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1月6日~9日(現地時間)開催
●6mm厚のカード型デジカメの実動モデルが公開
21世紀は夢がかなう時代。そんな幕開けを象徴するような、魅力的なデジタルカメラが登場した。それが、今回のCESで「Best of CES」最優秀賞を受賞した、名刺サイズの超薄型モデル「Ultra-Pocket Digital Camera」だ。本機は厚さわずか6mmという、超薄型を実現している。出力解像度は、VGA(640×480ピクセル)だ。
もちろん、このようなスタイリングのものは、これまでもモックアップとしてはいくつもの例があり、むしろ定番と言っていい存在だ。名刺サイズで、携帯時の厚さはたった6mmしかなく、カード電卓感覚で気軽に持ち歩ける点が最大の特徴だ。いつでも気軽に持ち歩けるデジタルカメラの究極のスタイルといえる。
ただ、このモデルが従来のモックアップと大きく異なる点は、現時点ですでに撮影可能な実機デモが行われており、随所に新鮮なアイデアが盛り込まれた“製品”である点だ。しかも、発売時期は今年のクリスマス商戦。価格も129ドルときわめて具体的だ。現時点では発売元が決まっていない点はネックだが、今年中に市場に並ぶと思うとワクワクする。
このモデルの開発元である「SMaL」は、マサチューセッツ工科大学(MIT)のデジタルイメージング研究者が共同設立したベンチャー企業だ。撮像素子はVGAの1/3インチCMOSセンサーを採用し、レンズは単焦点で固定焦点。機構上、厚みが必要なレンズとファインダー部も、携帯時に凹ませて収納することができるため、ほぼ完全な6mm厚のカード状になる。
記録メディアにはマルチメディアカード(MMC)を採用。標準で8MBカードが付属しており、最大40枚の記録ができる。PCへのデータ転送はUSB経由でおこなう。また、電源は充電式になっており、USBケーブル経由でPC側から電源を供給して充電するという合理的なもの。
また、CMOSセンサーであり、徹底した省エネ設計のため、1回の充電で約1,000枚もの撮影ができるという。
データ保存はJPEGではなく、一種のRAWデータになっているため、VGAモデルの割に撮影枚数が少な目だが、これには理由がある。このモデルは、内部処理を12bit化しており、CMOSが撮影した画像データを元に、自動的に画像の輝度域を認識し、それに最適なトーンカーブをドラスティックに適用することで、CMOSセンサーながらも通常のCCDセンサーと同等か、それを越えるほどのワイドダイナミックレンジを実現している。
同社ブースでは、実機を使った撮影デモが行われており、画像を見ることができた。残念ながら、レンズ性能が優れないため、現時点での画質はVGAのCMOSモデルとして見ても、若干物足りなさを感じる。もちろん、製品化までには画質改良が行われるわけだが、レンズ性能だけは要検討課題といえそうだ。
ただ、この点さえクリアできれば、いつでも気軽に持ち歩ける、理想のメモ用カメラになる可能性が高く、大いに期待できそう。価格も129ドル程度であれば、簡易モデルとして十分に楽しめそうだ。
ただ、同社は設計のみで、製造は台湾メーカーに依頼するというが、現時点ではまだOEM先が決まっておらず、どのメーカーから登場するのか未定。もちろん、数社から引き合いがあるようで、どうやら今年のクリスマスには北米で入手できるようになるのはほぼ確実だ。
もちろん、こんな素敵で夢のあるクリスマスプレゼントなら、誰もが欲しくなるに違いない。もしかすると、数年先にはこんなモデルが、現在のレンズ付きフィルムに取って代わっている可能性も十分にありそうだ。
●東芝:334万画素3倍ズームで599ドルを実現した「PDR-M65」
毎年、CESで新製品を公開する東芝。2000年は「PDR-M70」、「PDR-M60」の外観写真を公開し話題となった。
そして今年、正式発表されたモデルが、この「PDR-M65」だ。現在、日本国内での展開は未定という。
このモデルは、「PDR-M60」ボディをベースに、1/2インチ334万画素CCDを搭載。さらに、レンズも光学3倍ズーム(M60は2.3倍)を搭載したモデルだ。
機能面でも、大容量バッファを使うことで連写性能を高めるなど、性能アップが図られているという。
さらに価格的にも、接続キットなどフルセットで実販599ドルと、北米の300万画素ズーム機のなかでも、ダントツに安価な設定となっており、もっとも手頃な300万画素機になりそうだ。
●DataPlay:500MBの超小型光ディスク関連製品を大量展示
2000年春に発表された、超小型・大容量ディスク「DataPlay」。今回のCESでは、比較的大きなブースを構え、賛同メーカーの対応製品を一堂に展示。「Best of CES」にノミネートされ、トップを争うほどの注目を浴びていた。
DataPlayは、2000年、東芝と提携し大々的な展開を開始した、注目の小型ディスクだ。ディスクサイズは、CFカードとほぼ同等で、片面250MB、両面で500MBもの大容量データの保存が可能。また、ディスクの価格も、500MBタイプで約10ドルとなかなか手頃。
データ記録はマルチセッションのCD-R同様、追記はできるが、一度記録したデータの消去はできない構造になっている。また、著作権保護機能も当初から備わっているため、音楽CDのようなコンテンツの販売用にも使える点も大きな特徴だ。
今回、同社ブースでは、東芝やSAMSUNGをはじめとした多くの賛同メーカーが、DataPlayディスクを使った製品のモックアップを出品しており、携帯オーディオ機器はもちろんのこと、デジタルカメラ関連も出品されていた。
なかでも東芝は、現行の「PDR-M70」のグリップとカードスロット部分に、DataPlay用ドライブを組み込んだサンプルモデルを展示していた。このモデルは、単なるデザイン・モックアップではなく、実際にDayaPlayディスクでの撮影が可能なもので、ブースでは簡単な撮影デモも行われていた。
もともと、ディスクが小型で、ドライブもさほど大きくないため、パッと見た感じでは「M70」そのものという感じで、なんら違和感はない。逆に、このサイズで500MBものディスクメディアが使えるようになれば、とても魅力的だ。
もちろん、メモリカードのようにデータ消去して上書きするといったことはできないが、これはCD-Rマビカと同じように、一度撮影したデータを誤って消去してしまう可能性もないため、安全性は高い。500MBディスクで10ドル程度なら、デジタルカメラ用のフィルムといった感覚で扱えそうだ。
なお、DataPlayの説明員によると、東芝は2001年秋(10月)に、別ボディのDataPlayディスク採用デジタルカメラを発売する予定という。価格的には、ディスクドライブのコストを考えると、メモリカードタイプよりも、70-80ドル程度高くなる可能性があるという。
このほかにも、SMART DISKが、DataPlayディスクを採用した携帯型ストレージャを出品。これは、CFカードなどのメモリカードのデータを、PCなしに直接DataPlayディスクに保存できるもの。また、PCへのデータ転送にはHigh-Speed USB(USB2.0?)が利用できると説明していた。
このストレージャがあれば、メモリカードが一杯になっても、簡単な操作でデータをDataPlayディスクにコピーして、再び撮影ができるため、データ保存用にノートPCなどを持ち歩かなくても済むわけだ。
また、OEMを主力とするの台湾のデジタルカメラメーカー「PRETEC」も、DataPlay搭載モデルを2機種出品。さらに、CFカードスロットでDataPlayディスクを利用可能にするアダプタを出品。SAMSUNGもPCカードスロットでDataPlayディスクの読み書きができるアダプタを出品していた。
さらに、DataPlay社自身も、携帯オーディオ機器とともに、デジタルカメラのイメージモックアップを出品するなど、意欲的な展開を見せていた。
●Polaroid:インスタントとデジタルのハイブリッド機
米国では低価格帯デジタルカメラの最大手であるPolaroid。同社は今回、これまでとはひと味違った新製品を発表していた。
まず、Polaroidの近年のヒット作である小型のインスタントフィルム式モデルに、VGAのストロボ付きデジタルカメラを一体化した「I-ZONE Digital & Instant Combi Camera」を発表。このモデルは、外観から想像できるように、インスタントカメラとデジタルカメラを強引に一体化したモデル。もちろん、デジタルカメラとインスタントカメラは、全く別に機能し、連動するようことはなく、サイズもかなり大柄だ。
むしろ注目されるのは価格で、この両方の機能が備わっていながらも、わずか99ドルときわめて手頃な価格を実現している。
デジタルカメラとしては、VGAの単焦点モデルで、内蔵メモリは1MB(18枚の撮影が可能)。データ転送はシリアルのみという実にシンプルなモデルだ。
もちろん、ユーザー側としても、同じシーンでプリントが欲しいときも、メール添付用のデジタルデータが欲しいときもあるため、その両方がリーズナブルな価格で入手できればハッピーという、アメリカンな感覚のモデルだ。
画像サイズはホームページやメール添付用のため、352×288ピクセルと小さいが、十分に実用的。価格も49ドルと、こちらも手頃な価格だ。
プリントは、Polaroidフィルムに出力するため、色調はPolaroid調で好き嫌いが分かれるところだが、携帯型プリンタのなかでは、十分に写真といえるレベルを実現している。
さらに、アメリカで今後ブレイクするといわれている、カラー液晶を使ったフォトフレームも発表された。このフォトフレームは機能を割り切ることで、5×7インチの大型液晶を搭載しながらも、わずか199ドルという価格を実現している。
このフォトフレームには、ほかのデジタルフォトフレームにあるようなメモリカードスロットがない。その代わりにPhoneジャックがついており、これを使って、電話回線経由で同社のサーバー上にアップしておいた自分の写真をダウンロードして表示するという。
また、このフレームには、天気予報などの情報をネット経由で表示することもできるなど、単なるデジタルフォトフレームを越えた機能も備わっている。しかし、電話回線経由で写真データをダウンロードするという発想は、電話料金体系が日本とは異なるアメリカならではのもの。このあたりにもお国柄が現れていて、なかなか興味深いものがあった。
このようにPolaroidは、デジタルフォトを使って、どうやって写真を日常の中で楽しむかという課題に、積極的にアプローチしている点が新鮮であり、日本企業がなかなか真似のできない展開を繰り広げている。もちろん、デジタル時代になると、同社の屋台骨であるPolaroidフィルムの需要が大幅に減るという、切実な事情があるとはいえ、このようなソフトを含めた新展開への意気込みは、並々ならぬものを感じさせた。
(2001年1月9日)
■注意■
[Reported by 山田久美夫]