


■今後のOS戦略

 さらに、今後のOS戦略として、Mac OS 8とRhapsodyの技術を統合したOS Xを将来的なMac OSとすることを発表した。Jobs氏は「高速ネットワーキング、優れたマルチタスク機能を持つOS Xは、OS 8のアプリケーションも走るので、デベロッパーは簡単にOS Xの開発に移行できる」としている。

 今後のOS開発スケジュールとしては、今年の9月頃にのMac X Server、'99年頭にOS Xのベータ版、'99年7月にはOS X正式版が出荷されるという。OS 8の開発は並行して続けられ、今夏にはOS 8.5、来年初期にはOS 8.6、来年7月頃にはSonataが出荷されるとしている。

 Appleの世界市場製品マーケティング副社長であるBill Schiller氏が行なったAllegroの初公開デモでは、改良された検索機能、高速ネットワークコピーなどが紹介された。
 新検索機能では、インターネット検索を行なう場合、ExciteやYahoo!などいくつかの異なるエンジンを同時使用することができ、直接Webページにアクセスすることなしに検索結果の要約を見ることができるので、ダウンロード時間を大幅に節約できると紹介。また、ネットワークコピーの高速化は、OS 8.1より50%程度、速度の向上を達成しているという。
 G3 300MHzとPentium II 400MHzマシン間でのネットワークコピーのデモを行なったとき、途中でコピーがストップするというハプニングが起きたが、Jobs氏の「まだベータ版だからしかたがない」との言葉に会場は温かい反応で応えた。


■再び成長路線へ転換するApple

 Jobs氏は最後に、現在、消費者市場で1,000万人、ビジネス市場で600万人、教育市場で600万人のMacユーザーが存在すると述べ、価格が高いために買い控えていた消費者市場のMacユーザーがiMacを購入することになるだろうと語った。同氏はデザイン、ブランド名、使いやすさなどAppleの利点を述べ、同社はiMacで売上を大幅に伸ばすことになると語った。

□米Apple Computerのホームページ
http://www.apple.com/
□ニュースリリース「iMac発売日決定」(英文)
http://www.apple.com/pr/library/1998/jul/8wrap.html
□ニュースリリース「UBSトップベンダーがiMac向け製品を発表」(英文)
http://www.apple.com/pr/library/1998/jul/8usb.html
□ニュースリリース「iMac発表以降175以上のソフトが開発表明される」(英文)
http://www.apple.com/pr/library/1998/jul/8soft.html
□Expo出展ゲーム情報(Tomb Raider IIなど、英文)
http://www.apple.com/hotnews/features/mwexpogames.html
□MACWORLD Expo/New Yorkホームページ
http://www.macworldexpo.com/mwny98/index.html

('98/7/8)

[Reported by HIROKO NAGANO, iMMERS]


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