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シャープ株式会社は12月15日、新型ザウルス「MI-E1」の発売を開始した。MI-E1はシャープが満を持して市場に投入する意欲作。そのため正式発表前から注目を集め、発売直後から僚誌「ケータイ Watch」を含め、PDA製品を取り扱うサイトでレビューされ始めた。
しかし、シャープのニュースリリースでも、詳細が書かれておらず、レビュー記事でも周辺機器としてわずかながらに触れられているだけの注目の製品が同時に発売されていた。それがMPEG-4ビデオレコーダ「CE-VR1」(35,000円)だ。
CE-VR1は、MI-E1がMPEG-4の再生をサポートしたことで、新たに用意された周辺機器。SDカードなどに、CE-VR1を利用してテレビ放送などを記録して、MI-E1でそれを見るというのが主目的。しかしながら、CE-VR1のメモリースロットは、PCカードType2となっているので、PCカードアダプタが利用できるメモリカードなら、何でも使用可能。つまり、CE-VR1はMI-E1のユーザーでなくても、パソコンがあれば活用できる製品なのだ。
MI-E1や、MI-E1でのCE-VR1の活用方法は、PDA系サイトにお任せするとして、今回は「パソコンでCE-VR1を使う」という観点でレポートする。
●よくまとまったハードウェア
CE-VR1のパッケージ内容は、レコーダ本体、ACアダプタ、AVケーブル、説明書。パッケージの箱や、説明書に「Zaurus」ロゴがプリントされているところが、この製品の位置付けを示しているのだろう。
本体の外形寸法は68×115×104mm(幅×奥行き×高さ)、重量約340gとコンパクト。また、ACアダプタは、500円玉より一回り大きい程度の非常に小型なものが採用されている。
本体のハードウェアとしての仕様は、前面に入力端子×1、背面に出力端子×1と入力端子×1。前面と背面の入力端子は、前面のスライドスイッチで切り替えられ、、完全な2系統となっている。これにより、通常はビデオデッキを背面に接続しておき、ビデオカメラなどを必要なときに前面に接続するという使い方が可能だ。
出力端子には、基本的にスライドスイッチでセレクトされている入力がスルーされているが、CE-VR1のOSDの表示も出力される。つまり、出力端子にディスプレイを接続していないと、時計合わせや、予約設定などができなくなる。なお、出力は電源を切ってもスルー出力されているが、ACアダプタを接続していないと出力されないので注意が必要だ。
ビデオ入力は、今時のビデオ機器としては珍しく、コンポジットのみでS端子を搭載していない。CD-VR1は画質を追求する製品ではないので、正しい判断とも思うが、個人的にはS端子を搭載して欲しいところ。なお、オーディオ入力端子は、ステレオ入力となっているが、記録されるのは左チャンネルのみのモノラルとなっている。
●問題はクラスタサイズにあった!
実際に使用してみると、ある問題にぶつかった。それは、手元にあるCF、スマートメディア、メモリースティックを試すと認識されないものが数個でてきたのだ。もちろん、そのメモリーカードはデジタルカメラ、パソコンでは使用可能。
パーティションサイズ | クラスタサイズ |
---|---|
0~32MB | 512B |
33~64MB | 1KB |
65~128MB | 2KB |
129~255MB | 4KB |
256~511MB | 8KB |
試しに64MBのCFをWindows 98の右クリックメニューからフォーマットするとクラスタサイズは2,048Byte(2KB)になった。また、PowerShot S10で初期化しても同じ2,048Byte(2KB)となった。しかし、Windows 2000の右クリックメニューでフォーマットすると1,024Byte(1KB)となった。
しかし、CE-VR1はメモリの容量に関係なくクラスタサイズが2,048Byte以上でないと認識できないようだ。そのため、64MBのCFをWindows 2000で標準フォーマットしてしまうと、CE-VR1では使用できなくなってしまう。つまり、「不用意にパソコンでフォーマットしてしまうと、クラスタサイズが2,048Byte以下になることがあり、CE-VR1では認識できなくなる」ということになる。どうしても、パソコンでフォーマットする際には、なるべくコマンドプロンプトでクラスタサイズを指定してフォーマットしたほうがいい。
なお、クラスタサイズを2,048Byte以上でフォーマットしなおしたところ、手元にあった以下のメディアは全て使用することができた。
PCカードアダプタ | メディア | |
---|---|---|
CF Type1 | パルディオ611S用アダプタ | SanDisk 64MB |
SanDisk 48MB | ||
Lexar 64MB×8 | ||
CF Type2 | IBM microdrive用アダプタ | microdrive 340MB |
スマートメディア | TDK FCD128N | 64MB(ID付) |
32MB(ID付) | ||
16MB | ||
メモリースティック | SONY MSAC-PC2 | SONY 64MB |
SONY 4MB |
●何ができて、何ができない?
入力コピープロテクト信号が含まれているものを録画しようとすると、このように「Pro」と表示されて録画できない |
方法は大きく分けて2つ。まず1つ目は、時間を設定する方法。具体的な使用方法としては、CE-VR1のOSDにより始まる時間と、終わる時間を設定。ビデオデッキなどを録画したいチャンネルにあわせ電源を入れっぱなしにしておくと、CE-VR1が設定した時間に録画を開始する。しかし、この方法では1回につき1チャンネルしか録画できないことになる。なお、予約設定は本体に5件、カードにも5件登録できる。
もう1つの方法は、出力機器と連動させる方法。この設定を行なうと、入力端子に信号が入ると自動的に録画開始し、信号がなくなると停止する。具体的には、ビデオデッキでタイマー予約を設定し、CE-VR1を連動するようにしておく。すると、ビデオデッキの予約録画が始まると同時にCE-VR1にも記録される。しかし、この方法だとビデオデッキを予約状態にするためにテープを入れなければならないので、必ずテープとCE-VR1と両方に録画されることになる。
重ねて言うと、CE-VR1は本当に“録画機能”しか搭載していないので、編集どころかデータの削除もできず、データを消すだけでもパソコンや、ザウルスなどが必要となる。また、ハードウェアMPEG-4エンコーダ搭載機といえば、同社が既に発売しているインターネットビューカム(VN-EZ5、実売約5万円)があるが、こちらは再生機能もあるので、完全にスタンドアローンでの使用が可能。しかし、CE-VR1は再生機能がないので、パソコンなどのなんらかの再生機が必要となる。
このように、TVチューナを搭載しなかったことで、シャープも色々と工夫を凝らしてるのだが、ユーザーにも使い方の工夫を強いる面があることも確か。さらに、ザウルスの周辺機器という位置付けのためか、パソコン用のインターフェイスがないのも残念なところ。MPEG-4を採用しているのだから、USBでも転送速度は充分に足りるはず。パソコンのHDDが使用できれば、メモリカードの容量を気にせず録画できるのだが……。ちなみに、連続録画時間は6時間までとなっている。
●どんなモードで録画できるか?
現在のモードは、2色LEDと3色のLEDの組み合わせで表示する。個人的にはわかりやすくて、低コストなシステムだと思う |
CE-VR1が録画できる解像度は320×240ドット、240×176ドット、160×120ドットの3種類。さらに、それぞれに「ファイン」、「ノーマル」があるので、計6種類のモードが用意されている。
各モードの詳細は以下の表を参照していただきたいのだが、容量や処理速度などとのバランスを保つためか、高解像度ならfpsが少なく抑えられているなど、その組み合わせはかなり複雑。
そのため、容量を度外視しても、“どのモードが1番いい”のか判断するのが難しい。また、音声については全モードともcodecはG.726で、モノラル 8kHzで同一なのだが、ビットレートは異なっている。そして、こららのパラメータは固定されており、任意に変更することができないので、さらに頭を悩ませることになる。
画質設定 | 記録時間 (カタログ値) | fps | ビットレート | 音声 ビットレート | 1分あたりの容量 実測値 |
||
---|---|---|---|---|---|---|---|
16MB | 64MB | ||||||
320×240ドット | ファイン | 約5分 | 約20分 | 約5 | 416kbps | 32kb/s | 約2.67MB |
ノーマル | 約10分 | 約40分 | 約5 | 416kbps | 32kb/s | 約0.95MB | |
240×176ドット | ファイン | 約7分 | 約30分 | 約5 | 272kbps | 24kb/s | 約1.27MB |
ノーマル | 約12分 | 約47分 | 約7.5 | 176kbps | 16kb/s | 約773KB | |
160×120ドット | ファイン | 約10分 | 約40分 | 約15 | 211kbps | 24kb/s | 約680KB |
ノーマル | 約30分 | 約2時間 | 約7.5 | 70kbps | 16kb/s | 約484KB |
画質の評価のために、実際にアナログコピープロテクトのかかっていない音楽DVDを、各モードで10分程度録画してみた。まず320ドット×240ドット ファインモードでは、フレーム単位で見ると非常に綺麗なのだが、5fpsしかないため、かなりカクカクした動きとなり、動画として見ることも辛いぐらいになった。しかし、わずか2.5の違いなのだが7.5fpsのモードでは、かなり動きが改善される。15fpsでは動画として合格ラインに達する。やはり、動画として見る場合は15fpsが最低ラインだろう。
音声はモノラル 8kHzと割り切った仕様にしたおかげか、聞き取りやすい。音声のビットレートの違いにより、確かに音質は違うのだが、“聞き取る”という意味では、どのモードでも充分なもの。
なお、再生にはWindows Media Player Ver6.0以降が必要となる。必要なcodecについてはインターネットに接続していれば、自動的ダウンロードしてインストールされる。今回、ThinkPad 570(Celeron 400MHz、メモリ 128MB)のWindows 2000上で、Windows Media Player Ver.7.00.00.1956を使用したが、標準では音声codecはインストールされていなかった。CPU使用率は、どの録画モードでも60%を越えず、概ね20~40%台で推移した。同じプレーヤーで、最小化して128kbpsのMP3を再生したときよりも低く、CPUパワーはそれほど必要としないようだ。
実際に、いろいろな映像ソースを試して見たところ、DVDや、DVなど元々画質がいいものは、良好な画質で録画できた。しかし、映りの悪い地上波などでは、ブロックノイズがより目立つようになり、かなり見づらい印象を受けた。
今回は自分の目で画質を判断していただくべく、DVで会社周辺を撮影して、それを録画したサンプル動画を用意したので参考にしていただきたい。なお、字幕が読めるかという検証もかねて、あえて時間などを表示して録画している。
画質設定 | サンプルムービー 約40秒 |
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---|---|---|
320×240ドット | ファイン | 1.8MB |
ノーマル | 927KB | |
240×176ドット | ファイン | 1.2MB |
ノーマル | 671KB | |
160×120ドット | ファイン | 835KB |
ノーマル | 329KB |
●改良の余地はたくさんあり
結局のところ、CE-VR1は買いなのだろうか? 現在のCE-VR1の実売価格は3万円弱なので、価格帯としてはS-VHSデッキのローエンドと同じ。もちん、S-VHSデッキはTVチューナを内蔵しているのだから、明らかにコストパフォーマンスはS-VHSデッキの方が高い。単体で再生できないことも考え合わせると、CE-VR1がビデオデッキの置き換えとなるわけもない。しかし、MpManにより、半導体音楽プレーヤーという市場が開拓されたように、半導体ビデオ市場が生まれることを期待したい気持ちもある。
そういった意味ではCE-VR1は、メーカーの努力が随所に見られるのだが、まだまだ「とりあえずMPEG-4で録画できるよになった」という域を脱していない。もっと洗練され、ビデオデッキの置き換えになるような次モデルが早期に登場することを期待したい。
●おまけ:やっぱり分解しときました
■■ 注意 ■■
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□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sharp.co.jp/sc/gaiyou/news/001121-1.html
□関連記事
【12月19日】清水理史のザウルス MI-E1 速報レビュー (ケータイ Watch)
http://k-tai.impress.co.jp/review/2000/12/19/zaurus1.htm
【12月15日】キーボード付きザウルス「MI-E1」発売
新宿では在庫潤沢、店頭価格は49,800円
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20001215/zaurus.htm
(2000年12月21日)
[Reported by furukawa@impress.co.jp]