台湾のPCメーカーである大同(TATUNG)の日本法人がブースを構え、自社のパソコンを中心に並べて展示していた。その中で、なぜかひっそりとあまり目立たぬように置かれていたのが薄いボディの「TATUNG TNC-1000 NetworkComputer」。
NetworkComputerと聞くと、オラクルが中心のいわゆるNC連合を思い浮かべてしまうが、この製品はNCというよりも「$500PC」と言えるモノ。実態は、8月下旬にCyrixから発表されたばかりのCPUチップ「Gx86」を搭載した廉価パソコン。Gx86については8月28日の記事でも触れているように、CPUチップの中にグラフィックスアクセラレータ機能、サウンド機能、メモリコントローラ、PCIコントローラなどPCの基本的な周辺回路機能も含んだCyrixの新チップ(実際にはCPUともう1つの2チップ構成)。CPUもINTEL Pentiumプロセッサのミッドレンジ程度の速度性能を持ち、PCの部品点数の大幅削減で低価格なパソコンが製造できると注目を集めていたが、驚いたことに早くもその実物がWORLD PC EXPOに登場していた。
資料によると、Cyrixチップに関しては以下のような記述があった。
■Cyrix, Gx86 processor
SIMMスロットは2つ(72pin)、ISA/PCI兼用のバススロット1つ、ほかのIDEやシリアル/パラレルといったインターフェースは基本的に普通のパソコンと同じ。VGAの出力はもちろんあるが、S端子とコンポジットのビデオ出力があり、TV画面での画面表示も可能になっている。写真を見ての通り、中身は非常にコンパクトなものに仕上げられている。残念ながらチップ表面の写真撮影はCPUファンがチップとシリコングリスで接着されていたために不可能だった。「で、これ本当にGx86チップという証拠はあるのか?」という疑問も当然沸くが、とりあえずブート時のBIOS表示で「Cyrix GX」と出ていた写真を1つのデータとして掲載しておく。クロックは125MHzと表示されているが、これはCPUのマージンテスト用にクロックアップしてあるためで、製品では120MHzか133MHzのものに設定されるとのこと。実機ではHDDと16MBメモリを搭載し、英語版Windows95を動作させていた。動作保証しているのはMS-DOS、Windows95、Windows3.1。TNC-1000はほかにIrDA(赤外線通信ポート)も搭載している。
HDDを搭載しない場合でも、256KByteのフラッシュメモリを搭載し、そこに大同(TATUNG)が独自開発したというHome OSが載り、専用サーバーとの組み合わせでサーバー/クライアントモデルでの利用が可能になるという。Home OSはUNIXとX-WindowをベースにしたGUIベースのOSで、WWWブラウザも搭載して日本語化もほぼ完了していた(あちこちに、独特の日本語の表現が見受けられたが)。
気になる商品化の時期だが、年末頃にHDDとメモリなしのモデルで5万円以下で売りたい、という話だった。利用の仕方にもよるのだろうが、NCが便利なのか、安いパソコンの方が便利なのか、実際に製品として出てきたときにぜひとも比べてみたいものだ。
[Reported by 石橋 文健]