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AMDとIntelの次の激戦は来年第4四半期から2002年前半


●次の戦いは0.13μmの陣

 AMD対Intelの次の勝負どころは、2001年第4四半期から2002年前半になる。ここで、AMDは再びIntelの猛攻にさらされる。Intelが0.13μmに製造プロセスの移行を始めて、Pentium 4の製造コストを落として普及を狙ってくるからだ。AMDがIntelの攻勢をかわし、目標とするPCプロセッサシェアの30%を達成・維持するためには、0.13μmの製造プロセスを計画通りに立ち上げる必要がある。逆を言えば、それまでのAMDは、比較的ラクな道のりを行くことになるだろう。

 COMDEXレポートでAMDの新ロードマップは概説したが、今回はそれをもう少し掘り下げて分析してみよう。まず、先週、AMDの推定ロードマップ図をアップしたが、ここでは2002年中はDuronラインは0.13μmへ完全移行をしないと予測した。これは、AMDが今のところFab30しか0.13μm化計画をアナウンスしていないからだ。AMDは2002年中に新Fabを建てる予定を持っていないため、Fab25も0.13μmへ移行すると思われるが、その場合も移行時期はFab30よりずれるだろう。

 Fab30は2001年末には100%稼働になっているが、それでもFab30の生産量だけではまかない切れないはずだ。というのは、AMDがPCプロセッサ市場シェアの30%を目標としており、来年前半は、今年第3四半期の17%からさらにシェアを伸ばす可能性が高いからだ。その場合、Fab25とFab30の両方がフルに近く稼働しないと、目標達成に必要な年間4,000万個という生産量に達しないだろう。

 AMDの両Fabの合計の生産量は、11,000ウェハ/週程度と見積もられている。これは年間にすると約55万ウェハとなり、1枚のウェハから平均で70個の良品のCPUが採れるとして生産可能なCPU数の上限は4,000万個となる。AMDによると、現状の設備での両Fabの生産量はほぼ同規模としているため、逆算するとAMDの生産量は片方のFabでシェアの15%程度ということになる。となると、15%を超えるシェアをAMDが維持していれば、Fab30だけでまかない切れないため、全製品が0.13μmに移行するのはFab25の0.13μm化待ちということになる。もちろん、これはFab30に設備を増設して生産数を増やさない限りの話だ。


●0.13μmはハイエンドデスクトップとモバイルが中心か

 いずれにせよ新プロセスは立ち上がり期には生産量が限られる。そのため、AMDは高クロック化と低消費電力化を実現できる0.13μm技術を、Intel同様にハイパフォーマンス品とモバイル品で優先して投入するはずだ。そうすると、0.13μm版Duron(Appaloosa:アパルーサ)は、モバイル版が優先され、デスクトップ版はしばらく0.18μm版Duron(Morgan:モルガン)のまま残るだろう。

 一方、0.13μm版Athlon(Thoroughbred:サラブレッド)は、比較的早い時期に次期0.18μm版Athlon(Palomino:パロミノ)に置き換わるだろう。これは、この時点になればFab30の生産量で十二分にパフォーマンスデスクトップでのAMDプロセッサの需要量を満たせるはずだからだ。通常、プロセス世代が移行すると50~60%程度、クロックの上限が上がる。そのため、Thoroughbredは2GHz以上を達成できるはずだが、AMDはクロックをある程度抑えるようだ。それは次世代プロセッサである「ClawHammer(クローハマー)」が同時期に登場するからだ。

 今のところ、AMDのロードマップではAthlonのクロックは2002年前半でも最高1.7GHzとなっている。2002年後半以降にさらに引き上げたとしても、ClawHammerの領域である2GHz以上へは持って行かないだろう。

 AMDは0.13μmのClawHammerが2GHzかそれ以上からスタートするとしている。これは、計算上は、プロセス技術だけでも実現できる。それは、AMDがHammerの製造にSOI(silicon on insulator)テクノロジを使うからだ。

 0.18μm→0.13μmのプロセス技術の移行だけで60%クロックが上がる上に、SOIによる性能ゲインが加わることになる。AMDとプロセス技術で提携しているMotorolaは、SOIにより同じプロセスルールで20~30%程度パフォーマンスが上がると発表している。そのため、単純計算ではClawHammerはプロセス技術だけで、Palominoより60~90%クロックの上限が上がることになる。マイクロアーキテクチャによる高クロック化も加われば、3GHzも夢ではないということになる。ただし、SOIは利点もある反面、歩留まりの低下という危険もある。つまり、ClawHammerは高クロック化と同時にリスクもしょっているわけだ。

 こうしてみると、AMDがClawHammerと同時期に、SOIを使わない0.13μmのThoroughbredを投入する理由もよくわかる。ClawHammerがうまく立ち上がらなかった場合には、Thoroughbredが中継ぎをできるからだ。しかし、ClawHammerが順調に立ち上がった場合には、Thoroughbredは比較的短命に終わるだろう。というのは、ClawHammerのダイサイズ(半導体本体の面積)は0.13μm時に100平方メートルと、現在のDuron(Spitfire:スピットファイア)並みに小さいからだ。そのため、ClawHammerは製造の歩留まりが順調に上がれば、かなり急激にAthlonに置き換わる可能性がある。


●なぜかAthlonとDuronの間に空隙が

 2001年中のAMDのロードマップも面白い。まずAthlonのクロックは来年後半まで、ほぼピタリとPentium 4の200~300MHz下につけている。これは、ちょうどAthlonがPentium 4をベンチマークで逆転できるラインで、AMDはAthlonの方がPentium 4より実効性能が上だと主張し続けるつもりでいることがわかる。

 来年第1四半期からAthlonとして登場するPalominoは、デスクトップだけでなくサーバー&ワークステーション市場もカバーする。これは、760MPに組み合わせるのはPalominoだというだけの話だ。すでに伝えた通り、大容量L2キャッシュの「Mustang(ムスタング)」は、とりあえず製品化は停止されたという。これは当然の話で、2ウエイのエントリサーバーとミッドレンジまでのワークステーションでは、大容量L2キャッシュは求められないからだ。大容量L2キャッシュが欲しがられているのは、一般に4ウエイ以上で、AMDにはその領域をカバーするチップセットがない。AMDは顧客が求めるならMustangの製品化もあると言うが、それは4ウエイ用チップセットが出てからとなるだろう。

 このほか興味深いのはAthlonのローエンド品とDuronのハイエンド品のクロックだ。両ブランドの間には隙間が開いているのだ。

 この計画通りなら、AMDのラインナップには来年第1四半期には900MHzが、第2四半期には1GHzがないことになる。通常、こうしたクロックの空隙はつくらない。Duronのクロックの上限がAthlonよりも低いのは、技術的な理由ではなくマーケティング的に棲み分けをしたいからだ。Duronのクロックは、技術的にはアルミ配線版Thunderbird同様に上げられる。

 そのため、このクロックの空隙は戦略的に作り出していると考えるのが自然だ。その理由として考えられるのは、IntelのCeleronのロードマップだ。DuronのクロックはちょうどCeleronのクロックの1ランク上になるように計画されている。Celeronを押さえ込めればいいというわけだろう。逆を言えば、Celeronが高クロック化を前倒ししてきた場合には、Duronはまだクロックを引き上げる余地があるということだ。

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【7月19日】AMDとVIAの次世代チップセット計画を公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/amd/

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(2000年12月1日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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