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プロカメラマン山田久美夫の

SONY Cybershot「DSC-F2」ファーストインプレッション



「DSC-F2」  ソニーから人気モデル「Cybershot DSC-F1」の後継機として「DSC-F2」が発表された。このモデルは従来の「DSC-F1」をベースに、処理速度の向上、操作性の改善、電池消耗の軽減などを図った、実質的なマイナーチェンジモデルといえる。発売以来かなりの時間を経た今日でも高い人気を誇るCybershotだけに、その改良型ともいえる今回の「DSC-F2」はなかなか気になる存在だ。早速実機を入手できたので、そのファーストインプレッションをCOMDEX SPRINGが開催されている、ここアトランタからお届けしよう。


●さらに軽快になった撮影感覚

アニメーションサンプル

「DSC-F2」サンプル

 パッと見た瞬間は、「どこが違うの?」という感じの「DSC-F2」。確かに外観上はメインスイッチの形状の液晶回りのプラスチックの色が黒からグレーになったくらいで、ほとんど変わりはない。しかし、実際に使ってみると、コレが思いのほか軽快になっていることに、すぐに気付く。
 もともと本機は発売時から高速処理をウリにしていたモデルだが、今回はさらに磨きが掛かった感じだ。まず、一番感心するのは記録速度の速さ。なにしろ、スタンダードモードなら1秒とかからないほどで、従来の2~3倍近い高速化がなされている。そのため、とにかく軽快でほとんど記録時間を意識することはない。もちろん、従来機同様、撮影後に一瞬撮影結果が表示されるが、それ自体が短すぎて、画像の確認ができないほど。もっとも再生モードに切り替えなくても画像を確認できるレビューボタンがあるので、安心だが(DSC-F1から搭載されていたが、“レビュー”という表示はなかった)。
 また、再生速度も超高速で、パパッと表示が切り替わるのも気持ちいい。さらに今回は内部処理の高速化で、連写機能も強化されており、なかでも1画面に9コマのマルチ連写ができるモードを使って、その画像を連続再生しアニメ表示できる「アニメ再生」機能が追加された。これは本体の液晶やビデオ接続時に利用できるし、同じファイルを同社のWeb( http://pc.sony.co.jp/Cyber-shot/animation/index.htm )に送り、動画ファイルに変換するサービスも以前から始まっているので、これが結構楽しめる。



●使用頻度を考慮した使いやすい操作性

「DSC-F2」サンプル

「DSC-F2」サンプル

「DSC-F2」サンプル

 操作性も大幅な改善が施されており、かなり使い勝手は向上している。とくに、いちいちロックボタンを押さなければ動かなかったメインスイッチが改良され、OFF時のみ任意にロックがかけられるようになったうえ、モード配列も「切→カメラ→再生→PC」という具合に改善された。そのため、従来は撮影から再生モードにするのに、一度OFFにする必要があったが、今回はその煩わしさが解消された。また、PC接続時専用モードが設けられ、転送時に液晶がつきっぱなしにならないようになった点もいい。
 だが、個人的には,デザイン上から見ると、新しいメインダイアルはちょっと安っぽく見えるし、回し易さの点では以前の方が好ましく思った。
 また、液晶横のスイッチも機能が変更され、使用頻度の高い、削除モードと連写モードに専用ボタンが割り当てられた。いずれも従来はジョグダイアルでの操作だったため、結構面倒だったが、今回はスピーディーな操作ができ、なかなか好感が持てる。さらに、ジョグダイアル内のメニューも使用頻度を考慮して配置が変更されている。
 操作性の点では、初代に比べユーザーフレンドリーになっているが、やはりこのレベルの操作性は、初代モデル発売時に実現すべきだったと思うのだが……。



●“スタミナCybershot”にはほど遠いが、電池の持ちも1.5倍へ

 従来から指摘されていた電池の消耗の激しさは、今回やや緩和された。カタログ上では使用時間が約20分から、今回は30分へと延びている。実際に日常的な使用では、「DSC-F1」では約60枚撮影できるスタンダードモードを撮りきるのがギリギリだったが、今回はさほど不安なく60枚撮り切れるようになった。また、30秒間何も操作しないと液晶表示が消え、1分後には本体がスリープする仕様になったため、電源を入れっぱなしで電池があっという間に切れてしまうという心配はかなり軽減された。
 むしろ、電池の持ちがやや向上し、処理速度も早くなったことから、どんどん撮影できてしまうため、今度は内蔵メモリー専用機であることに、大きな不満が感じられるようになった。
 いずれにしろ、同社のビデオのように“スタミナ”がないことに変わりはないが、電池の持ちに関しては、ようやく実用レベルになったかなあ~という感じだ。



●JPEG一括変換も可能になり転送速度が向上した新ソフト

アルバム

他形式への一括保存

転送速度設定

 「DSC-F2」と同時に、シリアル転送機能を備えた「サイバーショットパソコンアルバム」というソフトもVer.2.0にアップされている。もともと、「DSC-F1」はシリアル転送が38,400bpsときわめて遅い規格だったため、IrDAも遅かったが、シリアル転送も現行他機種と比べるとかなりのんびりとしたものだった。そこで今回のDSC-F2では転送速度をシリアル経由で現在最速の115,200bpsまで引き上げている。それに対応して、本ソフトも115,200bpsをサポート。さらに、シリアルポートの自動検出機能も備え、いちいちCOMポートの番号を確認することなく気軽に使えるようになった。実際に転送時間もDSC-F1のほぼ2.5~3倍まで高速化されているので、それなりに軽快になっている(それでもスタンダードモードで10秒、FINEモードだと15秒以上もかかるけど……)。

 また、従来は画像のサムネールをすべて表示し、アルバム形式で保存し、そのあとにJPEGなど他形式として保存する必要があったが、今回はサムネール表示なしに他形式への一括保存機能が備わったので、使い勝手はかなり向上した。とくに、JPEGに自動変換し一括保存できるので、ようやく普通のモデルと同じ感覚で扱えるようになったというのが正直なところ。さらに、従来のように起動時にいちいちディスク内すべてにアルバムファイルを探しにゆくという、実に不合理な仕様だった点も改良されており、自分でディレクトリをセレクトできるようになった。しかし、起動時には必ず自分のホームディレクトリに行ってしまうのは考え物だ。このほか、画像転送時にサムネールを表示させることなく、撮影日やファイル名などを指定してダイレクトに保存できる機能も加わっている。

 従来から不満点が多かったソフトだけに、確かに大幅な改良が施されている。だが、今回の機能改良や高速転送はいずれも、他社のドライバソフトなら初代から当然のようにサポートしているものばかり。正直なところ、多くの他機種のユーザーから見れば、いずれも当たり前のものだ。これまで我慢して使っていたユーザーが多いだけに、有償バージョンアップというのは納得がゆかない。ぜひとも、従来ユーザーには差分をインターネット上やパソコン誌のCD-ROMなどで無償公開するべきだろう。



●遠景の甘さは変わらないが、画質はごくわずかに向上

「DSC-F2」サンプル

「DSC-F2」サンプル

「DSC-F2」サンプル

「DSC-F2」サンプル

 今回は目立った画質の改良は行われていない。そのため、遠景というより、2m以遠で明確に感じるピントの甘さはまったくといっていいほど改良されていない。だが、DSC-F1と比較すると、画像の彩度が高くなっているため、あまりにプレーン過ぎて味気ない感じもあったDSC-F1よりも見栄えがする画像となっている。
 もちろん本機の画質は決して悪いわけではなく、他社と比較してもかなりノイズが少なく、クリーンであることは確かで、素質は結構いい。つまり、高いポテンシャルを備えながらも、それを生かし切れていないのが大きな不満点に繋がっているわけだ。とにかく、根本的な画質向上は次機種まで待つしかないだろう。



●快適でスタイリッシュだが……

 誰もが大きな期待を抱く、超人気機種のモデルチェンジ。今回の新型Cybershotが、その期待に100%応えているかどうかは、ちょっと疑問を感じる部分もある。もちろん、従来の「DSC-F1」ユーザーなら、その改良点に納得するし、それを体感できる。さらに、店頭で他機種と比較すれば、そのスタイルと軽快感に圧倒される人も多いことだろう。しかも価格が13,000円も下がり、実売では5万円台になることを考えると、内蔵メモリ専用機ながらも結構魅力的だ。

 ひとりの「DSC-F1」ユーザーとして、今回の「DSC-F2」を使って、使用感がさらに軽快になった点と、以前ほど電池を気にしなくても使える点には大きな魅力を感じた。個人的には、「遠景の甘さがなくなったら、常用してもいいなあ~」というところまできている。もちろん、一般的な使用条件、とくに1/4VGA程度にリサイズしてホームページで使用したり、144dpi程度の昇華型プリンターでのプリントやテレビ画面で楽しむといった目的ならば、この画質でも(他機種と比較しなければ)実用十分という感じだ。

 そのため、さほどフォーカスの甘さにこだわらず、むしろ「撮る楽しさ」や「持つ喜び」を重視する人にはかなりオススメできるモデルになったと思われる。だが、それでも個人的には「普通のデジタルカメラはこんなにピントが甘くはないぞ!」と声を大にして言いたい! というのが本音なのだが……(う~ん、なぜ他社ではできてるのに、ソニーはやらないんだ!)。

 ぜひ次機種では、電池の持ちが抜群の「スタミナ・Cybershot」や、高画素で高画質でズーム付き(?)で仕事のメインで使える「Cybershot Pro」(130万画素、3CCD?)、超薄型で音楽MDも楽しめる「MD Cybershot」、積雪や低温下、水辺でも気軽に使える生活防水タイプの「Cybershot Sports」(長野オリンピック限定モデル?)など、もっともっとSONYらしいモデルをどんどん実現して欲しい!



□ソニーのDSC-F2製品情報ページ
http://www.sony.co.jp/ProductsPark/Consumer/DSC/DSC-F2/index.html

□参考記事
【5/28】ソニーがマイナー・バージョンアップした新サイバーショットを6月発売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970528/sony.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm

■注意■

('96/6/5)

[Reported by 山田 久美夫 ]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp