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プロカメラマン山田久美夫が見た

画質が向上した「フジDS-8」発表会レポート

DS-8 '96年11月15日 発売

標準価格:クリップイット DS-8 74,800円

連絡先:富士写真フイルム株式会社
お客様コミュニケーションセンター
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 いよいよ待望の“シャープになったDS-7”こと、「DS-8」が発表となった。基本的に従来の「DS-7」の改良型上級モデルで、圧縮率の低い「ファインモード」の採用と回路設計の改良により高画質化を図っているのが、もっとも大きな特徴だ。また、DS-7で課題となっていた電池の消耗については1000mAhの大容量Ni-Cdと充電器の同梱によって急場をしのいでいる。さらに、撮影時の電池に消耗を軽減するため、新たに外付け式の光学ファインダーも同梱されている。詳しいスペックは別項に譲るとして、ここでは実際の使用感を中心にレポートしよう。


シャープになった画質


 今回の一番の目玉はやはり、その画質の向上にある。現行のDS-7の画質は色再現が素直で写真的な美しさを備えているが、その半面、画像の輪郭が甘いという欠点があった。今回のモデルは、この点の改良が大きなポイントとなっており、画像処理回路などが大幅に改良されている。

 結果的には確かにDS-7で見られたような輪郭の甘さはかなり軽減されている。これは、圧縮率を従来よりも下げることで画質の向上を図った「ファインモード」で、もっとも顕著に感じられる。そのため、従来ユーザーに共通した悩みであった、DS-7最大のウイークポイントは、一応、解決されている。

 しかし、シャープネスの向上と引き換えに、今度は画像の輪郭に妙な縦縞が出るようになってしまった。これは輪郭がはっきりした被写体や、斜め方向に明確なラインのある部分にみられる。また、赤い被写体の周囲にはこれが明確に見られるのは残念だ。もっとも、これはPhotoshop上で90度回転させ、インターレースフィルターをかければ、簡単に解消できるが、画質の低下は免れない。もっとも、それが目立つケースはあまり多くないため、さほど心配するほどのことはないだろう。

 それ意外の点は、以前のDS-7の特徴を踏襲しているため、画質のレベルは結構高く、自然な色再現や階調性はそのままに保たれている。



ファインモードでJPEG歪みを軽減


DS-8  今回は回路設計による画質向上とともに、JPEGの圧縮率を低くすることによる画質の向上も図られている。そのため、撮影枚数は2MBのカードを使うと、標準モードではDS-7と同じ30枚、ファインモードではさらに減って22枚となっている。この新モードはDS-7のエコノミーモードに代わって採用されたため、本機はVGA専用機となっている。

 記録モードによる画質の違いは、画像を見ればわかるように、意外に少ない。もちろん、ファインモードのほうが細部の描写力が一段と高いが、並べて比較しなければ、それに気づく人はかなり少ないだろう。





高速化された画像記録時間


 また、画像の記録時間も、従来の10秒から約6秒へと、大幅に短縮されている。実際に撮影してみると、かなり大きな違いとなって感じられ、DS-7に比べ、かなりスピーディーな感じがする。もっとも、他機種に比べ、とくに高速というわけではなく、QV-100などと同レベルになったといったほうが正解だろう。

 さらに、今回は再生モードでの画像表示中なども、他のモードに切り替えたときでも、全画面を表示することなく、即座に次のモードに移行できる機能や、画像のイレイスモード使用時に消したい画像を送りながら選べる機能なども拡充された。



Ni-Cd電池と光学ファインダーを標準添付


DS-8 DS-8  また、DS-7ユーザーにとって、大きな悩みの種となっていた、電池の消耗も今回は1000mAhのNi-Cd電池と充電器(10時間充電)を添付することで、解決している。もちろんそれは次善の策であり、今回は通常の単3型アルカリ電池での持ち時間を延ばす工夫もほどこされている。

 こちらは意外に単純で、電池の消耗が多い液晶モニターを消しても撮影できるよう、簡単な光学式ファインダーが同梱されている。もちろん、それに伴って液晶を消すモードも採用されている。

 今回は発表会会場での試用のため、その効果を確認することはできなかったが、かなりの効果があることは容易に想像ができる。これは実際に実機を入手ししだい、確認したいと思っている。





バランスのよさに磨きがかかったニューフェース



DS-8  DS-7の魅力は、なんといっても、画質、機能、操作性、価格までを含めた意味でのバランスのよさといえる。そして、さらに今回は、DS-7の欠点といわれるものが、ことごとく改良されており、かなり完成度の高いモデルに仕上がっている。価格は標準小売り価格ベースで5000円ほど高いが、Ni-Cd電池と充電器、光学ファインダーの同梱という点を考えれば、むしろお買い得な感じすらする。もっとも、実売価格ではDS-7との価格差は1万円以上になると思われるため、それなりの住み分けがなされるだろう。

 確かに完成度は高まったが、DS-7をベースにした改良には、当然のことながら限界がある。とくに、デザイン面での改良はこの程度しかできないだろう。そろそろ、デジタルカメラも機能重視の時代から一歩進んで、デザインを含めたトータルな世界が問われはじめる時期へと移行し始めている。DS-8の次なる課題は、これらの改良よりもさらに高い、感性というハードルを越えることから始まりそうだ。





DS-7とDS-8の実写サンプル
DS7 SAMPLE 1-1 SAMPLE1-2 SAMPLE1-3
DS-7での実写例 ファインモードでの実写例 ノーマルモードでの実写例
正直にいって、DSー7だって必要十分な画質なのだが、DS-8は標準モードでもDS-7より解像度が高く、ファインモードではさらにシャープなものとなっている。このような微妙な画質の差にこだわるあたりが、いかにもフィルムメーカーらしい。また、色再現性はいずれも忠実で見分けが付かないレベルだ。もし、この違いが気にならない人ならば、DS-7でも十分なのかもしれない。

 また、今回はシャープネスが高まったものの、それと引き換えに画像のエッジに縦方向のジャギのようなものが見られるようになった。輪郭が丸いものではかなり目立っている。

DS7 SAMPLE2-1 SAMPLE2-2 SAMPLE2-3
DS-7での実写例 ファインモードでの実写例 ノーマルモードでの実写例
思い切り意地悪な被写体だが、これはフジ側が用意したもの。確かにDS-8のほうがシャープ。しかも、標準モードとファインモードの違いも明確に感じられる。しかし、このようなシーンは輪郭が柔らかなDS-7のほうがきれいで、毛糸らしくみえるのは、ちょっと皮肉だ。

DS7 SAMPLE3-1 SAMPLE3-2
DS-7での実写例 ファインモードでの実写例
タングステン光で照明された屋内だが、色再現性はほぼ同等で個体差のレベル。しかし、シャープネスはDS-8のほうが一枚上手だ。また、DS-7は背景の枠の部分に市松模様のようなものが見られるが、DS-8ではそれが減少している。しかし、イスの輪郭を見ると、明らかに輪郭強調を施したような白い縁どりが見られるのが残念だ。

DS7 SAMPLE4-1 SAMPLE4-2
DS-7での実写例 ファインモードでの実写例
このカットのように細かな被写体では、DS-7と8の差が明瞭に感じられる。DS-7は明らかに輪郭の甘さがみられるが、DS-8ではかなりシャープな感じになっている。しかし、赤い花をよくよくみると、DS-8は画像の乱れが見られるのが残念。これはどちらがいいというよりも、好みの問題のような気がする。DS-7ユーザーでDS-8の購入を考えている人は一考の余地があるかも・・・。

DS7 SAMPLE5-1 SAMPLE5-2 SAMPLE5-3
DS-7での実写例 ファインモードでの実写例 ノーマルモードでの実写例
階調の再現性はいずれも同等で、シャドーからハイライトまでさほど破綻のないレベルの画像となっている。このシーンでは、DS-8のファインモードが一番いい画像となっているが、意外と機種やモードによる差が感じられない。

DS7 SAMPLE4-1 SAMPLE4-2
DS-7での実写例 ファインモードでの実写例
違うといえば違うけれど、この差にこだわる人がどれくらいいるのかは、ちょっと疑問。個人的にはDS-8のほうが好みに近いが、DS-7の素直さも捨てがたい。また、レンズはいずれも同じのため、歪曲収差(直線のゆがみ)もほぼ同等。これはもう少し改良してほしい。



□富士写真フイルム(株)のホームページ
http://www.fujifilm.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.fujifilm.co.jp/ds8/index.html

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【1996/10/24】富士フイルム、デジタルカメラの新機種「DS-8」発表

('96/10/24)

[Reported by date@impress.co.jp]


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