第97回:試されるドッキングステーションの商品性



 春の新製品が出そろったが、その中で僕が注目しているのがVAIOノートR505だ。商品自体についてももちろんだが、もうひとつ、ドッキングステーションというソリューションに対する市場の評価にも注目している。



●大きな成功を収めたことがないドッキングステーション

 少なくとも持ち歩きと実用性(操作性)を兼ね備えた製品を考えたとき、ドッキングステーションというソリューションはとても魅力的なものだと思っている。かつてアップルが発売したPowerBook Duo、個人的に所有もしていたソーテックWinBook bird、そしてThinkPad 570以降、IBMが積極的に取り組んでいる薄型PC。ほかにも日本でヒット作となったDECのHi-NOTE Ultra IIにもドッキングステーションがオプションで用意されていたし、その後を引き継いだといえるほど似たプロフィールを持つコンパックARMADA M300もある。

 しかし、PC本体はそれぞれに知られた製品ではあるものの、ドッキングステーションが消費者に受け入れられたかといえば、決してそうはなっていない。ドッキングステーション(IBMではドッキングスライスと呼んでいる)との組み合わせで、利用スタイルを提案したThinkPad X20も、本体そのものはヒット作になったが、ドッキングステーションそのものの装着率は予想を下回っているという。

 同じく機能的には優れたドッキングステーションを用意しているARMADA M300も、本体のみを購入するユーザーが多い。この2機種だけではなく、たいていのドッキングステーションは市場で成功してこなかった。

 その理由としては、

・ドッキングステーションのコストが高い
・ドッキングステーションに装着すると厚みが大きく増す
・CD-ROMドライブなどを持ち歩くとき、ドッキングステーションごと持ち歩かなければならなくなる
・ドッキングステーションに投資をしても、そのモデル限りでしか利用できない(たいていは専用設計)
・せっかくのドッキングステーションなのに、PC本体側のインターフェイスにも何らかの接続を行なわなければならない。

……など、ほかにもあるかもしれないが、ドッキングステーションが受けなかった理由でもっとも大きなものは、一般ユーザーに対して何が魅力なのかを認知させるだけの、強いマーケティング戦略が行なわれてなかったということかもしれない。

 いずれにしろ、こうした問題の多さは、ドッキングステーションのささやかな便利さを吹き飛ばしてしまい、結果として“ドッキングステーション”という言葉そのものに市場が反応しなくなる。……結果、より売れなくなるという悪循環を繰り返しているように思う。


●実用性が高いR505のドッキングステーション

ドッキングステーションと接続したR505

 先週末に出荷が開始されたR505は、DVD-ROM/CD-RW内蔵ドッキングステーションバンドルモデルがあっと言う間に売り切れるなど、かなり高い人気を誇っているようだ。

 都内の量販店を見る限り、ドッキングステーションバンドルのモデルが軒並み売り切れているのに対して、PC本体のみのモデルは在庫を持つ店が多かった。店員によると、バンドルモデルの売り切れを伝えると、PCと別売りドッキングステーションを同時購入して帰る客もいるそうだ。その合計金額は、バンドルモデルと比較すると2万円近くも割高になるにもかかわらず、である。

 R505の売れ方、認知のされ方によっては、ドッキングステーションに対する市場の見方も変化してくるかもしれない。そうなってくれば、これまでのドッキングステーションの市場性が増し、さらに改良されていく可能性もある。

 実際、R505のドッキングステーションはとても実用性が高い。R505本体にはモデム、LAN、USB2ポート、IEEE 1394、VGA出力が標準サイズのコネクタで装備されているが、全く同じコネクタがドッキングステーション側にも用意され、加えてすべてのレガシーポートも備える。このことがドッキングステーションの使い勝手を大きく上げている。

 またソニーによるとR505のドッキングステーションは、IDEやPCIといったピン数が多く、元々ホットプラグではないインターフェイスを使うのではなく、IEEE 1394を用いてドッキングステーション内のデバイスと本体を繋いでいるそうだ。実際、ホットプラグ時の安定性や装着/切り離し時のデバイス認識/解放が非常に速い。またインターフェイスをシンプルにしたことで、ドッキングステーションそのものの軽量化にも役立っているという。


●同一セグメントでの激しい競争に期待

 正直に言うと1年ぐらい前まで、僕はVAIOノートシリーズをあまり信用していなかった。それは商品としての魅力は十分に伝わるが、いくつかの不具合に見舞われた経験があるからだ。

 ところが昨年、SRシリーズが発表されWindows 2000の採用が進んだ頃から、かなり印象が変わっている。安定度は非常に高い。OS自身の安定性が向上していることに加え、大量のプリインストールを行なっても、システムリソースの制限がないWindows 2000は不安定になりにくいという要素もあると思う。また、互換性に対するBIOSの依存度が、Windows 9x/Meの頃よりも下がっていることも良い方向に振れた原因かもしれない。

 少なくともR505のような、コンベンショナルなハードウェア構成のマシンであれば、問題はなにもないだろうというのが僕の結論だ。ほかのWindows Me向けとしてしか開発されていないコンシューマ機とは異なり、コンシューマターゲットながらWindows 2000環境でのテストが十分に行なわれているのもメリットの1つだろう。

 12.1インチディスプレイ、18mmピッチキーボード、シングルスピンドル+ドッキングステーションという要素を持つ製品は、ほかにIBMからX20の後継となるX21も発表された。ボーナス商戦までには、コンシューマ向けのパッケージも登場するだろう。また企業向けではあるが、地味ながら一部では評価の高かった(実際、僕自身が所有し、かなり気に入っている)ARMADA M300も、モデルチェンジの時期が近いと思われる。

 VAIOノートR505は米国で先行して発表され(Z505シリーズは欧米でかなり根強い人気がある)、かなりの評判を呼んでいる。このセグメントで激しい競争(できれば価格だけではなく、機能や使い勝手で)が起こってくれることを願いたいものだ。そうなるためにも、R505のドッキングステーションが市場で受け入れられるかどうかに注目している。

□間連記事
【4月4日】ソニー、ドッキングステーションに接続可能な新バイオノート505
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010404/sony.htm

[Text by 本田雅一]


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