【リレー連載 物欲道修行記】


リレー連載 物欲道修行記

第52講 気絶派 師範:スタパ齋藤

 第52講では、ザウルスを愛し続けてン年のスタパ師範のパワーザウルス購入記です。パワーザウルスは、編集部でも評判が非常に良く、Watch編集長も購入、愛用の一品となりそうです。ザウルスはインプレスでもユーザーが多く、またWizのユーザーもかなりおりまして、PDAはやはりシャープ強し!ってかんじなのです社内でも。
(という編集担当はWizを住所録にしています)


パワーザウルスはザウルスユーザーのタブーだ!!

その買い物に不満はないか!?

 モノを買うとき、完全かつ徹底的に「これだ!! これなのだ!!」と納得して買っているだろうか? あなたの小指とモノの小指が赤い糸で結ばれていたと思えるような買い物をしているか?

 俺の場合、購入時は「これだゼやったァ絶対的に完全にコレが欲しいんだもんネ~チューパッ(接吻音)」と思っているのだが、買ってしばらくすると、まるで乾いたトタン屋根に小雨の点が刻まれるように、ポツリ、ポツリ、と不満が噴き出して来る。だがそれは感極まって購入したモノ、自分でその不満を不満として認め得ない。認めればこれすなわち自己否定……そんなに大げさなコトでもないが、「腕立て伏せ20回くらい楽勝っスよ」と言ったその場で始めた腕立て伏せの15回目で挫折したうえにギャラリーの冷たい視線を感じるような後味の悪いことになる。

 だからもしも買ったモノに不満が出たとしても、
「あれぇ~なんか~。ココがちょっとアレだけど、まあそれも逆にシブ……いよ な。そうそうシブいシブい」
「なんかやっぱこの機能がいまひとつ……いやでも、まあ、これでも実用上十分 か。そうだそうだ十分だよ十分」
 などとゆーふーに自分で自分に言い聞かせたりするのだ。

 だが、最近思うに、こういう個人内部にありがちな葛藤というのは、もしかしたら実はメーカーにまんまと利用されてたりするかもしれないいや利用されてるに違いないんだゼくわッ!! と。
 だって例えばせっかく買ったノートパソコンとかって半年もするとCPUクロックが上がってディスクやメモリの容量が増えて値段もかなりリーズナブルになって再登場したりするのだ。しかもその性能向上がユーザーの葛藤を解消するような、まさにポイントだったりするから疑わしい。あー疑わしいったら疑わしい!!

 でもまあいいのだ。ユーザーが欲しがるようなモノを次々とメーカーが作り出すような状況こそ、我々にとってはおもしろい。


パワーザウルスはザウルスユーザーのタブーだ!!

強欲な人向けのパワーザウルスMI-506DCモデル。 今度のザウルスはモノクロザウルスサイズでカラーザウルスをしのぐ性能だ
 このたび、モノクロザウルスユーザー及びカラーザウルスユーザーが常々思っていたけど口に出さなかった(出してるかも!?)タブー的コンプレックスを完全に解消するような製品すなわちパワーザウルスが登場した。

 モノクロザウルスユーザーはカラーザウルスのカラー液晶や高度な通信機能を羨ましいと思うが「あんなでっかいザウルスなんかザウルスと言えないよね~電池ももたないし~」と言う。カラーザウルスユーザーは「シャープならではの美麗カラー液晶と高度な通信機能はもはやサブノートを超えてるよね~」と、そのヘタするとVHSのビデオテープよりかさばるPDAを褒め称える。
 そこへだ、サイズがモノクロザウルス並みで電池もよくもって今までのザウルスの通信機能を全て持ち合わせたうえ通信速度も抜群に速くてメモリ容量も最大級でキーボードまでつながっちゃう新型ザウルス、パワーザウルスが登場しやがられた!!

 このありったけの機能と利便を備えた新ザウルスは、モノクロザウルスユーザーとカラーザウルスユーザーがせっかく編み出した自己納得理論を完全に打ち崩してしまう。まあ、最後の説得力ある納得方法として、「あんなに高いモン買うならサブノート買うよね普通」というのもある。カラーザウルスのデカさと重さと処理速度的重さなどをコンプレックスに感じてきたカラーザウルスユーザーの俺は、その納得方法に「そうだよなあんなカラーザウルスのリメイクみたいなモンに10何万払うなんざぁバカらしいから東芝のノートパソコンとかNECのノートパソコンとかそーゆーの買うでしょ絶対そうでしょ笑わすなよ10万超えるPDAなんざケッ」と応えるような強い納得力など到底持ち合わせていないので、もちろんパワーザウルスが発表されたと同時に予約注文して発売日にゲットした。

 すなわち、モノに目がくらんで、これまで高い金を払い続けてきたザウルスユーザー各位のタブーを、自ら進んで侵し、どのザウルスにも負けない超快適最新型ザウルスのユーザーとなった。


それにしてもシャープってヤルぜ

 シャープは商売がうまい。俺はこれまでPI-4000、PI-5000、PI-6000、PI-7000、MI-10DCの5台のザウルスを買って使ってきたのだが、新機種に買い換えるときはいつも、その新機種が俺を旧機種からくる残念感から解放してくれるようなシクミになっていたからだ。

 ああっ新型はメモリ容量がアップ!! ああっ新型はよりコンパクト!! ああっ新型の文字認識精度がすげえイイ!! ああっ新型はデジカメ付き!! “ああっ”とよろめき続けているカモ的存在の俺だ。そして最近の“ああっ”は、ああっモノクロザウルスサイズでカラーザウルスを凌ぐ性能!! であった。

 もうこれはユーザーのコンプレックスを研究して製品開発しているのではないかと思えるほど、うまい。まあ、ユーザーが求めるものを正直に製品化していると考えれば、シャープは実にユーザー本位のメーカーだと言えるのだが、ここでメーカー分析とか批判をやってもしょうがないので、とにかくパワーザウルスの話だ。

 パワーザウルス、これは実に欲しくなったハードウェアだ。
 ザウルスとして見れば、他のどのザウルスよりもいい(と思う)し、単なるPDAとして見ても他のPDAではなし得ない機能を多量に持っているし、デジカメとして見れば液晶ファインダーが世界で2番目にデカい珍品だ、ってこれは蛇足か。

 俺の場合、仕事柄というか性格上、いろんなPDAを使ったりしているが、他のPDAから見れば、パワーザウルスの装備は非常に豪華で実用的だ。また、仕事柄というか趣味上、俺は各種ザウルスを使ったりしたが、他のザウルスから見れば、パワーザウルスは現在のザウルスの最終形態と言えるほどよく練られた内容だ。
 この時期にこの製品。これを買わなければ、俺のハードウェア生活は、爆弾を積み忘れた爆撃機みたいなモンなのである。決め手のマシンとして買わざるを得ない。

◆パワーザウルスとVHSテープ
厚さ23mmと、カラーザウルスと比べぐっとスマートになった。
◆パワーザウルスとVHSテープ
幅161mm×奥行90mmとVHSテープよりじゃっかん小さい。しかし薄いので手に持つともっと小さい感じがする。
◆カメラカード
光学4倍ズームもつき、デジタルカメラの性能も向上した。カメラ部は180度回転する。


今さらスペックですいません

さらに強欲な人はオプションのキーボードもどうぞ。サイズは小さいが、ヨコ方向のキーピッチは14mm。リブレットより1mm長く、器用さにもよるが実用の範囲か。
 パワーザウルスは3機種ある。まず標準価格10万円のMI-504は、メモリ4MB搭載(ユーザーエリア1.45MB)で、モデムなし、同梱のパソコンリンクソフトなしのモデル。既にパソコンとのリンク環境が整っていたり、PCMCIA準拠のモデムカードを持っていたり、あるいは通信なんかしないしハードにも使わないけどパワーザウルスが欲しい、という人のためのモデルと言えよう。
 標準価格13万円のMI-506は、メモリ6MB搭載(ユーザーエリア3.4MB)で、33.6kbps/14.4kbpsのファックスモデム内蔵、Windows95版のパソコンリンクソフト『ザウルスパワーコネクション』を同梱したモデル。ネットワーク指向でデジカメ機能を使わない人向けだ。
 で、俺が買ったのはパワーザウルスのモデルMI-506DC。コレはMI-506に専用のデジタルカメラカードを同梱したモデル。いわゆるひとつの全部入りと言えよう。俺のような強欲な人向けである。

 で、購入したモデルということで、ここからはMI-506DCについて書いてみたい。
 まず使ってみて驚いたのが、ボディーがシルバーだと言うことっていうかそんなの使う前に見てわかれよ>わし。でさらに驚いたのが、ふた回りくらい小さく感じる(幅=161mm,奥行=90mm,厚さ=23mm,ついでにバッテリ込み重量320g)ことっていうかだからそんなの触れた瞬間わかれよ>拙者。で、マジに驚いたのが、処理速度がグググッと上がっていること。体感速度で約3~4倍という感じか!? カラーザウルスではひと呼吸、いや数秒待たされた(データ件数の多い)アドレス帳表示も、パワーザウルスではまったくストレスを感じないほど素早く表示されるようになった。
 
 キレイなことで評判だったカラー液晶は、4.3インチになった(カラーザウルスは5インチ。なお、画素は変わらずで320×240ピクセルのままだ。俺としては800×600ピクセル以上になるのを期待したのだがって冗談ですよコレは。でももう少しピクセル数が増えたら嬉しかったのだが、きっと価格もガガーンと上がったのだろう。

 内蔵のFAX/MODEMは、カラーザウルスの2.4Kbps/9.6Kbps(DATA/FAX)から、33.6Kbps/14.4Kbps(DATA/FAX)へと高速化された。事実上モデムカード不要となった感じだ。また、PHSの32Kデータカード(PIAFS)にも対応(アダプタCE-PA1使用)したので、一般の電話回線(モジュラーケーブルで接続)、デジタル携帯電話(アダプタCE-DA4使用)など、多くの通信環境下でネットワークできる。なお、内蔵のWebブラウザはページ上のフレームやアニメーションGIFにも対応した。
 それから、パソコンとのケーブル接続で多用されるオプションポートの最大スピードが3倍程度速くなったことや、消費電力がちょっと低くなったことなど、細かな機能アップが多々ある。

◆モジュラージャック
内蔵FAX/MODEMは33.6/14.4kbpsで、事実上モデムカードは不要になった。
◆オプションポート
最大スピードが3倍程度速くなっている。
◆カラー液晶
液晶のシャープだけあってキレイなカラー液晶。4.3インチで320×240ピクセル表示。

 目を引くのは、表計算ソフトとワープロの追加だ。もちろんパワーザウルス上で表計算したりワープロしたりできるわけだが、これはMicrosoftOfficeとのよりスムーズな連携を考えて付加されたものと思われる。XLS形式のスプレッドシートデータや、RTF形式の文書データをそのまま表示させることができるようになっている。

 もうひとつ、オプションで専用キーボード(CE-KB1/9000円)が使えるようになった。これにより長い文章の入力も苦ではなくなったが、でもまあパソコンのキーボードに慣れているユーザーには使い勝手にやや不満が残るかも知れない。でも慣れれば案外イイかもしれない。でもちょっとチープな感じかもしれない。でもこの薄さ(カバー装着時で最厚部約15mm、最薄部約8mm)はステキかもしれない。

 それから、デジタルカメラ部は、ちょっとスペックが上がった。カメラ自体に4倍光学ズーム機能や絞り設定が付いたことや、撮影モードに4分割/16分割や連写撮影が盛り込まれたこと、最大640×480ピクセルの写真を撮れること、人物写真の顔部分をペンで囲うだけでカンタンに写真入りアドレス帳が作れることなど、けっこういろいろできるようになった。カラーザウルスのデジカメ機能は、わりと単なる“ザウルス+デジカメ”状態だった。それに比べると、パワーザウルスのデジカメ機能は、PDA上のデジタル画像としてちょいと応用を利かせて使えるようになっている。

 で、あとはだいたいカラーザウルスと同じようなスペックだ。とは言え、内蔵モデムがド速くなったことと、ユーザーメモリが増えたことと処理速度が上がったことあたりは、カラーザウルスとパワーザウルスを全然別物っぽい感触にしていて、とても軽快にいろんなことができるようになった感じがする。

◆画面:表計算
初期画面で、13行まで表示可能。XLS形式の表示に対応している。
◆画面:ワープロ
斜体や文字色の指定などもできる。RTF形式の文書データの表示ができる。
◆画面:Webブラウザ
フレーム対応により、フレームを使用しているインプレスラジオのページも見られるが、テキストの表示位置などが本来の見え方とは違う。フレームを使用しているWebサイトでは、サーバーに「フレーム対応のブラウザで見てください」とアクセスをはねられる場合も多い。


とりあえずコレで行きます

 ありゃっ。なんかちょっとだけ目新しい機能のことをお伝えしようとしたら、妙に長い文章になってしまった。すいません。

 で、率直にパワーザウルスを使ってみた感想を書くと、(カラーザウルスを使っていたので)斬新さはあまり感じないが、使い勝手がよくて軽快で、とりあえず不自由を感じない。デジカメ非装着状態なら、モノクロのザウルスに近い感覚でコンパクトに持ち歩けるところは大きな魅力だ。実を言えば、カラーザウルスはやはりどう考えても「でかい」と感じてしまっていたのだ(ついでに「遅い」とも感じていた)。というわけで、ようやくザウルスのコンプレックスから解放されて、スッキリしている俺であった。

 ともあれ、いろんなPDAをいじくって紆余曲折のモバイルをしてきたのだが、とりあえずはパワーザウルスでオッケーかな、という気がしている。モバイルギアも、Pilotも、WindowsCEもけっこうイイ。とくにモバイルギアなんかはライター家業にはとても使いやすいモバイルPDAだ。でも、使い慣れているし全部入りだしで、パワーザウルスの安楽感はとてもナイスな感じなのだ。今後しばらくコレを端末として持ち歩こうかと思っている。

 あとはアレだ、ワイルドザウルスとかいって筐体がもっと硬い材質でできてて防水加工されてるヘビーデューティーモデルが出たりなんかすると、俺はまた“ああっ”とか思って買ってしまうのだ。


[Text by スタパ齋藤]


編集部注:パワーザウルスの画面のキャプチャには冨樫吉徳(まると)氏のPowerZauBASE HARD COPY Utility Ver2.0を利用しました。

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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp