【イベント】

MACWORLD EXPO コンファレンス レポート
 


米Apple社CTOエレン・ハンコック氏
「マッキントッシュのテクノロジービジョン」

-コンテンツが王であればAppleはキングメーカーである-

 国際会議場コンベンションホールで行なわれたハンコック女史の講演は、初日のアメリオ氏の基調講演のテーマを受け、それを具体的なデモンストレーションで示したものとなった。内容的には新しいものではなかったが、Macの将来の明るさを信じる確信に満ちた、説得力あふれる講演であった。
 基本的なテーマはインターネット、OS、Quick Timeの3つの技術である。


●インターネット
 まず女史は、「インターネットは、プラットフォームに依存しないテクノロジーであり、Macにとっては追い風となった。インターネット上のコンテンツの64%はMacにより作られており、コンテンツを作成するプラットフォームとして確固たる地位を占めている」とMacの現在の占める位置を明らかにした。
 また、「Javaはクロスプラットフォームでのプログラミング環境としてきわめて有効である」とし、「AppleはSunと緊密に協力しており、Javaの普及に協力している。AppleのJavaは100%Pure Javaであり、特定のプラットフォームへの依存がない」とSun直系のJavaであることを強調した。そして「今後は、PowerBook 3400のような強力なモバイル環境からのインターネットアクセスも必須となるだろう」とモバイルへの意欲を示した。


●「NeXT is Clear Winner」
 まず「いちばん最初のMacOSは、セスナのようなもので、非常に軽快にできていたが、市場からの要求に応えているうちに、乗客数も増え、設備も増強しているうちに、機体にふさわしくない重さになってしまった」と語り、セスナの上にイスなどが山積みになり重さでつぶれかけているスライドを映したので、会場に笑い声が起こった。
 そして、「いま、ユーザーが必要としているのは、強力で安定した環境だ。技術的にはプリエンティブなマルチタスク、メモリ保護などの機能を備えた現代的なカーネルが必要となる。そのためにNeXTのカーネルを生かしたRhapsodyを開発する」と述べ、「NeXT is Clear Winner(NeXTはまちがいようのない勝者)」であり、「21世紀の成功を約束する選択」だったことを強調した。


●Tempoデモンストレーション
 また、「現状のMacOSも並行して開発し、次期バージョンの“Tempo”は夏には登場する。Tempoは、PowerPC版ではスレッドに対応する。また、ルックアンドフィールが改善され、より使いやすいものとなる」とし、コンテクストメニューなどのデモを行なった。
 Tempoについては「Javaランタイムが標準装備され、Javaアプレットがマルチタスクに実行できる。また、新たにMarimbaの技術も付加された」と述べ、Javaアプレットを複数動かすデモを行なった。4つ目のアプレットを起動したところでシステムがフリーズしてしまったが、デモのオペレータが「再起動も速くなったでしょう」と笑って切り抜けた。細かいところでは、デスクトップにドラッグアンドドロップでビットマップを貼る、Windowsでいう壁紙のデモも行なわれた。


●NeXT Stepデモンストレーション
 NeXTジャパンのスタッフがオペレータとして登場し、日本語で行なわれた。開口一番「ジョブズが来るのをみなさん期待していたと思いますが」といって笑いを取った。
 NeXTのメールボックスを順次開いていき、それに即してNeXT Stepの特徴をデモした。まず最初にジョブズのムービーを含むリッチテキストのメールを開き、4つのムービーを同時に再生し、OSのマルチタスク性能の高さをアピール。続いてメールにAppleとNeXTのビットマップを貼り、日本語テキストをMacフォーマットのフロッピーからインポートして完成してみせた。


●Rhapsody
 「MacOSのアプリケーションを動かすBlueBoxの開発は順調に進んでおり、すでにPhotoShopが動いている。最終的には、ハードウェアを直接アクセスしていないアプリケーションは動作する」と述べた。
 また、開発環境については「現在広く普及しているMetrowerks社のCodeWarriorのRhapsodyへの対応版が5月には完成し、PowerMac上で開発が行なえるようになる」と述べた。


●QuickTime
 「コンテンツを作る人々が、求めているのは、一度オーサリングしたら、どのプラットフォームでも再生できることである。QuickTimeはこれを実現できる技術である」とし、「次期バージョンのQuickTime 3.0は、初めてWindows版がMac版と同時に提供される」と述べた。
 デモでは、MacroMind Directorのオーサリングを生かしながら、透明な背景を持つビットマップをスプライトするなどDirectorでは困難なオーサリングが行なって見せた。また、「QuickTimeは、再生時にも逆転再生や、再生プラットフォームに合わせた拡大縮小などの機能が利用できる」とその利点をあげた。


●コンテンツが王であればAppleはキングメーカーである
 「コンテンツを作るためには、強力なパワーが必要となる。PowerPCは500MHzのものも登場する日が近い。また、Philipsと協力しているメディアプロセッサはMacのパフォーマンスを大きく拡大するだろう」とMacのパフォーマンスの向上の可能性を強調した。
 「コンテンツが王であればAppleはキングメーカーであり、その地位は確固たるものである」、「テクノロジーはAppleの核である、今後もわれわれはテクノロジーリーダーでありつづけるだろう」と自社のテクノロジーに対する自信を示して講演を終えた。

□アップルコンピュータ(株)のホームページ
http://www.apple.co.jp/
□エレン・ハンコックのマッキントッシュのテクノロジー・ビジョン
http://www4.apple.co.jp/MWT97/conferences/hancock.html
('97/2/20)


[Reported by date@impress.co.jp]


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