【特別企画】
【1997年新春特別企画】
山田久美夫氏インタビュー
「1997年、デジタルカメラは100万画素の世界になる」
●デジタルカメラは銀塩カメラにとって代わるのか
編:「これは来年ということに限らないのですが、例えば今一般に使われている銀塩カメラと置き代わる存在になるかどうかとか、新しい使い方とか、デジタルカメラの未来像をどのようにみていらっしゃいますか。」
山:「まず、デジタルカメラがなぜ普及しないか、という点から話をしましょう。昨年のブームで普及したという人もいるけれど、まだ何十万台という世界ですから、僕にとってこれは普及とは言えない。まだデジタルカメラが認知され始めただけだ、という感覚なんですね。普及というのは、一家に一台というレベル、もしくはそれに近いレベルになって初めて普及と言えるものだと思います。そう考えると、一番ネックになっているのは、プリントかな、と。結局今だとパソコンにつながないと絵が見えない、つまりパソコンを持っていない人でないと楽しめないわけですから。それはなしでしょう、と。」
編:「最終的に紙でないとだめだ、というのは今大流行のプリクラ(プリント倶楽部)がいい象徴かもしれませんね。今では、セガのデジタルカメラで撮った画像をそのままシールに印刷する機能があって、とても受けているそうです。」
山:「結局、人間というのは最後は手に持てるものじゃないと信じないんですよ。手に持てるもの、手で触れるものという意味でね。」
編:「確かに、ごく一般の人にデジタルカメラの画像を見せると、必ず“それは紙で出力できないのか”と聞きますよね。そこは非常に重要な点ですね。」
山:「そうなんですよ。で、各メーカーがデジタルカメラと直結するタイプのカラープリンタも出していますが、あれもなしかな、と。なぜかというと、時間がかかりすぎる。それから、そんなものを置く場所は家にはない。それとランニングコストが高い。あんなコストの高いシステムを使って納得するお母さん、もしくは奥さんはなかなかいない。」
編:「昇華型のカラープリンタなどは5万円程度ですよね。その高いというのは、品質とコストのバランス、つまりコストパフォーマンスからみて、まだ銀塩と比べてだめということですか。」
山:「すごく単純に言うと、“今(銀塩)カメラあるじゃない”と言われれば終わりなんですよね。つまり、今の銀塩の写真のシステムのように、現像所なりで印画紙に焼きつけるサービスが、デジタルカメラにも広がっていかないと普及しないと思う。ただ、プロ用途は別として、パーソナル用途と限定すれば、すでに銀塩カメラを使うメリットはいくらもないんですよ。なにしろ、紙の出力が欲しいわけでフィルムが欲しいわけじゃないし、撮ったその場で撮影に失敗しているかどうかわからない。そう考えたとき、デジタルカメラの存在を知れば、次に一般の人がカメラを買おうとしたときに、デジタルカメラでもいいな、という人が増えてくるはずなんですよ。」
編:「液晶でその場で画像を見られるし、デジタルカメラには現状でもいろいろメリットがある。しかし、最終的に紙に出力されるという段階で決定的な差がでるということですね。それに関しては何か具体的な動きはあるんでしょうか。」
山:「すでに、現像所にあるフィルムから印画紙に焼きつけるラボ機を製造しているメーカーなんかは、デジタルデータを印画紙で出力するものを開発しているんですね。これは普通のフィルムも扱え、デジタルデータもそのままプリントできます。要するに、露光する際に一度CRTなどディスプレイに表示させたものを焼きつけるんです。そうすると、デジタルだったらなんでもいいわけです。フィルムが来ても、デジタルでスキャンしてしまえばいいんですから。」
編:「となると、現像所も含めて銀塩カメラの世界もいっせいにデジタル化していく可能性があるんですね。」
山:「フィルムとデジタル両用のものは、専用の印画紙にレーザーに書き込む方式のものが、実はすでに製品として発表もされています。現像所だって、フィルムでなくていいわけですからね。面倒だし。」
編:「そういうラボ機がコンビニなんかに入っていく可能性は。」
山:「現状では値段も高いし、印画紙を扱うので水回りがあってメンテナンスが大変なんで難しいでしょう。」
編:「では、例えば、デジタルカメラからのデータの受け取りだけをコンビニなどで受け付けて、後からプリントを受けるという現在の銀塩のシステムと同じようにはなるでしょうか。」
山:「そう、例えば、コンビニに行くとPCMCIAのカードスロやIrDAで受ける口があって、そこでデータを受け取る。すぐにディスプレイに画像を出して、これとこれね、とプリントする画像を指定するとかね。それに、コンビニだとPOSなどのシステムでISDNの回線も来てますからね。そこから現像所へデータを転送できます。もっと言うと、ケーブルTVやら、OCNといった通信網を使えば家からデータを送れるわけですからね。それで、プリントされたものが、宅配なり新聞の配達と一緒に配達されるとか、最寄りの駅で受け取れるとか。そういう世界は絶対にありでしょう。」
編:「そのシステムは、現状でも技術的にはなんの問題もないですね。」
山:「何にもないですね。コスト的な問題だけですね。割と近い将来になるんじゃないでしょうか。」
('97/1/6)
[Reported by PC Watch編集部]
ウォッチ編集部内PC Watch担当
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