プロカメラマン山田久美夫の

155万画素DVカメラ「ソニー DCR-TRV30」レポート



 ソニーから、155万画素CCDを搭載した、高画素DVカメラ「DCR-TRV30」が発売された。このモデルは、これまで同社が進めてきた「メガピクセル・ハンディーカム」シリーズの最新モデルであり、クラス最高画素数となる1/4インチの155画素CCDを搭載したモデルだ。

 動画時の有効画素数97万画素、静止画時には139万画素という高画素モデルだけに、画質は期待されるところ。

 しかも本機は、メモリースティックを備えており、静止画をJPEGデータとして直接メモリースティックに記録することができるため、デジタルスチルカメラ的な使い方もできる。DVカメラ一台で静止画撮影までカバーしたいというユーザーにとっても、大いに注目すべきモデルだ。

 なお、以前β機による実写画像を公開したが、今回は改めて製品版で撮りおろしている。

 【編集部注】すべての実写画像はこちらでご覧ください。【お詫びと訂正】初出時に2カ所に渡り、T*レンズ搭載と記載されておりましたが誤りでした。お詫びして訂正いたします。


●カールツァイスレンズ搭載の横型モデル

 ボディスタイルは、ポピュラーな横型。また、CCDサイズが大きくなっていないこともあって、サイズも姉妹機であり68万画素タイプの「DCR-TRV17」とほぼ同じに収まっている。

 携帯性という面では、縦型の「DCR-PC110」や超小型の「DCR-PC5」などのほうが勝るが、この手のモデルは日本国内での人気は高いものの、実際にワールドワイドで見ると、コストパフォーマンスにすぐれたTRV系のほうが主力だ。これまで高画素系CCDは、PC系ボディが先行していたが、今回はあえて、売れ口で、操作性もよく、コスト面でも有利なTRV系の先行して導入してきたものと思われる。

 DVカメラとしての基本機能も、もちろん充実している。まず、レンズは、カールツァイス製レンズを搭載。このレンズはPC110で搭載された「T*」タイプではなく、ツァイス独自のレンズの反射軽減処理は採用されていないが、レンズの画質に関しては、ほぼ信頼に値するレベルのもと考えて良さそうだ。

●メモリースティックにMPEG保存も可能

 静止画撮影は、最大1,360×1,020ピクセルのモードが用意されている。これは有効画素数で139万画素相当で、デジタルスチルカメラとは縦横比が異なるが、ほぼ130万画素モデルに相当するサイズだ。また、640×480ピクセルモードで保存することもできる。

 静止画記録は、メモリースティックとDVテープの両方が利用できる。とはいえ、DVテープの場合には、DV規格での静止画として保存することもあって、画像サイズは640×480であり、画質面でもメモリースティックに直接JPEGで保存するもののほうが良好だ。また、1,360×1,020ピクセルモードの場合には、DVテープ保存はできず、メモリーカードのみでの対応となる。

 メモリースティックは本体に標準では付属していないが、アクセサリーキットには16MBタイプが同梱されている。このカードには、プリクラ風のフレームが予め保存されているため、購入したままで16MB分をフルに活用することはできない。とはいえ、そのフォルダを一度PCに保存し、必要に応じて書き戻せば、問題なく使える。

 また、メモリースティックへの静止画保存は、デジタルスチルカメラの標準規格である「DCF」形式が採用されている。初期の同社DVモデルはファイル形式こそJPEGだが、ファイル管理などは独自形式だった。本機はDCF形式になったので、プリントサービスなどにもそのまま対応できる。

 さらに、昨年発売された「DCR-PC110」と同じく、MPEG-1形式での動画撮影を、メモリースティックに直接保存することもできる。もちろん、DVテープで撮影したものを、カメラ単体でMPEG-1にコンバートして保存することも可能だ。

MPEG-1形式、791KB
 本機では、静止画時の高速連写モードもあり、1/15秒間隔で最大16コマまでの連続撮影もできる。画像サイズはVGAのみだが、スポーツ撮影でのフォームチェックはもちろん、動きのきわめて早いシーンでの撮影にも有効だ。

 PCとの接続は、USBとi.LINK。USBの場合、別売のパソコン接続キット(9,800円)が別途必要になる。とはいえ、メモリースティック用のPCカードリーダーやPCカード変換アダプタを別途購入しても、さほど価格は変わらないうえ、このキットには、静止画加工ソフトの「MGI Photo Suite」、MPEG動画編集ができる「MGI Video Wave III SE」、アルバムソフトの「蔵衛門7デジブック for Sony」)も付属しているため、なかなかお買い得感がある。

 このほか、本機では、「DSC-P1」で話題になった、携帯電話の待ち受け画面作成に対応した「i-Jump」も利用できる。このソフトは、本体に同梱されているCD-ROMに付属しているため、パソコン接続キットを購入しなくても利用できる点は好ましい。

●超高密度の1/4インチ155万画素CCD搭載

 本機が搭載しているCCDは、1/4インチタイプの155万画素タイプという、きわめて高密度なものだ。最近の130万画素級デジタルスチルカメラでは、1/3.6インチや1/3.2インチという小さくて高密度なCCDを採用する機種が増えているが、それを上回るレベルだ。

 DVカメラの場合、コンパクトな筐体で光学10倍ズームを搭載しなければならないという制約もあり、ラインナップ上、68万画素タイプのモデルと同じレンズを共用しなければならないという事情もあって、このような高密度なものと推定される。

●従来より向上した静止画画質

 以前、本機のベータ版実写画像を公開したが、その後、製品版になって、画質がかなり向上している。

 とくに、ベータ版にあった墨っぽさや彩度不足が解消されており、同画素のデジタルスチルカメラと比較しても、遜色ないレベルとなっており、 「これほどの画質なら、DVカメラでも十分だなあ~」というのが、素直な印象だ。

 解像力は、最新の130~150万画素クラスのデジタルスチルカメラと、ほぼ同等の実力を発揮しており、十分にシャープなもの。Webのようなモニター上での利用はもちろん、ポストカードサイズくらいのプリントにも十分に耐えるだけのポテンシャルを備えている。

 今回は、オートホワイトバランスで撮影したが、色再現性も良好で、とても好感が持てる。とくに、木々のグリーンや赤系の再現性が鮮やかで、肌色の再現性も暖かみがある。

 また、1/4インチ155万画素という高密度CCDながらも、内部処理が14bit化されたためか、階調の再現性もよく、高密度CCDにありがちなシャドー部のノイズ感もさほど感じられない。

 昨年秋にレポートした「DCR-PC110」と比べても、CCDの密度が高くなっているが、画質はむしろ向上している感じだ。このあたりはCCDと後処理系が日進月歩で進化している証と言えそうだ。

 このほか、ストロボ撮影時の調光レベル(露出)や色調も自然。ストロボ到達距離もメーカーではメモリースティック使用時で2.5mとしているが、ワイド側で周囲が暗い場所でなければ、実質、4~5m近くまでカバーできる感じで、10人くらいの記念写真でも不満を感じることはなさそう。また、マクロ撮影時のストロボ調光が正確な点も高く評価できる。

 画質の良さには、カールツァイス設計の10倍ズームのレンズ性能の高さも貢献している。とくに、DVカメラ系のレンズで気になる、画面周辺部の画質低下も見られず、ワイド側での直線の歪み(歪曲収差)も十分に抑えられている点は高く評価できる。

 また、逆光撮影時のコントラストも高いレベルにある。もちろん、逆光時には多少フレアっぽくなることもあるが、付属のレンズフードを併用すれば、その影響をかなり軽減できる。

 「とうとう、DVカメラも155万画素かあ~」というのが、本機を使っての、正直な感想。もちろん、デジタルスチルカメラの高画素機に比べれば、画素数的にはまだまだ少ないが、はがきサイズ程度のプリントやWebでの利用など、実用性でいえば、これくらいの画素数でも十分カバーできる。むしろ、旅先での記念写真であれば、DVでこのクラスの解像度の静止画が撮影できれば、別途、静止画専用機を持つ必要がなくなる可能性も十分にありそうだ。

 とくに、この季節は、デジタルカメラとDVカメラ、どっちにしようかと迷っている人も多いことだろう。その意味で本機は、高精細な動画撮影と、実用十分なレベルの静止画撮影を両立できるモデルとして、なかなか魅力的な候補といえそうだ。


●屋内撮影

 1/4インチ155万画素の高密度CCDのため、屋内撮影は苦手では……と予想したが、結果は十分良好。

 暗いシーンでは、自動的にゲインアップが働くため、若干ノイズを感じることもあるが、このレベルであれば許容範囲。Web用に縮小リサイズしたり、Lサイズ程度にプリントするのであれば、なんら気にならないレベルだ。シャドー部の階調性も以前の機種よりも明らかに向上している。また、機構上、スローシャッターにならないため、カメラブレが少ない点にも好感が持てる。

 また前述したように、レンズの歪曲収差(直線の歪み)も少なく、明るい部分からの光の回り込みも少ないなど、レンズ光学系は優秀だ。


●マクロ撮影

 もともと、DVカメラはデジタルスチルカメラに比べ、マクロ撮影に強いのが大きな特徴。本機もその例に漏れず、ワイド側では、まさにレンズ直前までの近接撮影が、何のモード切り替えもせずに行なえ、実に便利。

また、レンズの機構上、望遠側では最短撮影距離が長くなるが、それでも十分なクローズアップを楽しむことができる。

 本機はレンズ性能が高いため、ワイド側でクローズアップ撮影をしたときでも、解像力の低下が少ない上、背景の描写も大きく乱れることがない点に好感が持てる。


●人物撮影

 ベータ機で気になった人物の肌色も、製品版では改良されたようで、比較的暖かみのあるものに仕上がっている。また、このように背景が比較的明るいシーンでも、人物が暗くならない点も好感が持てる。



●屋外撮影

 屋外撮影の結果は、十分良好で、とてもきれいな写りだ。とくに、赤やグリーン系の色が適度に鮮やかに再現されることもあって、とてもクリアで明快な感じだ。解像度も十分に高く、150万画素クラスらしい切れ味のいい描写を実現している。

 階調の再現性もなかなかよく、高密度CCDにも関わらず、14bit A/D変換のためか、ハイライトやシャドーの階調性も比較的きれいに再現されている。


●高速連写

 本機の大きな特徴として、1/15秒間隔での連写機能があげられる。画像サイズは640×480ピクセルになるが、最大16コマまでの撮影が可能だ。

 このシーンでは、走り去る電車を撮影してみたが、さすがに1/15秒間隔だけあって、パッとみただけでは、動いているのがわからないほど。これだけ、高速な連写になると、かなり動きの激しいシーンでも対応できそうだ。

 ただし、16コマ連写をしても、全体でわずか1秒強の短時間しか撮影できないため、連写といえども、かなりシャッターチャンスを狙って撮影する必要がある。


●フラッシュ撮影

フラッシュなし フラッシュあり

 本機はレンズ上にポップアップ式の内蔵フラッシュを備えている。もちろん、静止画専用で、通常のコンパクトカメラのような自動発光モードも備わっている。

 CCD感度が低めで、ストロボ光量もさほど大光量ではないこともあって、静止画用の制御が行なわれるメモリーモードでの撮影でも最長2.5m、DVテープに記録するカメラモードではわずか1.5mまでしか保証していない。だが、普通の屋内など、周囲がよほど暗い場所でなければ、十分な到達距離を実現している。

マクロ撮影+フラッシュ
 内蔵ストロボでのマクロ撮影は、30cm以内ではメーカー保証外になるが、実際に撮影してみると、至近距離で撮影しても、露出オーバーになるケースはなく、安心して撮影できる。

 レンズ直前での撮影では、ストロボ光がレンズなどでけられてしまうが、少しだけレンズから離せば、その心配はない。


●定点撮影

1,320×1,020 SFモード
ワイド端 テレ端
640×480 ノーマルモード
ワイド端 テレ端

 解像度は、同クラスの画素数のCCDを搭載したデジタルスチルカメラに匹敵するレベルを実現している。色再現性は、昨年レポートした「DCR-PC110」に比べ、明らかに向上しており、自然で見栄えのいい再現性を実現している。 高密度CCDで懸念される階調の再現性も、十分に良好で、シャドーからハイライトまで整った階調性を確保している。

 ただ、細部を拡大してみると、シャドー部を中心に、細かなノイズが一様に発生しているのは気になるところ。また、空や壁面など濃度が均一な部分をみると、微妙な色ムラも見られる。このあたりは高密度CCDの欠点といえそう。この点さえ解消されれば、画質面ではデジタルスチルカメラと十分肩を並べる実力といえそうだ。


□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sony.co.jp/sd/CorporateCruise/Press/200102/01-0209B/index.html
□製品情報
http://www.sony.co.jp/sd/ProductsPark/Consumer/VD/DCR-TRV30/
□関連記事
【4月3日】プロカメラマン山田久美夫のソニー「DCR-TRV30」実写画像
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010403/yamada1.htm

(2001年5月2日)


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[Reported by 山田久美夫]


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