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プロカメラマン山田久美夫が見た

ニコン「COOLPIX100」レポート in San Francisco


COOLPIX 100  年末ぎりぎりになってニコン初のパーソナル機である「COOLPIX100」の化粧箱付き製品版が届いた。そこで今回は年始特別編として、いまMacworld Expoの取材に来ている、ここSan Franciscoから実写レポートをしよう。

 このモデルは、ニコンが昨年発表したパーソナル機である「COOLPIX」シリーズ2機種のうちのひとつで、最大の特徴はバッテリー部分を取り外して、PCカードスロットに差し込むだけで、簡単に画像の転送ができる点にある。

 スペックなどの詳細は発表時の資料を参照していただくとして、今回は使用感と写りを中心にレポートしよう。まず、本機は縦長で薄型の独特なデザインを採用している。結構縦方向が長いが、シャツの胸ポケットに入れて持ち歩けるサイズだ(もっとも上部が出っ張るけど・・・)。そのため、携帯性はなかなかよい。また、今回は付属の専用ケースに収納し、ズボンのベルトに装着して持ち歩いたが、軽量なこともあって付けているのを忘れそうなほどだった。これなら、気軽に常用できそうだ。

 デザインが独特なこともあって、撮影時の構え易さという点は今一つ。もっとも、少し慣れてしまえば、さほど持ちにくいわけではないが、それでもシャッターボタンへの指の掛かり具合には、若干の違和感が残る。また、シャッターボタンの感触も、押したときの感触にシャープさがなく、ややシャッターチャンスが掴みにくいのが残念だ。

 ファインダーは光学式のみだが、本機のようにメモ感覚で撮影するのがメインのカメラでは、これでも十分だ。また、液晶ファインダーと違い、電池の消耗を常時気にしながら撮影する必要がさほどないので、その分、安心感がある。ファインダーの見え味は可もなく不可もなくという感じだが、これだけの薄型ボディーなので、光学系への負担がかなりあることを考えれば、これでも立派なものといえそうだ。しかし、視野内のフレームはもう少しコントラストがあるほうがより見やすそうだ。

 ピントは通常時はパンフォーカス(固定焦点式)で、無限遠から約60cmまでと、一般的な撮影では必要十分だ。また、マクロ機能も搭載されており、こちらは名刺の接写など、超近距離での撮影用となっている。しかし、液晶モニターがないこともあって、マクロ時に正確な撮影距離とフレーミングをするのは至難の業。しかも、使用頻度の高い30cm前後の距離は通常モードでもマクロでもカバーできない点がもどかしい。また、マクロ時にはストロボが自動的にOFFになる仕様となっており、屋内での撮影は困難だ。これはメモ用機として考えると、結構重大な欠点といえそう。これは早急に改善するべきだろう。


 実際に撮影して見ると、なかなか軽快で使い心地はいい。ちょうどコンパクトカメラで気軽にスナップしている感じに近い。しかし、少し使ってゆくと、いくつか気になる点がでてきた。まず一つは撮影枚数の少なさ。本機はVGAよりやや小さな512×480ピクセルのファインモードで21枚、1/4VGAサイズでは42枚の撮影が可能だ。そのため、画質優先のファインモードで撮影するとあっという間にメモリーがフルになってしまう。もちろん、ノートPCを常時持ち歩けば、簡単に転送できるが、屋外や取材先ではそうもゆかない。やはり、最低でもこの2倍、理想的には100枚を越えたいところだ。さらに本機は圧縮率が高め(約1/20)な点も気になるので、この際、PC転送しなくても100枚以上撮影でき、圧縮率がもう少し低めの姉妹機を企画してほしいところだ。

 気になる画質だが、昨秋にドイツのフォトキナでレポートした時に比べ、かなり向上している。とくに、とても自然な色再現性と的確な階調性は大きな魅力といえる。また、解像度もなかなか良好で、設計の難しい超薄型のレンズ光学系と高めのJPEG圧縮率を考慮すると、この写りは立派なものといえる。また、ストロボ撮影時の制御も的確で、比較的近距離でも露出は適正で、しかも色調が青みがかることなく自然なままなのも好感が持てる。このあたりの、画質へのこだわりは、さすがニコンという感じだ。


 しかし、本機は意外なほど暗さに弱いという欠点がある。とくにショーの会場内程度の明るさでも、その場の光では完全な露出アンダーになってしまう。もちろん、遠景の場合にはストロボを使っても、光線が届かないため、当然結果は同じだ。これはもともと本機の仕様のため、あながち欠点とはいえないが、他機種の多くが暗いシーンに結構強いことを考えると、次期モデルではぜひとも改良してほしい点といえる。また、画面内に強い光源が入ったときに発生するスミアも気になるところだ。

 画像データの転送は実に簡単でスピーディー。通常のノートPCならPCMCIAのスロットに本機のバッテリーボックスを外して差し込み、Windows 95のプラグ&プレイ機能を使い、IDEドライバーを使い認識させれば、あとはPCカードと同じ感覚でスピーディーに画像の転送(コピー)ができる。ファイル形式も通常のJPEGのため、インターネットブラウザがあれば表示することができるし、汎用ビュワーや画像処理ソフトでももちろんOKだ。このハンドリングのよさは本機の大きな魅力といえるだろう。ただし、一部のノートPCでは物理的に挿入できない機種もあったり(実際に手持ちのIBMのTP701には装着できなかった)、デスクトップ機ではPCカードドライブにより、認識できないものもあるため注意が必要だ。


 発売が当初の予定よりだいぶ遅れての登場となるが、実機を使ってみると、待った甲斐があったという感じがする。とくに、昨秋のベータモデル以降の画質向上には目を見張るものがあり、ニコン初のパーソナル機としてユーザーの期待を裏切ることのないレベルに達している。しかも、携帯性がよく、画像転送も容易なため、ノートPCユーザーにとって、かなり魅力的なモデルといえる。液晶モニターがないので、やや割高に感じるかもしれないが、接続キットを別途購入する必要がないので、まあ妥当な価格といえる。

 しかし、PCカード式ということで、デスクトップ機のユーザーにとってはやや縁遠い存在なのが残念だ。もっとも、こちらは今後発売される液晶付きでSCSI接続可能な「COOLPIX300」をということになるのだろう。

 本機は同社の初物としては、なかなかユニークで魅力的なものに仕上がっているが、撮影枚数の少なさや暗いシーンが苦手な点、マクロ時にストロボが使えない点や使用頻度の高い30cm前後のシーンが事実上撮影できない点など、改良すべき要素も数多い。しかし、画像転送方式以外は、いずれもファームや部分改良で改善できる可能性が高いものだけに、ぜひともこれらを改良した「COOLPIX100S」(?)の登場を期待したい。


【サンプル画像】


□(株)ニコンのホームページ
http://www.klt.co.jp/Nikon/

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■注意■

('96/1/7)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp