ケーブルテレビ関連の総合展示会「ケーブルテレビ'97」が、6月11日から13日まで池袋サンシャインシティで開催されている。
業界関係者のための比較的地味な展示会なのだが、今年は番組提供会社の出展が多く、競馬、ゴルフ、アダルト、海外アニメなどさまざまな番組をアピールしていた。これらの華やかなブースは、難視聴地域対策として始まったケーブルテレビ事業が付加価値サービスとして生まれ変わりつつあることを象徴しているようで、印象的だった。
なかでも、インターネットのユーザーにとって気になる付加価値サービスといえば、ケーブルテレビのインターネット接続サービスだ。
東急ケーブルテレビが'95年12月に月額1,800円のインターネット接続サービスを申請した際には、接続料金を気にせずにインターネットが楽しめるサービスとしてユーザーの期待は一気に高まった。しかしその後、実験サービスは行なわれているものの、料金を取ってのサービス開始に踏み切ったケーブルテレビ会社は現在までのところ2社のみ(武蔵野三鷹ケーブルテレビ、CTY)。'97年に入ってからは、米Hewlett Packerd社がケーブルモデム製造から撤退するという発表があり、同社のケーブルモデムの採用を予定していた国内ケーブルテレビ事業者数社のサービス開始への影響が心配された。「ケーブルテレビのインターネット接続サービス実用化の話はいったいどうなったんだろう」と思っていたユーザーも多いのではないだろうか。
そこで、「ケーブルテレビ '97」では、実際のシステム構築に必須となる、非対称型ケーブルモデムの状況をチェックしてみた。
非対称型というのは、56kbpsモデムがそうであるように、センター側から(下り)とユーザー側(上り)からの転送レートが異なることを指す。一般にユーザー側から送信するデータよりセンター側から送信するデータのほうがはるかに多いため、下り方向の転送レートが上り方向よりはるかに速くなっている。現在実用化されているケーブルモデムは対称型(上り・下りの転送レートが同じ)のものがほとんどだが、家庭向けのインターネット接続サービスには、非対称型ケーブルモデムが使用される。
新しい通信機器で必ず問題になるのが標準化だが、現在非対称型のケーブルモデムは標準化がなされていない状態で、それが製品化へのネックにもなっている。従って、現在出展されているのは各社それぞれの独自規格のもの。ケーブルモデムの標準化は、IEEEなどでも行なわれているが、MCNS(Multimedia Cable Network System、北米のケーブルテレビ事業者の団体)による規格、DOCSIS(Data Over Cable Service Interface Specifications)がひとつのめどとなると見られている。MCNSによる標準化は予定より遅れているが、'98年には規格化される見込み。MCNSによる標準が制定されれば、各社対応するとのことだ。ケーブルモデムについては米国市場がメインということもあり、日本国内では国内独自の仕様が標準となる、ということはなさそうだ。
メーカー名 | 転送レート | |
---|---|---|
下り | 上り | |
東芝 | 8.192Mbps | 2.048Mbps |
日本電気 | 30Mbps | 2.3Mbps |
富士通 | 8Mbps | 1.5Mbps |
パイオニア | 31.644Mbps | 128kbps |
松下電器産業 | 30Mbps | 9Mbps |
モトローラ | 30Mbps | 768kbps |
日立電線 (米Com21社製) | 30Mbps | 2.5Mbps |
フジクラ (米Com21社製) | 30Mbps | 2.5Mbps |
MCNSの標準化との関連で、製品化の時期については各社苦慮したようだ。日本電気では「現在のモデルは実験サービスに使ってもらい、製品を正式出荷するのはMCNSの標準化後」としている一方、東芝や富士通などは「MCNSの標準化を待っていては製品化のスケジュールが立たないので、現在は独自規格ですでに製品化、出荷している」、パナソニックも「年内には出荷開始する予定。MCNSの標準化後は、それに対応した製品を出す」としている。
サービスのアナウンス当初に注目を集めたものの、サービス開始まで時間がかかっているケーブルテレビでのインターネット接続サービスだが、ケーブルモデムの標準化もようやく先が見えてきたようだ。フィールドテストも行なわれており、技術的な面ではサービス普及へ向けて着々と進んでいるという印象を受けた。
東芝 | 日本電気 |
富士通 | パイオニア | 松下電器産業 |
モトローラ | 日立、フジクラで展示していたCom21社の製品 |
('97/6/12)
[Reported by hiroe@impress.co.jp]