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【田野辺第3プロジェクトマネージャー】 |
掲載の経緯、内容変更の理由、実際に今後マイクロドライプリンタがどうなっていくのかなどを、同社開発営業部第3プロジェクトマネージャーの田野辺忠夫氏と、広報・秘書室 広報グループ課長の小野昭博氏にお話を伺った。
■店頭販売を終了し、インターネット販売という経営判断に
○まず、告知の内容が変わった理由を教えてください
マイクロドライプリンタについての方向性の検討については、数ヵ月前から社内の各部署間で調整をしていました。販売チャネルの変更という方針については、年内には公開する予定だったのです。タイミングをめぐっての多少の混乱がありました。掲載後に、より正確な内容に変更しましたが、販路の変更については既定の方針、経営の判断ということなのです。
○販路の変更ということですが、正直なところ、かなり撤退に近いニュアンスを感じます。店頭での販売がないということは営業的にも不利になると思うのですが。
あくまでも店頭での販売の終了であって、撤退をするという経営判断には至っていません。お客様には申し訳ないのですが、台数的には減少していて、営業的な効率を上げたいということが背景としてあります。また、我々の持っているインターネット販売システムに統一することで、お客様のとまどいをなくそうという考えもあります。
○これから販路をインターネット販売一本に変えられるわけですが、これはこれまでの在庫を売ることが目的なのでしょうか。それとも、ある程度売れれば継続的に販売され、今年は見送られていた新機種の投入もありえるのでしょうか。
特殊用途というと失礼ですが、特徴を持ったプリンタとして残っていくという道もあるとおもうのですが。
ただ、お客様のほうでお店で購入される場合も指名買いがほとんどで、インターネット販売になったからといってすぐに撤退につながるという商品ではないと思っています。マイクロドライは、口コミで売れている商品なのです。リピーターの方、インクジェットからの乗り換えの方、初めてプリンタを買われる方がそれぞれ1/3ずつを占めていますが、いずれのお客様もほとんど指名買いです。
インターネット販売への移行の理由ですが、マイクロドライプリンタのターゲットはコンシューマーに置いていましたが、このところ台数的には落ちていて、コンシューマーでやり続けるには無理があるのではないかというところまできています。
当初インクジェットプリンターに対してあったアドバンテージが薄れ、価格面も含めてコンシューマーでは生き残れないだろうと思い、2年ほど前からターゲットを業務用途に絞ろうとしてきたんですが、そちらも我々が狙っていた数には到達しませんでした。
われわれの体制も、台数に見合った体制にしなければならず、販売人員も、販売体制も縮小してきました。さらに台数的には減少してきたので、販売効率をあげるために店頭販売の終了を決定したという経緯なんです。店頭なしでいけるのか、腹をくくってやっていこうという決意なのです。
新製品については、インターネット販売になって、どれぐらいの台数が売れるかということで決まってくるでしょう。
○可能性としてはダイレクトで売れていけば、改良型などがでる可能性はゼロではないということですね。これから、ある程度売れて、収益が見込めれば可能性がないわけではないということですか。
マイクロドライプリンタがシュリンクの方向にあることはユーザーさんも肌で感じていると思います。それについてはいいわけはしません。やめるということも含めて考えなければならないでしょう。
■サプライ品は店頭でも販売
○ユーザーにとっては、消耗品がいつまで入手できるかということが気になるところですが。
本体の修理部品、インク、ペーパーなどの消耗品は、お客様にご迷惑をおかけしないよう極力確保していきます。
消耗品はいままでどおり店頭で扱っていただけます。ゆくゆくは多少は取り扱いが変化するかと思いますが、ここしばらくはこれまでどおりの販路で扱っていただけるというお言葉をいただいています。
消耗品類については、早い時期からインターネット販売を始めていましたが、実際は近場にお店のないところにいるユーザさんが中心で、ご利用の割合は2%程度に留まっていますので、店頭で売りつづけていただけるのはありがたいです。
また、修理とサポートは従来どおりカスタマーサポートセンターで承ります。
■シリーズ累計で70万台に留まる
【小野 広報グループ課長】 |
シリーズ全体で約70万台です。国内が40万台、海外が30万台です。
○正直な話、それぐらいしか売れていなかったのと驚いたんですが(注:'99年の国内インクジェットプリンタ市場は約490万台:IDC Japan調べ)。
どれぐらいだと思っていましたか。
○少なくとも累計で100万台はいっていると思っていました。非常にユニークな得意技を持っているので、もっといっているだろうと。インクジェットにはない特徴もあったと思うのですが。
たしかに、マイクロドライプリンタは、アドバンテージを持っていました。
ざっくばらんにいうと、コンシューマーをターゲットにするからには(製品の)バランスが必要だったと思うんですね。とくに遅れをとったというのは印刷スピードだったのではないかと。最初は負けていなかったんですが、インクジェットの追い上げは激しかったです。それに対して、マイクロドライの開発速度は遅かったといえます。
欲が深くなかった、天狗になってしまったという反省はありますね。スタートは仕込みにそうとう時間をかけてました。そして売れました。これでいいんだと思ってしまったところはあります。
画質の面でも、私どものファンの方も、ここまできたらインクジェットでもいいという方もいるとおもいます。でも、どうしてもこれでなければいけないというユーザーさんもいらっしゃるでしょうね。根強いファンのかたがいらっしゃるのは事実です。
ある販売店のトップの方にお会いしたときにいわれたんですが。アルプスのプリンタじゃなきゃというお客さんがかなりいらっしゃると。何台かそれはわからないけど、必ずいらっしゃると。そういう意味ではその人たちに対しては申し訳ないねと。
小売りの方々にも、もっと売っていきたかった、扱っていて面白かったとおっしゃっていただいて、ありがたかったし、残念です。せめて、ネット販売を継続することによって火は絶やさないようにしたいというのが、いまの気持ちです。
○やっぱり残念なのは、マイクロドライに可能性を感じさせるところがあるからです。やる気になればもっと磨けたんじゃないんかと。前回の記事には2日間で36,000以上のアクセスがありましたが、これがどこかのインクジェットプリンタメーカーが撤退したという記事ならば3万人もの人が見なかったと思います。やっぱり特徴があって、皆の頭に残っていたからこそだと思います。
本当に、未完の大器のままでという感はあります。
■自分の土俵で軸足を据えた活動へ
【インターネット販売が継続されるMD-5500】 |
PC用のプリンタとしては、コンシューマー用ではありませんが、沖データさんからA3の製品(MICROLINE 7050C:248,000円)が出ています。
○もっと協業が早ければと残念です。もしくはヘッドだけを外販して何社かが製品化を競うとかでもいいのですが。単独ではなくパートナーや競争があれば、開発の速度も上がったのではないかと思います。
コンシューマー向けの製品についての方針は了解しましたが、アルプスさんのプリンタ事業はこれからどうされるのでしょう。
セットメーカーさん向けのプリンタメカは、これまで以上にやりたいと思っています。プリンタ事業は拡大していかなければならないと。
弊社の製品の最大の特徴はコンパクトさにありますから、携帯電話や携帯機器などの分野にも行きたいと思っています。もともとアルプスは部品メーカーですし、自分の土俵で、しっかりと軸足を据えてがんばっていこうということです。
□アルプス電気のホームページ
http://www.alps.co.jp/
□マイクロドライプリンタの販売チャネル変更のお知らせ
http://www.alps.co.jp/brand/printer/end/salesend.htm
□MD-5500製品情報
http://www.alps.co.jp/brand/printer/md5500/
□関連記事
【12月20日】アルプス電気、マイクロドライプリンタの販売終了
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001220/alps.htm
(2000年12月27日)
[Reported by date@impress.co.jp]