【第二日目】
かなり厚みのあるボディー。操作部は比較的少なくシンプルだった。レンズ部は携帯時には引っ込むが、それでもややかさばる感じだ。レンズ上にIrDA転送部が見える。 |
背面を見ると、そのほとんどが液晶で占められている。これだけ大きいと、さすがに見やすい。けれど、消費電力がやや心配だ。 |
MDカメラは今回もアクリル越しで、注目度は今一つといったところ。 |
シャープも先頃発表したばかりの3倍ズームつきモデル「液晶ビューハンター」を出品。現物を実際に見たのは、今回のCOMDEXがはじめてだが、写真で見るよりもかなりゴツく、その外観の割には軽量なモデルだった。
本機は既報の通り、3倍ズームレンズと3インチの大型液晶、IrDA転送を採用した、10万円を超える比較的高価格のモデルだ。また、同社としては実質的にはじめてのデジタルカメラ(カラーザウルスもあるが…)であり、家電メーカーとしてどのあたりに重点を置いているのか興味津々だった。
ブースではカラーザウルスやデジタルビデオと並んでの展示・デモが行われており、大型液晶とIrDA転送式であることを強くアピール。とくに本機は、その場で撮影したものをIrDAで専用プリンターに転送するというスタイルでの訴求を行っていたのが印象的だった(ちなみに、デモ機はすべての表記が日本語だった)。
もっとも、IrDAは同社が提唱しているVer.1.1の4Mbps対応の高速仕様ではなく、Ver.1.0の0.115Mbpsタイプなので、転送は実にのんびりとしたもの。おそらく、ケーブル接続のほうが高速だし、メモリーは4MBの内蔵のみである。シャープによれば、すべてのカットをIrDA転送すると、8分かかるという。
まだIrDA関係の周辺機器がVer.1.0対応が主流とはいえ、そろそろVer.1.1対応のノートパソコンが出始める時期であり、またSONY・CyberShotはすでにVer.1.1(速度は1.152Mbps)に対応になっていることもあって、製品が発売される頃にはコードレス転送というメリット以外はやや魅力に欠ける仕様になっているのが、大いに残念だ。3倍ズーム、3インチ液晶とはいえ、内蔵のみの4MBメモリーとVer.1.0のIrDAでは、12万円近い最新モデルと考えると、なんとも情けない仕様だ(もっとも、実際に使ってみないと、撮影枚数の制約や転送の遅さは実感できないし、プリンターでの出力を重視するならこれでもいいのかもしれないが…)。
外観は結構ゴツい感じで、3倍ズームというかなりスペースが必要な光学系を採用し、その背後に3インチ液晶モニターを配置していることもあって、かなり奥行きのあるボディーになっている。もっとも、アメリカではあまり小型のものよりも、このくらいのサイズのほうがウケがいいというし、体の大きな説明員が持っていると普通のサイズに見えるから不思議だ。
さて、本機の大きな特徴である、クラス最大の3インチ液晶だが、さすがにこのサイズになると、かなり見やすい。また、視野角が広いので、斜め方向からでもよく見えるので、撮ったカットを何人かで見て楽しむといった目的で使うのにも便利だ。このあたりは、さすが"液晶のシャープ”の面目悠々といったところ。
また、本機は画像サイズがVGAではなく、720×480ピクセルと若干横長になっている。これは縦横比で3:2となり、普通の35mmフィルム式カメラと同じになるため、カメラユーザーとしては、構図も決めやすく、なかなか好感が持てた。
今回は画質が分かるようなデモが行われていなかったので、なんとも判断できないが、液晶で見る限りはなかなかキレイなものだった。
また、エレクトロニクスショーで出品された「MDカメラ」は、出品されているものの、今回もアクリル越しで、実際に触れることはできなかった。
今回のCOMDEXでのデジタルイメージングを語るとき、欠くことできない存在となっているのがソニー。”DIGITAL IMAGING by SONY”というキャッチフレーズで、話題のCyberShotをメインに、デジタルビデオなどのイメージング機器をブース前面に掲げ、文字通り、”デジタルイメージングはソニーだぞ!”と強烈にアピールしていた。もともとアメリカ市場でのブランドイメージが強いメーカーであり、まだデジタルカメラの認知度がかなり低いところに、あのエキサイティングでファンタスティックな「CyberShot」が登場したわけだから、これは相当に強烈!。ブースは終始にぎわいを見せており、その人気もきわめて高い。かなりの台数を使ってハンズオン・デモを行っていたが、一台の「CyberShot」に数人が群がって、実際に手にするのも難しいほど。今回のCOMDEXでソニーは、デジタルカメラのリーディングカンパニーという強烈な印象を植え付けることに成功したといってもいいほど。日本ではカメラやフィルムメーカーが主導権を握っている部分が、それらのメーカーにとって見れば、完全にやられた!という感じだろう。
しかしながら、「CyberShot」のデモでの反応を見ていると、デザインや機能面ではかなりの興味を抱いていながらも、900ドル近い価格を聞いた瞬間に、”oh!”という声が聞こえる。つまり、エキサイティングだが、まだまだ高い!という感じだ。どうやら、デジタルカメラも、そのボリュームゾーンは498ドルあたりになりそうな気配があり、アメリカ市場を重視するなら、それをターゲットにした製品が登場しないことには、ある程度の普及は望めないという感じだ。しかし、たぶん、ソニーはそう遠くない将来に、必ずこのゾーンに製品を投入してくるだろう。その布石としての、今回のCOMDEXでのアピールは大成功という感じだろう。
これまでアクリル越しでしか姿を現さなかった「ミノルタ・ヴィマージュV」だが、今回のCOMDEXでは一応、"写る"モデルを初めて手にすることができた。ミノルタはメイン会場のなかなかいい場所にブースを構えており、会場で配られるCOMDEX関係のニュースペーパーはもちろんのこと、街中でも「ヴィマージュV」の広告を何度も目にするなど、かなり積極的な告知活動を行っていた。
ブースでは、「ミノルタ・ヴィマージュV」特有の分離する本体とレンズ間の延長ケーブルを積極的にアピールしたデモを行っており、来場者の反応もなかなか好評なようだ。リストプライスは1,000ドル以下で、ストリートプライスではもう少し安くなるわけだが、それでもやや高価であることに変わりはない。しかし、3倍ズームで、しかもSSFDCを採用していることを考えれば、まず納得できる範囲のプライスといえそうだ(アメリカ市場では、ちょっとキツイ感じもあるが…)。
実写例も、今回初めてブース内のデスクトップ機で見ることができた。その印象は、まだまだ未完成でとりあえず写っているというレベル。もちろん、カメラメーカーであるミノルタが、このような画質で発売することなど到底考えられないし、会場を訪れていた設計者も、原因は掴めているので、発売に向けて画質の向上を図ると明言していたので、期待していいだろう。
アメリカでの発売予定は来春。国内はいちおう、年内というアナウンスになっていることに変わりはない。しかし、現時点での画質見ると、若干の不安材料がないこともないので、ここで急いで無理に年内発売するよりも、画質や操作感などをレベルアップさせて、より完璧な形で発売したほうがいいと思うのだが…。
('96/11/21)
[Reported by 山田 久美夫]