プロカメラマン山田久美夫のCESデジタルカメラレポート

低価格化指向の新製品が多数出品

会期:1月6日~1月9日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Center
   Las Vegas Hilton
   Riviera Hotel
   Alexis Park



●ソニー、999ドルのメガピクセルDigital8ビデオカメラ

 ビデオカメラというと、日本ではいまやDVテープを使ったタイプが完全な主流になっているが、米国では本体の値段が安いHi8やVHS-C規格のアナログ製品がまだまだ幅を利かせている。これは、米国の家電製品全体にいえることだが、特にビデオカメラは顕著で、1,000ドル以下は当たり前。中には実販500ドル以下のビデオカメラさえあるほどだ。

 そんな中でソニーは今回、超破格のDigital 8規格のメガピクセルモデル「DCR-TRV730」「DCR-TRV830」を発表。スタンダードな「730」が999ドル、3.5インチ液晶モニターとプリンタ付きの高機能タイプ「830」でも1,299ドルと、手頃な価格になっている。

 機能面での充実度には目を見張るものがあり、ほぼフルスペックという感じ。まず、CCDはメガピクセルタイプで、1/4インチ107万画素を搭載している。もちろん、静止画記録はメモリースティックが利用でき、メガピクセルデータの撮影が可能。さらに、DVモデル「DCR-PC110」で搭載されていた、メモリースティックへのMPEG-1動画記録やビデオテープからのMPEG-1変換機能までも備えている。また、高機能タイプの「DCR-TRV830」ではカードサイズのプリントができる超小型プリンタまで搭載(取り外し可能)されているなど、至れり尽くせり。この価格帯とは思えないほど、充実した内容になっている。

 カメラ本体はオーソドックスな横型タイプで、サイズもDigital8方式としてはコンパクトな仕上がりだ。

 もちろん、Digital8なので映像もデジタル記録であり、テープの価格もDVより安価だ。気軽にメガピクセルの静止画やMPEG動画を撮影したい実用性重視のPCユーザーにとっては、なかなか魅力的なビデオカメラと言えるだろう。

 多少高価でも小型で高機能なものが好まれる日本市場とは異なり、コストパフォーマンスを最重視するアメリカ市場向けらしいニューモデルと言える。

 今回、日本国内での展開については言及されていなかったが、ぜひ同等の価格で早期に国内販売して欲しいところだ。


●機能拡張型メモリカード、続々登場

 今回のCESでは、SDカード陣営が「SDパビリオン」を展開。さらに、ソニーもメモリースティック関連製品をさらに充実させるなど、カード関係でも新たな展開が見られた。

 なかでも今後注目されるのが、メモリカードと同じ形状で、さまざまな拡張機能を搭載した新型モジュール。もちろん、このカードスロットを使って本体の機能を拡張するという発想は、PCカードの時代からあり、発想自体はそれほど目新しい感じはないが、SDカードやメモリースティックなどに搭載されると新鮮に感じられるから不思議だ。


■メモリースティック

 今回はソニーが、メモリースティックの拡張モジュールである“Infostick”のBluetoothモジュールのプロトタイプのデモを実施。2000年秋のCOMDEXではデジタルカメラユニットや指紋照合システム、GPSユニットなどが先行発表されていたわけだが、今回はさらにBluetoothモジュールが追加された。

 といっても、この機能拡張カードの場合、対応した製品が必要だ。既存のメモリースティック採用機器に機能拡張カードを挿せば、そのまま動くというわけではない。

 ブースでのBluetoothモジュールのデモでは、「Cyber-shot DSC-F505V」を改造したモデルで転送デモが行なわれていた。もちろん、ソフト的な改造もされているわけだが、このBluetoothモジュールの場合、カード先端に約5mmほどのアンテナ部分があり、それが出っ張るため、カメラ側面の蓋が取り外されており、拡張カードが市場に並ぶ頃には、形状的にも、拡張カードに対応した新製品が必要になることを暗示していた。

 もちろん、メモリースティックのスロットは1スロットのみのため、Bluetoothモジュール内には8MBのフラッシュメモリも搭載している。つまり、データを一度メモリに記録し、それをBluetoothで転送するわけだ。機構上は最大32MBまで搭載可能というが、300万画素機で使うとなると、32MBでは心許ない感じもある。

 もっとも、転送速度は当初は200Kbps程度(将来的には400~500Kbpsまで高速化が可能という)なので、高画素の大容量データをBluetoothモジュールで送るのは、あまり現実的ではない。1~2枚転送したり、動作に時間がかかるインクジェットプリンタなどに転送するなど、用途が限られそうだ。

 この製品は2002年までには発売されるというが、ノートPCやクリエなどソフトのインストールで対応できる機器はともかく、デジタルカメラなどの組込型機器では対応製品が登場するまで待つ必要があり、普及にはまだ時間がかかりそうだ。


■SDメモリーカード

 また、SDカード陣営でも、東芝ブースでは、SDカード版のBluetoothモジュールの展示があった。こちらは、今年の春頃に発売を予定しているという。ただ、こちらもSDカードスロットを備えた対応機器があるわけではなく、説明員の話によると、当初はPCカードアダプター経由で使うことになるということだった。

 松下も拡張型モジュール(同社ではI/Oカードと呼ぶ)を参考出品しており、SDカード版のBluetoothのほか、1/4インチの31万画素CMOSセンサーを搭載したデジタルカメラカードも予定しているという。

 このほかにも、SDパビリオンでは、PalmがデジタルカメラモジュールやGPSモジュール、MP3モジュールなどを参考出品していた。

 なお、拡張カードではないが、今回はSDパビリオンにキヤノンも参加。同社ブースでは、SDカード搭載のDVC(デジタルカムコーダー)を中心としたシステム展開をパネルで紹介していた。

 さて、今回はメモリースティックやSDカード系で、さまざまなタイプの機能拡張モジュールが登場したわけだが、PCカードでの機能拡張系カード(カードモデムやイーサーネットカードなど)でもわかるように、使用頻度が高いものは、徐々に内蔵式に移行する傾向がある。

 とくに、今回各社から登場したBluetoothモジュールは、普及さえ見込めれば、ユニットの価格が高価なものではないため、その機能が必要な機器には早期に内蔵される可能性が高い。とくに、携帯電話やPDA、ノートPCやデジタルカメラなどでは、内蔵式が主流になることを考えると、ハードソフト両面からの対応が必要なBluetoothのような拡張モジュールの存在価値は意外に早期に失われてゆくような気がする。

 もちろん、拡張モジュールによる新展開は大いに好感が持てるし、楽しみな部分も多いのだが、どこまで現実的なものなのか、そろそろ再検討する時期に来ているような気がした。


●SAMSUNG、211万画素光学3倍ズーム機を出品

 デジタル家電にきわめて意欲的なSAMSUNGは、211万画素光学3倍ズーム機「N・E・X・C・A SDC-200Z」を出品。基本ボディは以前から130万画素3倍ズーム機として公開され、昨年秋のCEATECにも参考出品されていたもので、今回はCCDを高画素化して211万画素モデルに仕上げたものだ。

 スタイリングはメカニカルでややごつい印象。CCDは1/2.7インチの211万画素タイプのポピュラーなものを採用している。ボディ上部に大型のモード表示用液晶を配置し、背面には十字パッドを採用するなど、操作性もなかなかよく考えられている。

 高画素モデルは日本メーカーが先行しており、コダック以外の海外系メーカーでは200万画素機でさえも珍しい存在だ。さらに、SAMSUNGは近年、デザイン面での注目すべきモデルが多いこともあって、今後の展開次第では魅力的なモデルが登場する可能性も高そうだ。


●手のひらにスッポリ収まり動画も撮れる超小型モデルを出品

 アメリカで人気の高い低価格デジタルカメラも、最近では個性的な製品が数多く登場し、新たな賑わいを見せている。その中でMULTI TECHNOLOGY EQUIPMENTは、まさに手のひらに収まってしまいそうなマッチ箱サイズのモデル「NEDIO」を発表した。

 このモデルは、45.5×57×23mmという超小型サイズの単焦点タイプ。画像サイズは352×288ピクセルと1/4VGAよりやや大きめなもの。このコンパクトさながら、モードや撮影枚数表示用液晶を備えており、USB転送も可能だ。

 メモリは16Mbitの内蔵式で、80枚の静止画記録のほか、20回のCIFサイズでの動画撮影もできるという。バッテリは充電式のリチウムイオンタイプを内蔵しており、USB経由での充電にも対応する。

 もちろん、USB経由でPCカメラとしても利用も可能だ。さらに、11種類もの付属ソフトが同梱されるなど、意外なほど充実した内容のモデルに仕上がっている。

 価格は99ドル。この画像サイズでは高価な部類にはいる。画質は未知数だが、この機能を考えれば、なかなか意欲的なモデルだ。


●DataPlay、オリンパスブランドのDataPlayディスクの存在をアピール

 DataPlayについては、東芝などが正式採用することを先だってのレポートでも紹介した。その後、よく同社のカタログやポスターを見ると、その中央に「OLYMPUS」ブランドのDataPlayディスクがあることを発見した。

 もちろん、正規採用もせずにこのような写真を公にする事は考えられず、オリンパスもDataPlayを正式に採用するのはほぼ確実だろう。

 ただ、そうなると、以前から三洋電機やマクセルと共同開発している「iDフォト」ディスクの完全な対抗製品になるため、この両方を採用するとは考えにくい面もある。もちろん、小型化とディスクの価格を考えれば、DataPlayの方が有利かもしれないが、開発元メーカーとしての立場を考えると、今後の同社の展開に注目が集まりそうだ。

(2001年1月11日)


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[Reported by 山田久美夫]


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