【周辺機器】

ベータ機より画質が低下したQV-100
写真的な美しさにこだわったDS-7

“製品版”カシオQV-100 VS 富士フイルムDS-7実写レポート

●カシオ QV-100
'96/8/24 発売
標準価格: 63,000円

連絡先:カシオ計算機株式会社
Tel.03-3347-4811(大代表)

●富士フィルム DS-7
'96/7/12 発売
標準価格:69,800円
連絡先:富士写真フィルム お客様コミュニケーションセンター
Tel.03-3406-2981


話題のカシオQV-100がいよいよ発売された。以前、ベータ機によるレポートをお届けしたが、今回は待望の”製品版”が入手できたので、いち早くその実力を紹介しよう。

 しかも直接のライバルモデルとなる「富士フイルム・DS-7」との対決スタイルでレポートすることにした。なお、今回は画質をメインにレポートするため、各機種の詳細なスペックは省略するが、カシオやフジのホームページを参照してほしい。また、QV-100の使い勝手はベータ機と同様のため、そちらをご覧いただきたい。

 なお、サンプル画像は左側にQV-100、右側にDS-7の順で並べている。

ベータ機より画質が低下したQV-100
 以前QV-100のレポートをしたときには、ベータ機ということもあって、画質に関しては製品版を見てから判断するとして、絶対的な評価はあえて避けた。しかし、今回製品版で撮影してみて、ベータ機に比べても画質が明らかに低下していることが確認された。

風景 QV-100 風景 DS-7 SAMPLE 1 風景
炎天下の日中の風景だが、QV-100(左)は真っ青。DS-7(右)はごくナチュラル。ここまで違うと、比べようがない。
 まず、晴天時の日中に撮影すると、画面全体が緑がかった色調になり、カラーバランスが大きく崩れる傾向が顕著だ。これは先のレポートに使用したベータ機ではさほど見られなかった傾向で、別ルートから届いた別のベータ機では問題ないレベルとなっていた。しかし、製品版では尋常でないレベルとなっており、正常な発色が得られない。

ライト QV-100 ライト DS-7 SAMPLE 2 ライト
明るさ、発色ともに、これだけ写りが違うと別のカットにみえる。きっと、QV-100のように写るなら、レンズを向けなかっただろう……。
 これは取扱説明書にも注意があり、受光部の特性により赤外線の強いものを撮影する場合にでやすく、強い光やその反射を撮影するとこのようになることが明記されている(前者はCCDの赤外域の感度補正、後者はレンズのゴーストなどが原因か?)。だが、真夏とはいえ普通に日中に撮影したカットでも、このような傾向になるのは、やはり設計時の考慮が足りなかった結果というべきだろう。

 また、画面内の縦方向にスジが見られる点は以前のベータ機と同様だ。さらに、カットによっては、シミ状の色ムラが見られるケースもある。この傾向はQV-10Aなどにも見られたが、今回も改善されていない。

 このほか、光源による色の違いを補正するホワイトバランス機能も搭載されているが、あまり明確な効果がなく、とくに赤外線成分の多いタングステン光下での発色はかなり不自然だ。

建物 QV-100 建物 DS-7 SAMPLE 3 建物
日中に撮影したカットだが、これだけ発色が違う。被写体に近いのはもちろんDS-7(右)。QV-100(左)はブルー一色だ。また、雲の階調にも違いが見られる。
 画質に関しては、通常、ベータ機よりも製品版のほうが向上するわけだが、今回は逆の結果となった。やはり手作りに近く調整が行き届いたベータ機と、量産品の初期ロッドである今回の製品版では、このような違いがあるはある意味で仕方のないことなのかもしれないが、大枚叩いて購入したユーザーにとってこれは大問題だ。

写真的な美しさにこだわったDS-7
 一方、富士フイルムのDS-7は、きわめて自然な再現性を備えており、写真的な美しさを備えた画質となっている。まさに、QV-100とは対照的な絵作りといえる。

バイク QV-100 バイク DS-7 SAMPLE 4 バイク
メタリックな被写体はシャープでコントラストが明快なQV-100が有利。だが、タンクやエンジンの質感はDS-7のほうが一歩上手。また、QV-100は背景の緑の塀にかなりのムラが見られる。
 とくに同条件で撮影したカットを比較すると、その違いは明確で、QV-100がカシオがQV-10以降一貫した、渋い色調とハイコントラストの乾いた画像なのに対して、DS-7はきれいで素直な発色と自然で滑らかなグラデーションの質感のある描写力が大きな特徴といえる。しかし、解像力はあまり高くなく、若干エッジに甘さを感じる部分もある。  そのため、解像力はQV-100のほうが高いが、ソフト的に輪郭をかなり強調したような、やや不自然で違和感のあるシャープさともいえる。

喫茶店 QV-100 喫茶店 DS-7 SAMPLE 5 喫茶店
タングステン光源でのカットでは、驚くほど仕上がりが違う。DS-7はほぼ見た目と同じ感じに写っているが、QV-100は赤外線成分が多いせいか、色調がグリーンに偏り、色ムラも盛大にでている。また、ライトの反射で緑のスミアのみえる。
 また、色再現性はDS-7の独壇場で、正確なホワイトバランス機能のおかげで、蛍光灯やタングステン光でも自然な発色になるのが大きな魅力だ。さらに、DS-7は暗い場所を撮影した場合に、1/4秒までのスローシャッターが切れることもあって、相当暗いシーンでも楽に撮影できる。もちろん、カメラブレには細心の注意を払う必要はあるが、QV-10Aよりもさらに暗い場所が苦手になったQV-100に比べると、その差は大きい。

使い勝手は互角
 写り以外の実力はどうだろう。まず、ボディーサイズはQV-100のほうがかなり小さく、ズボンのポケットにいれて持ち歩けるほど。しかも、薄型なので胸ポケットに入れても嵩張らないのがいい。DS-7もそれほど大きいわけではないが、厚みがあるぶん、携帯性はQV-100に一歩譲る。

ラーメン QV-100 ラーメン DS-7 SAMPLE 6 100円ラーメン
 神戸・オーパ名物「100円ラーメン」。値段は安いが味は結構いい。さて、どちらが美味しそうに見えるだろう……。
 操作性はQV-100がボタン式で、DS-7がダイアル式という大きな違いがあるが、これは慣れの問題でどちらが圧倒的に優れているとはいえない。誤操作の心配が少ない点ではQVが有利かもしれないが、スピーディーな操作と覚え易さの点ではDS-7のダイアル+アイコン方式もなかなかよい。

 液晶ファインダーの見やすさは、リアルタイムな動画画像が表示されるDS-7のほうが自然。QV-100のコマ送り風表示では人の表情がつかめないし、画像も粗すぎる。もっとも、再生表示ではTFT液晶のQV-100のほうが一歩上の見やすさを実現しており、どちらも一長一短だ。

花1 QV-100 花1 DS-7 SAMPLE 8 花1
解像度が低めのDS-7だが、解像していないわけではなく、輪郭が甘いだけで、このように量感がある場合にはそれほど気にならない。もちろん、色の再現性も忠実だ。しかし、煉瓦を見ると、QV-100は直線がゆがんでいないが、DS-7ではややタル型方向の歪曲がみられる。
 撮影枚数はQV-100が内蔵のみで64枚、DS-7は標準添付の2MBのSSFDCで30枚と開きがあるが、後者はメモリーを交換すれば何枚でも撮影できるし、将来8MBのカードが登場すれば枚数は逆転する。しかも、画像転送はQV-100がケーブル経由のみなのに対して、DS-7はケーブルはもちろん、カード経由のスピーディーな転送が可能な点も見逃せない。

花2 QV-100 花2 DS-7 SAMPLE 9 花2
同じ花だが、DS-7では”花”として写っているが、QV-100では造花のようだ。
 電池の消費量は完全に同条件で比較したわけではないが、QV-100のほうが長持ちするようだ。もっとも、DS-7もフジ承認のSANYO製1000mAhのNi-Cdを使えば楽に100枚以上撮影できるので、経済的。QV-100はアルカリとリチウム電池しか承認しておらず、Ni-Cdを推奨していない点が気になる。

小型軽量なQV-100、画質で勝負するDS-7
 液晶一体型VGA画素クラスの両雄「QV-100」「DS-7」。”パーソナル向けデジタルカメラ”という分野を確立した大ヒットモデル「QV-10」の高画質版として登場した「QV-100」と、DS-505やDIJEなど業務用モデルでの技術をベースに開発された普及モデル「DS-7」と、その成り立ちは全く異なる。私には、この違いがそのまま、両機の性格を端的に象徴しているように感じられる。もっといえば、「小型軽量・多機能・低価格」という電卓の発展過程をそのままデジタルカメラに置き換えたのがカシオであり、あくまでも写真を撮るためのカメラとして高画質へのこだわりをもってデジタルカメラの普及に取り組んだのがフジといえる。

 そして、この両機の特徴を端的にいえば、”小型軽量で低価格な「QV-100」”、”画質で勝負する「DS-7」”といえそうだ。

 ちなみに、近日中に更新するデジタルカメラ・ランキングでは、QV-100の順位を3位から一気に次点とすることに決めた。デジタルカメラもカメラである以上、あるレベル以上の写りでなければならない。今回の製品版はベータ機に比べて画質が大きく後退しており、この写りには納得がゆかず、携帯性や機能面がよほど気に入った人でない限りお勧めしかねる。

人形 QV-100 人形 DS-7 SAMPLE 10 人形
 日中で順光という標準的な条件だけに、比較的差が少なく見える。しかし、細かな絵柄のため、解像力の高いQV-100のほうが写りはかなりシャープだ。

夜景1 QV-100 夜景1 DS-7 SAMPLE 11 夜景1
かなり暗い条件だが、DS-7ではかろうじて端の橋脚や空が写っているが、QV-100では光源しか写っていない。

夜景2 QV-100 夜景2 DS-7 SAMPLE 12 夜景2
QV-100のカットだけを見れば、デジタルカメラってこんなものかな~と思うかもしれないが、DS-7ならこれだけ写る。これなら、夜景背景の記念写真だってOKだ。


【画像データについての注意】
 画質評価は、両機とも純正のMac用ソフトを使って画像を展開しています。MacとWindowsではモニターのガンマ値の基準が1.8と2.2と異なるため、Windowsマシンでご覧の方は表示された画像がやや暗いものと考えてご覧ください(ガンマ値が変更可能な場合は1.8に合わせてください)。(著者)

 著者からpict形式で渡された画像ファイルにいっさい手を加えず、Windows版「PhotoShop 3.0J」を使い、JPEG形式に変換のみ行ない、最高画質(低圧縮)で保存してあります。サムネール画像はJPEGの最高圧縮で画質が判断できませんので、ぜひ元画像をご覧ください。(編集部)


[Reported by 山田 久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp