【イベント】

COMDEX Fall'96 レポート

後藤弘茂のCOMDEXリアルタイムレポート
(その1)

'96/11/19 取材

 【第二日目】


●8CPUを密結合したPentium Proサーバー技術

8PentiumPro 8PentiumPro

 今年のCOMDEXではPentium Proサーバーの躍進が目立っている。そのなかでも異彩を放っているのがパソコン用マルチプロセッサ技術のパイオニア米Corollary社だ。同社の開発したマルチプロセッサ技術「Profusion」では、最大8個のPentium ProをSMP構成で搭載できる。Intelのチップセットでは最大4個のPentium ProのSMP構成で、それ以上の数のCPUを搭載するにはクラスタ構成を取らなければならなかった。同社は、独自のメモリコントローラとデータインターフェイスバッファにより2系列のPentium Proプロセッサバスと2系列のメモリサブシステムを融合させることで、これを解決した。「NECや日立製作所、IBMなど多数のメーカーがライセンス契約を結んでおり、これらのメーカーからProfusion技術を搭載したPentium Pro構成のサーバーが、来年春には次々に登場する予定」という。


●ウェアラブルコンピュータ登場

Wearable Wearable

 ウェアラブルコンピュータ、つまり体に装着する新しいタイプの携帯パソコンを見つけた。米ViA社の「ViA Wearable」と、米Rockwell International社の「Trekker」だ。どちらも小型液晶VGAディスプレイを装着したヘッドセットを頭につけ、パソコン本体はベルトなどで体につけて使用する。ViA Wearableは486DX4かAMD586-P75を、TrekkerはPentium 120MHzを搭載する。どちらも、WindowsやWindowsアプリケーションを利用可能。ワイヤレスLANアダプタによって、どこへでもネットワークを利用できるという。「いちばん引き合いが多いのは、工場や工事現場などコンピュータを使いながら両手をフリーにしておきたい分野。だが医療や大型商店などでの利用も提案している」そうだ。コマンドは音声などで行う。


●PowerPCベースの新マザーボードがIBMとMotorolaから登場

PowerPC

 PowerPCは恒例のPowerPC特設会場で行っていた。展示はソフトウェアが中心だが、CHRP準拠の新しいマザーボードのリファレンスデザインも展示された。米IBM社によるコードネーム「Long Trail」と米Motorola社によるコードネーム「YellowKnife」の2つで、どちらもATX準拠。MacOS用ROMソケットとアップルI/Oコントローラを搭載する。

 Long Trailは、VLSI Technologyのチップセットを使ったもので、将来のG3シリーズにも対応できるという。メインメモリは最大768MBでEDO DRAM、バーストEDO DRAMのほかSDRAMにも対応。一方のYellowKnifeはMotorola製のチップをCPU-PCIブリッジ使用。同社によると、メモリ周りのパフォーマンスなどがよりチューンされているという。


●匡体を開けずに拡張可能な新ケースのミニタワー

Nexar II

 少し変わったケースとマザーボードを採用したミニタワーを見つけた。米Nexar Technologies社の「Nexar II」で、写真のように匡体の向かって右側のセーフティカバーを外すと、MPUとキャッシュ、メインメモリのソケット、それにボルテージレギュレータのソケットが見える窓が現れる。つまり、匡体を開けずにMPUの差し替えやメモリ、キャッシュの増設が可能。その逆サイド、向かって左も同じ構造になっていて、こちらを開けるとPCIバス、ISAバスの拡張が、匡体を開けずにできる。また、ハードディスクはカートリッジ式でキーロックが可能。ハードディスクだけを金庫にしまうユーザーもいるという。同社では4月から供給を始めており、ショップやディストリビュータなどが販売しているという。


●衛星を使ったインターネットアクセスサービス

 ネットワーク時代を迎えて通信インフラ関係の展示も目立った。とくに目を引いたのは米Hughes Network Systems (HNS)の提供する、通信衛星を使ったインターネットアクセスサービス「DirecPCターボインターネット」。同社では、個人向けのサービス「DirecPC Personal Edition」も開始しており、そのデモをブースで行っていた。DirecPCでは,ユーザからのデータ送信はモデムを使い,インターネットからのデータ受信にだけ衛星を利用する。衛星からの帯域を分割、1ユーザー当たり400kbpsの受信速度を実現する。実際に使ってみたが、通信インフラの違いをユーザーが意識する必要はまったくない。たんに高速なインターネットアクセスとして利用できる。料金も無制限アクセスで月39.95ドルからと、個人でも十分利用できる。また、衛星アンテナとISAバス用アダプタカード,ソフトのセットは199ドルから。


●DECはStrongARMベースのNCやPDAを展示

StrongARM

 DECは、自社のプロセッサ技術を前面に押し出した展示を行った。ハイパフォーマンスRISC「Alpha」と組み込み向けの「StrongARM」の2本立てだ。展示の重点はAlphaで、Windows NTサーバーとしてのAlphaを強調していた。その一方ではStrongARMにもかなりスペースを割いて、AcornやWyseなどのStrongARMを採用したNCや、Apple ComputerのNewton新シリーズの展示などを行っていた。


●専用サービスと組み合わせたインターネット電話

Intelifone

 COMDEXでは電話を見たらインターネット電話と思えというくらい、電話や携帯電話でのインターネットアクセス機器が目につく。写真の米Intelifone社の「Intelifone」もそのひとつ。コンパクトキーボードと小型液晶ディスプレイを備え、299ドルから。「他のメーカーはたんに電話にインターネット機能をつけただけ。しかし、当社はこの機器に特化したオンラインサービスを提供する部門を設立、このディスプレイでも見やすい形にした情報の提供を行っている。また、他社のはまだ展示だけだが、うちはすでに60日前から販売している」という。サービス料は月7ドルから。


●Hayesがスマートカードモデムを発表

Hayes

 米Hayes Microcomputer社では、Eコマース時代に対応したスマートカードモデムの参考出品を行っていた。これは、33.6Kbpsモデムにスマートカードリーダを融合させたもの。クレジットカード会社や銀行は、このスマートカードを使って次世代のクレジットカードや銀行カード、電子マネーの提供を推進している。ユーザーがこのモデムをパソコンに接続すると、Eコマース業界の標準規格であるSCIETA(SmartCard Communication Protocol)に準拠したデータ転送が可能になる。モデム内でデータはDESまたはRSA方式により暗号化されて転送されるので、安全な電子ショッピングが可能になるという。97年第1四半期に出荷予定。セキュリティ技術メーカーなどと提携して、Hayesが最初に開発した。説明をしてくれた米COM One社によると、今後Eコマースの進展で、こうしたスマートカードモデムの需要が爆発的に拡大する可能性があるという。


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('96/11/20)

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp