第7回目を迎えるMACWORLD Expo/Tokyo '97が、本日2月19日より22日まで、幕張メッセで開催される。展示会場では、参入メーカーが相次ぐ動きを反映して、「互換機通り」も新たに設けられているほか、MACWORLD直前に発表されたアップルの新製品を一同に見ることができる。出展社数は322社、来場者数は18万人を予定、世界でも最大級のMac専門のイベントだ。初日の幕開けイベントとして、アメリオ氏の基調講演が午前11時より、入場無料で行われた。
【アメリオ氏基調講演】
●かなり具体化してきたAppleの方向性
アメリオ氏の基調講演の内容は、インターネットとマルチメディアをキーワードに技術革新を進めていく、という基本ラインでは、'96年11月に行われた記者会見のときから変わっていない。しかし、この3ヵ月半の間に、NeXT買収、次世代OSにMachカーネルを採用、ジョブズの復帰、年間4億ドルのコスト削減に着手などの手が次々と打たれた結果、アメリオ氏の講演でも、「何を、どうやって」という部分がかなり明らかになってきたことが印象的だ。
●'97年はAppleにとって記念すべき年になる
「アップルが創設されて20周年を迎える'97年は、アップルにとってひとつのマイルストーンとなるだろう」として、アメリオ氏は冒頭で、'97年はアップルの再出発の年であることを強調した。ハードウェアでも「もっともエキサイティングな年になる」と述べた。'96年末商戦のPerformaの不振の一方で、Power MacintoshやPowerBookは需要に供給が追いつかず品不足を起こした状況を踏まえてか、「われわれはユーザーが支持してくれるものに注力すべきである」と、需要の高いものに開発力を注ぐ方針を明らかにした。MACWORLD EXPO直前に発表されたPowerBook 3400は、このアメリオ氏の方針を反映した製品と考えてよいだろう。
●Rhapsodyは新幹線、Mac OSは在来線
また、「われわれは、ユーザーやデベロッパーに今後の指針、ロードマップを示さなくてはならない」として、NeXT買収および今後のロードマップについて改めて解説した。アメリオ氏は「'96年8月に開催されたMACWORLD/Bostonで発表した通り、今後Appleは半年ごとにOSをリリースする」として、次世代OS、RhapsodyとMac OSの関係を次のようにたとえた。「新しいOSは新幹線のようなものだ。線路をひいても電車がなくては利用できないので、われわれが線路を引いている間に、ベンダーに新しい電車を作ってもらう。そして、その間も在来線であるMac OSでも積極的に技術革新を行なっていく」。NeXTを買収し、machカーネルをRhapsodyに採用することについては、「安定性、パフォーマンス、予測可能性からわれわれはNeXTを選んだ」と述べた。続けて、「NeXT採用の利益をもっとも受けるのは、デベロッパだ。NeXTはマルチバイト対応であり、またNeXTをもとにした次世代OS用に開発したアプリケーションは、WintelのマシンやUNIX上でも走らせることができる」として、1月に行われたMACWORLD Expo/San Franciscoでのスティーブ・ジョブズ氏の講演のビデオを披露した。
●Macintoshの深刻な問題はWindows
ジョブズ氏は、「Macintoshには現在、非常に深刻な問題がある。その深刻な問題とは――Windowsだ」というせりふで、ビデオ出演ながら会場の笑いを呼んだ。ジョブズ氏は、アプリケーション開発を建築にたとえる。「Macが誕生した当時、MS-DOS上で動くアプリケーションでは2階から作らなければならなかったとすれば、Mac OSはTOOL BOXによって、デベロッパーは5階から建てることができた。Mac OSという、先進的な技術を持った土台があってPageMakerというソフトウェアができ、DTP市場という新しい市場が生まれた。また、Directorというソフトウェアができて、DTVという市場が生まれた。そのように、新しいテクノロジーを使えば、数人のソフト技術者が数ヶ月で素晴らしいアプリケーションを作ることができる。ぜひ、またそういう状況を作っていきたい。デベロッパにもっと元気になってほしい」という。そして、NTとWindowsより、machカーネルとOPEN STEPははるかに高い次元へと到達することを図示し、(ビデオの中で)喝采を受けた。このジョブズのビデオは、アメリオ氏の「業界の技術をリードする」という言葉のイメージを明確に伝えるもので、ビデオとはいえ、効果的で印象に残った。
●Rhapsodyでも現在のハード・ソフトとの互換性を維持
続いてアメリオ氏は、「デベロッパーがコストをかけずにアプリケーションを開発できるOS」「ユーザーにとっては、安定して使える環境」を提供するのがAppleの使命であるとした。さらに、ユーザーのこれまでの投資が無駄にならないようにしなければならないとして、次世代OSであるRhapsodyにおいても、現在のハードウェア・ソフトウェアとの互換性を維持することを強調した。
●“Tempo”ではCoplandで考えていた機能が取り入れられる
基調講演の後半では、多くのデモが行われた。Mac OS 7.6では、関連する機能拡張ファイルをグループで管理することができる新しい機能拡張マネージャのデモ、また夏にリリースされるMac OSの次バージョン“Tempo”もマルチスレッドファインダーや、Windows 95での「マウス右クリック」のような機能を持つContextual Menuなどのデモが披露された。“Tempo”では、Coplandで考えていた機能が多く取り入れられる予定であるという。
●GoLive CyberStudioは次のキラーアプリケーションか
さらにアメリオ氏は、MCF(Meta Content Format)のNetscape Communications社へのライセンス供与、Sun Microsystems社からライセンスを受けたjavaはインターネットに最適の言語であること、またすでにリリースしているMac Runtime for JavaにMarimba社のCastanet Tunerをバンドルしたことなど、インターネットとマルチメディア、そしてその双方の融合するWWWのジャンルで先んじていることを強調した。WWWでは、日本でも4月末から5月ごろにリリースされるというHTMLエディター、GoLive CyberStudioのデモが行われた。午後の20周年スペシャルイベントでも披露されたこのHTMLエディターでは、HTMLファイル相互の階層の管理やリンクの関係を図示できるほか、グラフィック、QTVR、QuickTimeムービーなどがドラッグ&ドロップで配置でき、オブジェクトの位置をグリッドで管理するため簡単に移動できる。さらに、メニューバーで切り替えるだけでインデントできれいに整えられたソースが表示され、ソースを直接編集することもできる。基調講演で披露されたデベロッパーのアプリケーションがこれひとつだけだったことを見ても、Appleが“キラー・アプリケーション”として期待していることがわかる。日本語も問題なく使用できるとのことで、デモを見た限りでは、確かに他とはレベルの違う使い勝手、機能をもったHTMLエディターだ。
●QTMLがすべてのOSの架け橋に
続いて、'97年後半にはリリースされるQuickTime 3.0のデモが行われた。QT3.0では、新しくリアルタイムエフェクトの機能が付加され、Web上で画像の上をクリックするとクリックしたところから波紋が広がり、さらにその画像の前面にアニメーションが表示されるというデモには、会場から拍手が起こった。ほかにQT 3.0では、Video for Windowsのサポートなども予定しているという。またQTVRでも、Webブラウザでファイルすべてをダウンロードしなくても、荒い画像がまず表示され、データが転送されるにしたがって画像がきれいに見えるという機能が披露された。アメリオ氏は、AppleのキーテクノロジーであるQuickTimeは、Macintosh版、Windows版の同時リリースを行い、QTMLによって「すべてのOSの架け橋を作りたい」として、QuickTime技術開発へかける意気込みを語った。
●'97年中には、IEEE 1394、DVD、533MHz TriMedia Processorを採用
最後に、アメリオ氏は'97年のハードウェア製品の計画について触れ、IBMで開発しているサブノート機については「IBMと協力して、日本市場向けに'97年後半にサブノートを出したい」という。また、ハード面での革新としては、バンド幅では、FireWire(IEEE 1394)の採用、ストレージデバイスとしては18GBの記憶容量を持つDVDドライブの採用、CPUでは533MHzという超高速クロックのTriMedia Processorの採用が'97年後半に予定されていることを明らかにした。Performaの不振がいくらかは影響していると思われるが、AppleはMacintoshが「革新的マシン」であった初心に返って、新しい技術を積極的に取り込み、その先進性でユーザーやデベロッパーを引き付けようとする方向に邁進するようだ。アメリオ氏は「ユーザーがそれによって前に進めるような、前進するための橋を用意したい。先には溝もあるだろうが、それはPowerPCのパワーなどが埋めてくれるだろう」とし、最後に、今後のMacのイメージモデルともいえる、20周年記念Macintoshを紹介して基調講演を終えた。
□アップルコンピュータ(株)のホームページ
http://www.apple.co.jp/
('97/2/19)
[Reported by hiroe@impress.co.jp]