第85回:手頃なサイズと機能を持つ12.1インチB5ファイルノート



 ノートPCとしてA4フルサイズのシェアが非常に高いことは間違いないが、ことモバイルという視点で日本の事情を考慮すれば、やはり小型・薄型・軽量といった要素を持つ製品に目がゆく。以前に書いたように、この分野の製品は趣味的要素の強い製品が受け入れられやすく、それ故に個性的な製品も少なくない。

 しかし、さまざまな個性的製品が登場する中で、以前のB5サイズ10.4インチ液晶17mmピッチキーボードという売れ筋サブノートPCに変わって、新しい定番となりつつある分野が薄型B5ファイルサイズサブノートPCだ。

 個人的に利用している日立のFLORA 220FXシリーズもその1つ。2000年に登場したノートPCの中でも業界内で評価が非常に高かったThinkPad X20も同じだ。そして、この春の新モデルにも、魅力的な薄型B5ファイルサイズ機がいくつか発表されている。


●XGA化がB5からB5ファイルサイズへの変化を促した

 薄型B5ファイルサイズ機には、CD-ROMドライブなどを内蔵可能なベイを持つ2スピンドルモデルと、ハードディスクのみ内蔵の1スピンドルモデルが存在するが、すべての製品にほぼ共通している仕様がある。12.1インチの液晶パネル、18mm以上のキーピッチ(デスクトップ用キーボードのピッチは約19mm)、25mm前後の薄さである。

 このうちキーピッチに関しては、B5サイズと比較して底面積が増えるのだから、それに合わせてピッチを広げることが出来るのは当然。薄さに関しても、底面積が増えれば部品を重ねて配置しなくても済むようになるため、底面積の小さなPCよりも薄く仕上げやすい(もちろん液晶パネルなどコンポーネントそのものの薄型化も寄与してはいる)。

 アップルのPowerBook G4が薄さをアピールしていたが、底面積が増えれば薄くできるのは当然のことだ。強度面での問題があるため簡単とは言わないが、そこそこコンパクトで薄く仕上がっていることが重要である。

 話がずれたが、B5ファイルサイズ機が増えてきた背景には、もう1つの液晶パネルサイズが大きく関係しているのではないだろうか。かつて主流だった10.4インチ液晶パネルや、それを一回り大きくした11.3インチ液晶パネルでXGA解像度を実現している機種を見ると、画素ピッチが細かくなりすぎてしまい視認性が著しく低下するように思う。

 12.1インチというサイズでも、XGAの解像度時に十分な大きさであるとは思わないが、持ち運びのしやすさや重量面などを考えるとリーズナブルなものではないだろうか。実際に10.4インチや11.3インチでのXGA表示と比較してみると、見やすさの違いは一目瞭然。長時間使うならば、12.1インチのメリットはとても大きい。

 こうしたサイズの変化は、サブノートPCに対する顧客からの見え方も変えているようだ。新宿のあるカメラ量販店のフロア責任者の話では、このクラスの製品を“サブ”ノートPCとして意識して買っていくのではなく、自分にちょうどいいサイズとしてサブではない普通のノートPCとして購入するケースが増えているのだとか。

 底面積の増加は、筐体そのものの重量増に直接的につながるため、いくら薄型にしたところで重量がB5サブノート機と同じにはできないのだが、それでもB5ファイルサイズ機が受け入れられているのは応用範囲の広さや使い勝手が評価されたからだろう。

 たとえば昨年、店頭売りでのB5ファイルサイズ以下のノートPC販売数でトップ5を独占したというソニーのVAIOシリーズを見ても、売り上げトップはC1シリーズだが、次点にはB5ファイルサイズ機のZ505が食い込んでいる。


●デザイン優先の旧型から実用度アップを果たした新Z505

 大人気だった旧Z505は、バランスのいいルックスを持つ薄型筐体に、CD-ROMドライブ以外の必要な機能をほとんどすべて内蔵。多機能と携帯性を両立させたモデルだったが、バッテリ性能が低いことが難点だった。

 その原因は薄くスクエアな筐体のデザインバランスを崩さないため、角形のバッテリセルを利用していたのが原因だ。標準添付のMサイズバッテリは一般的なサブノートPCの3セルバッテリより若干多めの容量ながら、重量は6セルバッテリ並と、重量あたりの容量で劣っていたのである。

 このため、約1.7kgの重量がありながら、たいしたバッテリ性能を出せなかったのである。現在、手元にないため確認できないが、以前計測したときには1時間30分を多少越える程度しかバッテリが持続しなかった。

 1.7kgの重さならB5ファイルサイズの2スピンドルモデルでも、CD-ROMドライブを外してウェイトセーバーベゼルを装着すれば、6セルバッテリでも同程度の重さになる。つまりCD-ROMドライブを内蔵していないにも関わらず、重量とバッテリ性能のバランスで負けてしまうのだ。

 以前、ソニーのノートPC開発部隊を束ねる某氏に「2スピンドルの軽量機はなぜやらないのですか?」と聞いたところ「同じ技術とノウハウなら1スピンドルの方が軽量化、あるいはバッテリ性能向上を図れる。ならばCD-ROMドライブ内蔵にこだわる必要はないだろう」と話していたのだが、Z505に限って言えば、決して軽量ではなかったのである。

 ほかにも、せっかくのUSB 2ポートながら1ポートが標準的なUSBコネクタでなかったり、外部ディスプレイを接続するために専用のアダプタが必要、といった不満はあったのだが、デザイン優先で性能を落としたバッテリ性能が気になり、オススメのモデルから除外していた。

ソニー 新Z505
PCG-Z505VR/K
 が、新機種ではどうやら丸形の6セルバッテリパックを標準にしたようだ。これで重量はほとんど変わらず、バッテリ容量は1.9倍。これならば1スピンドルの薄型B5ファイルサイズ機のメリットを声高にアピールできるだろう。低電圧版プロセッサが採用されていないのが残念だが、これで最大の欠点は克服したと言える。

 バッテリやプロセッサ、HDDといったコンポーネント以外に変化はないが、元々のデザインやパッケージングは評価が高かったZ505シリーズだけに、さらに高い人気を呼ぶことだろう。


●実用性の高い富士通の2スピンドルサブノート

富士通 FMV-BIBLO MF6
 2スピンドル機の新製品の中で最も注目したいのが、富士通のBIBLO MF6だ。昨年、突然MFシリーズが2スピンドル機になって驚いたが、当初は重量も重くとても“サブノートPC”と言えなかったが、モデルチェンジを繰り返すごとに軽量化が進んだ。

 最新機種のMF6では、とうとう6セルバッテリを内蔵しながら1.7キロ(ウェイトセーバー装着時)の軽さを実現した。新Z505のバッテリスペックと直接比較していないので、細かな容量比較はできないが、ざっくり言って同等のサイズ、重さ、バッテリ性能を実現しつつ、CD-ROMドライブの内蔵も可能にしているわけだから、スペック的にはなかなかのものだ。サウンドの光デジタル出力ができるのもユニークと言える。

 現在、僕が使っているFLORA 220FXも、MF6とほぼ同等の重さだが、こちらは6セルバッテリ時にバッテリが半分外に飛び出てしまう。またMF6にはIEEE 1394、Sビデオ出力といった機能もある(反面、220FXはLANインターフェイス内蔵モデルがあるが、MF6にはない)。

 もっとも、細かな違いはあるものの、この両者は非常によく似ており、まるで同じ人が作った兄弟モデルのよう。用意されているオプションも酷似しており、CD-ROMドライブのベイをさまざまなものに換装することで機能を拡張できる。

 両機種ともディスプレイ出力コネクタが標準サイズで付いており、USB2ポートも標準サイズが採用されているなど、薄型軽量にもかかわらず、機能面で十分なものがあり、2スピンドル機を選ぶならこれらのうちどちらかをオススメしたい(ただしMF6にはWindows 2000モデルが用意されていないようだ)。

 昨年発表されていた日立のCrusoe搭載機FLORA 220TXも、先日からWindows 2000モデルの受注を開始したようだ。クーリングファンなしの低消費電力機を選びたいなら、こちらを選択するという手もある。

 本来、この分野を切り開いたハズの松下電器産業がB5ファイルサイズに新機種のリリースを予定していないのが残念だが、今年は2スピンドルのB5ファイルサイズ機がさらに増えそうだ。“1スピンドルの方が軽量”なら、2スピンドルにこだわる必要はないが、“たいして変わらないなら、2スピンドルが便利”とも言える。

 以前のB5サブノートPCが流行した時のユーザーも、そろそろ買い換えを迫られる時期だろう。さて、あなたの期待に添う機種は見つかりそうだろうか?

[Text by 本田雅一]


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