【イベント】

山田久美夫の MACWORLD Expo ラストレポート

デジタルイメージング編


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さる1月7日から11日までサンフランシスコで開催された「MacWorld Expo」。すでに現地からレポートしたように、今回のショーは完全に初日の、AppleのCEOであるアメリオ氏とNeXTとともにAppleに復帰したジョブスのキーノート一色という感じのイベントだった。実際にApple自身、MacOS 7.6やQuick Time VR2.0といったソフトの発表は行ったが、冷静に見ると今回はハードの新製品発表は一切なし!という、なんとも不思議なものになっている(まあ、20周年記念モデルの展示はあったけどね)。巷で噂の“Think Mac”や、そろそろ登場してもおかしくない“Quick Take"の新型モデルなども、少なくとも2月中旬のMacWorld Expo Tokyo(幕張メッセ)まで先送りされた感じで、Macユーザーとしてはちょっと寂しい。

 さらに今回は、新型デジタルカメラの発表も一切なし。二日遅れでラスベガスで開催されたCESでは東芝などの発表があったわけだが、年始早々帰国が遅れると、今以上に仕事に支障を来すので泣く泣く見送った次第。とはいえ、さすがにマルチメディアとグラフィックに強いMacだけに、デジタルイメージング関係の展示は比較的多く、注目すべきもの も少なくない。そこで今回は、デジタルカメラを含めたイメージング関係を中心にレポートをお送りしよう。


●注目のFlash Pix対応アプリケーションが続々登場!

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昨年夏に発表された新しい概念の画像フォーマットである「Flash Pix」。これはかの有名なジョン・スカリー率いるLive Pictuer社がMac用アプリケーションであるLive Pictuerで提唱したIVEUというフォーマットをベースにしたもの。 概要を説明すると、このフォーマットではひとつの画像データに対して、解像度の異なる多数のデータを予め用意しておき、適時必要な解像度のデータだけをアプリケーションで利用するもの。もちろん、様々な解像度といっても、実際にはベースとなる画像からの差分データだけを階層的に備えているため、データ量はオリジナル画像の最大1.33倍にしかならない。また、このフォーマットはJPEG圧縮もサポートしているので、かなりの圧縮もできる。

 このフォーマットを使うことで、高解像度でクォリティーの高い画像データでも、アプリケーション内に大容量のデータすべてを取り込まずに、モニター表示に必要なデータだけ(画面の一部分だけの場合もある)を必要に応じて取り込むだけで、表示や処理ができる。その結果、CPU速度が遅く、メモリーが少ないマシンでも、軽快に大容量画像の処理ができたり、遅い通信回線を使ってハイクォリティーな画像を高速に転送することができるわけだ。同じ考え方を初めて採用したLive Pictuerでは、実際に数十MBしかメモリーを搭載していないMacで、ギガバイト(GB)クラスの超高画質画像の編集処理を可能にしているし、100MBクラスの画像データを倍速程度のCD-ROMから数秒で読み込むという離れ業を実現している。これなら、当時さほど知られていなかった同社に、元Appleのジョン・スカリーがCEOとして就任しても不思議はない。

 また、昨秋コダックはこのフォーマットをPhoto CDに採用することを表明している点も注目される。普通のMacで巨大画像がスイスイ動く「Live Pix」

 そして、このFlash Pixを採用したアプリケーションも昨秋あたりから、続々と登場してきている。その第一弾となったマイクロソフトの「Pictuer it!」(Windows版・日本国内未発表)に続き、今回のMacWorld ExpoではLive Pictuer社が「Live Pix」を発表した。といっても、実はWindows版が一足先に発売されており、今回のMac版はそれに続くものといえる。これらはいずれも、一般ユーザー向けの簡易型画像処理ソフトで、普通の画像調整はもちろん、複雑な画像合成やレイアウトなども可能で、なかなか魅力的なものに仕上がっている。とくに今回の「Live Pix」はデモを見る限り、操作性もよく動きもきわめて軽快なものとなっている。このソフトは日本での発売も予定されており、今春には登場しそう。ちなみに会場での販売価格は約49ドルだった(現物がなかったので、購入できなかったのが残念!)


●超高画質画像をWebでリアルタイムで見られる!

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 さらに注目したいのは、Flash Pixを使った、インターネット上での画像表示だ。こちらもLive Pictuerのブースで行われていたもので、1000dpi・300KBの画像をほんの数秒で表示するデモは、もう圧巻! しかも、画像表示の左下に小さなツールボックスがあり、ルーぺのツールを使い、その画像の一部だけををどんどん拡大表示できる!これはもう、これまでのホームページのような張り込み型の画像とは一線を画す世界だ!こうなると、実に多くの可能性が考えられる。たとえば、当Webでのデジタルカメラデータも、Flash Pixフォーマットにしておけば、画像比較用の一覧表示のまま、部分拡大して解像度を見ることもできる。また、通販などでも、商品の全体が見えるカットを巻頭に表示し、見たいものや一部分だけを拡大して選ぶといったことだってできる。そしてこうなると、「インターネット用だから、VGAでもいいや!」といった世界ではなく、100万画素のデジタルカメラでも宝の持ち腐れになることなく、その解像度をフルに利用したWeb作りができるわけだ。もっとも、これだけ高解像度の画像データになると、そのまま印刷データやプリント用に利用できるため、今度は著作権の問題がでてくるわけだが・・・。ともあれ、このFlash Pixが一般化すれば、インターネット上でのメディアのあり方が大きく変わる可能性すらあるし、より本格的なWebマガジンやWeb上でのカタログ販売などもいま以上に普及するかもしれない。う~ん、これは凄い時代になってきたぞ!

 このFlash Pixを表示するには、プラグインが必要だが、Macは近々全機種が対応するという(たぶんOSにプラグインを添付するのだろう)。また、WindowsユーザーはHPのWeb上(image.hp.com)でプラグインのベータ版が入手でき、そのページで即座に体験できる。とにかく、一度お試しあれ。


●話題のQuick Time VR2.0周辺機器も登場!

 現地レポートでも紹介したように、今回Appleはさらに基本機能の向上を図った「Quick Time VR2.0」(以降、QTVR2.0)を発表した。このQTVRは文字通り、Quick Time技術を使った、パソコン上でのバーチャルリアリティーを実現するもの。とくに今回の2.0ではかなり動きの自由度が高まり、モニターを本当の“空間”として感じられるまでに成長している。もちろん、Macばかりでなく、Windows版も予定されており、Winユーザーもさほど遠くない時期に楽しめそうだ。

 さて、このQTVRの機能の中でも、なかなか魅力的なものにモニター上でグルリと周囲360度を眺められる、いわばパノラマ機能がある。最近はデジタルカメラ用のアプリケーションとして、複数の写真を自動的に繋ぎあわせてパノラマ画像を作成するものが出始めているが、それをより進化させたものといえるだろう。

 もちろん、360度を簡単に撮影できるカメラは、ほとんどない(高価だが市販はされ ている)。そこで、このQTVR用の画像データを撮影するための機材が、今回のExpoでは数多く出品された。現地レポートでも紹介したが、こちらでも簡単に触れておこう。

camera
 まず、その特異な形状と、ワンショットで撮影できるため、動きのあるカットにも対応できるものとして「BE HERE」があげられる。これは特殊なミラーを使ったもので、カメラ部はコダックの600万画素モデル「DCS460」を使う。さすがに一回で撮影するには、600万画素クラスの解像度が必要になるのだろう。カメラだけで400万円近いので、システムとしての価格は相当に高価。完全な業務用途だが、これは目を引いた。


KAIDAN
 そして、今回、QTVR用のパノラマ撮影用システムを数多く出品していたのが「KAIDAN」(カイダンと読む)。同社では以前紹介したピクセラ社のデジタルカメラを使ったモデル(KAIDAN社は下の台座部分のみ)を中心にデモを行っていた。この台座を水平にセットし、あとは角度を正確に変えながら回転させて、何枚も撮影し、撮影後に合成して360度のパノラマ画像を作成する。

 ちなみに、写真にある丸型のデジタルカメラは、ピクセラ社のもので25万画素CCDで、一種の画素ずらし機能を使い、100万画素相当の解像度を実現できるもの。取り込み時間は昨秋のCOMDEXのときは2-3秒ということだったが、現在ではなんと1/15秒でOK。そのため、動きの緩やかなシーンなら十分撮影できるという。


arm
 また、KAIDANブースではQTVRでの3Dデータを作成するための、巨大で特殊な台座も展 示していた。このアームの中心に3D化したい被写体を置き、上下左右360度から撮影し て、3D画像データを得るもの。さすがに大掛かりだ。


●期待の20MBフロッピーを前面にアピールしたiomega

nhandcard DC20 nhand

 アメリカではZipの人気がかなり高く、iomegaのブースはかなりにぎわいを見せていた。そして今回、同社が前面にアピールしていたのが、昨秋発表されたばかりの超小型20MBフロッピーである「n-hand」。なにしろ、いまや各データが巨大になり1.44MBフロッピーはテキストデータ専用という感じだ。それだけに、Zipほど大きくなく、気軽に持ち歩ける大容量メディアへの要望が高いわけだ。もちろん、デジタルカメラの記憶媒体として考えても、小型軽量で、しかも20MBの容量があって、メディアも低価格になるなら、これはもう大いに期待したくなる。つまり、いまでも20MBクラスのPCカードはあるが、まだまだ高価で、そのカードに記録したまま保存することなど、コスト的に全く現実的でない。そこでこのようなメディアがこれから必要になってくるわけだ。

 同社ももちろん、そんなことは百も承知で、ブースではイメージモデルとして「コダック・DC20」にこの「n-hand」を装着したものを展示。やっぱり、大きくはなるが、本当にこのサイズで収まって、消費電力の問題がないなら、なかなか魅力的だ。

 フロッピー自体はさほど大きくはないが、ドライブはやっぱりそれなりのサイズがあり、PCMCIA用ドライブと同じくらいのスペースを食う。しかも、可動部分が多いので、デジタルカメラやPAD、携帯電話など携帯メディアに使うことを考えると、やはり電源が問題となりそうだ。これはデジタルカメラに近々搭載されるMDでも同じことだが、MDは音楽用の省エネモデルが続々登場しており、携帯時の振動対策もできているので、こちらはなんとかなりそう。しかし、これまでZipのように据置型ACモデルが中心の同社に、耐震性や 省エネ化のノウハウがどれくらいあるのかが、今後の展開を大きく左右しそうだ。

('97/1/17)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp