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実用的なビジネスツールとして生まれ変わったLibretto L1
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Libretto L1/060TNMM |
東芝から初代Libretto(Libretto 20)が登場したのは、'96年4月のことである。Libretto 20の筐体サイズは210×115×34mm(幅×奥行き×高さ)、で、重さはわずか840gであった。AMD製のDX4/75MHz相当のCPUを搭載し、HDD容量はわずか270MBと、その当時の水準からいってもスペックは高いとはいえなかったが、そのサイズと軽さには大きな衝撃を受けた。Librettoシリーズは、後継製品が次々と登場し、その度にCPUやHDDなどのスペックが強化されてきた。筐体のデザインは、初代Libretto系と'98年6月に発表されたLibretto SS系、そして'99年6月に登場したLibretto ff系の3タイプに分類できる。Librettoの登場によってミニノートPCというジャンルが新たに確立し、他社からも対抗製品が投入されるなど、一時はかなりの盛り上がりを見せたのだが、ソニーが'97年11月に発表した初代VAIO 505(PCG-505)の登場によって、ミニノートとB5サイズ薄型サブノートの棲み分けが難しくなってしまった。NECや松下電器がミニノートから相次いで撤退していき、ミニノートの代名詞的存在であったLibrettoシリーズも'99年10月に発表されたLibretto ff 1100V M26/AAAを最後に新製品が投入されなくなってしまった。
●サイズが二回りほど大きくなったことはプラスかマイナスか?
しかし、Librettoは死んだわけではなかった。この5月に、約1年半にわたる沈黙を破って登場した「Libretto L1/060TNMM」(以下Libretto L1)は、Librettoの名を冠してはいるものの、モバイルノートに求められる条件をもう一度最初から見直すことによって誕生した製品であり、その製品コンセプトは従来のLibrettoシリーズとは一線を画している。
まず、なんといっても、本体のサイズが大きく違う。以前のLibrettoシリーズを知っている者からすると、Libretto L1の筐体はかなり大きいという印象を受ける。Libretto ff 1100Vのサイズは221×132×29.8~32mm、重さ980gで、初代Libretto 20と比べて幅が11mm、奥行が17mm大きくなってはいるものの、やはりミニノートらしいと感じるサイズであった。しかし、Libretto L1のサイズは268×167.2×20.5~29.3mm、重さ1.1kgで、初代Libretto 20と比べると幅は58mm、奥行は52.2mmも大きくなっている。幅はB5ファイルサイズサブノートとほぼ同じで、底面積はB5用紙に近い。
筐体のデザインも一新された。シンプルで、万人受けしそうなデザインである。ボディカラーは、シルバーとブラックの2色を基調にしており、オフィスにも違和感なく溶け込める。筐体サイズが大きくなったことにともない、液晶パネルのサイズも、Libretto ff 1100Vの7.1インチから10インチへと二回り大きくなっている。表示可能な解像度も800×480ドット(ワイドSVGA)から1,280×600ドット(ワイドSXGA)に向上し、B5サイズやB5ファイルサイズのサブノートPCで採用されているXGA液晶に匹敵する情報量を一度に表示できるようになった。液晶パネルには、開口率の高い低温ポリシリコンTFT液晶が採用されているため、画面も明るく見やすい。
PCとしての基本性能に関しても不満はない。CPUには、TransmetaのCrusoe(TM5600/600MHz)を搭載している。Crusoeは発熱と消費電力が小さいことが特徴であり、Libretto L1のようなミニノートには最適なCPUである(というより、超低電圧版モバイルPentium III/Celeronを除くPentium II以降のIntel製CPUをミニノートに載せるのは困難である。搭載するのにふさわしいCPUがなかったということも、新製品がしばらく登場しなかった理由の一つとして挙げられる)。メモリは標準で128MB搭載しているので、増設せずとも快適に動作する。HDD容量は10GBで、それほど大きいというわけではないが、通常のビジネスアプリケーションを利用する程度なら、まず足りなくなることはないだろう。
キーピッチ18mm、キーストローク2mmという本格的なキーボードを搭載していることもセールスポイントだ。Libretto ff 1100Vのキーボードのキーピッチは15mmだったので、タッチタイピングを行なうにはやや辛かったが、Libretto L1なら、快適にタッチタイピングが可能である。「半/全」キーがESCキーの右側に配置されていることを除けば、キー配列も標準的だ。ポインティングデバイスには、スティックタイプのアキュポイントIIが採用されている。スクロールボタンも装備しているので、Webブラウジングなどもスムーズに行なえる。
ただし、ワイド筐体タイプの宿命とはいえ、キーボード手前にパームレストの役割を果たす部分がほとんど用意されていないので、B5サイズサブノートと同じような感覚で手のひらをぺたりと下につけて入力するようにすると、やや打ちづらく感じた。手のひらを浮かせてタイピングするか、キーボードの手前にパームレスト代わりになるモノを置いてタイピングするようにしたところ、格段に入力しやすくなった。
PCとしての基本性能も高い。PCカードスロット(Type2×1)のほか、USBポート×2、RGB出力、IEEE 1394を標準装備しているので、拡張性も十分だ。56kbps対応モデム機能を内蔵していることも評価できる。標準バッテリで約3.5~4.5時間の連続駆動が行なえ、オプションの大容量バッテリ(標準バッテリの3倍の容量を持つ)を装着することで、約11~14時間という長時間駆動を実現できる。大容量バッテリを使えば、丸一日充電せずに使い続けることができる。
●趣味的な機能を省いて実用本位に徹した新Libretto
旧Librettoに比べると、携帯性は低下したように思われるかもしれないが、その分液晶パネルのサイズとキーピッチが広くなっているので、実用性は大幅に向上している。それもそのはず、Libretto L1は、ミニノートを使ったことのあるユーザーを対象としたアンケートで、特に不満の多かった「キーボードの入力のしにくさ」、「バッテリ駆動時間の短さ」、「価格の高さ」という3つのポイントの満足度を向上することを優先して設計された製品なのだ。以前のLibrettoシリーズの場合、まず最初に筐体のサイズありきで、そこに詰め込めるサイズのキーボードを搭載しているのに対し、Libertto L1の場合は、快適に入力をおこなうにはキーピッチ18mmが必要だとした上で、そのキーボードにあわせて筐体サイズを決めているのだ。
Libretto L1の製品コンセプトは、「ビジネスマンがビジネスツールとして活用できるミニノート」というものだ。以前のLibrettoは、ビジネスマンが出張や営業などのお供に持っていくというよりは、PCマニアが趣味の分野で活用するのに適した製品であったが、Libretto L1は、趣味的な要素をできる限り排除した、実用本位に徹した製品だといえる。
たとえば、ソニーのミニノートVAIO C1では、CCDカメラを内蔵していることがウリの一つだが、そうした付加的な機能をフルに活用しているというユーザーはそれほど多くなく、大部分のユーザーはそれほど活用してないというのが実情だ。そこで、Libretto L1では、魅力的に見えるが、実際にはあまり活用されていない付加的な機能(カメラやMP3再生用リモコンなど)を省くことで、実売14万円を切る低価格を実現している。Libretto L1のようなミニノートは、メインマシンとしてではなく外出時や出張時のサブマシンとして利用する製品であるため、価格もできるだけリーズナブルであることが要求される。そうした観点からも、今回のLibretto L1の製品コンセプトは的を得たものといえる。
●使ってみて満足できた点と不満を感じた点
次に筆者が今回試用して、満足できた点と不満を感じた点を挙げることにしたい。まず、満足できた点は、
の4点である。1番目のポイントだが、筆者は仕事柄、COMPUTEXやCOMDEXなど海外の展示会の取材に行くことがある。もちろん、飛行機はエコノミークラスでいくわけだが、エコノミークラスの座席のテーブルは狭く、前後の座席との間隔も狭いため、B5サイズやB5ファイルサイズクラスのサブノートでも、広げて仕事をするには窮屈である。特に、前の座席に座っている乗客がシートをリクライニングしている場合は、液晶パネルを90度くらいに立てないと、シートの背にあたってしまう。しかし、Libretto L1なら、横幅はB5ファイルサイズノートとほぼ同じだが、奥行はB5ファイルサイズノートの3分の2程度しかないので、エコノミークラスのテーブルでも問題なく利用できる。筆者はCOMPUTEX TAIPEI 2001の取材に、Libretto L1をサブマシンとして持っていったのだが(メインマシンはLet's note CF-M1VA)、エコノミークラスの機内でも快適に利用できて重宝した。
B5ファイルサイズのLet's note CF-M1VAでは、液晶パネルを垂直に立てないと前のシートの背にあたってしまう | Libretto L1ならエコノミークラスで前の乗客がシートを倒してきても、問題なく利用できる |
省電力ユーティリティでは、バッテリーの残量に応じて省電力設定を変更することが可能 |
バッテリ駆動時間は、省電力機能の設定や利用するアプリケーションによっても大きく左右される。そこで、一つの例として、バックライトの明るさを4(1~8まで8段階に設定できる)にして、CrusoeをLongRunモードで動作させた状態で、秀丸エディタで文章を入力していったところ、連続で約2時間52分利用できた。公称の約3.5~4.5時間には達していないが、バックライトの明るさをもっと下げれば、駆動時間はさらに延びる。標準バッテリで3時間程度使えるのであれば、一応合格であろう。また、東芝独自の省電力設定ユーティリティによって、省電力設定を柔軟におこなえることも嬉しい。
逆に、不満な点は、
の2点である。Libretto L1では低価格化を優先したために、Ethernetポートを内蔵していない。そのため、LAN環境やブロードバンド回線に接続するには、Ethernetカードなどが必要になる。USBポートが2基あるので、USB接続タイプのLANアダプタを利用するのも手だが、やはり内蔵されているにこしたことはない。また、以前触った試作機では、ヒンジが柔らかく、液晶パネルをある程度以上奥に倒すと、奥にそのまま倒れてしまうことが気になっていた。もちろん、今回試用した製品版ではそうした問題は生じなかったが、やはりヒンジがやや柔らかめで、耐久性についてやや不安を感じた。
Liberetto L1は、B5ファイルサイズノートに匹敵する性能をより小さく軽い筐体に詰め込んだ製品であり、気軽に持ち運べるモバイルノートが欲しい人にはぴったりだ。特別な機能や仕掛けは搭載されていないので、コアなモバイルユーザーには物足りなく感じられるかもしれないが、製品としての完成度は高い。
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【5月7日】Libretto復活! Crusoe搭載、1,280×600ドット液晶、実売14万円
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010507/toshiba.htm
(2001年6月11日)
[Reported by 石井英男@ユービック・コンピューティング]