標準価格:63,000円
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現在のデジタルカメラブームの火付け役となったカシオQVシリーズ。今回発表された「QV-100」は,同シリーズ初のVGA画素(640×480ピクセル)クラスのモデルとして,各方面から大変な注目を集めている大本命だ。今回はごく短期間だが,発売前のベータ機(本体。ソフトとも)を試用することができたので、早速レポートしよう仕様の詳細はメーカーからの製品情報をごらんいただきたい。なお、今回のテストはベータ機で行なったため、製品版で一部仕様が変更されているケースもあるので、その点は予めご了承いだたきたい。
軽量化されたボディー
まず、手にした第一印象は,「おっ,なかなかカッコいいじゃん!」という感じだ。ボディーカラーがシルバー系になり、デザインもQV-30譲りの直線基調でシャープな印象を受け、質感も若干だが向上している。
サイズ的には、QV-10Aとほとんど変わらないコンパクトさ(QV-30の筐体でなくてよかった・・・)で、重さは180gと軽くなっており、QV-10Aより10g軽く、わずかな差だが持ち比べるとちゃんと体感できる。
記録時間はQV-10Aと同等
操作性は基本的にこれまでも定評のあったQVシリーズのものを踏襲している。また、保存中に液晶に砂時計マークが現れるといったアイコン表示の採用も好感が持てる。
ちなみに保存時間は精細モードで5秒とQV-10Aとほぼ同等で、同じVGA画素ながらも記録に10秒近くかかるDS-7の2倍の速度を実現しており、気分がいい(もう少し早いと、もっといいのに・・・)。
電池の持ち時間は必要十分
QVのような液晶ファインダー型で問題になる電池の持ち時間だが、スペック上は他のモデルより長く省エネ化が図られている。今回は短期間の撮影だったが、撮影前に新品のアルカリ電池(パナソニック)に交換したが、比較用に同時撮影したDS-7は途中で電池交換することになったが、こちらは最後まで警告すらでなかった。通常の使用では、100枚以上は楽に撮れそうだ(条件にもよるけれどね)。また、高価だがリチウム電池を利用すれば、さらに撮影枚数を稼ぐことができる。
圧縮率は1/15のCAM形式
いまやVGA画素モデルは内蔵メモリー専用機は少数派だが、QV-100は今回,メモリーを4MBに容量アップし、撮影枚数を稼いでいる。記録時のファイルサイズは精細モードで1コマ約65KB。展開時には約920KBになるので、圧縮率は約1/15。ちなみにこの圧縮率はフジDS-7と同等だ。
また、標準モード(320×240ピクセル)では約26KB(展開時230KB)になる。QV-10Aでは同じピクセル数の画像で33KBになるので、標準モード時の圧縮率も従来より高まっている。
もちろん、ファイル形式はQVシリーズ独自のCAM形式を踏襲しており、取り込みはQV-100対応の専用ソフトが必要になる。
64枚撮りは妥当。転送は1コマ約15秒
撮影枚数は精細モードで64枚。標準モードで192枚となっている。内蔵メモリー専用機なので、撮影枚数は多いに越したことはないが、まあ、64枚あれば必要十分。しかも、今回は精細モードで撮影・記録した画像を,カメラ内で標準モードに変換して記録できる機能を備えているため、取りあえず精細モードで撮影し、枚数が危うくなったら解像度が必要ないものをこの機能を使って変換すれば、画像を消さずにメモリーに空きスペースができるわけだ。
気になるのは、パソコンへの転送速度だが、今回使用したMac用キットでは、精細モードの画像で1コマ転送するのに約15秒かかった。仮に64枚フルに撮影すると、16分かかる計算になる。待っていると長いが、実際にはコーヒーを一杯飲んでいる間に終わるくらいの感覚で,さほど不満を感じるほどではない。
レンズはワイドに
レンズは従来のQV-10Aが35mm判換算で60mm相当と望遠系だったのに対して、今回のQV-100は約40mm相当と,かなりワイドになっている。同じ位置から撮影すると、QV-10Aの2倍の面積が写ると思えばよく、普通のレンズ付きフィルムと同じくらいの範囲が写るようになったと思えば分かりやすいだろう。また、直線が曲がって写る歪曲収差も軽減されており、格子状のものを写さない限りは実用上問題のレベルに抑えられている。
また、ピントは固定式で、マクロ撮影用モードを備えた従来と同じ方式を採用しているが、今回は画質が向上したこともあって、ピントが合う範囲が従来よりやや狭く感じられた。とくに絞りF2.8(○印)でマクロ撮影をするときには注意が必要だ。
ワンランクアップの解像度
今回はベータ機であり、ソフトもベータ版のため、絶対的な評価はさけるが、明確にいえることは,実効画素数が4倍になったことで,従来のQV-10Aよりも解像度が明らかにワンランクアップしている点だ。これまでのQV-10AやQV-30で,解像度に対する不満を感じる人が多かっただけに、これは最大の朗報といえる。(写真左がファインモード640×480ドット、右がノーマル320×240ドットでの撮影)
しかし、色や階調の再現性は以前のQVシリーズ譲りで、渋めの色調と高めのコントラストは、そのまま踏襲されており、QV-10Aよりもむしろ初代のQV-10の画像に近いイメージだ。ライバル機であるフジDS-7がこのあたりを重視した絵作りになっていることもあって、ここは大いに評価が分かれるところだろう。
また、テスト機は縦方向に走査線状の細かなスジが見られた。これはQV-10などにも見られた傾向だが、この点はまだ改善されていないようだ。このあたりは製品版で改良されることを大いに期待したい。
液晶はQV-10Aと同じ1.8インチのTFTだが、表示はリアルタイムではなく,例のコマ送り方式。しかも、撮影時には実際に撮影される画像よりも,遥かに粗い画像になっている。そのため、この部分だけを見ると、本機の画質の向上を体感することができ ないのは、やや残念だ。
改良されたMac用ソフト
ソフトは今回Mac用のVer1.2.3(68K)用のベータ版を使用したが、ソフト側のインターフェースも改善されている。とくに、Mac用の場合には、Macならではの操作感を重視し、サムネール画面をドラック&ドロップするだけでCAMファイル(QVのオリジナル形式)のコピーが作れる機能などはきわめて便利だ。もちろん、このソフトはこれまでのQVシリーズでも利用できるため、初期のソフトでハイライトの白飛びに悩まされている人は、今回単品売りになったソフトだけを購入してもいいだろう。
VGAクラスの大本命か?
QV-10に始まった大ヒット作のQVシリーズ。このQV-100で3世代目となるわけだが、VGA画素クラスのCCDを採用したモデルは他社からも数多く登場しており,最近ではフジDS-7のように背面に液晶を搭載した,いわゆる”QVスタイル”を採用したモデルまで登場している。さらに多機能モデルとしてはリコーDC-2Lもあり、今夏にはミノルタからもズームレンズ付きの液晶モデルまで登場すると,一部の新聞で報じられている。
小型軽量で、操作性がよく、レンズ部が回転するという、このQV-100は,この激戦区でどのようなポジションを獲得するか、大いに興味のあるところといえる。ライバル機よりも5,000円以上安い63,000円という価格設定も,なかなか挑戦的だ。QVユーザーにとって,待ちに待ったVGAモデルだが、画質を含めた評価で、これまでのQV-10Aに匹敵するほど圧倒的な神通力があるかどうか,大いに興味のあるところだ。
私自身は、数日中に更新されるデジタルカメラベスト5で、暫定ではあるが、3位とする。その理由はそちらをご覧いただきたい。8月24日の発売が大いに楽しみだ。
編集部注:各画像は縮小見本です。クリックすると元の画像が見られます。元の画像は編集部が「PhotoShop 3.0J」を使い、pict形式からjpg(低圧縮率の最高画質モード)へ変換したものです。縦位置のものは90度回転していますが、それ以外の変更は行なっていません。
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('96/8/5)
[Reported by 山田久美夫]