【イベント】

「ケーブルテレビ '96」会場で
メーカーに取材

気になる非対称ケーブルモデムの現状

写真左:東芝ブースで展示されていた非対称ケーブルモデム。下り8.192Mbps・上り2.048Mbps
写真中央:パイオニアブースで展示されていた非対称ケーブルモデム。下り30Mbps・上り128Kbps。試作機のためかなり大きいが、製品はこの半分くらいの大きさになる予定とのこと
写真右:ヒューレットパッカードブースで展示されていた非対称ケーブルモデム(モックアップ)



 東急ケーブルテレビが昨年12月に月額1,800円のインターネット接続サービスを申請して以来、ケーブルテレビでのインターネット利用にユーザーの期待が高まっている。そこで、普及のひとつの鍵となる非対称型のケーブルモデム(※注)について、「ケーブルモデム'96」会場で取材した。なお、はじめにお断りしておくが、動向を掴む目的で取材を行っており、すべてのブースで取材したわけではない。したがって、必ずしもここでご紹介するメーカーだけがケーブルモデムを開発しているというわけではない。

 非対称型のケーブルモデムで、動いている実機を展示していたのが東芝パイオニアの2社。東芝はすでに米タイムワーナー社と実験をはじめており、夏頃には国内でも製品化の予定という。製品化のさいの価格は7万円前後を予定している。パイオニアの非対称型ケーブルモデムは試作機で、まだ出荷はしていない。年内にはケーブルテレビ会社とテストを始めたいという。

 また、ヒューレット・パッカードは、展示はモックアップ(模型)だったが、すでに米国でサンプル出荷を始めたとのことで、ものは出来ているようだ。ただし国内発売については未定。国内向けのマーケティングは「認定も取らなくてはならないし、インフラの問題もある」ので、まだ様子見といったところのようだ。なお、インフラの問題というのは、国内のケーブルテレビのほとんどが難視聴地域対策として始められており、システムがデジタルデータ伝送用にできていない点を指す。

 NECでは、実機もモックアップの展示もなかったが、参考出展として同社で開発中の非対称型ケーブルモデムを使用したシステムのパンフレットを配布していた。まだ開発中ということで、製品化スケジュールは未定とのこと。なお同社ではプロバイダー事業、meshにも力を入れているが、ケーブルテレビ会社とmeshを接続するという展開も考えているようだ。

 パナソニック(松下電器産業)ブースでは参考出展として非対称ケーブルモデムの展示があったが、まだ開発中とのこと。担当者がちょうど不在だったこともあり、詳しい話は聞けなかった。ほかに、富士通愛知電子も回ったが、こちらは対称型ケーブルモデムを使ってシティテレビ中野と接続し、デモを行っていた。非対称型の開発状況については、こちらも話が聞けなかった。

 以上のように非対称型ケーブルモデムの状況は、時期的には早いところで年内に国内のケーブルテレビ事業者とテスト運用を開始、サービス実用化は98年ごろまでずれ込む可能性がありそうだ(対称型のケーブルモデムを使用したサービスはすでに実験運用が開始されている)。
 また、気になる非対称型ケーブルモデムの価格は、どのメーカーでもコンシューマー市場ということで500ドル、5万円ていどをめどにしているようだが、「量産化以前にはその価格では出せないだろう。ただし戦略的な価格づけで、5万円くらいで出すメーカーがあるかもしれない(ヒューレットパッカード)」とのことだ。ただし、「普及が進んで大量生産に入れば、現在のモデムのように、3万円というような価格で出すことも可能(パイオニア)」ということだ。安くなるかどうかは、当然のことだが大量生産ができる需要があるかどうかがキーになる。

 いずれにしろ、ケーブルテレビでのインターネット利用は、デジタル通信に対応したケーブルテレビ事業者が増えることがまず先決だろう。しかしこれはインフラ事業なので、そう簡単には進まない。ケーブルテレビ網を利用したインターネット接続サービスは、ごく限られた事業者のエリアに住んでいない限り、まだとうぶん先と考えたほうが良いようだ。


【注】
※ケーブルテレビの双方向通信は、「対称型」と「非対称型」のふたつのタイプに大別される。対称型は局側から送信する「下り」と、端末側から局に送信する「上り」の速度が同じで、現在上り・下りとも10Mbpsのケーブルモデムが製品化され、シティテレビ中野などのケーブルテレビ会社で実験に使用されている。それに対して「非対称型」は上りと下りの通信速度が違い、局側から送信されるデータの方が多いことを想定して、下りの方が速くなっているもの。製品化の状況はここにレポートしている通りこれからだが、家庭をターゲットとしたインターネット接続サービスは非対称型が多くなると予想され、注目されている。

('96/6/13)


[Reported by hiroe@impress.co.jp]


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