日本ほどデジタルフォト関係が急激な盛り上がりをみせていない今回のCOMDEXだったが、現地から既報した以外にも、なかなか興味深いものがいくつかあったので、ここでまとめて紹介しておこう。
サイカラー | ブースのもよう | 5インチベイに収まる! |
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今回のCOMDEX直前に、日本経済新聞が”プラザクリエイトがデジタル市場に本格進出”というニュースを報じた。プラザクリエイトはこのところ日本国内で急速な広がりを見せている日本国内資本のラボチェーンだ。同紙では同社が今回のCOMDEXで、系列会社の米国サイカラー社から新方式のプリントシステムを発表し、デジタルカメラなどからの店頭プリントサービスの足がかりとすると報じ、さらに傘下の米国ビビター社ではデジタルカメラを製造するようなニュアンスもあった。つまり、近い将来、プラザクリエイト系列のミニラボで、デジタルカメラからのプリントが店頭でできるようになると受け取れる内容の報道だった。
そこでCOMDEX会場で、この両社のブースを訪れてみると、確かにそれに対応する製品があった。サイカラーのプリンターは、プリントサイズが大小いろいろあったが、今回メインとしていたのは写真にあるようなかなり小型のサービス判用プリンター。なにしろ、タワーのベイに収まってしまうサイズなのだから、これは結構魅力的だ。もっともこれは試作段階で、量産時にはどこかのプリンターメーカーとの協力で製造するという。もともとこのサイカラーが1980年代の半ばに開発したこの”DIフィルム”方式は構造がシンプルでプリンターや消費財のコストがさほどかからないので、低価格化が可能なもの。しかも、ペーパー(DIフィルムと呼ぶ)自体に画像を作る素材が入っているタイプなので、インクもカートリッジも必要ないのでメンテランスも楽チンだ。そのため、以前は日本の大手メーカーも採用を検討したほど。しかし、結局は採用を断念したという経緯がある。それが今回、デジタル時代になって、再びその技術が浮上してきたわけだ。
同ブースでサンプルプリントを見たが、それを見る限り、解像度も高くて細部の再現性もいいが、下地の白がかなり黄色っぽく、構造上彩度があまり上がらないので、雰囲気としてはポラロイドのような感じだ。たしかに、デジタルカメラからの簡易プリンターとしての道はあるかな?という感じだったが、すでにフジなどはデジタルカメラからのプリントサービスを開始しており、各フィルムメーカーともに、デジタルカメラの普及とともにその需要が必然的に拡大するのが目に見えているため、いまからかなりの規模での展開を予定している節があり、なかなか難しい世界もある。もっとも、このプリンターは結構安価(2万円前後?)で、プリント1枚のコストも40円程度にしたいというので、ミニラボなどに依頼する世界よりも、むしろ個人ユース向けの簡易プリントシステムとして展開した方がよさそうなシステムに感じられた。
ビビターが299ドルのデジタルカメラ「ViviCam2000」を出品
ビビター【表】 | ビビター【裏】 |
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さらに、同じプラザクリエイトが傘下におさめたビビター社はデジタルカメラを出品。こちらは299ドルという超低価格がポイント。もっとも、米国でもコダック・DC20がその価格帯でガンバっているため、それほど画期的ものではない。ただし、こちらは単なる静止画専用機ではなく、秒30フレーム対応のオンラインでのビデオモード(NTSCのみ?)を備えている点だ。
画素数の表記はなく、画像サイズはスタンダードで320×240ピクセル、ハイレゾモードで640×480ピクセルとなっている。撮影間隔は2秒と短い。メモリーは内蔵の512KBフラッシュメモリーのみで、前者で21枚、後者で10枚の撮影ができる。もちろん、液晶モニターなどはないが、ビデオ出力は本体のみで可能で、パソコンからデータを送って記録し、プレゼンテーション用に使える点も特徴としてあげられていた。なお電源は単3型4本だ。
ちょうど、カシオ・QV-10から液晶を外して、オンラインの動画取り込み機能を付加し、徹底的にコストダウンした感じのモデルで、画質はブースで見る限り、あまり褒められるレベルではなかった。
たぶん、先のプラザクリエイト関連の店舗での販売を計画していると思うが、これだけ激化している市場だけに、知名度を含めて、なかなか難しい商品になりそうな感じがした。しかし、動画カメラ+デジタルカメラという要求は確実に増える傾向にあるため、今後の動向に注目したい。
1200ドルで実効100万画素を実現した「ピクセラ・ビジュアルコミニュケーションシステム」
Pixera |
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今回のCOMDEXでは、Q-Camスタイルの動画対応で記録媒体を持たないデジタルカメラユニットが数多く出品された。そのなかには開催直前に東芝から国内発表されたモデルなども含まれるが、今回会場で見たもののなかで、もっとも印象に残ったものとして「Pixera・Visual Communication System」がある。
この「Pixera」という社名に見覚えがある方がいるかもしれないが、同社は日本の大手家電メーカーの研究所でHDTVなどの研究開発をしていた日本人エンジニアが独立し、アメリカで設立したベンチャー企業だ。
同社が出展した「Visual Communication System」の最大の特徴は、25万画素CCDを採用したカメラながらも、100万画素相当(1,260×960ピクセル)のハイクォリティな静止画を撮影できる点にある。これは同社が開発した技術で、いわば光学的に画素をずらして撮影した4枚の画像を合成することで、100万画素相当の高解像度を実現するもの。もちろん、4枚同一画面を撮影する必要があるため、撮影に1~2秒かかる。そのため、完全に静止している被写体に限られるので、普通のデジタルカメラの100万画素CCD搭載機ほどの汎用性はない。しかし、社内報や簡単なカタログやホームページ作成などで、商品やインテリアなどを撮影するような、動きのないシーンなら十分にこなせる。また、このクラスの大容量データを実用速度で扱うため、インターフェースはシリアルではなく、PCIもしくはPCMCIA Type2カードを採用している点も、他の動画用簡易カメラと大きく異なる点だ。しかも、スタイルが抜群にオシャレで、どこかスタートレックのUSSエンタープライズの模型を連想させるところが、個人的にとっても気に入ってしまった。
もちろん、普段はスタンド付きの1/4VGAの動画カメラ(秒10フレーム)として使えるし、収納時には台座になっている半円形のケースにパーツすべては収まってしまうところも素敵だ。
モデルは現在2種類あり、レンズが異なる。つまり、「Personal」は固定焦点式の簡易タイプで、「Professonal」は手動でフォーカシングできて本格的なマクロ撮影までカバーできるタイプだ。さらに、それぞれデスクトップタイプ(PCIカード付き)と、ノートブックタイプ(PCカード付き)が用意されている。価格は高価な「Professonal」タイプでも約12万円と、静止画のクォリティーを考えれば、十分に納得が行くプライスとなっている。
実際に、このカメラで会場で撮影した画像を見たが、とてもオリジナルが25万画素CCDとは思えないほどのクォリティーだった。もっとも最近では、81万画素クラスのモデルが10万程度で入手できるようになり、来年にはそれを上回るほどの高画質モデルも登場すると思われるが、この価格帯で初めての100万画素相当モデルとして、注目される存在だ。私としては、この技術を40万画素以上、できれば130~150万画素クラスのCCDに応用した、超高画質でレンズ交換可能なモデルの登場を大いに期待したいところだ。
なお、本製品は現在日本国内の代理店を検討しているところらしく、来年の早い時期には国内での販売が始まる可能性もあるという。
デザイン抜群 | このメーカー名は!? |
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それはともかく、このフラッシュユニットは、純正(?)だけになかなかよくできていて、デザインも質感もロゴも、DC20にピッタリでジャストフィット。電源はアタッチメント側にあり、シンクロ(ストロボの発光タイミング)は画像の転送用ジャックを使って行うもの。もちろん、このユニットをDC20に装着すると、自動的にジャックが刺さり、セット完了。もちろん、デザイン的にも一体感があり、これはかなり魅力的だ。どんなルートでショーに出てしまったのかは定かではないが、今回のショーで一番の拾い物だったかもしれない……。
ミノルタ | エプソン | アメリカではジャストサイズ? |
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リコー DC-2L | ニコン | コダック |
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現地からのレポートでも紹介したように、まだアメリカでは開花していないデジタルカメラだけに、今回のショーではソニーやミノルタなどがかなり積極的なアピールをしていたし、エプソンなどもデジタルカメラの存在を結構アピールしていた。
とくに、既報のミノルタでは、説明員が自らの腕に「ヴィマージュV」のレンズ部をベルトで固定してのパフォーマンス。エプソンは「CP-200」をブースでも人が集まる場所を数カ所使ってのデモを積極展開(日本よりも力がはいっていたような気がする)。リコーは事務機とは別のデジタルカメラ用ブースを構える力の入れよう。ブースではDC-2の内部構造が分かるモデルまで展示。これを見るとよくこの価格で作ったなあ~という感じがする。ニコンはブースが小さいものも、液晶付きの「COOLPIX300」を使ってのデモを繰り返していた。
それに対して、キヤノンはPowerShot600が1-2台ある程度、コニカはデジタルカメラの展示はなく、オリンパスは商談用ブースのみと寂しい状態。また、コダックやフジは、ブース自体が狭く、場所もメイン会場から若干離れたところにあるなど、いまいちインパクトにかける感じだった。もちろん、デジタルカメラの展示を行っていたが、比較的大人しいもの。同じ会場で今春開催されたアメリカ最大のカメラショー「PMA」で1、2を争う両社の巨大なブースに比べると、なんだか不思議な感じがした。ただし、このまま黙っている両社ではないが……。
そのため、「これからだな・・・」というのが、COMDEXで見た、アメリカ市場 でのデジタルカメラの正直な感想といえる。なにしろ来年はデジタルカメラの 世界にとって、今年以上にドラスティックな展開がある。きっと、来年の COMDEXは、かなり違った展開になることだろう。とにかく、アメリカは巨大な 市場だけに、その動きから目が離せない状況になりそうだ。
[Reported by 山田 久美夫]