塩田紳二のJavaOneコンファレンスレポート

展示会場入り口。開場とともに多くの参加者がつめかける
会期:6月4日~6月8日(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Center



 JavaOneコンファレンスも2日目。このイベント、木曜日(8日)まであり、毎日朝から、キーノートスピーチがあり、コンファレンスもぎっちりとある。2日目のキーノートスピーチは、朝8時半から。昨日より1時間も早い。そのせいもあって会場は満席とはいかない。ステージには、なぜか和太鼓が並び、いきなり、太鼓の演奏が始まる。「太鼓道場」というグループらしいが、外人から「タイコドージョー」と紹介されるとなんか奇妙である。

午前中のキーノートスピーチに登場したJames Gosling氏。Unix用のEmacsの作者として有名だった
 最初に登場したのは、Javaの開発者であるJames Gosling氏。この人は、かつて、Emacs(GNU版でないほう)を開発したひと。この人のキーノートでは、 Tシャツをステージから投げるのが恒例なのだとか。今年は、圧搾空気を使った大砲みたいなやつでステージからTシャツを観客に向けて打ち出していた。

 Javaの開発者なので、話の内容は当然Javaについてだが、今回新しく機能追加されるAssertとGenericについての話。前者は、プログラム中に埋め込むテスト用のステートメントで、実行時のエラー検出などに利用する。後者は、テンプレートなどと呼ばれる機能で、こちらは次のJava 1.5から機能追加となる予定。

 さて、モスコーンセンターの北館の地下は、展示会場となっている。こちらも結構広く、しかも小さなブースがいっぱい。多くのイベントは、大手のメーカーなどが巨大なブースを並べて、小さなブースは端にちょっとあるだけだが、JavaOneでは、俗に1コマと呼ばれる小さなブースがほとんどを占めていて、IBMやIntelなどのブースも大きくてせいぜい数コマ分ぐらい。

 そのほとんどがJava関連のソフトなどを展示しているが、それぞれ、かなり専門化されており、その分野に関わりがないと、見てもなんだかわからないってところもある。今回目に付いたのは、Webサービス関連の製品と、携帯電話などのモバイル関連の製品。前者は、SunがSunOneなどといってWebサービスに力をいれたことを受けたものだし、後者は、昨年のJavaOneで、NTTドコモのJava携帯などが紹介され、ちょっと話題になったことに影響されたもの。ただ、携帯電話系は、キャリア相手の商売となるので、多数のソフトハウスが参入したところで、結局生き残れるところはごく僅かだと思われる。

 Webサービス系でも、1つのソースからHTML/XMLやWAPなどに対応可能にさせる開発ツールや、コード変換システム、アプリケーションサーバーなどが目立った。ただ、米国内での話であれば、日本のように多くの携帯電話がデジタル化してなんらかのインターネット対応機能を持っているわけではないので、商売としてはこれからといった感じだろう。

 いまのところ、米国内では、NextelがMotorolaのJava対応携帯を採用しているだけで、それよりは、PalmやiPAQといったPDAと無線モデム(双方向ページャのインフラを利用している)の組合せのほうがユーザーが多いかもしれない。なお、PDA系のJavaとしては、Palm系で動くJ2ME(かつてKVMと言っていたもの)と、iPAQにLinuxを搭載して動かすJ2MEがある。ただし、どちらも会場では、エミュレーターを使ってPCのディスプレイで展示しているところが多かった。

 会場の周囲全体は、SunのJava関連製品の展示が、1コマブースとしてぐるりと取り巻いており、こちらもかなり数がある。

 さて、今回のJavaOneだが、結局、大きな話題がないという点で、1つの節目に来ているのかもしれない。もちろん、Javaが定着したということもあるのだろうが、たとえば、IntelやMicrosoftのイベントでは、話題性を持たせるために、大きな発表をイベントにあわせて行なうのがほとんど。あまりいい方法でもないが、Microsoftなどは、β版の配布をイベントで行なうぐらいだ。開発者としてイベントに参加している分には、コンファレンスが重要なので、それでかまわないのだろうが、外部から見てのニュース性を高めるという点では、Sun自身がやはりJavaでニュースになるような発表を行なうべきだろう。Peer-to-Peer技術のJXTAの発表など、JavaOneに持ってきても良かったのではないかとも思う。イベントに大きな話題を持ってくる相乗効果というのも無視できないところがあると思う。

 さて、これが今年限りの問題なのか、それとも今後も続く傾向なのだろうか?


会場では、こんな感じで、携帯電話上のJavaを使った製品のデモが行なわれている MotorolaのJava携帯電話。サイズはやはりアメリカサイズで、液晶もモノクロ。携帯電話会社のNEXTELなどは、開発者向けの料金プラン(月29.99ドルで100分の通話料金と175KB分のパケット通信料金などを含む)も用意しているという。このあたり、日本の携帯電話会社も考えて欲しいところ JフォンのJava対応携帯電話(J-SH07)。この写真では見えないが、「圏外」の表示がなんか寂しかった

京セラのPDA。Java環境でもあるIntentが動作する シャープが海外で発売を予定しているザウルス。組み込みLinuxカーネルを使ってJavaを動かす予定 同じくシャープが開発したヨーロッパで採用予定の携帯電話(GSM)一体型のPDA。これもJavaが動く

リアルタイムOSメーカーであるWindRiverが展示していたThin Client Applianceのデザインモデル。StrongARMを採用し802.11b無線LANなどを内蔵し、 Javaが動く ソニーが米国で発売を予定している家庭向けインターネットアクセスアプライアンスe-Villa。Javaが動くので、Sunのブースなどでも使われていた TRGのPalmOS採用PDAであるHandEra。グラフティエリアと呼ばれる入力部分も液晶になっていて、縦方向の解像度が高くなっている 会場には、日本のアプリックスも出展しており、同社のJava環境であるJBlendが採用された携帯電話やWindows CE上のJBlendなどをデモしていた

NOKIAのPDA一体型携帯電話NOKIA 9210。液晶の裏側に電話用のテンキーなどがついており、フタを閉じた状態で普通の電話機として利用できる。OSには、EPOCを採用し、JavaやC++でアプリケーションの開発が可能。会場では、SDKも配布されていた Pingtel xpressaとよばれるVoIP(Voice Over IP)電話機。Javaによりカスタマイズが可能。直接Ethernetにつながる電話機なので、Call meではなくPing meとカタログに書いてあった Java1.4で強化された3Dグラフィックス機能。リアルタイムでの動きがかなり良くなった。デモは、天気図から風の動きを計算して旗のようなもの(画面の青いやつ)をリアルタイムで動かしつつ、視点も変えられる

三洋は、デジタルカメラにJ2MEを搭載。CFスロットにEthernetカードを装着し、サーバーを介して画像を印刷させるデモを行なっていた。ただし、このカメラは、ベースは、市販のものだが、あくまでもプロトタイプ。反響があれば、製品化も考えるという。ネットワークを介して、カメラをコントロールできると便利そう。オプションなどの形でぜひ日本での発売を望みたいところ Sunブースで、PlayStation2のJavaのデモが行なわれていた。Javaは、Linux上で動作しているのだが、使われているPS2は、米国仕様のもの。先頃販売されたPS2用LinuxはたしかPCカードスロットが必須だったはずなのだが……。なお、ソニーの発表では、将来的にJavaを搭載する予定だが、どのような形になるのかは未定とのこと Realtime Javaを使って、ロボットをダンスさせるコンテストが開催されている。参加規約をみると、別の部屋にいって、ログインしたら、viでプログラムを書けとなっていた

□JavaOneのホームページ
http://servlet.java.sun.com/javaone/home/0-sf2001.jsp

(2001年6月6日)

[Reported by 塩田紳二]


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