【イベント】

MACWORLD Expo/San Francisco 基調講演レポート

AppleMasters - Macintoshで世界を変える人々

 MACWORLD Expo/San Franciscoの基調講演3は、「AppleMasters, Forward Thinkers and World-Changers」と題され、Macintoshを愛用する著名人たちの「私の使い方」の発表会となった。

 コンピュータは前向きな発想や世界を変えるアイデアがあってこそ生かされるもの。Macintoshがより優れた思想の持ち主のための、より優れた道具であることをアピールするため、米Apple Computer社はMacintoshを愛用している著名人を集めた「AppleMasters」というプロジェクトを進めている。プロデューサー、デザイナー、ミュージシャン、俳優、作家、学者、スポーツ選手など、多岐に渡る分野から選ばれたAppleMasterたちは現在52名。Macintosh普及の代弁者の役を果たすことになるので、社会的に知名度が高いことが条件だが、登録に対する報酬があるわけではない。その代わり、各自が希望する慈善団体にMacintoshのハードウェア一式が寄付されるというものだ。

 当日、会場には約15名のAppleMasterたちが登場し、限られた時間の中でMacintoshに対する熱い思いを次々と語った。仕事から余暇まで各々使い方は異なるが、Macintoshへの情熱はみな同様。その中から5人のAppleMastersをご紹介しよう。


●ハリー・マークス

ハリー・マークス  「当時、周りからはパソコン狂いの変人扱いされていたけど、Macintoshは、他人とは違うことをやっているという実感を与えてくれた」と言うハリー・マークスは、エミー賞を含む数々の放送デザイン賞を受賞している映像デザイナーの大御所。'60年代に、米国ネットワークテレビ局ABCとCBSの副社長、テレビCMの制作監督、NBCのグラフィックコンサルタントを同時にこなしていたというテレビ映像の先駆者だ。コンピュータでの画像編集には大きな関心を持ち、テレビ局のロゴなどを独力で試行錯誤しながら制作していた。その産物として、コンピュータ編集によるテレビCMも多く生まれたという。現在の、テレビ画像へのコンピュータの進出には、彼が大きく貢献している。Apple/Macintoshに対しては、発売当初からその画像編集力の虜になったという。




●ドナルド・グレーサー博士

ドナルド・グレーサー博士  「複数の理論のうち正しいのはただひとつ、シミュレーションが無駄な時間を省いてくれる。操作の簡単なMacintoshのお陰で研究や講義に時間がたっぷり取れる」と言うドナルド・グレーサー博士は、素粒子の検証を可能にするバブルチェンバー発明の功績により、'60年に若干34歳でノーベル賞を受賞した物理学者だ。その後、分子生物学、細菌遺伝学、遺伝子工学と研究を進め、現在の課題は大脳の視覚システム。QuickTimeによる視覚伝達のシミュレーションをスクリーンに映しながら「ビジュアリゼーションは有効な選択を容易にするのに役立つ」と語った。PhotoShopを使ったスライドの投影など、もっぱらプレゼンテーションを担当するのは、やはりAppleMastersの一人であるグラフィックデザイナーのラッセル・ブラウン。博士は人を使っての時間の節約もお得意なようだ。




●ジェニファー・ジェイソン・リー

ジェニファー・ジェイソン・リー  「1年半前にMacintoshに出会ってから、もうPhotoShopに夢中!」と言うのは、「黙秘」「ルームメイト」などで人気の映画女優、ジェニファー・ジェイソン・リーだ。舞台慣れしているはずの彼女も、Macintoshに精通した観客で埋った会場を見て多少あがり気味。「個人的に作ったカレンダーだけれど」と言いながらも、スクリーンに現われたのは玄人はだしの、洒落たコラージュ風のグラフィックの数々だった。寝る前に必ず読むのが「Mac Secrets」で、あまりに面白くて寝そびれてしまうことも度々なのだそうだ。初めてMacintoshに出会った時の感動を思い出させてくれる、初々しいプレゼンテーションだった。




●グレゴリー・ハインズ

グレゴリー・ハインズ  「Macintoshが大好き」「PowerBookが大好き」と、お馴染みのタップダンスの合間に歌うように語るのは、俳優、ダンサー、そして監督でもあるグレゴリー・ハインズ。舞台の他にも、現在、テレビドラマ「Gregory Hines Show」を撮影中の彼は、PowerBookが手放せない。QuickTakeやNewtonも持ち歩き、遊び心の表現に利用しているという。そんなユーモアたっぷりのハインズ、ステージの横で基調講演を手話通訳している女性に気付き、突然手話との掛け合いを挑んだ。感情たっぷりのラブソングを歌い始めたハインズに、女性も負けじと表情たっぷりに通訳の動作。だんだんテンポの速くなる歌と手話のバトルに、長い基調講演に疲れをみせていた一般客も手話に頼っていた観客も、どっと笑いに包まれた。




●モハメド・アリ

モハメド・アリ  15名のAppleMasterたちの発表が終わり、全員が壇上に勢揃いしたクライマックス。最後に呼ばれたのは、それまで客席でじっと発表を見ていたモハメド・アリだった。プロボクサーとしての輝かしい経歴だけでなく、当時の人種差別をはっきりと指摘した発言や行動は、現在でも多くの人々の心に焼き付いている。引退後の世界平和に対する活動も評価され、AppleMastersの趣旨を代表するような存在のアリ。3つの基調講演の中で、観客が総立ちになって拍手を送ったのは、この一瞬だけだった。




 基調講演の中では娯楽性の高かったこのセッション。Macintoshに限らずコンピュータがいかに発想や創造に役立っているかを改めて感じさせてくれる、とても人間的な講演だった。

 AppleMastersの活動は、AppleMastersのオフィシャルサイト(http://www.applemasters.com/)で紹介される。

□AppleMasters
http://www.applemasters.com/
□MACWORLD Expo/San Franciscoホームページ
http://www.macworldexpo.com/mwsf98/index.html
□Macworld/Pro Conference情報ページ
http://www.macworldexpo.com/macworldpro/frame.html
【関連記事】
□MACWORLD Expo/San Francisco関連リンク集(Internet Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/980105/macw.htm

('98/1/7)


[Reported by saori@earthlink.net、Internet Watchで「サオリ姉さんのSurfin'USA 」連載中]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp