リレー連載 物欲道修行記 番外編 NetVehicle-1追補レポート

第34講 補講 業界通情報講座 講師:一ヶ谷兼乃

 第34講の「ダイヤルアップルータのすすめ」では、公開後から数日、記事内容について読者のみなさんから、かなりの数のメールをいただきました。Windows 95時代になって自宅にLANを導入するのも簡単になり、個人もターゲットに含めた低価格・簡単設定が売り物のルータが複数出てきたため、読者のみなさんの関心も高いことを感じました。また、同様のトラブルを経験された読者の方から、解決方法についてもメールをいただきました。
 そのように、読者の関心が高かったため、フォロー企画として、筆者の一ヶ谷氏にお願いして、問題の原因や解決方法についてのフォロー記事を書いていただきました。
(編集部)


ダイヤルアップルータのすすめ(その後)

「ダイヤルアップルータのすすめ」の反応

NetVehicle-1
 4月15日に掲載した、第34講に対して読者からの反応が普段よりも大きく、誤解を招いていることもあって、再度追補版をお送りする。

 まず、最初に富士通のNetVehicle-1(以下NV-1、写真)を前回使用したLAN環境では、Windows 95やWindows NT 4.0が動作しているAT互換機とMacintoshが、数台繋がっている。その全てのパソコンにTCP/IPを使用する設定を行なっていた。Windows 95マシンやWindnwsNTマシンに挿してあるネットワークカードには、プロトコルとしてTCP/IPしかバインドしていない。
 Windows 95やWindows NTで、TCP/IPを使ったMicrosoftネットワークでいろいろと試してみたいコトがあり、NetBIOSやIPX互換プロトコルはバインドしていない環境を作っており、これを前回の連載の中で説明しておくべきだったことを、まずお詫びしたい。
 このTCP/IPを利用していない環境では、NetBIOSを利用していないため、前々回に紹介したプリンタサーバ「NPS530」もLANには接続していなかった。
 また、NV-1の簡易DHCPサーバ機能も使用しなかった。というのも、IPリース期間やIPリース更新、スコープオプションといった部分に関してマニュアルにまったく記述がなく、LANの中でftpなどのようなWinsockインタフェイスを使った場合に、いつホスト名とIPアドレスの関連が変更されてしまうのかが心配だったからだ。そのため、単にLAN上のマシンからインターネット接続するのなら便利な機能であるNV-1の簡易DHCPサーバ機能も使用できないのだ。もちろん、このあたりはサポートに対して電子メールで質問を投げたが、数週間たってもいまのところ返事はない。



ダイヤルアップルータの意外なメリット

 ダイヤルアップルータのメリットとして、忘れられてしまいがちなのが、インターネットとネットワークカードを使って接続するというコトだ。最近発売されたTAであれば、ほとんどの機種がMultilink PPPをサポートしており、128Kbpsでの通信が可能になっている。しかし、TAとパソコンを接続するシリアルポートの速度が128Kbps以上でないと、この部分がボトルネックになってしまいせっかくの128Kbps通信も意味をなさない。
 現在、パソコンに標準装備されているシリアルポートは最高115200bpsまでのデータ転送能力にしか対応できてないものが殆どだ。もちろん、230Kbps以上の速度をサポートした高速シリアルカードを利用すればいいのだが、実売価格が1万円前後で意外と高価なのだ。これがネットワークカードであれば、5千円の予算で十分調達することが可能だ。もちろん、ダイヤルアップルータを使って128Kbpsでのインターネットアクセスでも、ネットワークカードであれば十分過ぎるほどの能力を持って対応できる。
 それでなくとも、デジカメやPDAなどとのデータのやり取りや、ROMライターを繋いで置くために、シリアルポートは空けておきたいと思っている筆者の環境では、TAやモデムでシリアルポートを占有されることなく、高速で安定したインターネット接続ができるメリットは計り知れない。



前回のおさらい

 連載34講では、TCP/IPをつかったMicrosoftネットワーク環境にNV-1を追加すると、NV-1が15分ごとに自動的にダイヤルしてしまう件を報告した。この現象に関して、もう少し細かく説明してみよう。

 まず、15分毎に自動ダイヤルを行なっていたということは、ルータが何かのトリガーとなるパケットを15分間隔に受け取っていることが原因だと考えられる。この「15分間隔」という言葉を聞くと、Microsoftネットワーク技術者であれば何となくNetBIOS over TCP/IP(以下NBT)関連のパケットが悪さをしていると気がつくはずだ。
 TCP/IP上でNetBIOSインターフェイスを実現する方法はRFC1001と1002に定義されている。プロトコルの内容に関してはRFC1002に記述してあるので、興味のあるかたは調べてみるといいだろう。NBTではNetBIOSネームサービスのためにTCP/UDPともポート137を、UDPデータグラムサービスでポート138、TCPセッションサービスにポート139を使用するために、このあたりのパケットをフィルタリングすれば意味のない発呼を制御できることは簡単に予想がつく。要するにこれらのパケットが制御できていないために、15分間隔で自動ダイヤルしてしまうのだ。
 ことのおこりは、メーカがインターネット接続なら「かんたん設定で...」と勧めているからには、必然的にポート137~139あたりのパケットはデフォルトでIPフィルタリングされているものだと思い違いをしてしまったのが失敗だったのだ。
 多くのダイヤルアップルータではサポートされているIPフィルタリング機能は、現状ではNV-1はサポートしていない。NV-1は、6月末をめどに、エンハンス計画と称して、大幅な機能改善が予定されており、その中でIPフィルタリング機能はサポートされることになっている。



自動ダイヤルの解決策

TCP/IP設定画面
 現状のNV-1では自動ダイヤル機能を生かし、NBTを使用するWindows 95マシンが存在する限り、15分ごとに自動ダイヤルするといった症状が起こる可能性がある。ただ、プロトコルに特に制限がない一般的なLAN環境であれば、MicrosoftネットワークはTCP/IP以外の他のプロトコルに任せることで、NBTを使用しなくてもすみ、不必要な自動ダイヤルも回避できるわけだ。
 まず、マイコンピュータのコントロールパネルにあるネットワークアイコンを開き、ネットワークの設定画面で、TCP/IPともう一つプロトコルを追加する。もう一つ追加するプロトコルはMicrosoft IPX/SPX互換プロトコルや、Microsoft NetBEUIを選択するといいだろう。
 ネットワークの設定画面でTCP/IPを選択し、プロパティボタンをクリックする。TCP/IPのプロパティ画面が開いたら、バインドタグをクリックする。MicrosoftネットワーククライアントやMicrosoftネットワーク共有サービスのチェックボックスのマークを外す(図)。
 続いてNetBIOSタグをクリックする。すると「バインドするドライバが選ばれていません。選択しますか?」とダイアログボックスが表示されるので、「いいえ(N)」ボタンをクリックする。次にNetBIOSタグにある「TCP/IP上で、NetBIOSを使用可能にする(E)」のチェックボックスにマークが外れていることを確認し、OKボタンをクリックする。外れていない場合には、再度バインドタグをクリックし、設定を再度行なう。最後にマシンを再起動しすれば、NV-1の不必要な自動ダイヤルは回避できる。

 この他にも読者からは、簡易DHCPサーバ機能を利用して、Windows 95のネットワークプロパティではDNSサーバのIPアドレスを指定しない方法や、Windows NT Server 4.0では、WINS機能を無効にする方法や、TCP/IPプロトコルで「名前解決にDNSを使用する」のチェックを外すといった方法で、無意味な自動ダイヤル問題を解決したとの情報をいただいた。



現状で問題となる環境とは

 企業内のネットワークでは、そのプロトコルの性質のためNetBIOSやIPXを禁止し、TCP/IPしか認めていない場合も多く、そうなるとNBTを使用しないわけにはいかない。こういった環境では、現状NV-1を接続し、自動ダイヤル設定になっていると、無意味に15分に一度ダイヤルしてしまうことになってしまうため、他社の製品を選択するか、NV-1の6月末のバージョンアップを待つほかない。
 ただ、当面の回避策として、家庭内や小規模な事務所であれば、複数のプロトコルをバインドすることに対しての制限も無いところが多いと予想されるので、今回紹介したような方法で、当面しのぐことができる。



現状でも満足できる仕上がり

 勘違いしないでほしいのは、NV-1の製品思想や意欲的な価格設定、通信パフォーマンスに関してはとても気に入っており、その結果購入したことに対して筆者は満足している。とても期待している商品だけに、NBT関連パケットのフィルタリングの件や、マニュアルに対しての不満は大きなものとなってしまったが、少なくとも6月末までには、前者に関してはサポートされる予定が発表されているので、楽しみにバージョンアップを待っている。ただ、リファレンスマニュアルに関しては、「なんとなく設定したら、とりあえず問題なく動いてるようだ」という状態を脱皮するためにも、必要だと思っているし、ぜひ既存ユーザに対しても公開されることを期待したい。


[Text by 一ヶ谷兼乃]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp