|
Windows 98で正式サポートされる「USB」。Windows 98のリリース時期が遅れたこともあって、こちらはすでに、各社とも準備万端。動作確認さえとれれば、いつでも出荷できる状態になっているメーカーも多い。そういったこともあって、今回のCOMDEX/Springでも、USB関連製品の出展が多く見られた。
とはいっても、全体に低調なCOMDEX/Spring。USBに熱心な台湾や韓国系の中小メーカーが出展を控えているうえ、大手PCメーカーのブースもほとんど見られない。そのため、製品は揃っているもののUSB搭載マシンはなく、具体性に欠ける内容になっているのが残念だ。
さらに、初日のキーノートでビル・ゲイツ自身がUSBのデモでハングアップ。それが世界中に報道されたことも、USB関連メーカーには結構ショックだったかもしれない……。
さて、USBというと、周辺機器との接続用というイメージが強く、今回もビデオ会議用カメラやPCカードドライブ、FDDドライブなど、中低速デバイスが数多く出品されていた。また、新たにUSBをPC間の接続に利用しようという動きも見られた。
そこで今回は、周辺機器系のUSB、なかでも今回のキーノートでPCの標準機器に追加されたデジタルカメラやビデオ会議カメラなどについてレポートしよう。
■デジタルカメラ&ビデオ会議カメラ
ビル・ゲイツは今回のキーノートで、デジタルカメラをWindows 98以降の標準機器として追加したと述べた。つまり、今後のPCにとってマウスやキーボードと同じように、外部からビジュアルというデータを入力するための重要なデバイスと位置づけているわけだ。インターネットでのビジュアル通信といったインフラも整いつつある現在では、ビデオ会議用カメラを始めとしたビジュアル入力機器を標準デバイスとする動きには十分納得できる。
もちろん、データ量が飛躍的に大きくなるビジュアルデータを扱うインターフェイスは、いうまでもなくUSBであり、今後標準搭載されるであろう、より高速なIEEE1394となるわけだ。
余談ではあるが、聞くところによると、同氏自身、デジタルカメラのファンで自分でも愛用しているという。それだけに、このあたりの動きも実体験に基づいた部分があるのだろう。
●SAMSUNG:Intel規格のUSBデジタルカメラを全面にアピール
USBとデジタルカメラと聞けば、すぐに思い浮かぶのが、Intelのデジタルカメラ規格。それだけに、今回のイベントではサポートを表明している多くのメーカーが積極的なデモを繰り広げるのでは? と、思いきや、その姿が見られたのは、韓国のSAMSUNGブースだけだった。
これまでのイベントでは、このモデルをスタンドアローンな持ち歩き用のデジタルカメラという側面からアピールしていた部分が大きかった。だが、今回は一変し、モニターのうえに専用のアタッチメントで装着し、カメラとPCの間をUSBで接続して利用するというスタイルでのデモを繰り広げていた。
ビデオ会議用のカメラとして、また持ち歩くことができればより広範囲な用途でのPCの入力デバイスとして利用でき、1台で2通りの使い方ができるというアピールだ。
もちろん、Intel規格のモデルなので、USB接続であり、Windows 98環境下では、カメラとPCをUSBで接続するだけで自動的に認識され、カメラのメモリーカードにあるデータをPC側に自動転送するというシステムになっている。そのため、ユーザーはデジタルカメラやPCの知識がそれほどなくても、USBで接続するだけで気軽に使えるというわけだ。
一方、日本のデジタルカメラメーカーは、Windows 98登場後すぐに、USBに対応した機種が発売することはなさそうだ。しかし、このSAMSUNGのようなIntel規格の使いやすいモデルが登場してくると、のんびりとしたシリアル転送には耐えられなくなると思うのだが……。もっとも、ビデオ会議カメラという用途以外なら、USB対応のカードドライブが安価に登場しそうなので、それで十分ともいえる。
●コダック:実販120ドルでVGA静止画もOKの「DVC-323」
ビデオ会議カメラ系は、かなり数多くのメーカーから出展されていた。そのなかでも、ひと味違ったアプローチをしていたのが「Kodak DVC-323」だ。
同社は昨年からすでにUSB対応の「DVC-300」を発売中(日本国内ではUSBの動作確認がとれないため販売されていない)で、本機はその改良型として今春発表されたもの。
本機の特徴は、動画だけでなく、640×480ピクセルのきちんとした静止画撮影ができる点。しかも、マニュアル式ながらもピント合わせ機能もあり、12.7cmまでの近接撮影もできる。簡単な書類の複写くらいなら、十分にカバーできる性能を備えている。つまり、3mのUSBコードが届く範囲であれば、VGAの静止画用カメラとして使え、単なる動画専用機よりもはるかに便利なモデルとなっている。
動画モードでは最大で320×240ピクセル、秒間30フレームでの撮影ができる。さらに、撮像素子がVGAサイズのCCDのため、320×240ピクセル時には、画質低下なしに2倍のデジタルズーム機能も利用できるという大きな特徴を持っている。
付属ソフトも「PictureWorks Live Multimedia」、「Kai's Power Goo」、「PhotoEnhancer」など豊富で、標準価格は169ドル。しかもアメリカでは50ドルのキャッシュバックがあるので、実質的には120ドルで購入できる。それでも、台湾系の安価なビデオ会議カメラに比べると価格は高めだが、機能や付属ソフトまで考えると、かなり魅力的なものといえる。
なお、写真にあるスケルトンモデルは、残念ながらデモ用という。
●Intel:CMOSチップ採用のスタイリッシュなIntelモデル
もちろん、IntelもUSB対応のビデオ会議カメラをすでに米国で販売している。こちらは撮像素子がCCDではなく、CMOSチップを採用している点と、デザインが(USSエンタープライズ風で)スタイリッシュなのが特徴。
このCMOSチップというのは、CCDに比べて製造が容易で、消費電力も少ないという、将来性のある撮像素子。
Intelはもちろん、Motorolaなどもかなり積極的に取り組んでいる。将来的に、ほとんどすべてのパソコンにビジュアル入力機器が装備される可能性がきわめて高く、かなりの需要が見込まれると踏んでいるわけだ。
しかも、ノートPCやH/PCなどバッテリ駆動の携帯情報機器にとって、消費電力がCCDの1/10程度で、量産が容易で安価な、CMOSのようなデバイスは最適。そのためCMOSへの力の入れようには、並々ならぬものがある。画質の方はCCDほどのクォリティーを期待できないが、それでも簡単な画像情報を得るだけなら、必要十分なものといえるだろう。
●その他
今まで紹介した大手以外にも、USBタイプのビデオ会議系カメラは数多く出品されていた。しかし、スペック上は、いずれの機種も27万画素クラスで、画像サイズも標準で320×240ピクセルと大きな違いはない。むしろ、スペックよりは、デザインで差別化をはかっており、いずれもなかなかユニークでSF的なものが多い。
【IREZ Research K ritter】 |
【Xirlink Video Phone】 |
【VLSI VISION VISION USB】 |
□COMDEX/Spring '98のホームページ
http://www.comdex.com/comdex/owa/event_home?v_event_id=234
□参考記事
【'98/4/23】COMDEX/Spring '98レポートインデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980423/cmds98_i.htm
('98/4/24)
[Reported by 山田久美夫]