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一方、色や階調の再現性に関しては、若干好き嫌いが分かれるところ。というのは、本機は色やコントラストをかなり強調した絵作りになっており、シーンによっては、やや現実離れした“造られた美しさ”に感じられるケースがある。これは同じ原色系CCDを採用した35万画素クラスの「C-400L」シリーズに近い絵作りといえる。
人間には目で見たシーンを記憶するときに、現物よりも鮮やかで明快なものとして記憶するという特性があり(これを記憶色という)、本機はこれに近い再現性を持たせたものといえるだろう。もちろん、大半のシーンでは、実物よりもきれいに写るため、好まれるケースが多いが、ともすると、“意図的に作った色”という感じになり、それ自体が鼻につくこともある。
私自身は若干派手目のほうが好きなのだが、今回のテスト機を見る限り、「ちょっと、ヤリ過ぎじゃないかなあ~」という感じがする。とくに、原色系が異様なほど鮮やかに写る点には、違和感を感じざるを得ない。このあたりになると、好みの世界がかなりあるが、いずれにせよ「これがオリンパスの絵作りだ」という明確な主張が感じられることだけは確かだ。
また、明暗の再現域も、若干狭い印象があり、コントラストの高いシーンを撮影すると、ハイライト(明るい部分)がやや白く飛び気味になる点も気になった。もしかすると、これはCCDの特性なのかもしれないが、解像度がきわめて高く、好印象なだけに、ちょっと残念なところだ。
ホワイトバランス機能はオートのみで、タングステン光でも蛍光灯でも、ほぼ完全に補正してしまう。通常のシーンではこれで十分だが、高画質で作品作りにも耐えるモデルだけに、ホワイトバランスのマニュアル設定機能はぜひとも欲しいところ。このクラスでこの機能が採用されていないのは、甚だ残念だ。
●意外にコンパクトなL型一眼レフ
さて、これだけ高画素数のモデルで、しかもズーム付きとなると、気になるのがボディーサイズや操作感だ。詳細は後日にレポートするが、ここでは概要をレポートしよう。
本機は、これまでのパーソナル機と違って、「ズームレンズ一体型一眼レフ」という独特な形式のモデルとなっている。一眼レフというのはファインダーの形式で、簡単にいうと、撮影とファインダーに同じ光学系を用いたもの(そのため“一眼”という)。本機の場合は、3倍ズームレンズが一体化されており、レンズ交換ができないので、従来からのレンズ交換式35mm一眼レフとはややイメージが異なり、オリンパス独自ともいえるズームレンズ一体型のL型ボディーを採用している。このタイプは登場当時、一眼レフとコンパクトカメラの架け橋的な意味合いから「ブリッジカメラ」と呼ばれたもので、現在ではオリンパスだけが採用している形式だ。
もちろん、従来からの、いわゆるコンパクトカメラ風スタイルのモデルに比べると、サイズは大きめ。とくに体積(専有面積)が大きいので、収納性はさほど優れない。もっとも、見た目よりも遥かに軽量なので、肩から下げて持ち歩いても、気が抜けてしまうほど。その意味で、“一眼レフ”としては、携帯性は十分にリーズナブルなレベルにある。だが、サイズ的に見ても、“一眼レフ”という形式からいっても、普段から気軽に持ち歩くというスタイルのものではないことだけは確かだろう。その意味では、従来の「C-820L」をはじめとしたコンパクトカメラ風モデルとは、かなり趣が異なるモデルといえる。もっとも、この画質に最大の魅力を感じる人にとっては、このサイズや収納性、携帯性など、まったく気にならないという人がいてもおかしくはないが……(私もその一人かも)。
また、このL型ボディーのメリットとして、カメラのホールドが安定するという点がある。つまり、右手で大きなグリップ部を持つと、自然と左手はレンズ部を支える姿勢になるわけだ。そのため、カメラブレが少なく安定した撮影ができるわけだ。なにしろ、本機のような高解像度モデルは微妙なカメラブレが原因で、画質を大きく損なってしまう。そのため、このホールディングのよさは重要な要素といえるわけだ(それでも、本機は感度がISO換算で100相当。しかも大口径とはいえズームレンズ付きのため、雨天や夕景などでは簡単に手ブレを起こしてしまうので、撮影はかなり慎重におこなう必要があるのはいうまでもない)。
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本機は前記の通り、一眼レフ形式のファインダーを採用している。一眼レフユーザーならすぐに分かると思うが、この形式は撮影レンズを通過した光をフォーカシングスクリーン(一種の磨りガラス)上に一度結像させて、実際に写る画像に近い画像を光学的に確認できるものだ。
しかも、本機は実際に写る範囲の95%もの範囲がファインダーで見えるという、かなり本格的なもの。もちろん、従来からのコンパクトカメラ風モデルのようなレンジファインダー式モデルと違い、マクロや接写時でも実画面との視差がないため、実に便利なものといえる(もっとも、通常のモデルの液晶ファインダーは、結果的にこの一眼レフ式ファインダー以上に確実に、実際に写る画像を確認できるわけだが)。
さて、このように書くと、35mm一眼レフユーザーは、当然のことながら、ピントもきちんと確認できるものと誤解するだろう。しかし、本機はファインダーの明るさを最優先させるために、フォーカシングスクリーンに相当するものがほとんど素通し(いわゆる空中像)のため、明確なピントの確認は事実上、できない(ボケている場合は、なんとなく分かる程度で、微妙なフォーカスの違いは判断が付かない)。つまり、一眼レフといっても、フレーミングの確認だけしかできず、これは実に残念だし、大いに疑問を感じるところ。しかも本機は、液晶モニターを撮影時にファインダーとして利用できない点も不便だ。このあたりは、早急な改良を希望したいところだ。
ちなみに、ピントはコントラスト検出型のTTL式オートフォーカス。速度も実用十分で、概ね良好なフォーカスが得られるが、シーンによっては全く測距不能な場合や、意図した位置とは異なる距離にフォーカスされるケースもあった(もちろん、フォーカスがほとんど確認できないので、撮影後にパソコン上で拡大してみて、初めてピントが合っていないことに気付くので、後の祭りだ)。とくに、暗いシーンでは測距不能でシャッターが切れないケースも多く、苛つくこともあった。
シャッターを押してから写るまでの時間差(タイムラグ)はかなり短く、動きのあるシーンでも比較的容易に撮影できる。また、コダックのDC120のように、シャッターを切るとその直後に液晶モニターに画像が表示される。もっともこれは内部で処理する以前のもので、記録後に再生すると色合いなどは結構違っているが、液晶をファインダーとして使えないため、これだけでも安心感がある。
なお、画像の記録速度は、標準的な1,280×1,024ドットのHQモードで、約10秒弱とまずまずの速度。画像サイズを考えると、実用レベルといえる。
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【1,024×1,280pixel(458KB)】 |
【1,280×1,024pixel(289KB)】 |
操作性はなかなかよく考えられている。基本的には、ファインダーを覗き、シャッターを押すだけのイージー操作を実現している。もっとも、一眼レフ式ファインダーなので、操作に不慣れな人は最初は戸惑うかもしれないし、やはり普通のコンパクト機タイプとは操作感覚が異なるので、馴染むまで時間がかかるかもしれない。しかし、慣れてしまえば、ほとんど違和感なく使えるレベルといえる。
操作部の配列も比較的分かりやすく、取扱説明書を一読すれば理解できるレベル。このあたりの作り込みは、カメラメーカーらしいノウハウが感じられる部分だ。
しかし、ズームリングの操作感などには、もう少し高級感というか、質感が欲しいというのが正直なところ。これはボディー全体にもいえることだが、本機は128,000円という価格を実現するために、カメラとしての質感や微妙な操作感という点を、意識的に作り込んでいない感じがする。画質はもちろん、このあたりの作り込みはカメラメーカーが得意とする分野だけに、次機種、もしくは上位機種(があるとすれば)では、ぜひともこのあたりにも心を配ったモデルが欲しいところだ。
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記録媒体はスマートメディアを採用。しかも、3.3Vカード専用で、さらに今日の発表会では8MBカードまでしかサポートしていない(16MB、32MBは未対応)という説明があったという、なかなかのシロモノ。なにしろ、現時点では3.3Vカードは4MBまでしか市場になく、これでは12枚程度しか撮影できない(実際にはもう数枚多く撮影できるケースが多いが)。さらに、8MBカードを使っても24枚強では、なんとも物足りない。やはり、現時点のスマートメディアで、本格的なメガピクセルモデルに対応するのは、やや荷が重すぎるといわざるを得ない。
また、短時間の実写で一番もっとも気になったのは、電池の消耗。なにしろ、普段撮影している時のように、電源を入れっぱなしで持ち歩きながら撮影すると、新品のアルカリ電池を入れても、4MBカード1枚(12枚)を撮るのがやっと。もちろん、液晶モニターがつきっぱなしになるわけではないので、もっと持つだろうと思ったのだが、比較的こまめに電源を切っても、私の使い方では4MBカード2枚程度が限度だった(ストロボ不使用時)。 メーカー側の説明によると、本機はメインスイッチをONにすると、常時CCDに通電しており、測光などをおこなっているため、電力を消費するという。つまり、電源スイッチを入れて持ち歩くと、3分でオートパワーオフが効くとはいえ、その間は電池を食いっぱなし。そのため、アッという間に、アルカリ電池が2ダースも無くなってしまった。そのため、本機はかなりこまめに電源を切り、さらにニッケル水素バッテリーなどを利用するのが一番安心だろう。
とはいえ、やはり、このような設計には疑問を感じざるを得ないのは確かだ。このあたりも次機種か、できればマイナーチェンジ版という形でも、早急に改良を希望したいところだ。
正直にいって、「よくここまで作ったなあ~」というのが、今回、短時間ではあるが、本機を使っての感想だ。なにしろ、カメラの開発にはかなりの年月を要するもの。実際に本機も、プロジェクトが動き出してから2年で発売にこぎ着けたのだから、カメラ系メーカーの開発ペースとしては、かなり頑張っている。もちろん、これまでの多くの同社のモデルは、他社との共同開発というスタイルで進行しており、その分、この「Cー1400L」「Cー1000L」に力を注ぐことができたわけだ。もちろん、本機はそれに見合うだけの価値あるモデルに仕上がっている。
確かに、解像度に関しては、従来からのパーソナル機とは一線を画すレベルに仕上がっており、絵作りの点でも好みの問題はあるにせよ、明確なポリシーを感じさせる。
実際に本機を見ると、実にカメラメーカーらしい、“従来の銀塩カメラの延長上”にある、現時点でかなり理想的な要素を備えたデジタルカメラとなっている。
だが、それ以外の部分では、明確な割り切りや作り込み不足が感じられる部分もある。とくに、“カメラ”としての質感や微妙な操作感、さらには意図的な作品を作ろうとする際に必要となるフォーカスやカラーバランスの微妙な設定などは、かなり割り切られたものになっている。その意味では、今一つ、本機の性格付けが明確ではないという点に、じれったさを感じる。もっとも、2年前に現在の市場とユーザーの要求を予測しろという方が無理だという話も、その一方ではあるわけだが、もう少し明確な方向付けができなかったかという点が悔やまれる。
もちろん、128,000円という価格を実現することは、決して容易なことではないのは十分に想像できるし、そのためには、さまざまな割り切りが不可欠だったのかもしれないが、やはり本機の不明確な性格付けはとても残念だ。個人的にはあと数万円高くてもいいから、オリンパスがカメラの世界で培ってきた技術やノウハウや人間工学的設計をフルに投入した、より“高品位モデル”を見てみたい。
本機はきわめて画質を重視したモデルとはいっても、やはり基本的には一眼レフであり、サイズや操作性も従来のコンパクト機タイプとはやや異なるカテゴリーの製品といえる。そのため、単に画質だけを求めて本機に飛びつくと、違和感を感じる人がいるかもしれない。その意味で本機は、画質や機能などをきちんと理解した上で、納得づくで購入するべきモデルといえる。
もちろん、本機はオリンパスにとって、事実上初めての純粋な自社開発モデルであり、その第一弾と考えると十分な仕上がりであり、それを踏まえたうえでの展開となるため、今後の新製品は大いに期待できそうだ。
私自身は、本機のような優れた解像度のユニットを、「C-820L」のような誰にでも気軽に扱えるボディーに組み込んだモデルを、強く希望したい。デジタルカメラをきちんとした文化として根付かせるためには、そのようなモデルがぜひとも必要であり、それにもっとも近い距離にいるのが、オリンパスなのだから。
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□オリンパス光学工業株式会社
http://www.olympus.co.jp/index.html
□ニュースリリース
http://www.olympus.co.jp/LineUp/Digicamera/c1400l.html
□参考記事
【9/17】オリンパス、光学3倍ズーム付き高画素デジタルカメラ「C-1400L/C-1000L」
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/970917/olympus.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/digicame/dindex.htm
■注意■
('97/9/17)
[Reported by 山田 久美夫 ]