ペーパーメディア、例えば雑誌の情報がいまわれわれの役に立っているのは、そこにある情報が少々古くても、ひとつのテーマに関する情報をまとめて見られるとか、現在のサーチエンジンではまだ実現できないような、かゆいところに手が届くような情報が、編集作業を経て提供されているからですよね。しかし半面、雑誌は情報を提供するまでに時間がかかる。それからすごく一面的な情報である場合が多いですね。たとえばメーカーから提供された情報が多くて、ユーザー側の情報というのは非常に少ない。
これに対して World Wide Web(以下Web)を媒体として見ると、早く、いつでも、誰でも、誰にでも、必要な人に情報を提供できます。しかし、Web上の情報というのは、さまざまな人や団体から、ばらばらに提供されていて、サーチエンジンなどの助けがあるにしても、整理しきれないほどの大量の情報があるわけです。
Webの雑誌というのは、こうした雑誌とWebの中間的な役割を果たすことができるのではないかと思います。Web上の情報が膨大になるにつれて、いろいろな人がWebを利用してなにかをするのに助けとなるものが必要になってきています。サーチエンジンもそのひとつですが、Webの雑誌というのも、そのひとつになり得ると思います。
Web媒体では、情報収集、編集、情報提供という一連の作業をすごく早く回転していけます。ですから、新鮮な情報をいち早く提供していける、という可能性があるわけです。あるていど情報の編集をして、情報にまとまったある価値をつけていく、そういう役割のものがWeb上の情報資源を有効に使うためにもっと出てくるべきだと思います。Web Magazineというのはまさしくそういう役割を持っていると思います。これがWeb Magazineに期待したいことのひとつですね。
それから、もうひとつは、PC Watchのコンセプトのひとつに、コンシューマー寄りの情報を提供していくということがあると思います。
そうすると、たとえば秋葉原では、どこに何があって、それでどこに行けば安いかというのは、毎週秋葉原に行っているような人は知っているわけです。でも一般的には、毎週秋葉原に行くというのはなかなかできませんから、雑誌の広告をみますよね。でも雑誌の広告では品名で検索して価格を比べることはできないから、結局どこが安いのかは分からなかったりする。
お店の情報っていうのは、ノウハウの固まりみたいなところがあって、その情報が流通するということは大切なんで、まずそれは第一のステップとして、やってもらいですね。
そこで次に考えてもらいたいのが、商品の情報というのは、買いたいという動機があって見るということですね。特定のものというわけではなくても、ここに行けば商品の情報がある、価格が分かる、ということで見に来ている人たちは、いいものがあれば買いたいという気持ちが根底にあるからこそ見るわけです。
現状のWebでは、たとえば大手メーカーはクルマであれ、パソコンであれ、たいてい製品情報までは提供している。ショップやショールームまで出向いていかなくても、製品の仕様とかを見比べて、「これを買おうかな」とだいたい決められるというところまではWebでできるようになっています。ところが実際に購入する段になると、やっぱり出かけていかなければならない。
カーナピーナというカレー屋さんのページがあるんですよ。この店は、すごいスパイスの匂いがするんです。だからカーナピーナに行ったことのある人は、そのページの写真を見ると、匂ってくるような気がするわけですよ。それで、「ああ食べたい」って思ってよだれが出てきたとしても、そこまでだったらなんの意味もないわけですよ。キーボードがよだれだらけになるだけで(笑)。それでぼくたちは、その店はインターネットはもちろん、クレジットカードも扱っていないから、FAXで注文して、宅急便で送らせるというのをやっているわけです。
つまり、秋葉原ではどこが安い、というような情報ももちろん重要です。でも、高いパソコンショップしか近くにない、どこかの地方の人がその情報を見たとしても、そのカレーの話と同じで、キーボードがよだれだらけになるだけで、なんの意味も持たないってことになってくるんじゃないかと思います。この情報は秋葉原に行ける範囲の人のところまでしかインターネット上でも行かない、というようなことができるような技術の検討はされています。でもいまはこれはできない。そうすると、秋葉原に行けないところに住んでいる人にとっては、これは非常に、くやしいですよね。
ですから、さきほどいったように、プロダクトの紹介っていう情報は、欲しい人のためのものなんだから、やはり「売る」というところまで道をつけてほしい。そういう意味で、通信販売をやっているところと結びついてくるとすごくいいと思うんですよ。エレクトリック・コマースもこれから本格的に立ち上がってくると思いますが、その入り口みたいな役割を果たしてくれるといいと思います。
そこまでいくと、さらに消費者の役に立つ「PC Watch」になるんじゃないでしょうか。(談)
('96/7/12 取材)