創立者Jobsの復帰から一年。'98年を迎えたApple。「Think Different」をキーワードに新たな展開を始め、徐々に元気を取り戻しつつあるMacintoshの祭典「MACWORLD Expo/San Francisco」が1/6に開幕した。
さすがに、昨年のような異様な盛り上がりは感じられないものの、会場の雰囲気は比較的明るく感じられた。まずは、初日の会場の雰囲気をレポートしよう。
●長蛇の列となった基調講演
年始を飾る「MACWORLD Expo/San Francisco」は、CEOの基調講演から始まる。会場からほど近い講演会場では、Jobsの姿を一目見ようというMacファンの長蛇の列が数100mに渡って続き、講演会場を埋め尽す。さらに、入場できなかったユーザーはリアルタイムの中継が行われるExpo会場内のホールまでも満席にするという盛況ぶりだった(Macファンにとっては、年始恒例の行事だ)。
もっとも、期待していた正式なCEOの発表も、今春予定といわれるG3(PowerPC 750)搭載の上級機種のお披露目もなく、「MacOS 8.1」と「QuickTime 3.0」の発表、そして1年半ぶりの黒字転換が最大のニュースというもので、昨年に比べ、いまひとつインパクトに欠けるものだった。
●意外に平穏だったAppleブース
もちろん、G3搭載機の周囲には人だかりができてはいたが、猛烈なものではなかった。まあ、すでに市場で現物が見られる上、年末にかけてアメリカ最大級のPCマーケットチェーンであるCOMPUSAの店頭でMacintosh専用スペースを設置した展開をはかったことも大きく関係していることだろう(基調講演でもQuickTimeVRを使った専用スペースの紹介が行われた)。
個人的には、次世代OSであるRhapsodyやG3搭載の上級モデルが見られるものと期待していたこともあって、ややガッカリしたが、G3Macが健闘したクリスマス商戦直後であり、無理に年始に発表することもないのだろう。
●かなりの賑わいを見せた
G3アップグレードボードメーカー「newer」
AppleブースでのG3Macの人気もさることながら、それ以上の賑わいを見せていたのが、G3ことPowerPC 750を搭載した交換用ドーターボードのデモや販売を行っていたブースだ。なにしろ、PowerMacがドーターボード交換によるCPUアップグレードができるようになって以来、もっともドラスティックな高速化を実現した今回のG3だけに、本体の買い換えよりもボード交換によりパワーアップを目論むユーザーが意外なほど多いようだ。
また、会場に出展しているショップも、こぞってアップグレードカードの価格をアピールしており、以前から発売されていた604e系のカード類は一気に価格が下がっている点も、ユーザーのハートをくすぐるものがある。
●いよいよ本格化してきた「BeOS」
もともと、マルチメディア系に強いOSであり、同ブースには「The Medias OS」と誇らしげにうたわれているだけあって、その機能や先進性などには目を見張るものがある。
動画編集や3Dグラフィックソフトのデモを見る限り、同じマシン上でのMacOS用アプリケーションよりも遥かにスピーディーで、インターフェースもフレンドリーだ。個人的には画像処理系のオブジェクトエレメント集であるAdamaitonの「image Elements」の機能性にいたく感動してしまった。これらのアプリケーションは、各機能が独立したエレメントになっており、必要に応じて、必要なエレメントを連携させて利用するという、文字通りのオブジェクト指向のもので、実に合理的だし、自分の目的に合致した作業環境を容易に構築できる点が大きな魅力だ。もっとも、“何をしたいのか?”が明確に分かっている人にはいいが、ビギナーや現行の出来合いのアプリケーションに慣れ親しんでいる人には、かなり違和感があるかもしれない。
もちろん、BeOSのプレリリース版(約10ドル)のほか、先のアプリケーションも実際にブースで販売されており、いずれも100ドル以下のプライスとなっていた(ちなみに、「image Elements」は65ドルだった)。
●狭間に見られるMSの影
やはりここはMacintoshのイベント。なにしろ、基調講演途中でのブーイングや笑い声聞いていてもそうだし、会場内ではパロディーソフトである「Windows 98」ならぬ「WinBlows 98」なるものまで販売されているほどだ。
逆にいえば、Macintoshであろうと、Windowsであろうと、同じアプリケーションがほぼ同じ操作性でファイル互換が保てるのであれば、ユーザーは好きなOSを選ぶことができるわけだ。両方のマシンを使っている私としては、選択肢が増え、便利になるのは大いに喜ぶべきことだと思うのだが、根っからのMacintoshユーザーにとっては、MacOS 8.1でもIE4標準搭載を含め、心中穏やかではないようだ。
□MACWORLD Expo/San Franciscoホームページ
http://www.macworldexpo.com/mwsf98/index.html
□Macworld/Pro Conference情報ページ
http://www.macworldexpo.com/macworldpro/frame.html
【関連記事】
□MACWORLD Expo/San Francisco関連リンク集(Internet Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/980105/macw.htm
('98/1/7)
[Reported by 山田 久美夫]