Platform Conferenceレポート

VIA TechnologiesがVPXチップなどを展示

会期:7月24日、25日

会場:Silicon Valley Convention Center



 前回までのPlatform Conferenceの主役はDDR SDRAMで、DDR SDRAMを製造するメモリデバイスメーカー、DDR SDRAMに対応したチップセットを出荷するチップセットベンダーなどが揃い踏みしており、DDR SDRAMに関する展示が多くされていた。しかし、DDR SDRAMも一応対応製品が出荷され、あとは実際に普及するのを待つ段階となっていることを反映し、今回はDDR SDRAMに関する展示は少な目となっている。それにかわる今回の主役の座に躍り出たのが、基調講演レポートでもお伝えしたように、I/Oバス。HyperTransportやPCI-X、シリアルPCIといったI/Oバスに関する発表で、大きな注目を集めることとなった。


●VIA TechnologiesがAGPバスを転用して64bit PCIを接続するVPX-64チップを発表

VIA Technologiesのセッションで公開されたVIA TechnologiesのデスクトップPC向けロードマップ
 台湾のチップセットベンダであるVIA Technologiesは、同社のチップセットに関するセッションを開催し、チップセットロードマップなどに関する戦略を明らかにした。それによれば、VIAは今後Pentium 4用の単独チップセットであるP4X266、その統合型バージョンであるP4 SMAをリリースする。P4 SMAはOEM向けにはP4M266として説明されているチップセットで、P4X266にS3 GraphicsのSavage2000相当の2Dグラフィックス、Savage4相当の3Dグラフィックスコアを統合した統合型チップセットだ。既にCOMPUTEX TAIPEIのレポートでも説明したように、P4X266とP4M266はピン互換で、基本的に1枚のマザーボードでP4X266とP4M266の両方のマザーボードを作ることができる。

 その後、2002年にはDDR333と呼ばれるチップセットが計画されているという。このDDR333は、333MHzのDDR SDRAM、つまりはPC2700をサポートするという。このほか、AGP 8X、8倍速ないしは4倍速のV-LINKなどをサポートするという。こちらにも、統合型が用意されておりDDR333 SMAとなっている。

 ただし、現時点ではこれらは計画であり、具体的なチップセットデザインなどはこれから行なわれるようだ。VIA Technologiesのストラテジックプロダクトマーケティングディレクターのエリック・チャン氏によれば「現在はまだこれらのデザインを行なっている段階でシリコンが存在する訳ではない。実際にシリコンになるのは9月にJEDECが333MHzのDDR SDRAMやPC2700の仕様をフィックスしたあとになる」とのことで、現時点では正真正銘“プラン”であるということだ。

VIAのブースに展示されていたVPXチップ。AGPを転用するXIPを利用してノースブリッジに接続される
 なお、サーバー向けのセッションでは、同社のVPX-64チップが初めて公開された。VPX-64チップはVIAのApollo Pro266T、P4X266のオプションとして用意されるチップで、これらのチップセットに64bit PCIの機能を追加するものだ。

 このVPX-64は、ノースブリッジにXIPというバスを利用して接続されるのだが、Apollo Pro266T、P4X266のノースブリッジにはこうした専用のバスは用意されていない。それでは、どうするのかと言えば、AGPポートをXIPとして転用するのだ。実に強引な手法ではあるが、確かにAGPポートも高速なPCIバスの一種であるため、こうしたことを行なうのは不可能ではない。このため、AGPのビデオカードは使えなくなってしまうが、サーバー用途ではAGPのビデオカードは必要なく、サーバー向けと割り切ってしまえば納得のいく話ではある。


VIA Technologiesのサーバー向けチップセットロードマップ。VPX-IIではPCI-Xをサポートすることができるようになる
 実は、VIAは昨年の8月にHDIT(High-Bandwidth Differential Interconnect Technology)という構想を明らかにしたことがある( http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000808/via.htm )。

 その時明らかにした内容によれば、ノースブリッジに専用バスでHDITブリッジチップを接続し、そこにAGPポートやPCI-Xスロットなどを接続するというアーキテクチャとなるということだった。情報筋によれば、VIAは昨年の秋にOEMメーカーに対して、このHDITブリッジこそVPXチップで、このVPXチップとノースブリッジ間は133MHzのQDR(Quad Data Rate、4倍速)バスで、2.1GB/Secの帯域を実現するバスであると説明した。

 それに対して、今回明らかにされたVPX-64は、その半分の帯域しか実現できない66MHzのQDRで1.06GB/SecのXIPバスのみとなっており、AGPへのブリッジ機能などもまだ実現されていないなど、やや仕様としては後退したものとなっている。なお、VIAでは今後VPX-IIという後継チップを計画しているそうで、そちらではもともとのHDITの仕様が実現される可能性もあり、期待したいところだ。


Tualatinを正式にサポートしたApollo Pro266T Apollo Pro266Tを搭載したTyanのエントリーサーバー/ワークステーション向けデュアルマザーボードのS2633T Apollo Pro266Tを搭載したMSI Computerのエントリーサーバー/ワークステーション向けデュアルマザーボードのPro266DT Master Apollo Pro266Tを搭載したSuperMicroのエントリーサーバー/ワークステーション向けデュアルマザーボードの6021I


●S3 Graphicsはモバイル向けグラフィックスコアロードマップを公開

 SonicBlue(旧S3)とVIA TechnologiesのジョイントベンチャーであるS3 Graphicsは、同社のモバイルPC向けグラフィックスに関するセッションを行ない、モバイルPC向けビデオチップのロードマップを公開した。

 現在、S3 GraphicsはSuperSavage、Savage/IXなどのビデオメモリ内蔵型のビデオチップをリリースしている。SuperSavageは、先月ニューヨークで開催されたPC EXPOでIBMが公開したモバイルPentium III-M搭載ノートThinkPad T23にも、いちはやく採用されている。S3 GraphicsによればモバイルPC市場におけるS3のシェアは20%前後となっているという。

S3 Graphicsのモバイル向けグラフィックスロードマップ。UltraSavageではテクスチャ描画エンジンのパイプラインがSuperSavageの倍である2パイプラインとなる。また、このUltraSavageを利用した統合型チップセットも計画されている SuperSavageのチップ。グラフィックスコア以外に、ビデオメモリがMCM(Multi Chip on Module)で搭載されていることがわかる

 今回S3 Graphicsが公開したのが、現在のSuperSavageの後継となるビデオチップで、「UltraSavage」の製品名がつけられている。

 現在のSuperSavageではレンダリングエンジンが1パイプラン、2テクスチャとなっていて2テクスチャ同時描画が可能となっているのに対して、UltraSavageでは2パイプライン、2テクスチャと強化され、1クロックあたり4テクスチャが同時描画可能となる。このUltraSavageを統合した統合型チップも計画されているそうで、こちらは333MHzのDDR SDRAMをサポートしたものになる予定とのこと。これまで同様AMD向け、Intel向けの両方のチップセットが用意されることになりそうだ。


●API NetworksはHyperTransport

API Networksが行なったHyperTransportの外部ケーブルを利用したデモ
 API NetworksはHyperTransportのPCIバスブリッジチップ、さらにはHyperTransportのチップ同士を外部ケーブルで接続するデモを行なった。API Networksによれば、このケーブルは長さ6フィート(1フィートは約30cmなので、約180cm)で、現在のところ800Mbpsでのデータ伝送が可能になっているという。

 API Networksが行なったセッションではHyperTransportの今後の課題として、マザーボード上に設けるコネクタ、ケース内のケーブル、ケース間を接続するケーブルの仕様の策定などをあげており、今後、先日結成が明らかになったHYPERTRANSPORT TECHNOLOGY CONSORTIUMで技術的な可能性などについて話し合いがなされていくという。

 歴史的には、PCIバスもチップとチップを結ぶバスだったのだが、マザーボード上に拡張カードを挿すことができるコネクタの仕様を定めたあたりから一挙に普及が進んだということもある。そうした意味ではHyperTransportがPCの標準のI/Oバスとなるためには、避けて通れない道といえ、注目に値する動きだ。このほか、ホットプラグなどに関する仕様も策定される計画があるとのことで、注目したい。


●PCI-Xブースでは4ウェイのXeonマザーボードを利用したPCI-X関連製品をデモ

 PCIバスの規格を策定するPCI SIGは、独自ブースを設け、サーバー/ワークステーション向けのI/Oバス規格であるPCI-Xに関するデモを行なっていた。ServerWorksのGC-HEというXeonプロセッサの4ウェイマルチプロセッサ環境を実現するマザーボードを利用して、PCI-Xに対応したSCSIカード、Ethernet、PCI-Xブリッジチップなどのデモを行なっていた。

 既にPCI-Xの次にはInfiniBandというさらに高速なI/Oバスが登場することが明らかになっているが、64bitのPCIバスでは足りなくなりつつあるサーバーのI/Oバス環境を改善するソリューションとしてPCI-Xは中継ぎの役目を果たすと見られている。いよいよサーバー環境では実際にPCI-Xに対応した製品が出そろうことになりそうだ。

AdaptecのUltra320 SCSIをサポートしたAIC-7902チップを採用したSCSIホストアダプタカード LSI LogicのUltra320 SCSIをサポートしたLSI53C1030チップを搭載したSCSIホストアダプタ

□関連記事
【7月25日】【Platform】デスクトップ版ClawHammerのシステムバスに16bit HyperTransportを採用
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010725/pform01.htm
【2000年8月8日】VIA、次世代DDR-SDRAMチップセット用のアーキテクチャ「HDIT」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20000808/via.htm

(2001年7月30日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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