Intel Developer Forum Conference Spring 2001展示会場レポート

Brookdale、Almadorなどのメカニカルサンプル、
Foster搭載システムなどが展示

会期:2月26~3月1日
会場:San Jose Convention Center


 サンノゼで開催中のIntel Developer Forum Conference Spring 2001では技術者向けの説明会であるトラックのほかに、Demo Showcaseと呼ばれる展示会が同時に開催されている。このDemo Showcaseでは、BrookdaleやAlmadorといったIntelの将来のチップセットのメカニカルサンプル、IntelがPentium 4のサーバーバージョンとして計画しているFosterを搭載したシステムやそのマザーボードなど、注目の製品が多数展示されていた。



●Brookdaleと思われるメカニカルサンプルを展示

 展示会場のIntelブースには非常に興味深い製品が展示されていた。基本的には計測器のデモで、CPUソケット(PGA370)からでている電気信号の波形などを計測するデモをしていた。問題はこのマザーボードに搭載されているチップセットだ。

謎のチップセットを搭載したマザーボード。メモリソケットはSDRAM用の168ピンのDIMMソケットになっているのがわかる。CPUファンはPentium 4用のファンが採用されている

 装着されているCPUはヒートシンクの形などから明らかにPentium 4なのだが、横からよく見てみると初日のレポートでお伝えした35平方mmのmPGA478のPentium 4とおぼしき小型のCPUソケットが採用されている。しかも、よく見てみればこのメモリスロットは明らかにSDRAM用の168ピンのDIMMソケットであり、Direct RDRAM用のRIMMではない。mPGA478のPentium 4、SDRAMのメモリソケットという条件がそろえば、このチップセットはBrookdale(ブルックデール)であるという可能性が高いだろう。BrookdaleはIntelが第3四半期に投入する予定のPentium 4用チップセットで、PC133 SDRAMをサポートするようになるほか、2002年の第1四半期にはDDR SDRAMも追加でサポートされる。

CPUファンの下を除くと、35x35mmの小型のμPGA用のCPUソケットが採用されていた。となると、これはmPGA478用のPentium 4である可能性が高い そうした状況証拠をつなぎ合わせていくと、これはBrookdaleのメカニカルサンプルである可能性が高い。このメカニカルサンプルのパッケージはμFCPGA

 ただし、チップセットのアップを見てみればわかるように、これはメカニカルサンプルであり、実際には内部にはチップが入っていないようだ。Pentium 4をメインストリーム市場に普及されるための秘密兵器として登場するBrookdaleだが、エンジニアリングサンプルはまもなくOEMメーカーに渡される見通しで、6月のCOMPUTEX Taipeiでは実際にサンプルマザーボードを見ることができる可能性が高く、期待したい。


●消えたAlmadorか? Intelが謎のチップセットを搭載したマザーボードを展示

謎の統合型チップセットを搭載したマザーボード
 また、同じブースにはPGA370の別のマザーボードが展示されていた。ノースブリッジにはヒートシンクが付けられているが、バックパネルにVGA出力があることなどから、統合型チップセットであることがわかる。サウスブリッジにはICH2(FW82801BA)が採用されており、外部AGPスロットが用意されていることを考えると、単なるIntel 815E搭載マザーボードに見える。

 しかし、AGPスロットの横には見慣れないメモリスロットらしきスロットが用意されているのが目に付く。このスロットには「GFX PERFORMANCE MODULE」という名前がついており、内蔵のグラフィックスコアの性能を向上させるためのメモリモジュールを挿すためのスロットであることがわかる。しかし、よく考えてみれば、Intel 815EのGMCH2(FW82815)であれば内蔵グラフィックスコアの性能を向上させるために利用するのはディスプレイキャッシュであり、それはGPAカードという形でAGPスロットに挿すはずだ。従って、これはIntel 815のGMCH2(FW82815)ではない可能性が高い。

 となると、そのIntel 815の後継であるはずだったがキャンセルされた、Almador(アルマドール)である可能性が高いだろう。AlmadorはIntel 830の製品名で出荷される予定だった製品で、Intelの0.13μmプロセスのPentium IIIであるTualatinコアに対応し、またIntel 815に比べてグラフィックス周りが大幅に強化される予定になっていた。OEMメーカー筋から入手した情報によれば、Almadorは以下のようなスペックになる予定だったという。

 注目したいのは、Almadorがフレームバッファ(つまりはローカルのビデオメモリ)としてDirect RDRAMをサポートしている点だろう。このDirect RDRAMはMedia-RIMM(MRIMM)と呼ばれるメモリモジュールで供給される予定になっていたという。そうしたことを考え併せると、このスロットはMRIMMのスロットである可能性が高く、ほかに該当する統合型チップセットをIntelが持っていないことから、このヒートシンクの下にはAlmadorが装着されていたと考えるのが妥当だろう。

外部ディスプレイ出力が用意されており、明らかに統合型チップセットであることがわかる MRIMM用と思われるメモリソケット。本来であれば、ここにPC800のMRIMMが挿入されて、内蔵グラフィックスコアの描画性能を向上させる予定だった

 なお、モバイル向けのトラックである「Low Power and High Performance Mobile Chipsets」では、次世代モバイルチップセットに関する言及もあった。

 既に初日にIAG(Intelアーキテクチャグループ)担当上級副社長であるポール・オッテリーニ氏により、0.13μmプロセスのモバイルPentium IIIに対応するチップセットがIntel 830M(以前はAlmador-Mのコードネームで呼ばれていた)であることが明らかにされているが、このセッションでもIntelの次世代パフォーマンスモバイルチップセットでDirect RDRAMがローカルフレームバッファとしてサポートされることが明らかにされている。となると、Intel 830Mのスペックが、Almadorをそのままモバイルにしたものである可能性が高く、上記のスペックがモバイル環境でも利用できるようになるわけで、かなり期待できるチップセットになるだろう。


●ServerWorksがFoster対応チップセットのデモを行なう

 Intelのサーバー向けチップセットメーカーとして知られるServerWorksは、Foster(Pentium 4のサーバー/ワークステーションバージョン)向けチップセットを展示し、実際にFosterのサンプルを利用したデモンストレーションを行なった。

 デモに利用されていたのはFoster向けチップセットである「Grand Champion HE」を利用したもので、4つのFosterのサンプル(クロックなどは不明)を利用して4ウェイサーバーのデモが行なわれた。また、NationalSemiconductorでもFoster用マザーボード単体での展示が行なわれ、Foster用のCPUソケットなどが初めて公開された。

Grand Champion HEと4つのFosterを利用した4ウェイFosterシステムのデモ Grand Champion HEを搭載したServerWorksのリファレンスマザーボード


●Micron TechnologyがCopperheadを展示

Micron TechnologyのDDR SDRAM対応チップセットであるCopperhead。まだまだサンプル版でシルク印刷もなく、シールを貼ってあるだけ
 Micron TechnologyはP6バス用DDR SDRAM対応チップセットであるCopperheadを展示した。CopperheadはこれまでSamuraiと呼ばれていたDDR SDRAMのリネーム版で、Micron Technologyが正式にIntelからP6バスのライセンスを取得したのをうけてリリースされたチップセットだ。デモはチップに「Copperhead」とシールが貼られた状態で行なわれており、おそらくそのシールの下はSamuraiのマーキングがされているものと思われる。

 CopperheadはノースブリッジとCoppertailと呼ばれるサウスブリッジで構成されており、両チップ間は64bitのPCIバス(ピーク時バンド幅533MB/秒、66MHz時)で接続されている。スペックは以下のようになっている。

となっており、基本的にはサーバーやハイエンドワークステーション向けに販売していくという。サンプル出荷は既に開始されており、実際の製品出荷は第3四半期になるそうだ。

Copperheadを搭載したマザーボードの全景。サウスブリッジはまだ搭載されていない Micron TechnologyのブースにはマイクロソフトのXboxも展示されていた。一般来場者でもじっくり見ることができるように展示されたのはおそらく今回が初めて


●今1つ盛り上がらないUSB 2.0、対応チップセットの早期リリースに期待

 毎回IDFでお約束のように展示されるUSB 2.0だが、今回も展示が行なわれていた。USB 2.0のコントローラチップを出しているNECでは、USB 2.0に対応したハブ、PCIのインターフェイスカードなどの展示が行なわれた。TDK製のUSB 2.0対応CD-RWドライブやNECのコントローラチップをオンボードで搭載したIntelのD850GB、MSI ComputerのMS6380(チップセットはApollo KT266、つまりAthlon/Duron用)などが展示されていたが、来場者の注目度も低く、正直なところ今一つ盛り上がっていない。

IntelのD850GBのUSB 2.0オンボード搭載バージョン MSI ComputerのMS6380。チップセットはApollo KT266 マザーボードにオンボード搭載されたNECのUSB 2.0コントローラ

 その原因は言うまでもなく、サウスブリッジにUSB 2.0コントローラを統合したチップセットが不在だからだ。例えばNECがリリースしているようなコントローラチップは、それだけで数ドルはするので、部品単位で1,000円程度はかかってしまうという。となると、実際の製品には数千円から1万円程度の価格アップとして跳ね返ってくるので、現時点ではPCメーカーがUSB 2.0コントローラを自社のPCに採用するのは非常に難しい。USB 2.0を採用することがセールスポイントになるのであれば、多少コストがかかっても搭載するのだが、現時点では対応するデバイスも少なくそれも難しいだろう。

USB 2.0に対応したハブとインターフェイスカード TDKのUSB 2.0に対応したCD-RWドライブ

 昨年、Intelは2001年(つまり今年)の半ばにリリースする予定でいたICH3(現行のICH2の次世代)でUSB 2.0をサポートする予定だった。しかし、これが昨年の秋になんらかの理由でキャンセルされてしまった。OEMメーカー筋からの情報によればIntelは、OEMメーカーに対して2001年に出荷されるチップセットはすべてICH2との組み合わせになると説明しているという。つまり、少なくとも今年いっぱいはUSB 2.0に対応したチップセットはIntelからはリリースされない(サードパーティからリリースされる可能性はある)。

 そうした意味では、サウスブリッジにUSB 2.0コントローラが内蔵されるのが先か、USB 2.0のデバイスが登場するのが先かといういわゆる「鶏が先か、卵が先か」という状況に陥っており、USB 2.0普及には高いハードルが設定されてしまっていると言える。そうした意味では、こうした状況を覆せるのはIntelであるのだが、現時点ではどのタイミングでUSB 2.0のコントローラがサウスブリッジに統合されるのが不透明だ。PCにより高速なデバイスを接続できるようになるUSB 2.0のユーザーメリットは改めて筆者が繰り返すまでもなく、Intelの今後の動向に期待したい。


□Intel Developer Forum Conference ,Spring 2001ホームページ
http://developer.intel.com/idf/

(2001年3月1日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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