【パラダイムシフトはない】
西川 |
「けっきょく、いま売ってるパソコンって、ハードもそこそこの性能を持っていて、特に拡張の必要もないし、ソフトもテンコ盛りで使いこなせないほど載ってくるわけでしょう。 メモリさえ追加してしまえば、ビギナーだけじゃなくて、ヘビーな用途でもよほどのことがない限り拡張の必要がなくなっちゃってるわけですよ。 使える人にとっては、そのまま使えるツールになっちゃったんで、もう凝る必要がないんですね。だから、デジカメとか、プリンタとか周辺機器の話題と、ソフトウェアも大きい製品のバージョンアップしか話題にならなくなってきちゃってるし、今年もその傾向は変わらないとおもう。」 |
後藤 | 「さいしょから、いきなり結論がでちゃいましたね。(笑)」 |
【MMX、USB、P1394】
西川 |
「のっけから夢を壊す話かもしれないけど。今年出てくる予定のMMXにしてもUSBにしても、中心技術ではなくてバリエーション的な技術で、しかもある分野の人にしか意味がないものですね。 たとえばMMXがでて、みんな騒ぐと思うけれど、MPEGとMIDIの再生以外は、画像処理系のフィルタリングぐらいしか意味がなくて、要はクリエイターしか関係ないのよ。そのクリエイターはMac使ってるしね。だからあんまり関係ないかもしれないね。ゲーム関係とかでもMMX使われるとは限らないし、けっきょく個人に一番有効なのは1次キャッシュが増えたことかもしれない。 また、USBについては、これまでプリンターポート使っていたような周辺機器が複数つながるようになるという利点があるけど、シリアルSCSIってぜんぜん必要性を感じない。あれって当面はDVで画像を編集する人しか必要じゃないし。」 |
後藤 | 「あれは、基本的には、パソコンのための規格じゃないですから。」 |
西川 | 「それにUSBは、モジュールがOSR2対応なんだよね。OSR2がプレインストールされたマシンは年明けには出てくるけど、単体では販売されない。マイクロソフトに言わせるとOSR2のほとんどのモジュールはWeb上で公開されてますっていうけど、32BitFATとか載ってないし。 |
実際、OSR2を調べると細かい所がかなり違うので、公開されているモジュールを入れただけでは絶対同じにならない。“OSR2モドキ”を作るためにmicrosoft.comやmicrosoft.co.jpのホームページへ行って追加モジュールをダウンロードしてたら、とんでもないコストや手間がかかちゃうしね。 | |
だいたい今、新規にWindows 95をマシンへインストールしようとすると、Windows 95本体入れて、サービスパック1入れて、それ以降に出た細かい修正モジュールや拡張モジュールを無数に導入する必要があり、私がやっても結構面倒な作業になるのが現状だもん。 更に困った事は、今後機能拡張予定としているUSBの拡張も、Windows NTと同じドライバを使えるWDMもOSR2ベースなんだ。」 |
後藤 | 「そうですね。ということは、USBが装備されたWindows 95マシンを買っちゃってる人は、今年もUSBが使えないということなんです。」 |
西川 | 「じゃあ、そういうユーザーはどうすればいいかというとWindows 97を買ってくださいと。そうすると9月か、10月まで待たされてしまう。」 |
後藤 | 「結局、Windows 95のときのようなサポートコストがかかることを避けようとしたわけですね。」 |
西川 | 「そう、OEMで出すぶんにはメーカーのサポートになるから。パッケージで出すとマイクロソフト側の負担になってしまう。」 |
後藤 | 「MMX以外では、次世代Pentium ProのKlamathがあるけど。これもボリュームが出るのは第3四半期以降だろうし。AGPもKlamath対応ってことは、ある程度ハイエンドに限られてしまうわけですね。」 |
西川 | 「CPU自身についていえば、ライバルメーカーがどんなに速い石を出しても、インテルに対抗できる生産能力がないので、インテルの牙城はくずれないでしょう。けっきょくOSはマイクロソフト、CPUはインテルがほぼ独占という状況は今年も変わらないと思う。 |
それにしたがってマイクロソフトが、OSR2を単体の製品として出さないとか、インテルにしてもどんどん独自の方向へハードを引っ張ってちゃうとか、そろそろ弊害が出始めていると思う。」 |
【アップルのNeXT買収】
後藤 | 「もう一方のアップルのNeXT買収については、また発表があると思うけど。現時点 では、在来のアプリケーションがきちんと動くかどうかはっきりしていない。」 |
西川 |
「結局、NEXTSTEPをそのまますぐに持ってくるのは難しいよね。まず、サーバーOSとして持ってくると思う。いまのMacのサーバーってSystem 7.5.xだからあれよりはずっといい。ただ、それでもマルチプロセッサへの対応と、Power PCへの対応が必要になる。 クライアント側だと、エミュレーションの問題があって、ちょうどWindows NTで16ビットアプリケーションが動くレベルのものはできると思うけど、あれではvxdが動かないように、initやドライバをきちんと動くようにするのは、とても難しい。 コープランドみたいに1から作るのに比べれば、メモリマネージメントがしっかりしているだけでもマシなのは間違いないけど。」 |
後藤 |
「アップルは、ジョブズが来ただけで、ほとんど元をとりましたね。あの会社はビジョンを言える人がだめなんですよ。アメリオだと管理者だけど、ジョブズだとビジョンを語れる。 具体的になにをするということがはっきりしていなくても、ジョブズのおかげでアップルのイメージが変わったということが大きいですね。 コープランドがだめになったということがはっきりしても、株価が下がらなかったのも、その効果ですね。あのあたりの良いニュースと悪いニュースの発表のタイミングのとりかたはうまかった。」 |
西川 |
「ただ、アップルは今年が正念場であることは間違いない。少なくとも6、7月にはベータ版をデベロッパーに配れないと、アップルは2年間何もしなかったことになってしまう。」
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【PPCPとMac互換機】
西川 | 「Power PC系は、もうMac OSしかないからね。ぼくが、x86のエミュレーションの記事を書いた9月頃は、これやったら来年は来るぞ!! って感じだったでしょう。Windows NTが動いてx86のエミュレーションも完璧で、Mac OSも動くと。それが、次のNT 5.0はありませんという話は出てきてつまんなくなっちゃった。」 |
後藤 |
「NeXT買収の話題のおかげで、Mac互換機は先行きも、またわかりにくくなってきていますね。結局IBMのサブライセンスの件数もあまり伸びていないという話だし。」
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【IE 4.0 vs Netscape】
西川 | 「Windows 97が出る前でも、Internet Explorer 4.0が出てくると、Windowsの環境がだいぶかわってしまう。」 |
後藤 | 「結局、Netscape側がブラウザーをインタフェースにしようしているのに対抗して同 じ事をしてしまうわけですね。ブラウザーとOSの両方から向かい合って同じ位置に来 てしまったということです。」 |
西川 | 「Netscapeも対抗しようとしているけど、年末のPC Watchラジオでもいったけど、Netscapeの問題はプロジェクト管理にあると思う。結局プロジェクトに関わる人間がどんどん増えていって、それを管理するスキルがないために、ベータ版でどたばたしたり、なかなかバグが修正できなかったりする。それに対してマイクロソフトは、そのスキルは持っている。今年はそこが鍵だよね。」 |
【NCとNet PC】
西川 | 「Net PCは出てくるだろうけど、ゼロアドミニストレーションサーバーが出てくるまではただの箱にすぎないんだ。」 |
後藤 | 「Windows 97については追加モジュールで出すと言ってるけど、最初から載ってくるのはWindows NT 5.0を待たなければならない。」 |
西川 | 「ただ、Net PCの頭のいいところは、ローカルでハードディスクを持たせて、キャッシングしているところだよね。あれがないNCだとネットワークのトラフィックが大変なことになってしまう。」 |
後藤 | 「そこはネットワークのリソースを増やすと」 |
西川 | 「増やすといっても、限界があるわけで、たとえば会社で朝礼が終わって、朝一番でみんなが一斉にNCの電源を入れると、何百台ものNCがサーバーにOSをロードしにいってしまう。(笑)」 |
後藤 | 「けっきょくサーバーの能力がパフォーマンスを左右することになるので、NCメーカーでは、クラスタリングとか、階層化とかいろいろ言っているわけ。アプリケーション自身もサーバー上で動かすという話もある。」 |
西川 | 「それって、X windowとどこが違うの。」 |
後藤 | 「ほとんどインタフェースだけ(笑)」 |
西川 | 「NCもNet PCもエンタープライズソリューションで、EDP部門の連中に管理するのに手間のかからないしくみを提供しようということですからね。基本的には大昔の3270PCのターミナルの時代に戻そうという話ですね。そういう意味では、個人ユーザーとは関係ない話だよね。」 |
('97/1/7)
[Reported by PC Watch編集部]