【イベント】

COMDEX Fall'96 レポート

後藤弘茂のCOMDEXリアルタイムレポート
(その3)

'96/11/19 取材

 【第三日目】

●出展は多かったが目立たなかったNC
 ―鮮明ではないNC対Wintelの構図―

IBM BOUNDLESS
IBM BOUNDLESS
LG Electronics 1 LG Electronics 2
LG Electronics
船井電機1 船井電機2
船井電機

 NC対Wintel。
 ちまたでは、この2勢力の対立が大きく取り上げられることが多い。しかし、今回のCOMDEXに関する限り、こうした構図はほとんど見あたらなかった。その原因のひとつは、NC陣営のなかでも対Microsoftの急先鋒であるSun MicrosystemsとOracleが不在だったこと。それからインターネット端末やNCが多様化して、パソコンと対立するものというより、もっと広範なニーズをカバーするネットワーク端末へと進化し始めたためだ。

 今回、面白かったのは、取材スタッフの中で「NCってどこにありました? 全然ありませんでしたね」という意見と、「ええっ、インターネット端末ならいっぱいあったじゃない」(私)という意見のふたつの見方にわかれたことだ。つまり、探しているとどんどん出てくるが、注意していないと見逃してしまうほど普通になってしまったのだ。

 実際、会場では、IBM、Wyse Technologies、Boundless Technologies、松下、LG Electronics、Philips Electronics、Sony、PROXIMA、AT&T、Intelifone、Acorn、船井電機、ユニデンなどなど。ともかく、これまで製品を発表していなかったメーカーも含めて、NCやインターネット端末のメーカーの大半が製品を出展していた。ただし、そのほとんどが「これがNCです!」と強く打ち出すわけでなく、目立たない姿でインターネット機能を当たり前のようにうたっているので、気をつけなければ見逃してしまうのだ。

 これにはいくつかの理由がある。ひとつは、デスクトップ用NCのメーカーは、パソコンと併用させることで企業に浸透させようとしているので、あまりNCであることを強調していないためだ。ローコストのオルタナティブとして、地味にマーケティングを展開しているというのが、デスクトップNCの実像だ。一方、テレビや電話型のインターネット端末は、家電やOA機器であるという部分を強く打ち出して、抵抗感なくインターネット機能を浸透させようとしている。だから目立たないわけだ。たとえば、今回は、とくに電話や携帯電話でインターネット機能付きというのが非常に多かったのだが、いずれもユニデンのような変わりダネをのぞけば、ほとんど多機能電話と変わらない姿をしているため、インターネットという文字を探していなければ見逃してしまう。

 さて、今回出展したNCやインターネット端末のなかで、いちばんの大物はIBMだ。これに関して、私は一昨日のコラムの中で誤報をしてしまった。出展されていたのはPowerPC 403GAベースのNCで、PowerPC 603版のNCが登場していないと書いたのだが、じつは出展されていたのだ。
 どうしてそういう誤解をしてしまったのかというとこれがなかなか興味深い。じつは、初日にIBM版NCであるNetwork Stationを展示しているコーナーで展示現場の担当者に話を聞いた。いろいろ質問するなかで、603のバージョンはやらないのかとたずねたわけだが、それに対して、その担当者は「603の採用は考えていない」と答えたわけだ。

 ところが、実際にはそのコーナーのすぐ裏で、603を搭載したNCは展示されていたのだ。そこで、今度はそちらの担当者にそのいきさつを話したところ、それは403ベースのNCと603ベースのNCでは開発の部署がまったく違うためだという。403を採用したNetwork Station部隊のプロジェクトでは603は採用しないということだ。IBMでは異なる部門が異なるコンセプトで複数のNCを開発しているというのが鮮明に示された格好だ。

 603バージョンの方の担当者によると、9月に発表して、COMDEXの時から出荷を始めたNetwork Stationは、メインフレームやミニコンのダムターミナルの置き換えが主目的だという。Network Station発表のプレスリリースでは、ダムターミナルだけでなく幅広い市場に展開するとうたっていたが、その役割は603ベースの次世代NCが担当するのだという。
 そのため、この2世代目のIBM NCは仕様がNetwork Stationとかなり異なる。完全にJavaベースで、アプリケーションはLotusのアプリケーションをすべてJavaベースにして載せるという。実際に、すでに表計算やメールなど一部のソフトはJavaベースで動いていた(ワープロはたまたま動かなかった)。

 また、GUIはWindows 95のようなウィンドウシステムではなく、「Lotusデスクトップ」という新インターフェイスが担当する。これはSunやOracleと同じ、Webとカスタマイズ可能なユーザーメニューを統合した新インターフェイスで、ユーザーは簡単にアプリケーションを操作したり、シームレスにWebをブラウジングしたりできる。さらに、スマートカードスロットを備えており、スマートカードでユーザーの認証を行う。ユーザーはそのカードをどのNCに差し込んでも、インターネットを経由して自分の環境やアプリケーションを呼び出したり、自分のデータにアクセスできるようになるという。これはOracleの構想と同じで、実際にOracleのNCとスマートカードの互換性があるという。この点も、Network Stationとは大きく違う点だ。また、IBM内部ではこのほかx86ベースのNCも開発しているという。

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('96/11/20)

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp