新製品にも関わらず、実販価格で2万円を割るという低価格モデルであり、スタイリッシュで携帯性がよく、メモリーカードまで搭載したモデルだけに、なかなか注目される存在といえる。そのため、今回はその使い勝手と、スペックだけでは分からない画質を中心にレポートしよう。
【編集部注】
●超スタイリッシュな、PCカード付き「DC-20」?
基本的には光学ファインダー専用の25万画素1/5インチCCD採用機で、レンズは固定焦点式で、ストロボなしの、とてもベーシックなモデルだ。また、画像記録媒体は、コンパクトフラッシュ(CF)カードを採用しているが、記録フォーマットは独自形式(おそらく、CCDが撮影したデータをそのまま記録している、いわゆるRowデータ形式だと思われる)で、一般的なシリアルケーブルによる転送機能まで省いた、かなり割り切ったコンセプトのモデルといえる。つまり、構造的には「コダック DC-20」にCFカードを搭載したようなモデルだと思うと分かりやすいだろう。
デザインは実にエレガントでスタイリッシュなもの。見た感じはもちろん、手にしてみても、シンプルな造形のなかにも高級感がある。サイズ的には、PCMCIAカードよりも一回りくらい大きな感じの、かなりコンパクトなもの。とくに、CFカードと単4型電池を採用していながらも、厚さがわずか19.8mmに抑えられている点は注目に値する。そのため、ワイシャツの胸ポケットに常時入れておいても、入れてあることをすっかり忘れてしまうほどで、携帯性、収納性とも抜群に良好。ほんとうに、そのままSF映画に出てきそうな感じで、近い将来のデジタルカメラの姿を垣間見た感じがするモデルに仕上がっている。
機能は実にシンプル。前記の通り、本機は25万画素CCD採用機で、画像サイズはVGAよりも一回り小さな504×376ピクセルで、ほぼ「コダック DC-20」と同じサイズの画像が得られるほか、320×240ピクセルのモードもある。CCDのサイズは1/5インチとかなり小型のユニットが採用されており、カメラの薄型化はもちろん、コストダウンにも貢献している。
レンズは単焦点の、固定焦点(パンフォーカス)式。カタログ上では無限遠から約50cmまでの撮影ができるという。もっとも、本機のようにメモカメラとして利用されるモデルとしては、マクロ機構がないのは大きな欠点で、次期モデルではぜひとも機能を追加してほしいところだ。
機能がシンプルなため、操作部も実にシンプル。なにしろ、本機にはシャッターボタンとメインスイッチ以外に操作部がない。そのため、撮影操作自体、なんら難しいところはなく、ミスも少ないわけだ。もっとも、コストダウンのため、撮影枚数と電池残量は2つのLEDの色の変化でしか知ることができない。この点は、「コダック DC-20」も同じだったが、DC-20は撮影枚数が8枚しかないため、これでも十分だったが、CFカードの容量によってはかなりの枚数を撮影できる本機では、実用性に欠ける。
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【ファインダーと実写画像のずれによる失敗例】 |
同社はこの手の静止画カメラに不慣れなことは十分推察できるが、このタイプのカメラは光学ファインダーが命なだけに、このファインダーの曖昧さは理解に苦しむ部分であり、本機の魅力を大きくスポイルしている。
だが、本機の画像ファイルは独自ファイルのため、付属のアプリケーション経由でなければ、その画像を汎用形式に変換することができないわけだ。
つまり、本機の場合、CCDが得た情報をそのまま記録しているわけで、この方式の場合には、カメラ内部の信号処理回路を簡略化できるため、コストダウンしやすいわけだ。さらに、JPEG圧縮していないため、圧縮時の画質低下がないというメリットもある。とくに、JPEG圧縮時の影響が大きい画像サイズが小さなモデルにとって、これは大きなメリットといえる。
もっとも、付属のアプリケーションは、ひととおりの画像補正機能こそ備えているが、肝心の画像取り込み機能が貧弱。画像ファイルのサムネール一覧表示はできるものの、ここから複数のファイルを同時に開くには、サムネールを表示させた状態から、それぞれの画像をクリックして、最後にダブルクリックをするという直感的ではない操作が必要だ。また、複数のファイルを一括してJPEGに変換してセーブできる機能もぜひほしいところだ。
できればファイルのデータ構造を公開してもらいたい。フリーウエアやシェアウエアなどで、より便利なツールが登場するきっかけとなると思う。
(編集部注:当初、複数の画面を同時に開く方法はないとの記述がありましたが、実際には上記の方法で開けます。お詫びして訂正させていただきます)。
【日中屋外で撮影】 | ||
【夜間の撮影】 | 【蛍光灯下での撮影】 | 【低めの彩度】 |
本機がよく写るシーンというのは、簡単にいえば、順光で適度に明るいシーンで、しかも適度にコントラストがあるもの。つまり、炎天下やコントラストの高いシーン、曇天下、暗めの屋内などでは、色や階調がすぐれず、撮影後にある程度画像処理をする必要があるわけだ。
とくに、補色系CCDということもあって、彩度が低めで色の冴えが不足気味な点、遠景撮影時などで時折見られる部分的な光量低下、曇天時などに見られるカラーバランスの不具合、コントラストが低めのシーンに見られるコントラスト不足による眠い描写など、気になる部分が数多い。
【意外に良好な解像度】 |
もっとも、解像度自体は画像サイズから見ると、かなり良好で感心してしまうのだが、それだけに、色や階調の不具合が余計に目立ち、とても残念な結果となった。
もちろん、このあたりはアプリケーション側の設定でかなり画質の向上が期待できる部分でもあるため、使い勝手も含めて、今後の付属アプリケーションのバージョンアップにも大いに期待したい。
【強烈なスミア(強い光源からの光跡)】 |
もちろん、前記の通り、カメラの基本である、ファインダーと画質に関しては、実用機と割り切ってもボーダーラインぎりぎりの実力。それだけに、曖昧なファインダー視野と、色や階調再現性に関しては、早急に改良するべきであり、スタイリッシュな外観との落差も大きすぎる。
近い将来、明確なカテゴリーとして確立され、爆発的な普及すら見込めるであろう“デジタル 写ルンです”にもっとも近い存在のモデルだけに、各部の改良を含めた、今後の展開に大いに期待したい!
□参考記事
【6/19】米Mitsubishi、小型で安価なデジタルカメラ「DJ-1000」を発売。日本では7月予定
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970619/mitu.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm
■注意■
('97/8/15)
[Reported by 山田 久美夫 ]