ご愛読いただきありがとうございます。PC Watchは今日、創刊です。
PC Watchは、一言でいえば「パソコン関連情報を提供するWebマガジン」です。Webマガジンについては、先人がHOT WIREDなどですでに実現しているものですが、その概念はまだ一般に定着しているわけではないでしょう。紙という住みなれたメディアを離れ、Webというメディアに移ることで、逆に「雑誌」という概念が問い直されています。
慶應大学の村井先生に創刊のお言葉を頂いていますが、その中で先生はWebマガジンは「Webと(紙の)雑誌の間」になってほしい、という期待を寄せられています。これは、私なりに解釈させていただければ「編集コンセプトを持ったホームページ」のことだと思っています。つまりWebマガジンとは、あるコンテクストのもとに集められ、加工されたインターネット上のコンテンツではないでしょうか。
新しいメディアにおける適切な表現を確立することは容易なことではありません。いろいろな人が、いろいろな実験をしたのちに市場の判断の積み重ねで、ある安定した「形」が作られるものだと思っています。いま私たちのまわりにある「雑誌」「書籍」「テレビ」なども、永い年月をかけて、先人たちが苦労して定着させてきたものです。私たちもこの例に習い、いろいろなチャレンジをしていきたいと考えています。
チャレンジその1:可能な限り「早い」情報を
Webは、既存の出版の「印刷・流通」の過程を一瞬のうちにやってのけます。既存の月刊誌では、どんなにがんばっても2週間程度遅れてしまうのが実状です。したがって、パソコンの値段などの活きた情報は掲載することができません。Webなら、「編集完了=出版」です。もし、パソコンの店頭価格が下ったという情報があれば、今日のうちに掲載でき、読者は急ぎ販売店に出向くことができるのです。
チャレンジその2:メーカーと消費者の間の「空間」に
「PC Watch創刊に寄せて」のマイクロソフトの古川会長の弁にもありますが、既存の雑誌は、そのメディア特性の限界からメーカーから消費者への情報流れを基本に置かざるを得ませんでした。それは、取材する対象として、消費者の数はメーカーより圧倒的に多く、出版側は情報の「薄い」消費者をいちいち取材するのは効率が悪いという理由によるものだったと思います。しかし、インターネットの双方向性(低コスト)はそれを解決する可能性があります。開発者の声と、それを購入した消費者の声、その間で情報を交換する仕組みを提供できたら……、と願っています。
チャレンジその3:読者の「声」もコンテンツ
広告をコンテンツに変えた会社として有名なのはリクルート社ですが、PC Watchは読者の意見や声をコンテンツに変換したいと思っています。たとえば、「いま使っているパソコンはなんですか?」というアンケートの結果は、多くの人が知りたいコンテンツだと思うのです。今後、PC Watchではさまざまなアンケートを実施させていただく予定です。
チャレンジその4:「時間概念」を表現したい
Webは即時メディアであると同時に、蓄積メディアでもあります。たとえば、メモリーの販売価格推移グラフは、読者が見たときが常に最新であり、かつそれ以前の情報も蓄積されています。既存の雑誌ならバックナンバーを見なければならないシーンでも、Webなら常に時間軸を圧縮して表現することができます。
いま現在のPC Watchは、上記したことを実現している訳ではありません。少しずつチャレンジしていくつもりです。したがって、PC Watchの「顔」は常に変化すると思います。また、いろいろな失敗をさせていただくことになると思います。このことは、読者にあらかじめ了解をお願いします。
ところで、PC WatchのWebでの閲覧は無料ですが、商業媒体である以上、なんらかの収入が必要です。PC Watchは当面、広告収入と「電子メール版PC Watch」の購読料により運営していくつもりですが、今後、Web課金の仕組みができるなど状況が変化すれば、有料化には積極的に取り組むつもりです。読者からみれば、ずっと「無料で」と思われることでしょうが、健全なWebマガジンが育つためには、有料化が必要だと思っています。読者はどんなサービスを必要とされているのか、またそれはいくらならOKなのか、それらもPC Watchの発行を通して考えていきたいと思っています。
最後に、新しいメディア作りに、皆様の積極的な参加をお願い致します。
('96/7/22 01:14:25)