【イベント】


山田久美夫の
「MACWORLD Expo / San Francisco '98」フォトレポート

'98/1/6~1/9開催(現地時間)
開催地:サンフランシスコ

入り口1 入り口2 入り口3

 創立者Jobsの復帰から一年。'98年を迎えたApple。「Think Different」をキーワードに新たな展開を始め、徐々に元気を取り戻しつつあるMacintoshの祭典「MACWORLD Expo/San Francisco」が1/6に開幕した。

 さすがに、昨年のような異様な盛り上がりは感じられないものの、会場の雰囲気は比較的明るく感じられた。まずは、初日の会場の雰囲気をレポートしよう。



●長蛇の列となった基調講演

 年始を飾る「MACWORLD Expo/San Francisco」は、CEOの基調講演から始まる。会場からほど近い講演会場では、Jobsの姿を一目見ようというMacファンの長蛇の列が数100mに渡って続き、講演会場を埋め尽す。さらに、入場できなかったユーザーはリアルタイムの中継が行われるExpo会場内のホールまでも満席にするという盛況ぶりだった(Macファンにとっては、年始恒例の行事だ)。

 もっとも、期待していた正式なCEOの発表も、今春予定といわれるG3(PowerPC 750)搭載の上級機種のお披露目もなく、「MacOS 8.1」と「QuickTime 3.0」の発表、そして1年半ぶりの黒字転換が最大のニュースというもので、昨年に比べ、いまひとつインパクトに欠けるものだった。

行列1 行列2 Jobs暫定CEO


●意外に平穏だったAppleブース

apple apple
 世界を動かした歴史に残る偉人たちの肖像に彩られたAppleブース。「Think Different」と掲げられたブースには、今回発表された「MacOS 8.1」と「QuickTime 3.0」のデモンストレーションが行われ、話題のG3マシンが並ぶ。基調講演が終わり、どっと人が押し寄せるかと思ったが、ブースは意外に平穏で、昨年のような熱狂的な賑わいは感じられなかった。むしろ、今年の状況がごく普通の姿といえそうだ。

 もちろん、G3搭載機の周囲には人だかりができてはいたが、猛烈なものではなかった。まあ、すでに市場で現物が見られる上、年末にかけてアメリカ最大級のPCマーケットチェーンであるCOMPUSAの店頭でMacintosh専用スペースを設置した展開をはかったことも大きく関係していることだろう(基調講演でもQuickTimeVRを使った専用スペースの紹介が行われた)。

 個人的には、次世代OSであるRhapsodyやG3搭載の上級モデルが見られるものと期待していたこともあって、ややガッカリしたが、G3Macが健闘したクリスマス商戦直後であり、無理に年始に発表することもないのだろう。


【Appleブースパノラマ】
会場全景

【メインストリート】
メインストリート



●かなりの賑わいを見せた
 G3アップグレードボードメーカー「newer」

 AppleブースでのG3Macの人気もさることながら、それ以上の賑わいを見せていたのが、G3ことPowerPC 750を搭載した交換用ドーターボードのデモや販売を行っていたブースだ。なにしろ、PowerMacがドーターボード交換によるCPUアップグレードができるようになって以来、もっともドラスティックな高速化を実現した今回のG3だけに、本体の買い換えよりもボード交換によりパワーアップを目論むユーザーが意外なほど多いようだ。

newer1 newer2
newer3 newer4

Newerグラフ
 なかでも、G3Mac発売以前から独自にPowerPC 750ボードを発売していた「Newer」のブースは、会場内でも屈指の賑わいを見せていた。同社では本家よりもクロックの速い「PowerPC 750/275」のドーターボードはもちろん、日本でも人気の高い「PowerBook 2400」用のG3カード、ドーターボード交換をサポートしていない初代PowerMac(6100,7100,8100など)用のアップグレードボードまでラインナップされている。さらに、ブースの外側の壁面には手持ちのMacにPowerPC 750ボードを装着したときのベンチマーク値が巨大なグラフで掲載されており、その気にさせるに十分な演出が行われていたのも大きなポイントといえるだろう。

 また、会場に出展しているショップも、こぞってアップグレードカードの価格をアピールしており、以前から発売されていた604e系のカード類は一気に価格が下がっている点も、ユーザーのハートをくすぐるものがある。



●いよいよ本格化してきた「BeOS」

BeOSのブース2 BeOSのブース
 一時期は次期OSのベースになるのではとまでいわれた「BeOS」。もちろん、昨年の同イベントでのNextStepの合併以来、若干下火になった感もあるが、今回のExpoではOS本体こそまだプレリリース版しか販売されていないが、BeOS上で稼働するオブジェクト指向のグラフィック系アプリケーションがほぼ出揃っていたのには驚いた。

 もともと、マルチメディア系に強いOSであり、同ブースには「The Medias OS」と誇らしげにうたわれているだけあって、その機能や先進性などには目を見張るものがある。

 動画編集や3Dグラフィックソフトのデモを見る限り、同じマシン上でのMacOS用アプリケーションよりも遥かにスピーディーで、インターフェースもフレンドリーだ。個人的には画像処理系のオブジェクトエレメント集であるAdamaitonの「image Elements」の機能性にいたく感動してしまった。これらのアプリケーションは、各機能が独立したエレメントになっており、必要に応じて、必要なエレメントを連携させて利用するという、文字通りのオブジェクト指向のもので、実に合理的だし、自分の目的に合致した作業環境を容易に構築できる点が大きな魅力だ。もっとも、“何をしたいのか?”が明確に分かっている人にはいいが、ビギナーや現行の出来合いのアプリケーションに慣れ親しんでいる人には、かなり違和感があるかもしれない。

 もちろん、BeOSのプレリリース版(約10ドル)のほか、先のアプリケーションも実際にブースで販売されており、いずれも100ドル以下のプライスとなっていた(ちなみに、「image Elements」は65ドルだった)。


image Elementsパッケージ BeOS用アプリケーションの画面 BeOS用アプリケーションの画面2


●狭間に見られるMSの影

 やはりここはMacintoshのイベント。なにしろ、基調講演途中でのブーイングや笑い声聞いていてもそうだし、会場内ではパロディーソフトである「Windows 98」ならぬ「WinBlows 98」なるものまで販売されているほどだ。

Winblows98ブース Winblows98
Winblows98 Tシャツ Winblows98のデモ

Microsoftブース
 そして、今回のExpoでの大きな目玉であり、Macファンにとって気になる存在が、いよいよMacintosh版が登場するMicrosoftの「Office 98」だ。もちろん、このアプリケーションが登場することで、Macintoshユーザーにとってデータ互換を含め、かなり便利になることは確実だ。

 逆にいえば、Macintoshであろうと、Windowsであろうと、同じアプリケーションがほぼ同じ操作性でファイル互換が保てるのであれば、ユーザーは好きなOSを選ぶことができるわけだ。両方のマシンを使っている私としては、選択肢が増え、便利になるのは大いに喜ぶべきことだと思うのだが、根っからのMacintoshユーザーにとっては、MacOS 8.1でもIE4標準搭載を含め、心中穏やかではないようだ。

□MACWORLD Expo/San Franciscoホームページ
http://www.macworldexpo.com/mwsf98/index.html
□Macworld/Pro Conference情報ページ
http://www.macworldexpo.com/macworldpro/frame.html
【関連記事】
□MACWORLD Expo/San Francisco関連リンク集(Internet Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/980105/macw.htm

('98/1/7)


[Reported by 山田 久美夫]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp