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会期:3月22~28日
会場:Hannover Messe
欧州最大の総合情報系イベントである「CeBIT2001」。今回のイベントでは「IMT-2000」、「Bluetooth」などがメインとなったわけだが、その一方で、I/Oカードや大容量メディアに対する関心も高まっている。
今回は、各社のメモリーカードやディスクメディアへの取り組み。さらに、CeBITで注目を集めた周辺デバイスについてレポートしよう。
●ソニー
大型イベントでは、すでに恒例となったソニーのメモリースティックワールドは今回も登場していた。
今回のCeBITでは、今年商品化される予定の小型タイプ「メモリースティックDuo」を新型の標準サイズ変換アダプタとともに出展した。これはこれまで発表されているDuo用アダプタと異なるものだ。
従来のアダプタは、Duoカードを装着する部分が電気接点側にあり、直接機器側に接するため、アダプタはサイズ変換のみの役割でしかなかった。
だが、今回の新タイプは回路的にもアダプタを介して、Duoカードが機器と繋がる仕様に変更された。これは、フルサイズ用の機器を使ったときでも、Duoカードを容易に交換できるというメリットがある。また、この方式であれば、今後、DuoタイプのBluetoothをはじめとしたI/Oカード系が登場したときに、フルサイズスロット対応の機器でも、アダプタを介しただけで利用可能になる。
ソニー側からの説明はないが、個人的にはこのDuoアダプタ部分に、ポリマー系バッテリを内蔵したタイプが登場するのではないかと推測しており、その布石とも考えられる。
つまり、今回のアダプタの変更は、実は、今後のDuoの展開をより容易にするための“コロンブスの卵”的な大変更と言えそうだ。
なお、今後のメモリースティックは、大容量タイプは「MG」タイプ(白)が、小容量タイプはどちらかというと標準タイプ(紫)が主体になるという。
なお、今回出展されたDuoカードは著作権保護機能を備えた「MG(マジックゲート)」対応の白いもの。予定では、MGタイプではない、紫のDuoカードも用意されるようだ。
しかし、今後メモリースティックについて予備知識のないユーザーが増えることを考えると、若干割高になっても「MG」タイプのみに統一して欲しいところだ。現時点でもフルサイズのものは、紫、白、そしてAIBO用の赤いメモリースティックもあって、複雑になり始めている。
メモリースティックはまだまだ高価なもの。しかも、一枚のカードで、いろいろな機器を繋げるのが、本来のコンセプトであることを考えると、MGタイプと標準タイプが混在する現状はユーザーの誤解を招きやすく、コンセプトからも外れてしまう。
通常タイプとのコストの違いは、一本化による量産効果などでカバーしてもらい、すべてのメモリースティックをMGタイプに統一して欲しいところだ。
恒例のロードマップもアップデートされており、今回はもうすぐ日本国内で販売が開始される128MBカードをはじめ、来年には256MBタイプが登場することが明確に示されている。
さらにその後には、512MB、1GB、2GBと続くわけだ。また、ロードマップによると512MBタイプと同時期に、データ書き込み速度が最高で20MB/secになるという。ちなみに、SDカードのロードマップでは、10MB/secまでしか公開されていないので、ロードマップ上ではメモリースティックのほうが2倍高速になるわけだ。
もちろん、メモリースティックの大容量化は、動画保存などを考えると重要なポイントだが、そのポテンシャルをフルに生かすためには、この20MB/secの高速書き込みが不可欠といえる。
おそらく、2002年から2003年には、メモリースティックを記録媒体とした“メモリースティック・ハンディカム”的なビデオカメラが登場する可能性が高い。また、コンビニでのキオスク端末やブロードバンドネットワークでの動画配信サービスも商業ベースに載る。そして、これらを現実的な速度で実現するためには、20MB/secという高速記録技術が不可欠になってくるわけだ。
恒例となったメモリースティック系のモックアップは、今回あまり目新しいものがなかった。
もっとも、昨秋のCOMDEX/Fallで、指紋認識やデジタルカメラカードは発表済みであり、順次製品化に向かって動いているので、デザインモックはそのぶん、多少減っているのだろう。
また今回は、欧州のイベントらしく、現地で主流のGSM端末とGPSユニットを組み合わせたものを新たに出展していた。
さらに、メモリースティック対応の昇華型プリンタも参考出品されており、こちらは横長のカラー液晶モニタを搭載したものが出展されていた。
メモリースティックのI/Oカード版である「インフォスティック」のなかで、具体的なデモを行なっていたのが、注目のBluetoothカードだ。
これまでのイベントでは、デジタルカメラに装着してのデータ転送がおこなわれていたが、今回は、このデモ用に開発したというハンディターミナル(OSはPalm OSで、CLIEを改造したもの)と、同じくデモ用に試作したメモリーカードスロット搭載のLCDプロジェクターをBluetoothでつなぎ、プレゼンテーションしていた。
デモに使われたものは、これまでの画像データ転送デモをしていたものに比べ、より高速化されているという。概念図では理論値である1Mbpsとなっているが、現在、実測でも200bps前後の転送速度を実現している。もちろん、製品化までにさらなる高速化が図られるという。
●東芝
東芝は今回、ディスクメディアの「DataPlay」と、半導体メモリーの「SDカード」という2種の異なる記録メディアでの展開を印象的にアピールしていた。
つまり大容量でコストは安いが、サイズがやや大きくなるDataPlayのようなディスクメディアと、コンパクトでI/Oカードとしても利用できるSDカードの2つを、それぞれが得意とする分野で、積極的に使い分ける方向での展開を図っているわけだ。
東芝は、DataPlayディスク発表当時から、DataPlayと提携。今年1月にアメリカで開催されたCESで、DataPlayに本格参入すること明言。稼働可能な試作機まで出展するほど熱心な展開を図っている。
この点では、メモリーカードに積極的だが、超小型で大容量のディスクメディアを、現時点で持っていないソニーや松下よりも、より現実的で説得力のある展開といえる。
もちろん、ソニーにはシャープと共同開発中の2インチディスク(容量は当初1GBを予定)があり、松下には8cmDVD-RAMがある。いずれも容量の点ではDataPlayよりも有利だが、ディスクサイズが大きいのが難点だ。
その点、東芝が積極採用しているDataPlayは、CFカードを正方形にした程度のディスクサイズで、片面250MB、両面500MBもの容量を備えており、著作権保護機能もきちんと装備しているなど、現時点では理想的な大容量ディスクメディア。しかも、ディスクの価格は、1枚約10ドルと安価なのも大きな魅力だ。
今回東芝は、「RDP-M70」をベースにDataPlayディスクドライブを組み込んだデジタルカメラの試作機を展示したが、CESで見られた実写デモは行なわれていなかった。さらに、DataPlayディスクを音楽やビデオの販売用パッケージとして使った際の液晶モニタ搭載プレーヤー、モックアップと思われる横型デジタルカメラなどを参考展示していた。
いずれも、究極のコンパクトさよりも、容量あたりの単価が安いディスクメディアならではのメリットを生かした展開となっているのが大きな特徴だ。なおDataPlayは、日本国内でも今秋に本格的に販売が開始される予定だ。
一方SDカードのほうは、切手サイズのコンパクトさと、データ保存以外のI/Oカードとして利用できるというメリットを生かした展開を図っている。具体的なロードマップとして、2001年中に128MBと256MBのSDカードが登場の予定だ。
さらに、2002年には、512MBと1GBのSDカードが予定されているなど、このロードマップで見る限り、メモリースティックよりも一足先に大容量化を実現する。
もっとも、東芝は各社のNAND型メモリーを供給する側にあるため、事実上同じNAND型メモリーを搭載するメモリースティックでも、ほぼ同時期に実現できるとみられる。
また、今回はI/Oカード系への展開にも熱心に取り組んでいる。ブースでは、「デジタルカメラ」や「GPS」はもちろんのこと、「Digital Audio」、「TV/FM Tuner」、「Scanner」ユニットなどのモックアップが出展された。
なかでも一番の注目は、SDカードタイプのBluetoothカード。デモはおこなわれていなかったが、細部の寸法まで公開しており、かなり具体的な形で製品化に向かって動いていることが想像できる。
ただ、寸法や外観図で見ている範囲では、通常のSDメモリーカードよりも十数ミリも出っ張るため、通常のSDカードスロット搭載機で、そのまま利用できるわけではなさそうだ。
このほか、腕時計型や超薄型デジタルカメラをはじめ、SDカードを使ったモックアップも多数出展されていた。
●Palm
Palmは今回のCeBITで、SDカードスロット搭載の超薄型モデル「m500」、「m505」を発表。ブースでの人気は極めて高く、実機に触れるのが困難なほどの賑わいを見せていた。
また、同ブースではPalmオリジナルのI/O系SDカードが多数出展されていた。とくに、今回のような薄型のPalmでは、さまざまな機能を搭載するためには、SDカードスロットをベースとした、機能拡張カードが一番現実的な選択肢といえる。
展示には、SDカードベースのデジタルカメラユニットが装着されており、実現性も高そうだ。
●RITEK
台湾の記録メディアメーカーRITEKは、今回CF Type2(CF+)規格で、1.1GBの大容量を実現したHDDカード「CompactStor」を公開した。
このメディアは、IBM microdriveの対抗馬であり、容量的にも、1.1GBと若干ではあるが上回っている。発売は今年6月を予定しており、価格的には同クラスの容量を備えたHDDカード(つまりmicrodrive)よりも、リーズナブルな設定になるという。
また、ごく近い時期には、さらに大容量の1.6GBタイプも予定されているという。
さらに、同社ブースにはDataPlayディスクも多数展示されており、最先端の記録メディアを広く手がけてゆこうという意欲的な姿勢がみられた。
□CeBIT 2001(英文)
http://www.cebit.de/homepage_e
(2001年3月30日)
■注意■
[Reported by 山田久美夫]