【イベント】

プロカメラマン山田久美夫の

COMDEX/Spring '98 デジタルフォトレポート
デジタルカメラから直接CDが作れる電子アルバムシステム登場

ホール内部 主催:ZD COMDEX & FORUMS
期間:'98/4/20~/23
場所:米シカゴ



●盛り上がりを欠く“春コム”

ホール内部  COMDEX/Spring、通称“春コム”はどうも盛り上がりに欠ける。今回は昨年と違い、Windows 98やWindows NT 5.0などの大物が控えていることもあって、多少の期待感はあったものの、やはり内容的にはこれといった目玉のないイベントとなった。もっとも、先だって開催されたCOMDEX/Japanに比べれば、規模や出展社数も格段に多く、COMDEX/Fallには遠く及ばないものの、やはり本家の面目悠々という感はある。

 もっとも、昨年の春コムに比べると、来場者は意外に多く、ビル・ゲイツのキーノートスピーチがあった初日の午前中などは、人の波に押されて歩くのがやっとといったシーンさえあったのには、ビックリしてしまった。これは憶測だが、Windows 98の出荷時期でもめていた時期と、出展を募った時期が重なったような感もあり、とにかく、昨年の春コムでもそれなりのブースを構えていた大手メーカーが出展を控えているケースや、会場案内には掲載されているのに出展していないケースも見受けられた。

 さて、デジタルフォト関係の展示を見てみると、こちらもかなり低調。実際に、デジタルフォト関連としてガイドブックに名を連ねているメーカーは数えるほどしかなく、さびしい限り。なにしろ、キヤノン、オリンパス、カシオ、ソニー、サンヨー、エプソンといった有名どころがすべて出展していないのだから、この分野も盛り上がりに欠けるのは仕方のないところなのかもしれない。

 だが、詳細に見てゆくと、今後話題となる可能性の高い、注目すべき動きがいくつもあり、個人的には意外に楽しめるイベントとといえる。では、その注目株を紹介してゆこう。



●リコー:パソコンなしでCD記録可能な電子アルバムシステム「Media Station」

 昨年のCOMDEX/Springでその試作機を密かに展示していたリコー。そして今回は、いよいよそのプロトタイプが参考出品という形で姿を表わした! それがこの「Media Station」だ。

 CDプレイヤーのように見える本機だが、実はデジタルカメラの画像データをパソコンを介さずに、直接CD-Rに記録できる、電子アルバムシステムだ。
 記録媒体は、パソコンのCD-ROMドライブとの互換性の関係で、CD-RWではなく、ポピュラーなCD-Rを採用しているが、パソコン用CD-Rドライブとしては利用できないようだ。また、背面のパラレルポートによりプリンターとの接続も可能となっている。価格は参考出品のため未定だが、おおよそ499ドル程度を目標としているという。

 残念ながら、参考出品であり、プレス向け資料もなく、デモも行なわれていなかったが、説明用パネルなどを見る限り、なかなか多機能なようだ。

 まず、デジタルカメラで撮影したデータをPCカード経由、もしくはシリアルケーブルで本機に転送するだけで、簡単な操作でCD-Rに直接データを書き込んで、電子アルバムを作製できる。つまり、PCなしで、簡単にCD記録ができるわけだ。さらに、それにサウンドを加えたり、サウンドだけを記録して、オリジナルのCDを作製することもできるようだ。


 もちろん、CDに記録したデータは電子アルバムとして、編集したり、テレビ画面で楽しむこともできる。さらに、案内状などのテンプレートを装備しており、写真を使ったグリーティングカードの作製もできる。そして、プリンターを本機に直結することで、CD内の画像データをプリントしたり、グリーティングカードを印刷することも、パソコンなしにできるわけだ。

 記録したデータは、パソコンのCD-ROMドライブでデータを利用することができるので安心。つまり、いちいちパソコンを操作して面倒なCD-R書き込みをしなくてもいいので、非PCユーザーはもちろんのこと、PCユーザーにとっても、なかなか便利なツールといえそう。

 実際に、デジタルカメラの一般への普及にとって、プリントシステムよりも大きな問題となっているのが、このデータ保存システム。しかし、こんなシステムが安価に購入できるようになれば、PCユーザーはもちろん、PCが苦手なユーザーでも、気軽にデジタルカメラを使える時代になる可能性もある。

 残念ながら今回は参考出品であり、取材した初日は担当者が不在でデモも行なわれていなかったので、詳細は不明。とくに、価格面が気になるところだ(PC接続でCD-Rドライブとして使えるかどうかも不明)。だが、このようなパーソナル向けのCDベースの電子アルバムシステムが登場したことは、大いに注目すべき動きといえる。

 もっとも、現時点ではCD-Rベースがもっとも現実的でコスト面でも有利だと思われるが、今後の家庭内への普及を考えれば、このようなシステムを、ぜひともDVDベースで展開させて欲しいところ。CDでは音楽を楽しむのが精一杯だが、DVDプレイヤーとしても使えるのであれば、テレビの近くに置いておき、日常的に使える魅力的な“家電”になりそう。

 いずれにしても、このようなシステムが適価で普及すれば、デジタルカメラをもっともっと多くの人が、より気軽に使える時代になるための、ひとつの突破口となりうるコンセプトを備えた製品といえる。



●リコー2:「RDC-4300」こと「DC-4」も大プッシュ



 また、リコーはCOMDEX/Spring開催初日に国内発表した132万画素・3倍ズーム搭載の「RDC-4300」(日本名DC-4」を積極的にアピール。なにしろ、COMDEX会場でのDaily Newsの表4全面に広告を打つほどで、その力の入れようには、並々ならぬものを感じさせた。もちろん、ブースでも好評だった。ただ、あまりにコンパクトなので、3倍ズーム付きのメガピクセル機に見えないようだ。


●ミノルタ:ブローニー対応で3,000ドル以下の高画質フィルムスキャナー

 Dimage V以来、パーソナル向けデジタルカメラがでないミノルタ。だが今回は、中判カメラユーザー待望の6×9cm判フィルムまでスキャン可能な本格派フィルムスキャナー「Dimega Scan Multi」を初公開。

 まだ、参考出品段階なので、詳細なスペックは公開されていないが、ブースでの話では、価格は3,000ドル以下と、このクラスのスキャナーのなかでは、なかなかリーズナブル。発売時期は今夏になりそう。

 スキャンできるフィルムは6×9判までのブローニー判と、35mm、APSの幅広い。なかでも、ブローニー判用のフィルムキャリアはかなり凝ったものになっており、高画質なスキャンデータを得るために、フィルムの微妙な傾きを調整できる機能まで備わっていたのには感心する。

 スキャン時の解像度は不明だが、ブローニー判でも1,000dpi以上のスキャンができるようだ。

 従来、ブローニー判のスキャンは、低解像度なフラットベッドタイプで行うか、高価なPro Photo CDを依頼するかの、いずれかがメインだったわけだが、この価格帯(安価ではないが、納得できるレベル)で本格派フィルムスキャナーが登場したことは、注目に値する動きといえる。


●ニコン:「COOLPIX900」「LS-2000」でハイクォリティーをアピール

 実質的にアメリカ国内の大型イベントでは初公開となる、この春のニコンの製品群。もともと同社は、アメリカでのブランドイメージが高いこともあって、ニコンブースはなかなかの賑わいを見せていた。

 やはり注目を集めていたのは、130万画素で3倍ズームの「COOLPIX900」。やや大柄なモデルだが、体の大きなアメリカ人が手にすると、ごく普通のサイズに見えるから不思議。ブースでは実写デモや詳細な機能説明などが行なわれていた。もっとも、展示台数が少なく、マニアックな来場者は一度手にすると、なかなか手放さないこともしばしば。

 また、フィルム上のキズやゴミを自動的にキャンセルする高画質な35mm & APSフィルムスキャナー「LS-2000」の展示とデモも行なわれていた。こちらもなかなか人気が高かった。

 余談になるが、本機のデモにWindowsマシンはもちろん、Macintoshも使われていたのが妙に印象的。なにしろ、会場内はPC系一色といった感じで、Macintoshは本当にごく限られたブースでしかその姿を見ることはなかった。




□COMDEX/Spring '98のホームページ
http://www.comdex.com/comdex/owa/event_home?v_event_id=234
□参考記事
【'97/4/22】COMDEX/Spring '98レポートインデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970422/comdex_i.htm

('98/4/22)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp