【コラム】 |
たった280g、最強?の英語発音装置!!
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その技とは、電気製品における電池の液漏れであった。
電池を液漏れさせたら周囲5キロメートル以内には俺に勝てる奴はいなかった。もう漏れまくりであった。漏れて漏れてしょうがねえという状態であった。しかも意識的に液漏れさせているのではなく、気が付いたら漏れていたという本格派であった。ある時は懐中電灯を3本も同時に液漏れさせ、またある時は携帯型ラジオとウォークマンとディスクマンを液漏れさせ、さらには単一電池が6本も入ったラジカセを液漏れさせて床にシミを作ったほどの達人なのであった。ていうかこんなコト自慢してもしょうがないのであった。
鋭い読者の方はもうお気づきかと思うが、上記の文章は全部過去形で書かれており、すなわち最近の俺は液漏れなんか全然起こさない優良電気製品ユーザーなのである。つまりようやくスットコドッコイさが抜け、普通の電気製品ユーザーになれたわけだ。
富士ゼロックスの『流暢EURO Travel』。ただし現行製品は後継機の『流暢EURO Travel II』(35,000円)で、筐体デザインやボタンの数、配置などが一新されている。 |
それから約4年。液漏れ名人の異名を持つこの俺(←威張ることかよ)が見ても、まったく見事に液漏れしていた。電池を押さえていたスポンジは跡形もなく溶解し、電池を挟むバネは真っ赤に染まり、電池カバーの裏に貼ってあったステッカーの文字は完全に消え、当然、引き出しには見事な液漏れシミが描かれていた。う~ん、これは凄まじい液漏れだ。ちょっとお目にかかれない出来映えだ。ある意味芸術的でもあるが、きっと流暢ちゃんはブッ壊れちゃったんだろうなー、と複雑な気持ちになった。
海外旅行にありがちな言葉をかなりカバーしている。日本語を表示しているときに発音ボタンを押すと、日本語も発音する |
ところでこの九死に一生を得た『流暢EURO Travel』、改めて使ってみると、やはり良くできている。海外旅行にありがちな言葉をほとんど喋るし、喋り方もその名の通り“流暢”である。
(編集部注:現行製品は後継機の『流暢EURO Travel II』で、標準価格35,000円)
流暢EURO Travelの具体的な内容は、まず日本語と英語とイタリア語とドイツ語とフランス語とスペイン語の、6カ国語を喋る。喋る内容は、場面ごとに分かれており、一般会話、ホテルでの会話、レストランでの会話など、よく使われそうなフレーズが合計635例入っている。653フレーズを6カ国の言葉で喋るので、3,810フレーズが記憶されていることになる。
操作も簡単で、電源を入れ、何語で喋らせるかを決め、場面に応じたボタンを押し、例文を探し、訳して喋らせる。海外旅行で買い物をするときに、日本円ではいくらなのかを電卓で計算する程度のクイックさで発音させられる。
ちなみに、サイズは153×77×22mm(幅×奥行き×高さ)、重量は電池を含めて200g。俺のやや大きめな手のひらにすっぽり収まる装置だ。ヨーロッパ旅行に持っていったらけっこう便利なのだろうなぁと思うのだが、俺にとっては単にたくさん喋るだけの装置ではある。
だが、装置が喋るだけで、俺としてはおもしろい。キカイが喋るというコトに対して俺は、ちょっと行きすぎた愛着を感じる。例えば俺は、喋る自動改札とか喋る時計とか喋る扉とか喋るトラックとか喋るプリンタドライバとか喋る信号機とかが好きだ。あの、PCM録音された人工的な声や、あるいはまるで人間味のない合成音声が好きなのである。アレを聞くと、なんかもう世の中がデジタル技術で支配されている感じがして、非常にサイバーな心境になれる。
そう思いつつ、このテの電子翻訳機(?)というか発音装置をカタログなどで見るたびに、俺はいつも“ユーザーが入力した言葉を発音する機能”があるかどうかを探した。が、なかなかない。というか、まるでなかった。ひとつも発見できなかった。
まあ、コンピュータ用のスピーチプログラムをサブノートマシンに入れるとかいう手はあるが、そこまで大げさに喋らせるのもナンだ。電子手帳みたいな手軽な装置で、しかも自由に喋らせることができるモノはないかなぁと、事あるごとに探したものである。
が、このたび、めでたく、発見した。
ツインバード工業株式会社の『語自慢』 標準価格 48,000円 |
語自慢が持つ機能は、大きく分けて辞書機能と手帳機能とエンタテイメント機能の3つ。
辞書機能としては、36,000語の和英辞典、61,000語の英和辞典、42,000語の国語辞典、7,200語の英英辞典を搭載しており、手書き入力検索ができたり、国際電話のかけ方や国番号一覧や市外局番一覧があったり、サイズや為替レートの計算機能も備えている。また、英語系の辞書は、キーワードを入力していくとその場で候補を絞り込む、いわゆるインクリメンタルサーチで検索できたりして、わりと本格的。そのわりには日本語の辞書が貧弱だったりして、なんだか妙というかユニークというか、凄いんだかヘボいんだかわからないが、ちょっと他にはないアナザワールドな使い勝手だ。
手帳機能としては、手書きメモ、備忘録、名刺管理、スケジュール、記念日登録、世界時計、カレンダー、電卓、それからパソコンとのデータリンク機能もある。多機能だし手書き入力もできたりするし、インターフェイスも非常にわかりやすいのだが、ユーザーメモリエリアが52KBしかなかったりして、なんつーか不思議なスペックである。また、マニュアルのハードウェア仕様のトコロに「水晶発振周波数 32768Hz」とか書いてあったりする渋さも見逃せない。
エンタテイメント機能は、五目並べなどをはじめとする4本のゲーム、運勢占い、相性星占い、バイオリズム、百人一首がある。プレイ感としては、例えば、ゲームのうちで語自慢が相手を努める思考型ゲームなどをやると、ヤケに弱かったりする。最近の思考型コンピュータゲームは人間が怒濤の気合をもってして臨んでも勝てないようなものが多いが、語自慢の思考型ゲームはスカッと勝てるので、ユーザーは非常に良い気分になれる。なかなか気の利いた電子手帳である。また、百人一首が原文と読みの二通りで網羅されていたりするトコロには、開発者の目の付け所の凄まじさが伺え、親近感を感じざるを得ない。
インターフェイスは、非バックライトで240×128ドットの液晶がタッチパネルとしても機能する。また、qwerty配列キーボードもあるので、付属のペンで画面をなぞっても、キーボードを操作しても使える。使った感じは良好。違和感なくスンナリ使えた。
要するに、機能的に謎のバランスを持っていて妙に使いやすいという、非常に不思議な装置で、シャープやカシオの電子手帳などとは大きく隔たった場所にある類い希なる電子手帳である。が、俺にとってはそのへんのことはどうでもよく、何と言ってもこの電子手帳の発音機能が気に入っている。
“発音”ボタンを押すと、女性の声で発音してくれる。電子音っぽい感じがヒジョーに良い |
機械の律儀さで、どんな英文字の羅列でも発音するのだ |
で、注目したいのが、自作の英文を喋らせることができる点。
例えば電子手帳機能の備忘録に、任意の英文を入力し、発音ボタンを押すと、どのような内容の英文でも、発音してくれる。人前では言ってはならない英語のフレーズでも、適当に英文字を並べただけの意味不明なフレーズでも、何であろうと入力された英文字をどうにか発音するのである。ちょうど、コンピュータの英語発音プログラムのような感じで、どんな英文字の羅列でも発音する。
なので、工夫すれば、日本語みたいなのを喋らせることだってできる。例えば実験的に、「moseemosee, cytoe death. imah, chotto, e, death car?」と入力し、発音ボタンを押してみたら、「モシモシ、サイトーデス。イマ、チョト、イー、デスカ?」と発音した。日本に来てまだ3年くらいしか経ってないアメリカ人が日本語を喋ったという感じの発音である。しかもやや電子音っぽい感じなので、これはヒジョーにイイ感じの発音装置だ。
例えば、この自由文英語発音機能を利用して疑似日本語を発音させ、留守番電話のメッセージを録音すると、非常にサイバー感が高い(が気味悪がられる)。あるいは、一切口を開かずして友人と話すことができる(が変人扱いされる)。それから、外国旅行においてフランクな英語を流暢に発音させて楽しいコミュニケーションが取れる(←コレがまっとうな使い方だ)。
ともかく、俺にとっては非常に遊べるし、俺以外の人にとっては制限のない英会話代理装置として働いてくれるしで、よくよく考えてみたら、コレは俺の知る限りでは最強の英語発音装置だと言えそうだ。もちろん、現在のコンピュータの英語発音プログラムなどはもっと凄まじいレベルまでイッちゃってるが、たった280gのポケットガジェットだということを考えれば、かなりズバ抜けた能力を持つ装置だと思える。
□富士ゼロックスのホームページ
http://www.fujixerox.co.jp/
□「流暢」製品情報
http://www.fujixerox.co.jp/lyucho/
□ツインバード工業のホームページ
http://www.twinbird.co.jp/
□「語自慢」製品情報
http://www.twinbird.co.jp/xpdj801j.html
[Text by スタパ齋藤]