【インタビュー】

PC Watch創刊によせて

よりいっそうのレベルアップを

Susumu Furukawa
マイクロソフト株式会社
代表取締役会長

古川 享 氏

 「PC Watch」創刊おめでとうございます。

 5月の仮オープンのときからよく見ていて、特にキヤノンやニコンのデジタルカメラのニュースは速くて、ビル・ゲイツへのレポートにも一部使わせてもらいました。

 ただ、6月の中頃から、編集部の興味がSIMMの値段などのマーケット情報の方へ移ってしまったようで、製品に対する執念がちょっと弱くなってしまった印象があります。組織化が進んで行くにつれて、最初のパッションを維持していくというのは難しいかもしれないけれど、もっと努力してほしい。

 たとえば、発表会の報道でも「その場にいた」という感覚を大事にして、それを伝えることを意識してほしい。通り一遍の報道じゃなくて、必ず最後につっこんだコメントをとって、それに自分の意見をきちんと添えて報ずるだけでも、変わってくると思います。

 クオリティの面でいうと、イベントものの写真の質とか、商品写真の処理とかがラフなことが多くて、レポートに流用するときも自分でレタッチしました。(笑)

 新しいメディアなので、いろいろなやりすぎや、多少のラフさはあってしょうがないし、完成度を気にするよりも大事なことはいっぱいありますが、クオリティの高い低いは読者に伝わりますし、それが雑誌の格を決めることになるのでもうちょっと気を配ってほしいと思います。

 あと、情報の見せ方という点でまだまだ工夫が足りない。たとえば、あるメーカーの記事を読んで、その前の記事を読もうとしたときにバックナンバーで検索する方法しか用意されていません。あれは時系列的に日付順に並んでいるだけなので、けっこう探すのが大変です。

 時系列的なビュー以外に、メーカー別のビューとか、分野別のビューとか、いろいろな検索の方法を工夫してください。いまはまだ2ヶ月分しかコンテンツが蓄積されていないけど、1年たったときのことも考えておく必要があります。

 それから、Webという新しい媒体なので、いろいろなことにチャレンジしてほしい。たとえば、発表会におけるメーカーの発言をそのまま載せるのではなく、開発者に発表の現場で取材して開発秘話を音声ファイルで載せるとか、プロの写真家にデジタルカメラを実際に使ってもらい、プロとしての意見を聞くもしくは作品発表の場を提供するとか、音楽を本業とするプロのアーティストにサウンドロゴを提供してもらうとか、音楽、映像、あらゆる文化や芸術に貢献しているプロフェッショナルに登場いただくということも必要だと思います。

 また、双方向性を生かして、たとえば、新しい製品についての質問を受け付けて、それをメーカーの開発担当者から回答を引き出すということも考えてほしい。インターネットの時代になって、ゼロサムゲームの世界から、共存しながら競争していく時代になりました。ユーザーとメーカーの間も、対抗しあう関係から、お互いにフィードバックしあいながら高めあっていく関係へと変化しつつあります。そのための回路としての役割も期待します。

 PC Watchの記事を英訳して日本から情報を発信することも検討してほしい。さっきいったデジタルカメラに関する情報のように日本が本場で、海外へ発信するだけの価値がある情報もたくさんあるはずです。

 いろいろ注文を付けましたが、PC Watchは、この分野の専業で、それなりのバックグラウンドの知識とスキルとを持っているのだから、自分たちの記事を別の媒体へ配信するぐらいの気概をもってやってもらいたい。

 きちんとした見識と批評能力をもった媒体が少なくなった時代だけに、今後の「PC Watch」の働きに期待します。

(談)

('96/7/20 取材)


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp