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短期集中連載 |
全3回でお送りしているMPEG-2キャプチャカードレビューの最終回です。
今回は、ソフトウェアMPEG-2エンコードカード「アイ・オー・データ機器 GV-BCTV4/PCI」、「NEC SmartVisionPro2」とハードウェアMPEG-2エンコードカード「エスケイネット WinTV PVR for PCI」のレビューおよび総評をお送りします。また、記事の最後には実際にキャプチャした動画を掲載していますので、あわせてご覧下さい。(編集部)
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アイ・オー・データ機器 GV-BCTV4/PCI |
NEC SmartVisionPro PCI |
エスケイネット WinTV PVR for PCI |
アイ・オー・データ機器 GV-BCTV4/PCI |
これは本製品が、TV視聴・録画というよりはむしろ、TV視聴のほか文字放送受信、bitcast等データ放送受信、そしてビデオ編集という、非常に多目的に応用できる汎用のキャプチャカードという位置付けのためだ。つまりTV視聴機能自体は、機能の中の1つに過ぎないというわけだ。
このような構成のため、使用方法もやや複雑だ。GV-BCTV4でのTV視聴は「TVステーション」という専用ツールで行なうが、このツールは、単にTV画面をウィンドウ内に表示できる(フルスクリーン表示ももちろん可能)だけの非常にシンプルなもの。一応、ビデオキャプチャ機能もついているのだが、こちらではMPEG-1またはAVIによるキャプチャしか行なえない。MPEG-1キャプチャはソフトウェアエンコード方式だが、最大解像度は320×240ピクセルに制限されるなど不満は多い。データ放送としてはbitcastのほかに、テレビ朝日系列が放送する「ADAMS-P」、あるいは各局が放送する文字放送なども受信可能で、それぞれ専用の受信ツールが付属する。
「本命」であるMPEG-2キャプチャをどこから行なうかといえば、付属のビデオ編集ソフト「Ulead VideoStudio 4 MPEG2(S) SE」から行なう。VideoStudio 4にはWDM+DirectShowベースのキャプチャデバイスからリアルタイムでMPEG-2エンコードを行なうためのエンコーダが付属しており、この機能を利用するのである。
図1:ビデオ編集ソフト「Ulead VideoStudio 4 MPEG2(S) SE」の画面。DirectShow経由でMPEG-2のリアルタイムエンコード+ビデオキャプチャが可能(画面ははめこみ合成) |
VideoStudio 4では、エンコードエンジンとして、米Ligos TechnologyのMPEG-2リアルタイムエンコードエンジンを利用している。エンコード時のビットレートなどは自由に設定することができ、さらにIピクチャのみのキャプチャやIBP各ピクチャの構成等も変更可能だ。もちろんソフトウェアエンコード方式なので、むやみに高いビットレートを設定すると正常なキャプチャは行なえない。キャプチャされたデータは、そのままVideoStudio 4に読み込まれて、編集可能な状態になるほか、そのときVideoStudioで開かれている「プロジェクト」のフォルダにMPEG-2ファイルとして保存される。
図2:MPEG-2ソフトウェアエンコーダのパラメータ設定。VideoStudio 4の中から呼び出す | 図3:キャプチャパラメータは、GOP構造の変更など、かなり細かいところまで変更できる |
ただVideoStudio 4からみると、このGV-BCTV4/PCIは単なるキャプチャカードとして認識されているにすぎない。当然VideoStudio 4には「受信チャンネルの切り替え」といった概念は存在しないので、どのチャンネルをキャプチャするかはいちいちGV-BCTV4/PCIのプロパティダイアログから指定しなければならず非常に面倒だ。
キャプチャできる最大解像度は640×480ピクセルだが、チップの仕様制限のため、この解像度でキャプチャする場合には画面上のプレビュー表示オーバーレイサイズには制限がある。VideoStudio 4のプレビュー画面のサイズは、この制限をオーバーしているためキャプチャとの同時利用はできない。そのためオーバーレイ表示を停止しなければいけないのだが、これもまた別プログラムから行なわねばならない。実のところ筆者も、うまくMPEG-2キャプチャが行なえるようになるまでにはかなりの時間を要した。
サンプルMPEG-2ファイルをキャプチャした際のビットレートは、他製品と同様6Mbps相当で行なった。エンコーダの特性のためか、画像はシャープネスが低く、色再現性もあまりよくない。
図4:ハードウェア自体は、国内仕様の音声多重+ステレオ放送に対応するなど、素直な作りとなっている |
NEC SmartVisionPro 2 |
ハードウェアの構成は、アイ・オー・データ機器のGV-BCTV4/PCIと非常によく似ており、日本国内の音声多重/ステレオ放送に対応するチューナを搭載する。NTSCデコードチップはCONEXANTのBt878Aで、音声キャプチャはサポートしないためにサウンドカードとの接続が必須となる点もGV-BCTV4と共通だ。ただサウンドカードとの内部接続コネクタは用意されておらず、外部で接続することが必要となる。つまりサウンドカードのLINE-IN端子が占有されてしまうわけで、この点では内部接続端子を用意しているGV-BCTV4の方が親切だ。外部入力端子も、コンポジットとS端子を用意しているGV-BCTV4に対して、SmartVisionPro 2ではコンポジット端子のみとなり、S端子は存在しない。
ソフトウェアは前述の通りPure DIVAから変更になったわけだが、新たに採用されたのは、USB版と同じSmartVision/TVやSmartVision/EGPなどの独自ソフトである。画面をみてわかるように、前回紹介したUSB版に付属のSmartVision/TVとなんら変わるところがなく、一見しただけでは区別できない。リアルタイム視聴モードが存在せず、常にスリップ再生モードになっているという点も含め、動作はまったく同一だ。
図1:TV視聴・録画ソフトSmartVision/TVは、USB版とまったく同じ画面デザイン(画面ははめこみ合成) |
ソフトウェアエンコードということで、MPEG-2エンコードとデコードはCPUで同時に行なわれているが、操作は思っていたよりは軽快な印象。USB版のように、ちょっと操作をしたただけで実際のTV放送とのタイムラグがどんどん広がっていく、というようなこともなかった。とはいえ本放送との差が「0」と表示されている場合でも、実際には3秒前後の遅れはある。そのためチャンネル切り替えなどのレスポンスはあまり良くない。
録画時の画質は、SmartVision/TVの内部から「標準」と「高画質」の2段階に設定できるようになったが、これは録画時の解像度を変更するためのものだ。標準では320×480ピクセル、高画質モードでは640×480ピクセルとなる。またUSB版と同じく、独立した「画質設定ユーティリティ」によってMPEGのエンコードパラメータが変更できるが、こちらは4段階あったUSB版に対し、PCI版では画質優先と動き優先の2段階になっている。ビットレートはやはり明記されていないが、画質優先、高画質モードでキャプチャした場合、640×480ピクセル/7Mbps、標準モードでは6.2Mbpsとなるとのこと。キャプチャ画質は、解像感はそこそこあるのだが、色にじみが多く、また若干ノイジーな印象を受けた。
なおBt878チップの仕様上の制限のため、高画質モードでのキャプチャ中はグラフィック画面上へのオーバーレイ表示は行なうことができない。そのためSmartVision/TV上のプレビュー表示は行なわれず、ダミー画面が表示される。ボタン操作に対してタイムラグが生じる点とあわせて、手動キャプチャはかなり操作しづらい。
図2:画質設定ユーティリティは、エンコード、デコードとも2段階の設定になった | 図3 高画質モードでの録画は、プレビュー画面が表示されない |
図4:iモードやインターネットからの録画予約は、1日に最大3回、BIGLOBEにダイアルアップしてデータをとりにいく形式 |
もっともこれは筆者個人の感想であり、どう判断するかはあくまで使う人次第。今回紹介した製品の中でこうした機能を持っているのは本製品だけなので、そこに価値を見出すのであればお薦めの製品である。
エスケイネット WinTV PVR for PCI |
ハードウェアのセットアップであるが、このカードは動作環境をかなり選ぶようで、保証されるのは、基本的にIntel製のチップセットとの組み合わせに限られる。発売当初はIntel製チップセットでも、Intel 815などは対象外とされていたが、現在ではIntelのサイトから最新ドライバをインストールすることで動作する旨がアナウンスされている。
さらにIntelのチップセットを用いた場合でも、ほかのデバイスと割り込み(IRQ)が共有されてしまうと動作が非常に不安定になるという。実際、筆者が試みた環境でも、EthernetカードとIRQを共有した状態ではTV表示が乱れるなどのトラブルが発生した。最終的には正しく動作するようにはなったが、余計なカードを外すなど、今回テストした中では最も手間がかかった製品である。
ソフトウェアはUSB版とまったく同じ「WinTV 2000」が使われる。画面デザイン、操作方法等が同じなので、詳細についてはWinTV PVR for USBのレビューを参照いただきたい。こちらはすんなりと動作したが、なぜか最初のセットアップ時に行なわれる受信可能チャンネルの自動スキャンが不安定で、放送されているはずなのに受信されないと判定される局が多かった。手動でチャンネル登録しなおせばいいだけの問題だが、すこしチャンネルスキャンの動作が速すぎるのではないだろうか。
図1 TV視聴・録画プログラムはUSB版と同じWinTV 2000が使われる(画面ははめこみ合成) |
USB版に比較するとPCI版は、各種操作に対するレスポンスが非常によい。オリジナルのTV放送とPC上との間のタイムラグも非常に小さく、軽快な操作感だ。スリップ再生時の安定性もよく、さすがはハードウェアエンコーダを搭載しているだけある。ただしリアルタイム再生モードからスリップ再生モードに移行する場合や、Recモードで録画ボタンを押してから実際に録画が開始されるまでの待ち時間はUSB版ほどではないにしろ、あいかわらず待たされる。
図2:日本国内仕様の音声多重、ステレオ放送に対応する | 図3:さすがにハードウェアエンコーダを搭載するだけあって、ビットレートは最大で12Mbpsにも対応する |
サンプルとしてキャプチャしたMPEG-2ファイルは、ほかと条件をあわせるためにビットレートを6Mbpsとした。この条件では、決して悪い画質というわけでもないが、ほかよりもとりわけ良いともいえない。特にRF信号とチューナとの相性のためか、若干のビートノイズが発生しているのが気になるところだ。とはいえこの製品の最大の魅力は、ハードウェアエンコーダ搭載ということで、最大で12Mbpsという高レートのエンコードが可能である点にある。このレートでの画質は他製品よりも圧倒的に優れており、さらに、まもなくVBRにも対応するということなので、期待したい。
高いビットレートでのキャプチャは、それだけHDD容量を消費するということにつながるのだが、HDDが低価格化している昨今、容量よりも画質を重視するという人は多いだろう。そう考えると本製品は、すくなくとも画質の点では今回紹介した中では最も優れている。残る問題は動作環境の厳しさ、特にIRQ共有不可という点については非常に残念だ。この点さえ解決されれば、多くの人に勧められる製品になることは間違いないのだが。
●キャプチャしたMPEG-2サンプル動画
最後にそれぞれの製品で実際にキャプチャした動画を掲載する。動画はいずれも720×480ピクセル/6Mbps相当でキャプチャを行なった。また、前回レビューした製品のサンプル動画もあわせて掲載したので、本文とあわせてご覧頂きたい。
MPEG-2の再生環境はビデオカードや、ドライバ、OS、再生ソフトによって異なるため、掲載したMPEG-2画像の再生の保証はいたしかねます。また、編集部では再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい。 |
GV-BCTV4/PCI 5.00MB |
SmartVisionPro 2 5.06MB |
WinTV PVR for PCI 5.55MB |
SmartVisionPro USB 5.56MB |
WinTV PVR for USB 5.43MB |
ALL-IN-WONDER RADEON 5.78MB |
今回紹介した製品をみてもわかるように、製品のタイプ、目的、使い勝手などは意外とバリエーションが多く、結果として製品の選択はかなり難しい。自分がどういった用途に使うのかをしっかりみきわめ、それにあった製品を選ぶよう心がけたいものだ。では今回の製品の中では、どういった場合にどのような製品を選択するのがよいだろうか。
まずノートPCや拡張性に乏しいPCでは、USB接続のWinTV PVR for USBがお薦めだ。USBなのでセットアップも容易であるし、6Mbpsとしては、キャプチャ画質も比較的良好である。とにかく手軽に利用できるという点で優れている。
PCIバスが利用でき、かつ、録画ではなくPC上でのTV視聴がメインという場合には、SmartVisionPro 2が良いだろう。常にスリップ再生モードというのに抵抗を感じる人がいるかもしれないが、スリップ再生というのはもともと「よそ見をしていてうっかり見過ごしたシーンをもういちど見たい」というような場合に使用する機能だ。にもかかわらず、モード切替をしなければスリップ再生ができないというのでは、本来の目的が達成できない。またこの製品は、bitcastや文字放送など、単なるTV以外の楽しみ方ができるのも良いと言える。
どうしても高画質な録画が必須であるなら、WinTV PVR for PCIがベストだ。というより、これ以外の選択肢は現状では考えられない。ただしこの製品は、実行できる環境が限られる上、IRQの共有ができないなどセットアップもかなり厄介だ。ハードウェアのセットアップに自信がない場合には、あまりお勧めできない選択肢でもある。
さて、3回にわたりTV視聴・録画製品について紹介してきたわけだが、ではこれらの製品は、この種のTV録画PCの走りでもあるVAIOを超えられたのだろうか。自分がユーザーだから言うわけではないが、実際のところ、仮にこれらの製品を利用したとしてもVAIO、特にフラッグシップであるRXシリーズにはまだまだ足元にも及ばないというのが正直なところだ。
実際、今回紹介した製品では実現できないRXシリーズの魅力を挙げると、以下のようになる。
1. Windows 2000で動作する
タイマー録画は、セットさえすれば確実に録画が実行できるという信頼性が非常に重要だ。そのため、より信頼性の高いWindows 2000での動作は、少なくとも筆者は必須と考える。正直いって、Windows 98/Me程度の信頼性では、録画予約など任せたくない。
2. 普段はスタンバイ状態で、タイマー録画の際には自動復帰して録画できる
たかがTV録画のために、常にPCの電源が入りっぱなしというのは抵抗がある。深夜の録画など、PCの音が気になって眠れないのでは意味がないし、消費電力も気になる。
3. 録画予約ごとに、録画時の画質を設定できる
あえて説明するまでもないだろうが、あまり重要でない番組は低画質、ぜひ保存したい番組は高画質で録画するのは当然だろう。なぜこの程度の単純な設定ができない製品がほとんどなのだろうか。
4. 録画した結果は、アナログビデオ出力もできるので大画面TVで視聴できる
PCで観るTVは、どうしても画質に不満がある。ALL-IN-WONDERではTV出力も可能だが、これとて本当にMPEG-2をそのままNTSCに出力しているわけではない。PCが真にビデオ化するためには、ビデオ出力は避けて通れない。
これらの条件が満足されれば、もはやVAIOと比較しても劣るところはない。かなり魅力的な製品になることは間違いないが、もうすこし欲をいわせてもらえば、以下のような機能もあると非常に便利だろう。
・録画時に外部機器をコントロールできる
録画したいのはなにも地上波TVだけではない。BS/CSデジタルやアナログBS放送、CATVなど、予約録画したいソースは多々ある。どうせPCで録画するなら、予約した時刻にこれらの機器を(赤外線などで)自動で制御してチャンネル切り替え、その出力をPCで録画する機能が欲しい。これが実現されるのであれば、むしろキャプチャボード側にわざわざAV機器よりも画質が劣るチューナを搭載する必要などないだろう。
・MPEG-2ではなく、DVフォーマットで録画したい
MPEG-2もビットレートが高ければ高画質だが、やはり編集を行ないづらいのが最大の難点だ。HDDが安価になった昨今、たとえファイルサイズが大きくなってもフレーム単位の編集に向くDVフォーマットで録画できれば非常に魅力的と言える。MPEG-2化するのは、CM抜きなどの編集が終わってからのソフトウェアトランスコードで充分だ。
TV視聴・録画製品は、どれもみな安価なため各社ともなかなか魅力的な機能を追加できずにいる。だが、真に魅力的な機能さえついていれば、多少他製品よりも高価であっても歓迎するユーザーは多いと思うのだが、読者の皆さんはどう考えるであろうか。少なくとも筆者は、上記1~6までの機能がすべて満足される製品が登場すれば、たとえ価格が現在の3倍になったとしてもその製品を選ぶと思う。
(2000年12月27日)
[Reported by 天野 司]
●TVチューナ内蔵キャプチャカードはVAIOを越えられるか?
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