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オリンパス光学工業株式会社の「CAMEDIA C-1」の山田久美夫氏によるレポートをお届けする。
特に指定のない実写画像は1,280×960ピクセル、HQモード、ホワイトバランスはオート、露出は補正なしで撮影している。また、縦位置の画像はサムネールのみ縦位置とし、画像データは回転させていない。(編集部)
オリンパスから、薄型で手頃な価格の130万画素スタンダードモデル「CAMEDIA C-1」が発表された。同社は長年、同じデザインのボディをベースにシリーズ展開していたが、この「C-1」は、現行の「D360」のベースとなるモデルが'97年7月発売の「C-820L」であることを考えると、実に3年半ぶりのフルモデルチェンジとなる。
35mmコンパクトカメラの名機「μ(ミュー)」シリーズをラインナップするオリンパスだけに、「今度こそは“デジタル・ミュー”が登場するのでは……」と思われ続けて3年半がたったが、ようやく今回、近い雰囲気のモデルが登場したと言える。
パッと見た感じは、現行の「C-900Z」系列のイメージを引き継いだ薄型単焦点モデルという印象で、正直なところ、期待していた“デジタル・ミュー”とはちょっと違う感じがした。だが、実機に触れて、使ってみると、これがなかなかバランスのいいモデルであることを実感できる。
ボディ素材はプラスチック。「IXY Digital」のような昨今の金属ボディを採用した超小型機に比べると、高級感という点ではやはり見劣りがする。しかし、冷静に考えてみると、本機は7万円近い中堅機ではなく、38,000円の低価格帯のモデルであり、しかもUSB接続キットや8MBスマートメディアまで同梱されていて、実販価格は29,800円が予想される。
●薄型で持ちやすい実用サイズ
ボディサイズは、超小型というほどではないが、なかなか扱いやすいと言える。本機は、オリンパスが得意とするレンズバリア方式のケースレスタイプで、ボディが34mmと薄手な点はとても好ましい。手にした感じもスリムな印象だ。
本機はこの薄さを実現するために、レンズ光学系を工夫しており、フォーカス中にレンズが横に動くなど、かなり苦労したあとが見られるが、この薄さにはそれだけの価値は十分にあると思われる。
具体的なサイズは、110×62×34mmと従来機「C-860L」に比べ、幅で18mm、高さで3mm、厚さで13mmコンパクトになっており、重さも70gほど小型化されるなど一回りコンパクトになった。
また、人気の「IXY Digital」に比べると、高さで5mm、横幅で23mmほど長め。重さは25g軽量に仕上がっている。数値的には「IXY Digital」を横に延ばしたような感じだが、実際にはボディ四隅の人が触れる部分は緩やかな曲面で構成されているため、角張った感じのIXY系とは、見た目も手にした印象も大きく異なる。
手に触れる面が緩やかな曲面になっていることもあって、ホールド感はとても良好。手の小さな私でも、IXYサイズになると、手に余る感じがあるが、本機は横長なのでその分持ちやすい感じだ。
C-860Lと比較。だいぶコンパクトになった |
ただ、デザイン上レンズ左側(バリアと反対側)に明確な突起がないため、レンズに指がかからないまでも、指が写り込むことが意外に多かったのは残念だ。特に本機は、後述のように、光学ファインダ中心で使うことを前提としていることを考えると、この点は一考を要する感じだ。
なおカラーリングは、日本国内ではシルバー系のみ。米国で「Brio D-100」として発表されている同機はブラックボディなのだが、現時点ではブラックバージョンの国内発売予定はないという。
そのかわり、10種類のシールタイプのドレスアップキットが用意される。ただ、内容的には「ヒョウ柄」や「ハイビスカス」といった特定層を狙ったものだけで、その昔、同社が「OMシリーズ」用に用意した高級感のある皮革系のものが用意されないのはやや残念だ。
また、欧州向けモデルは日本国内と同じカラーリングだが、「μ[mju;] DIGITAL」という愛称を使用している。個人的には、日本国内でもこの愛称で発売して欲しかったところだが、メーカーでは、もう一回りコンパクトになってからという意図があるようだ。
●シンプルな基本操作
本機を使ってみて、まずいいなと感じたのが、メインスイッチ兼用のレンズバリアのスムーズさ。このあたりの感触は、同社の「C-860L」や「C-990Z」といった同社の現行機と比べて、かなり向上している。ちょうど、同社の超小型コンパクトカメラである「ミューII」に近い印象の、滑らかでスムーズな感触を実現している。さらに、バリアが開ききったときと、閉まったときのクリック感も実に心地よく、安心感がある。
聞くところによると、本機は、その「ミュー」シリーズの開発者の手によるものという。操作部はシンプルで、特に背面からの眺めは、ちょっと質素すぎる感じすらするほどだ。
だが操作性は大幅な改良が図られており、使ってみると感心する。まず、十字キーは、撮影時に上下方向でデジタルズーム、右ボタンでマクロ、左ボタンでストロボモードをダイレクトに変更できる。再生時には、左右ボタンでコマ送り、上ボタンで拡大再生、下ボタンでサムネイル一覧と、シンプルで実用的な操作体系だ。
また、このクラスのモデルで比較的使用頻度の低い、画質モードやホワイトバランス、露出補正などは、詳細設定メニューに整理されており、デジタルカメラに不慣れな人でも、操作ミスをすることなく、安心して扱うことができるだろう。
細かなことだが、液晶ファインダとして利用しているときには、設定メニューの表示部分以外は、きちんとファインダ画像が表示されているため、被写体をモニタで見ながら、各種設定が安心してできる点も使いやすい。
●軽快な撮影感覚
カメラの起動は、レンズバリアを開けるだけでOK。起動時間も約2秒と十分に高速。さらに、撮影間隔も約2秒でなかなか軽快に撮影できる。
また連写モードでは、0.3秒間隔で連続4コマまで撮影できるので、動きのあるシーンでも対応できる。もちろん連写モードは4コマ連写専用ではなく、1コマ撮りもできる。このモードではストロボはOFFになり、スローシャッターも働かないが、屋外撮影なら十分に使える機能といえる。
自然光 | ストロボ同調 |
また、AF測距もスピーディで待たされる印象はない。もっとも、AF時にレンズが横方向に移動することもあって、フォーカス中は液晶がブラックアウトするが、時間が短いこともあって、意外に気にならない。
ストロボの充電時間は、リチウム電池使用時で、約3秒と十分なスピードを実現している。これなら屋内スナップでも、さほどストレスを感じることもないだろう。
レンズは、35mmカメラ換算で35mmレンズ相当の単焦点タイプ。単焦点レンズ搭載機としては、比較的ワイド気味の設定で、なかなか使い勝手がいい。特に、風景や屋内撮影、背景を広く入れた記念写真などに便利だ。また、F2.8と明るい点も好ましいと言える。
●明るく見やすい光学ファインダ、今1つの液晶モニタ
オリンパスの歴代モデルは、基本的に光学ファインダで撮影することをメインに設計されている。本機もその流れを汲むもので、メインスイッチを入れた状態では液晶モニタは点灯しない仕様だ。撮影後の自動再生機能は搭載されている。
ただ、メインスイッチONと同時にモニタを点灯させる設定がないのはやや残念だが、カメラの性格上、これも1つの割り切りといえるだろう。とはいえ、液晶モニタを使っての撮影はデジタルカメラの特徴であり、次機種では是非対応して欲しい。
ストロボオフ | ストロボオン |
もっとも、光学ファインダをメインにしているだけあって、その見え味は実に良好で、ライバル機を大きく引き離している。とにかく、視野が明るくてクリアで、被写体が大きく見える点が好ましい。もちろん、レンズバリアが閉じているときには、光学ファインダもカバーされる。
筆者は液晶ファインダを使って撮影するケースが多いのだが、本機は久々に光学ファインダをメインに撮影したくなるほど気持ちのいい見え味だった。もちろん、液晶ファインダに比べると、視野が一回り狭く、厳密なフレーミングは難しいが気軽なスナップならこれでも十分だろう。
気になったのは、液晶モニタの表示品質だ。本機は1.5インチの11.3万画素タイプを採用しているが、各種の設定メニューを表示すると、文字の輪郭がギスギスした感じで、実に見にくく、表示のカラーリングもあまり品がいいとは言えない。全体の完成度が高いだけに、この点は残念だ。液晶ファインダとして使ったときには、表示レスポンスもよく、明るさもそこそこ実用レベル。再生表示も比較的きれいだ。
●苦渋の選択のバッテリ
さて、本機で一番気になる点はバッテリだ。形状的には、単三型電池が2本収納できるが、同社は基本的に、同梱の一次電池(充電不可の使い切りタイプ)であるリチウム電池「CR-V3」(同社型番では「LB-01」)を推奨している。
また、発表資料を見ると、上記リチウムバッテリ以外にも、単三形状の電池が利用できるが、Ni-Cd電池やアルカリ電池ではなく、ニッケル水素電池を強く推奨している。
これは、Ni-Cd電池やアルカリ電池では、メーカーが考えるような撮影枚数が確保できないことによるもので、Ni-Cd電池やアルカリ電池は緊急用で、普段はリチウム電池か、単三型ニッケル水素電池を……ということだ。
実際のところ、日本国内のように、アルカリ電池の品質が安定している国であればいいが、海外の一部で粗悪な電池が流通していることなどを考慮し、このようなアナウンスをしているのだろう。
今回は、付属のリチウム電池で撮影してみたが、液晶モニタをさほど使わずに、ストロボ使用率が低かったこともあって、200枚以上の撮影をこなしても、バッテリマークはフルの状態だった。
このバッテリは、標準価格が1,100円と高めだが、最近ではカメラ店でも徐々に置いてある店が増え始めているため、出先で購入できることも増えてきた。また、このクラスのモデルを使うユーザーで、比較的撮影枚数が少ない人であれば、この電池でも相当な期間使用できる可能性も十分にあり、これも1つの選択肢と言えるだろう。
とはいえ、まだ多くのコンビニで入手できないことを考えると、やはりメインはニッケル水素になりそうだ。また、せっかくの単三互換なのだから、やはり今後は、アルカリ電池でもある程度の枚数が撮影できるような省エネ化を推し進めて欲しいところだ。
●必要十分な安定した画質
画質はなかなか良好で、安心して使える。今回は、基本的にはカメラ任せのフルオート撮影をメインにしたが、それでもほとんど仕上がりに不満はない。露出も的確で逆光気味のシーンでも、補正が適度に行なわれており、失敗が少ない点もいい。
色調も全体に適度に見栄えのするものだ。特に本機は、従来の同社モデルに比べ、屋内の電灯光(タングステン光)や夕方の赤みのある光に対して、過度の補正をしない方向にチューニングがされているようだ。ホワイトバランスもカメラ任せのオート設定のままで、十分に雰囲気のある写りが得られている点は注目に値する。感覚的には、普通のカラーフィルムで撮影したときの仕上がりに近い印象といえる。
もちろん、露出やホワイトバランスは、露出補正やマニュアルホワイトバランス機能を使えば、ユーザー自身が設定することもできる。だが、このクラスのモデルを使うユーザーが、いちいち設定して使うとは思えないことを考えると、本機のようなフルオート重視のセッティングは実に的確と言える。
●ブレやピンぼけの失敗の少なさも魅力
また、テストのため、屋内撮影の一部でストロボのON/OFF設定をしているが、通常のスナップであれば、ほぼフルオートの自動発光のままでも問題なく使えるだろう。しかも、本機はレンズがF2.8と明るく、ISO感度も100~200(自動切り替え)と、比較的暗さに強い点もメリットだ。特に、暗めの屋内撮影でストロボOFFにし、自然光で撮影するときには、ブレが少なく、安心感がある。また、ストロボの到達距離も長くなるという大きなメリットもある。
ストロボオフ | ストロボオン |
さらに本機は、通常モードでも無限遠から最短で50cmまで測距モードを切り替えずにAF撮影ができる。実際に大半のモデルは、通常モードでは70~80cmまでしか寄れず、それより至近はマクロへの切り替えが必要になる。これが50cmまで寄れれば、その切り替え頻度はかなり減るわけだ。特に本機のように、35mmカメラ換算で35mmレンズ相当の比較的ワイドなレンズがついているモデルでは、意外に近接撮影になることが多く、この設定はとても実用的だろう。
また、マクロモードでは、50cm~10cmまでの範囲がカバーできる。もっとも、レンズが35mm相当のワイドなので、最短の10cmでも強烈なマクロ撮影ができるわけではないが、それでも名刺サイズが画面いっぱいに写るほどの実用マクロ域までカバーできる。しかも、10cmの至近距離でストロボ撮影しても、露出オーバーにならない点も好感が持てる。
●実用的な130万画素画質
正直なところ、最近は200万~300万画素機が主流になっており、130万画素というと数値的に見劣りがする。だが、改めて見てみると、PCのディスプレイやテレビ画面で楽しむなど、大きなサイズにプリントしたり大幅なトリミングをしない限り、これで必要十分であることを実感できる。
とはいえ、これだけコンパクトで、基本性能がしっかりしたモデルだけに、できれば、200万画素機の登場も期待したい。残念ながら、本機のCCDは1/3.2インチというコンパクトなもので、現時点ではこのサイズの200万画素級CCDがないため、すぐには登場しないと思われる。だが、同じボディを使い回してラインナップを広げる同社の手法を考えると、年末あたりには登場する可能性もありそうだ。
●充実させたい付属ソフト
本機はUSBのストレージクラスに対応しており、Windows Me/2000、Mac OS 9.0以降であれば、付属のUSBケーブルでPCに接続するだけで、外部ドライブとしてカメラを認識させることができる。もちろん、Windows 98用ドライバもCD-ROMで付属している。
メディアは標準で8MBのスマートメディアが付属する。130万画素の標準モードなら、1ファイルが300KB弱なので、ほぼ24枚前後の撮影ができる。できれば、32MB程度のメディアを用意したいところだが、これはコストの関係で致し方ないところだろう。
ただ、付属ソフトにはやや不満が残る。なにしろ、ライバル機となる「FinePix1300」には標準で画像一覧表示ができるソフトが付属しており、プリント依頼用ソフトも添付されているが、本機にはそのようなビューワ的なソフトは付属しない。
もちろん、アルバムソフトの「蔵衛門7」の体験版やiモード転送用ソフト「キャメディアケータイメール(Windows版)」は付属しているが、基本的なサムネール一覧などは、OS側の機能を利用するというスタンスだ。
これでは本末転倒であり、付加的なソフトよりも、もう少しベーシックな機能を備えた実用的ビュワーなソフトを付属するべきだろう。
また先だって、コダックとデジタルプリントを中心とした包括的な提携をしたのだから、簡単にプリントを楽しめるようなソフトを添付するなどの、新しい展開も期待したい。
SHQモード(1,280×960ピクセル) | HQモード(1,280×960ピクセル) | SQモード(640×480ピクセル) |
●満足感のある新世代ベーシックモデル
このところ、やや高画素・高級路線に偏りすぎていたデジタルカメラの世界だが、本機のような実力のある手頃な実用機が登場することは歓迎すべき動きといえる。
ここ1~2年でパソコンが低価格化したこともあって、相対的にデジタルカメラが割高な感じが出てきた。特にデジタルカメラをもっと気軽に使ってみたいというユーザーにとっては、機能は充実していても、5万円以上のモデルは、気軽には購入できないだろうし、周辺アクセサリーが別売であれば、さらに出費がかさむわけだ。
昨年はコンパクトカメラの販売台数をデジタルカメラが上回るなど、これからは、デジタルカメラをコンパクトカメラ的な感覚で購入する人が飛躍的に増えることは、ほぼ確実だろう。そう考えると、やはりコンパクトカメラに比べて、デジタルカメラはまだまだ高価なものと言えるわけだ。
その点、本機はアクセサリキット込みで、おそらく実販は29,800円くらいと予想できる。しかも、カメラの基本操作はミューと同じくレンズバリアを開いてシャッターを切るだけの簡単操作だ。さらに、最新OSであれば、付属ケーブルさえ繋げばドライバのインストールなしに認識し、ファイルコピーと同じ操作でデータ転送ができるなど、デジタルカメラやパソコンに不慣れな人でも、気軽に使えるシステムになっている。
もちろん、「130万画素じゃ……」とか「ズームがデジタル2倍だけじゃ……」という声もあるだろうが、本機は、気軽にデジタルカメラを使いたいという人や、サブカメラを探している人に、安心してオススメできる、新世代のベーシックモデルといえる。
□オリンパスのホームページ
http://www.olympus.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.olympus.co.jp/LineUp/Digicamera/C1/c1.html
□製品情報
http://www.olympus.co.jp/LineUp/Digicamera/C1/index.html
□関連記事
【3月6日】オリンパス、38,000円の単焦点131万画素デジカメ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20010306/olympus.htm
(2001年3月9日)
■注意■
[Reported by 山田久美夫]