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プロカメラマン山田久美夫の

コニカ「Q-M100V」ミニレポート

色再現性は向上したが、決め手に欠ける実力派モデル

「Q-M100V」  コニカから、昨年暮れに発売された108万画素モデル「Q-M100」の改良タイプ「Q-M100V」が発表された。このモデルは、「Q-M100」をベースにバージョンアップしたもので、CCDが補色系から原色系に変更され、細部の仕様についても改善されている。また、同機をベースにして防水性を高めた「DIGITAL現場監督DG-1」も登場した。

 もともと先代の「Q-M100」は、コンパクトカメラ風デザインの扱いやすいモデルで、110万画素未満のクラスのなかでも、解像度の高さで定評のあったもの。だが、色再現性に関しては、当時の補色系モデルに共通した、やや彩度の足りない感じがあり、ノイズもやや多めだった。また、価格的にも高めの設定だったこともあって、人気は今一つだった。それが今回の「Q-M100V」でどのように進化しているのか、大いに期待されるところだ。

編集部注:価格、仕様などについては参考記事をごらんください。



●ライバルは130万画素モデル!?

子供 人形
872×1,152ドット(224KB) 872×1,152ドット(128KB)

 本機の基本的な機能は先代モデルとほとんど同じなので、詳細は先代モデルのレポートを参照していただきたい。今回は、画質を中心とした主だった改良点を中心にレポートしよう。

 メーカー自身、「ライバルは130万画素モデル!」と豪語するだけあって、その実力はなかなかのもの。とくに今回は、デジタルカメラの心臓部といえるCCDが、原色系に変更されたことで、画質が大幅に向上している。

 なかでも、色再現性は飛躍的に向上している。もちろん、先代モデルも当時の補色系モデルのなかではまずまずの実力だったわけだが、原色系になったことで、色の彩度が大幅にアップ。これはまさに一目瞭然という感じで、わざわざ旧機種と比較するまでもないほどだ。とくに、肌色の再現性は良好で、このあたりは、いかにもフィルムメーカーの製品らしい仕上がりといえる。

 全体に鮮やかな仕上がりだが、原色系の彩度が強調されすぎた感じがあり、シーンによっては不自然さを感じるときもある。このような場合には、パソコン接続キットを購入することで、PC側からカメラの彩度設定ができるので、若干弱めにセットすればいいだろう。

 また、ごくまれなケースではあるが、今回実写したシーンのなかでは、あじさいの色調だけが、他機種と大きく異なった仕上がりになったカットがあった。おそらくこれは、CCDがもともと備えている赤外線領域の感度の高さが原因だと思われるが、この点はやや残念な結果となった。

Q-M100Vで撮影 FinePix 500で撮影 DC-4で撮影
Q-M100V
1,152×872ドット(125KB)
FinePix 500
1,280×1,024ドット(292KB)
DC-4
1,280×960ドット(312KB)

 一方、先代モデルの大きな特徴だった解像度の高さも、きちんと受け継がれている。解像度に関しては、原理的に補色系CCDのほうが有利なのだが、原色系に変更されても、きちんと110万画素前後のクラスでトップレベルの実力を実現している。

 また、先代モデルの大きな欠点だった、ダイナミックレンジの狭さ(明暗の再現性)もやや改善されている。とはいっても、まだ十分というレベルではなく、晴天の日中撮影ではハイライトが飛び気味になるシーンも見られた。これは単に内部処理だけの問題ではなく、採用しているCCDの素性が大きく関与する部分だが、やはりもう少し改良して欲しいところだ。

 確かに写りに関しては、現在主流の130万画素クラスのモデルと比較しても、さほど遜色のないレベルの仕上がりを見せており、メーカー側の自信のほども納得できる。

 逆に気になったのはピントの精度と実効感度。本機はもちろんオートフォーカス式で、マクロ時はなかなか正確だが、通常の撮影ではピントを逃すケースが意外に多い。とくに本機は解像度が高いので、微妙なピントのズレが写りにそのまま反映されてしまい、この点はやや不満が残る。

ライト
1,152×872ドット(113KB)

 また、今回、CCDが原色系になったことで、実効感度が低下しているようだ。メーカー側では公称でISO80相当といっているが、感覚的にはそれより低いようで、普通の屋内くらいの明るさでは、意外にブレが目立つことがあった。

 もっとも、暗いシーンに弱いわけでは決してなく、PC接続キットを使って最長2秒までのスローシャッター機能を有効にすれば(初期設定は最長1/8秒まで)、夜景でも楽に撮影できる実力を備えている。また、この設定をしなくても、かなり暗いシーンでは自動的にゲインアップ(ソフト的な感度増幅)しているので、むしろ手ぶれの影響は少ないようだ。


●約5秒で起動・記録する、なかなかの軽快モデル

 先代モデルと比べ、外観上で変わっているのはカラーリングとレンズ周りのデザインくらいで、パッと見た感じではほとんど見分けがつかない。もちろん、サイズや操作系も変わっておらず、発売当時はメガピクセル機の中でも比較的コンパクトな部類だったが、現在ではちょっと大柄な感じすらある。

 機能や操作性もさほど変わってはいない。とくに、先代モデルの不満点だった、ボディー上部にある操作ボタンの押しにくさもそのまま受け継がれてしまっているのは残念だ。

 もっとも、今回のQ-M100Vになって、画質モードやストロボモードなどが保持されるようになったので、使用頻度が減り、以前ほど気にならなくなっている。これは、一度自分好みのモードに設定すると、メインスイッチをON・OFFしてもその内容が保持されているもので、使ってみるとなかなか便利だった。ただ、セルフタイマーモードの設定も保持される点はやや考えもの。また、マクロモードの自動解除などは好みが分かれるところだけに、ユーザー自身が自由に保存するモードを設定できるようにしてほしかった。

木陰 建物 ラーメン
1,152×872ドット(247KB) 1,152×872ドット(191KB) 1,152×872ドット(354KB)

 起動時間は約5秒。記録時間も約5秒と実用十分。130万画素クラスよりややファイルサイズは小さいとはいえ、本機は内部処理をすべてソフト的に行なっていることを考えると、この記録時間はなかなか優秀な部類。実際に使ってみても、なかなか軽快感のある撮影感覚を実現している。

 ファインダーは光学式と液晶の両方が利用できる。とくに、本機の光学ファインダーは、先代同様、視野が広くて明るく、実に見やすいものでとても気持ちがいい。また、液晶は従来と同じMIM式で、表示レスポンスがやや遅いものの、先代より表示品質が向上しているため、液晶ファインダーでも以前ほどストレスを感じるケースが少なくなった。

部屋 公園
872×1,152ドット(99.4KB) 872×1,152ドット(167KB)

 電源は単三型電池4本。電池の持ちは、感覚的には先代とほぼ同等。液晶ファインダーを多用すると結構消耗するので、できればニッケル水素など大容量バッテリを使ったほうが安心だろう。

 また、先代モデルで好評だった、PC接続キットのユーティリティによるカメラのカスタマイズ機能はきちんと受け継がれている。これを利用すれば、前記のように、スローシャッターを有効にしたり、彩度を調整できるのはもちろんのこと、輪郭強調の強さ、ホワイトバランスの選択、ガンマ値の設定(標準かMacか)といった、カメラ単体では設定できない機能をカスタマイズできるわけだ。

 さらに、同キット付属のPhotoshopプラグインソフトである「PC暗室」も機能アップされており、歪みの補正や周辺光量低下の補正、肌色や青空の微妙な色調整などはもちろん、今回からはパノラマ合成機能も追加され、より使いやすく多機能なものになっている。


●基本性能は実用十分だが、いまいち魅力に欠ける実力派モデル

 「次機種は同じボディーで原色系の130万画素モデルでは……」という私の予想は、なかば当たり、なかば外れたわけだが、さすがにマイナーチェンジモデルだけに、先代モデルの不満点を可能な範囲できちんと改良してきている点には好感がもてる。

 さらに、画質面でも、先代よりも鮮やかで見栄えのするものに仕上がっている点も好感がもてる(やや素人受けを狙いすぎた感じはあるが)。

 また、価格も先代はほぼ10万円とやや高めだったが、今回は69,800円と大幅に引き下げている。もっとも、先代モデルが最初からこの価格で登場していたら、けっこう人気が出たと思うが、いまとなってはあと5,000円プラスするだけで150万画素モデルが入手できると思うと、なかなか微妙なところだ。

 この「Q-M100V」は実用的で手頃な価格の、いかにもコニカらしい真面目なモデルに仕上がっている。だが、正直なところ、実際に機種選びをするときに、食指が動くかどうかは別の話といえる。つまり、画質的に必要十分なレベルとはいえ、やはり130万画素クラスがこれだけポピュラーになった現在では、108万画素という画素数はやや見劣りする点は否めない。デザインや基本機能といった点から見ても、さほど明確なアドバンテージがあるわけでない点も気になる。また、コストパフォーマンスの点でも魅力的ではあるが、本機をメインカメラとしてある程度長い間愛用するには、やや力不足の感もある。

 使ってみるといいカメラなのだが、コレ!といった個性や魅力に欠けるため、なかなか購入に踏み切れないのが、本機の最大の弱点といえる。

 同社は日本初のカメラメーカーであり、世界初のストロボ内蔵機「ピッカリコニカ」や、同じく世界初のオートフォーカスモデル「ジャスピンコニカ」、超小型モデルの先駆けとなった「ビッグミニ」のように、その流れを変えた名機を送り出しているメーカーだけに、ぜひともコニカらしい先見性あふれる魅力的なデジタルカメラを登場させて欲しいところだ。

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【5/28】コニカ、Q-M100を一部改良
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('98/6/19)

[Reported by 山田 久美夫 ]


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