後藤弘茂のWeekly海外ニュース

自社Fabによる最先端プロセスでNVIDIAを追う
--SiSのチップセット戦略

Alex Wu氏
●アレックス・ウー(Alex Wu)、SiS、ディレクタ(Integrated Product Division)インタビュー(後編)


●プロセス技術を武器にNVIDIAを追う

[Q] SiSはグラフィックスコアを自社開発している。これで、NVIDIAなどのグラフィックスベンダーに対抗できるのか。

[Alex Wu] プロセス技術を持っていることは、グラフィックスでも非常に大きな利点となる。'99年以前には、当社のグラフィックスコアはおよそ50万ゲートを使っていた。それが2000年になると400万ゲート、つまり、8倍になり、性能も倍増した。どうしてそんなことが可能になったのか。それは、ロジックのプロセス技術の微細化が急激に進んでいるからだ。

 '99年まではプロセス技術はDRAMがドライブしていた。ロジックはDRAMに対してプロセス技術で約18カ月、1世代遅れていた。例えば、DRAMが0.35μmプロセスに移行した時、ロジックは0.5μmだった。しかし、現在では当社の製品は0.18μmを使っていて、DRAMは0.175μmを使っている。ほぼ同等だ。これは、ロジック製品の成長が非常に速いので、最先端プロセスがより必要とされているからだ。

 2001年の当社のグラフィックスコアは、600万ゲートを搭載するようになる。Winbench 2000のスコアは60xx程度の予定で、NVIDIAの80xxスコアとの差を縮める。そして、2002年には当社のグラフィックスコアは800万ゲートに達する。

 こうした次世代チップを従来と同じ価格で提供しようとすると、ダイサイズ(半導体本体の面積)をこれまでのチップと同程度にとどめなければならない。だから最先端のプロセステクノロジが必要となる。プロセス技術を継続してアップグレードさせ続けることができないと、競争力が保てない。

 さて、99年より前には、多くのグラフィックスベンダーがあった。ATI Technologies、NVIDIA、S3、Trident、Matrox、3Dfx Interactive。しかし、今や残っているのはNVIDIAと、あとはATIくらいだ。3位は遠く離れている。それは、最先端プロセスで追従できなかったためだ。そして、引き離されるとどんどんチャンスがなくなる。それは、エンジニアがいなくなるからだ。例えば、S3やTridentの次世代チップの話を聞いたことがあるか? 私は聞いたことがない。それは、引き離されたために、エンジニアチームがいなくなってしまったからだ。

 では当社はどうなのか。我々には最先端を維持できるプロセス技術があり、いいエンジニアチームがある。数年以内にトップ(NVIDIA)に追いつくつもりだ。そのファーストステップは「SiS315」だ。これは、NV11に対抗する。そして、NV14/15世代に対しては、「SiS3x5」を投入する予定だ。現在、すでに2世代のビデオチップの開発が進行中だ。


●コストと最先端プロセスのためにFabを建造

[Q] しかし、昨年のSiSは、自社Fabを作ったために、従来のファウンダリだったUMCからラインを減らされ、製品をきちんと供給できなかった。

[Alex Wu] そうだ。正直な話、去年は当社にとってバッドイヤーだった。われわれはいい製品を開発したのに、提供できなかった。それは、指摘の通り、自社Fabを持つという戦略変更の影響をこうむったためだ。カスタマに対して十分に供給できない時期があった。それはよくわかっている。だが、当社はベーシックテクノロジ(製造技術)とともに戻ってきた。今後は供給面での問題は起きない。

[Q] 御社はFabの経験がなかった。立ち上がりに問題はなかったのか。

[Alex Wu] 当社の社長は「朝起きたらFabができていたなんてことはない」と言った。つまり、長期間の準備を地道に重ねたということだ。Fabの建造については、内部でも様々な意見があり、それを慎重に考慮し、十分にシミュレートして進めてきた。その結果が突然発表されたので、いきなりFabができたように見えるかもしれないが、そうではない。それに、ファブレスであっても、もともと、社内にプロセスのエンジニアは抱えていた。

[Q] なぜ自社Fabを建造したのか。ファウンダリに品質上の問題があるのか。

[Alex Wu] そうではない。TSMCもほかの台湾ファウンダリもみな素晴らしい品質を持っている。問題は別なところにあった。1つ目の理由はコストストラクチャだ。0.18μmですらまだ先端プロセスで、(ファウンダリの)製造キャパシティは限られ、コストは高くついてしまう。

 2つ目は最先端プロセスのキャパシティ。彼らが大量のキャパシティを持っていたとしても、0.15μmなど最先端プロセスのキャパはやはり限られている。当社は、最先進プロセスのキャパシティを十分欲しかったので、自社Fabを持つ必要に迫られた。

 ただし、Fabを持つことが成功のための唯一の道だというつもりはない。Fabへの投資は膨大でリスキーだからだ。しかし、当社の選択はFabを持つことだったというわけだ。また、当社がファウンダリももう絶対使わないということでもない。ファウンダリとは今も密接にやっている。唯一変わったのは、プライマリソースは自社Fab、セカンダリソースがファウンダリとなったことだけだ。

[Q] Fabを持つと、その投資を償却できるだけの利益を上げる必要がある。これはかなりのリスクではないのか。

[Alex Wu] すべてのビジネスはリスキーだ。そして、今の当社のリスクは、Fabを持つことで対応可能で予測可能なものになった。ファブレスの時は、自社以外の要因に左右された。現在のリスクの方が対応しやすいと思う。

 Fabに関しては、当社はそこに集中しており非常にハードに働いている。だから、先端のプロセス技術のトレンドに追従できると確信している。12インチ(300mm)ウエーハFabは、0.13μmでスタートする。この新しい12インチFabについても、技術面でもキャパシティの面でも、もう何も問題はないと思う。また、8インチFabは、現在のプロセスは0.18μmだが、0.15μmへこれから移行する。同Fabの全ての装置は、初めから0.15μm対応だ。

 Fabは用意できているわけで、あとはいい製品と適切なポジショニング、適切な価格設定があれば、十分成功できると考えている。

[Q] 2つのFabの出荷量はどの程度を見込んでいるのか

[Alex Wu] 公式に言えるのは、現在は250万セット/月の出荷ペースで、今年の前半の終わりには400万セット/月が可能になるということだ。ただ、異なる市場に向けた異なるダイサイズの製品がミックスしているし、市場動向もどんどん変わるので、一概には言えない。


●PCの中心に位置するのはチップセット

[Q] DDRの浸透はどの程度のペースで進むと見ているのか。

[Alex Wu] それはDDR SDRAMメモリの供給と価格による。まず、技術的には、DDR SDRAMとSDRAMはほぼ同じ構造で、製造装置に新たな投資が必要ない。そのため、コストはほぼ同じになる。だから、低価格になると期待できる。

 もう1つの側面は、新テクノロジのスタート時にはつきもののチキンエッグ問題だ。DRAMベンダー側はコントローラチップがないと言い、チップセットベンダーはDDR SDRAMメモリがないと言うと、悪循環になってしまって立ち上がらない。しかし、チップセットはすでに全ベンダーが用意している。そして、DRAMベンダーも皆DDR SDRAMを製造すると言っている。どこで、ミートするのかはまだわからないが、多分今年の後半には立ち上がるだろう。そのために、当社は準備をしている。ともかく、高品質グラフィックスを扱うには、現在の2~3倍のメモリ帯域が必要で、それが同じ価格で手に入るなら、誰も異論はないはずだ。

[Q] モバイルチップセットはやらないのか。

[Alex Wu] 確かに、モバイル専用の製品は持っていない。しかし、それは当社の製品がモバイルのスペックを満たしているからだ。モバイル用チップセットに必要なのはたった2つの要素に過ぎない。1つはパワーマネージメントで、これはACPIを完全にインプリメントしている。2つ目は消費電力で、これはもともと低いので全く問題はない。モバイルは、特に狙っていないというだけで、サポートしていないわけではない。

[Q] ビデオチップベンダーも統合チップセットを計画している。この動きは脅威ではないのか。

[Alex Wu] PCシステムの中で、VGAはどこに位置していて、チップセットはどこに位置しているか考えて欲しい。チップセットは中心にあり、VGAはその横にある。以前は、VGAはたんなるPCIデバイスの1つだった。

 では、中心にあるチップセットはいくつのデバイスをサポートしているのか。まず、CPUを考えてみよう、Intel系プラットフォームならCPUだけでも、およそ40のCPUのコンフィギュレーションがあり、バスクロックも66MHzから133MHz、さらにオーバークロックで150MHzまで対応しなければならない。メモリは10ベンダーから提供されていて、VGAは5ベンダーから。そして、USBに接続するデバイスはというとスピーカ、マウス、モニタ。それからPCIならオーディオ、モデム、それからSCSIは常にクリティカルだ。

 チップセットは、これらのデバイスとの互換性を実現する必要がある。ただ動かすだけでなく安定させて動作させないとならない。実際には非常にデバイスが多いので、チップセットの設計は極めて難しい。バグフリーのチップセットがないのはそのためだ。また、各バスはさらに高速化しており、タイミングはますますクリティカルになっている。例えば、DDR SDRAMだとマージンウインドウが非常に狭いためタイミングが大きな問題になる。DRAMは特に難しい。チップセットの場合はどんなメモリが挿されるのかわからないので、各DRAMベンダーのウィンドウと合わせなければならない。これは複雑で大変な作業だ。

 それに対して、ビデオチップでクリティカルなのは、チップセットとのバスだけだ。ビデオチップはメモリとのインターフェイスも持つが、メモリはどのベンダーのどのタイプといったコントロールができるので簡単だ。つまり、彼らはチップセットで直面する互換性のレッスンをまだ学んだことがない。だから、チップセットに参入しようとすると、多くのレッスンとコストが必要で、時間とリソースが必要となる。


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(2001年2月26日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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