PIAFSサービス開始 特別企画

PHSデータ通信サービスの傾向と対策 その1

TEXT:本田雅一


 PIAFSデータ通信が4月1日よりサービス開始します。これに合わせ、PC Watchでは2回に分けて、本田雅一氏による「PHSデータ通信サービスの傾向と対策」を掲載します。4月2日には、「傾向と対策その2:マーケット状況 、PHSキャリア3社の選び方」をお送りします。(編集部)


 いよいよ開始されるPIAFSサービスを前に、モーバイルネットワーカーの多くがPHSの導入や買い換えを考えているのではないだろうか。高速な無線通信の世界は、もう目の前にある。これを見逃す手はない。
 そこでPHS通信に関する情報をまとめてみることにする。ただし、ここではPCからの無線通信に話を絞ってある。PHS通信に投資をする際の参考にしていただければ幸いだ。

【各種通信方式のまとめ】

 あまりウダウダと、リクツを並べ立てても、実際の購入に関する情報は得られにくいだろう。そこで、ここではPHSでデータ通信する際の方式について、その特徴とともにまとめることにしよう。

【PIAFSのインフラ整備は?】

 共通規格のPIAFSで、インターネットにアクセスするためには、プロバイダーへのTAPの導入が不可欠となる。現在、いくつかの大手プロバイダーがTAPを導入、もしくは導入表明を行なっているが、すべてのアクセスポイントがTAP対応になるわけではなく、また回線数などの導入規模についても不明瞭な点が多い。また、So-netやmsnなど、PIAFSサポートを表明していない大手プロバイダーも少なくない。
 既存モデムへのアクセスをサポートするプロトコル変換サービスの拠点も、各都道府県にあるというわけではないようだ。また、定常的にインターネットへのアクセスを行なうのであれば、プロトコル変換サービスは経済的にかなり不利。やはり、プロバイダーのPIAFSサポート状況が、PIAFSの未来を決定すると考えていいだろう。
 しかし、通常のTAをPIAFS対応にするのは、それほど難しいことではないようだ。ISDN対応のリモートアクセスサーバのいくつかが、ファームウェアの変更によるPIAFS対応を表明しているように、ISDN TAにPIAFSのエラー訂正プロトコルを行なうソフトウェアを追加すればTAPにすることができる(もちろん、ソフトウェアにより機能を変更可能な機種に限られるが)。
 プロバイダーごとに、アクセスポイントに導入している設備は異なるため、今後の対応状況を見守る必要はあるものの、導入が開始されればプロバイダーによっては一気に整備が進む可能性がある。
 あくまでもPIAFSにこだわりたい、もしくは将来性を考えて業界標準にしたいというならば、プロバイダーの乗り換えを視野に入れながらPIAFSを導入するのも悪くない選択だ。

【既存インフラを重視するならαDATA】

αDATA対応のPHS端末とセイコー製通信カード。ATコマンド「AT@02」で32kbpsモードに切り替え可能だ。

 PIAFSの整備が急速に進んだとしても、ISDN TAやアナログモデムのインフラと同等になるまでにはかなりの時間がかかる。プロバイダーだけではなく、自宅や会社のダイヤルアップサーバに接続するなどの用途にも利用したい場合は、αDATAが圧倒的に有利だ。
 この原稿を書いている時点では、PIAFSサービスは開始されていないため、実際の通信パフォーマンスに関しては比較することができない(下に、法林氏によるPIAFSデータ通信の接続結果を掲載したので参照してほしい)が、同一の電波状況であれば、両者のパフォーマンス差はほとんど出ないと思われる。実効速度で400bpsの差があるが、全体の2%にも満たない帯域幅の差でしかない。
 αDATAの32kbps通信サービスも、やはり原稿執筆時点では開始されてないが、αDATA通信カードをATコマンドで設定変更することにより、正式サービス前でも利用することができた。この記事が掲載される頃には、すでにそうした設定方法も公開されているはずだ。使っている通信カードメーカーのホームページをマメにチェックしてみよう。ちなみに、セイコー電子製の通信カードの場合は「AT@O2」で32kbpsモードに切り替わる。
 個人的にαDATA対応端末を購入したこともあり、32kbps通信を一足先に楽しんでみたが、28.8kbpsのアナログモデムでインターネットにアクセスする場合と、感覚的には全く変わらなかった。
 通信の安定性も高く、通常の音声通話が切れてしまうような状況でない限り、通信がとぎれてしまうこともない。おそらく電波状況が一時的に悪くなった場合には、エラーによる再送で実効速度は落ちているものと思われるが、それを体感することはなかった。
 14.4kbpsのαDATA通信も利用してみたが、(インターネットのトラフィックもあり)2倍の体感速度は感じない。しかし、速度うんぬんよりも、安定した通信を行なえることの方に大きな意義を感じた。
 こうした優れた無線通信環境は、PIAFSでも全く同じと思われる。みなし通信で不安定な通信に悩んでいるモーバイルネットワーカーなら、PIAFS、αDATAに関わらず、データ通信対応PHSに投資する価値は大きいと言えるだろう。

【参考:PIAFSデータ通信ベンチマーク(データ提供:法林岳之氏)】

●使用機材
マシン : ThinkPad 560
端末 : PALDIO312S
カード : DC-1P

●結果(単位はKbytes/s)
 getput平均
圧縮ファイル(LZH)2.33.32.8
テキストファイル4.59.06.8
平均3.46.24.9

('97/4/1)

[Text by 本田雅一]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp